『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回は日常回


その20

 

 

 

※月o(`ω´*)o日

 

 エンブリヲからのいらぬ攻撃を受けて翌日、被害を受けて亡くなった女性達の亡骸を埋葬した自分はタスク君からエンブリヲを倒す為の方法に付いて聞き出す事に成功した。

 

聞き出す……と言っても、別に脅したりした訳ではない。長年エンブリヲと戦ってきたタスク君の一族なら奴の弱点に何か知っているのではないかと思い、自分なりに必死に訊ねただけである。

 

……まぁ、奴のやり方に内心怒り心頭でついついタスク君を追い詰める様な言い方をしてしまったので今は反省している。聞き出そうとする際に壁を叩いたりして驚かせてしまったり、逃げ場を防いだり端から見れば脅す様に見えてしまった事だと思う。未成年相手に大人げない事をした。この日記を書き終え次第謝りに行こうと思う。

 

 で、そんなタスク君から得られた情報なのだが、結構自分が予想していたモノと一致していた部分か多かった。奴の不死性、殺しても次の瞬間には復活している奴の特性は不確定要素を含んだ質量のある分身……に近いモノだと自分は考えている。

 

量子論の一種とでも言うべきなのか、詳しく話すと長くなるので少し省きながら説明すると……要するに奴の本体が姿を消すことで世界の認識から逃れ、自らを不確定の存在として固定し、何処