『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回でほのぼの回は終わりかも。


その19

 

 

 

*月(*´ω`*)日

 

 自分とアルゼナルの面々がサラちゃん達の都にお世話になってから二日、今の所ノーマ側とドラゴン側のいざこざは起こっておらず、今の所は良好な関係を結べていると思っている。

 

ノーマの幼年部の子供達もドラゴン側の子供達と意気投合し、毎日外で元気良く遊んでいるし、彼女達の面倒を見ているエルシャさんも子供達から慕われている事から母親の皆さんからも結構な信頼を寄せられている。

 

エルシャさんはドラゴンも自分達と同じ人間だったと最初の頃はショックを受けていた様だが、ドラゴン側の子供達の面倒を見ている内に自分達と何も変わらない事に気付き、今では幼年部共々可愛くて仕方がないという。

 

 この調子で両陣営共々仲良くなって欲しいなと思っていた時、サラマンディーネことサラちゃんは歓迎会と称してある催し物を提案してきた。

 

なんでも今まで殺し合いをしてきた相手といきなり仲良くなんか出来ないという反発の声がチラホラ出て来ており、このままでは両陣営の間に深い溝が出来てしまう事を恐れたサラちゃんは勝負をする事で日頃の鬱憤を晴らそうと思い至ったのだという。

 

慣れない環境でストレスが溜まっていたノーマ側もストレスを発散させる為にサラちゃんの提案を受諾、思う存分暴れるとみんな意気込んでいた。

 

で、その勝負をする場所なんだけど……まさかラウ○ド1がその舞台だとは思わなかった。サラちゃんはラ○ンド1が太古の人々の決闘場と勘違いしていた。娯楽施設がローマ時代のコロシアムみたいな扱いをされている事に何とも言えなくなったけど、折角盛り上がっている空気を台無しにするのは気が引けるのでこの件について自分は黙っておく事にした。

 

 ノーマ側とドラゴン側、それぞれの陣営から三名程代表者を選んで行われる事になった今回の催し物。ドラゴン側からはサラちゃん、ナーガちゃん、カナメちゃんの三名でノーマ側はアンジュちゃん、ヒルダちゃん、サリアちゃんが選出される事になり勝負は始まった。

 

最初はテニスから始まり、野球、サッカー、ドッジボール、ボウリング、カーレース、UFOキャッチャー等々様々な分野で行われ、どちらも一進一退の激しい戦いとなった。

 

個人的には突っ込み所満載な勝負だったが、場の空気も盛り上がっていたし、サラちゃん達やアンジュちゃん達も最終的には楽しそうにしていたから……まぁ、良いという事にしておこう。

 

勝負の結果は引き分け、どっちつかずの中途半端な幕引きに両陣営は不完全燃焼で不満に思うかと危惧していたが、アンジュちゃん達同様に他のノーマやドラゴン達も大きく盛り上がり、互いに認め合っていた。

 

いやぁ、こういうのはいつ見ても良いものだ。憎み合っていた仲がふとした切っ掛けで分かり合い認め合う。そこから生まれる可能性はまさに無限大、あの時の光景は今後の彼女達の活躍に期待する瞬間でもあった。

 

その後、サラちゃん達が灯籠流しでこれまでの戦いで死んでいった仲間達に黙祷を捧げる事で今回の催しは終了する事になった。空へと飛んでいく灯りの群、幻想的とも言えるその光景に誰も余計な言葉を発さず、皆静かに彼方へと消えゆく灯り達を見送った。

 

まさかこの世界で自分と同じモノが見れるとは思わず、少しばかり涙腺が緩んだのは内緒だ。今回でノーマとドラゴンは和解し、自分達の目的の為に皆手を取り合う事だろう。

 

いつかジル司令官もこの輪の中に入れる事を願い、今日は終わりにしたいと思う。

 

PS.

今回の催し物、自分とタスク君は何もする事無く暇だったので、皆が異様な盛り上がりを見せている中、二人でテニスやらボウリングやら楽しんでいました。

 

……時折こちらを見つめるクリスちゃんの目が怖かった。

 

 

 

*月(`・ω・´)日

 

 大巫女様方から言われていたグランゾンの説明、自分の愛機であるグランゾンを知って貰う為にレポートにまとめて提出したのだが、自分が説明下手なのがいけないのか、神官達共々あまり理解してくれる人はいなかった。

 

唯一機械に詳しいサラちゃんも自分の提出したレポートを見ると何故か気絶してしまう始末。そんなに俺の字って汚いのだろうか? ……いや、パソコンで打ち出したモノだからそんな酷いものじゃないはずなんだけど……まぁ、その後意識を取り戻してくれたサラちゃんが大巫女様達には自分から言い伝えておくといってくれたし、この事はもう終わりにしよう。

 

その後、お疲れな様子のサラちゃんにお昼の料理を作って午前は終了、その後は自分が前から懸念していたマナの干渉を防ぐ装置の制作を行っていた。

 

マナはエンブリヲが作り出した万能のエネルギー。奴によって生み出されたシステム、この高次元ネットワークは人々の意識に張り巡らされ、これにより向こう側の世界の住人は例外なくエンブリヲの操り人形と化してしまう。

 

流石に世界を跨いでのマナの使用は出来ないのか、現在モモカちゃんとエマ監察官はマナが使えない状態になっている。この二人の状態を利用し、自分はマナの干渉……つまりはエンブリヲの魔の手から二人を守る手段を模索していた。

 

最初はデカいヘルメットのモノ、重くて使い勝手が悪いと酷評を受けていた試作品も何回も改良する事でサイズと性能は変わり、今ではモモカさんはカチューシャ、エマ監察官には帽子レベルにまで至る事に成功した。

 

二人の脳波に干渉する事でマナエネルギーを相殺させ、無効化させる。因みにその干渉させる波というのはドラゴンの叫び声を元にしている。

 

ドラゴンの叫びはマナの流れを乱すという事でナーガちゃんとカナメちゃんの協力の下、一応の完成となったソレは今後の二人を守る防護壁となる事だろう。

 

奴が干渉してくる度に装置が作動する仕組みとなっている為、その時にならないと分からないが、八割の確率で成功すると確信している。何故ならこの技術の出所はこの世界の文献に記されたモノだ。嘗てドラグニウムのエネルギー波を遮断し、無効化させるという当時机上の空論でしかなかった理論を自分なりのアレンジを加えたのが今回完成させた装置だ。机上の空論とはいえ実際はかなり信憑性の高いシステムである為、ある程度の自信は持てる。

 

だが、まだこれだけでは心許ない。エンブリヲの奴を徹底的に追い詰める為にも中途半端に満足せず、追求を続けていこうと思う。

 

 

 

*月α日

 

 今日、少しばかり腹の立つ出来事が起こった。別にアンジュちゃんやサラちゃん達に対して怒っている訳ではない。これは浅はかだった自分に対してと本格的に手段を選ばないエンブリヲに対しての怒りだ。折角ヴィヴィアンちゃんが実の母親と再会出来たというのに、色々台無しである。

 

事の発端は午後、エンブリヲ対策の為に研究室で考え事をしていた時の事、第一中隊のヴィヴィアンちゃんが実はドラゴン側の人間だったという事で彼女の実家に招かれた時が始まりだった。

 

幼い頃に一族と一緒にアルゼナルに侵攻し、その時の戦闘によってはぐれてしまった彼女はアルゼナルでノーマとして働き、今日まで生きていた。まだ幼かった頃のヴィヴィアンちゃんは記憶が定かではなく、この世界に来て当初は彼女の母親であるラミアさんを親として認識出来ないでいた。

 

けれど人懐っこいヴィヴィアンちゃんは本能的にラミアさんを自分に親しい存在だと無意識に理解し、部隊として召集されない限り常に一緒にいる程仲良くなっていた。

 

この分だと親子に戻るのも時間の問題だ。親しげに話をする彼女達に自分も思わず頬を緩ませてしまった時、それは起きた。

 

 自分が体験した経験に基づいた言い方をすれば、アレは多元世界でも現れる時空振動に近しいものだと推測する。突然都に現れる時空の歪み、浸食する様に広がる歪みに呑み込まれる人々を見て、自分は即グランゾンを呼び出し、時空の歪みを押し留める為に行動を開始した。

 

けれど向こうは時空振動にも似た事象だ。迂闊に触れば自分も巻き込まれると判断した自分は如何なる事象にも干渉できる重力、即ちグラビトロンカノンの範囲を限定的に絞り、時空の歪みを押し留めるという選択を取った。

 

BHCで空間そのものを消し飛ばすという手段もあるが、それでは都までもが巻き添えを受けてしまう。せめて皆が避難するまで持ちこたえようとした時、アンジュちゃんとサラちゃんがそれぞれの機体に乗って駆けつけてくれた。

 

そこで彼女達が取った行動は……歌、例の永遠語りという歌を重ねる様に歌い上げる事で本来の力を発揮し、彼女達の機体からそれぞれ収斂時空砲と呼ばれる兵器を用いて時空の歪みを相殺させる事に成功した。

 

 彼女達の活躍により被害は最小限に防げたが、それでもゼロではない。時空の歪みに巻き込まれ、命を落とした者がいる。彼女達の亡骸を葬った際、自分の中で怒りが渦巻いているのが分かった。

 

こんな事をするのはエンブリヲしかいない。そう断言するタスク君は以前にも同じ様な事象に巻き込まれご両親を亡くしたと聞く。

 

えげつない手段を使ってくるエンブリヲに嫌悪感しか湧かないが、今回の件とタスク君の話で奴の目的が少し見えてきた気がする。

 

 あのあと現場を調べると本来この世界にない筈のモノが多数向こうから流れ着いている事が判明した。アンジュちゃん曰くエアリアと呼ばれる競技に用いられる乗り物が紛れ込んでいる事から、恐らく自分の仮説は間違いないと思う。

 

奴……エンブリヲの最終目的は向こう側とこちら側、二つの地球を融合させる事だと思われる。奴が保有するラグナメイルは一機一機が次元に影響を及ぼす収斂時空砲を搭載されていると思われる。

 

奴が作り上げたラグナメイルとドラグニウムをマナとして放出するアウラ、これらを用いて二つの地球を統一し、新たな世界を生み出そうとするのが奴の計画なのだと理解した。

 

融合される際に二つの文明は崩壊し、そこに生きている人々も例外なく抹殺される。破壊と創造、一見すれば確かに神の所業に思えるかもしれないが、実際奴と話している自分としては吐き気のする大量殺戮にしか思えない。

 

今回の一件は奴にとって実験程度にしか思っていないのだろう。だから人を見下しもすれば分かり合おうとする素振りも見せない。結局奴は、自分の都合でしか物事を考えられていない。嘗てのリボンズ=アルマークやグレイス=オコナーの様に。

 

だったらまずは示さなければならない。猿と断じて見下してきた人間の底力というモノを……。

 

次に奴と戦う際は出し惜しみはしない。最悪、向こう側の地球ごと滅ぼすつもりで奴と相対しようと思う。……博士からも賛成を得られたし、遠慮なくいこうと思う。

 

 追記、後から聞いた話だとどうやらラミアさんは無事だった様子。一時期はヴィヴィアンちゃんを庇って危機的状況に陥っていたらしいが、ノーマとドラゴンの皆が手を貸すことによって窮地を脱せたらしい。

 

二人の無事にアンジュちゃん達も胸をホッとなで下ろしていた。

 

 

 




ここの主人公とシュウ博士の微妙に違うところは必要ならば躊躇無く切り札を切る所かなと思っています。

それでは次回もまた見てボッチノシ

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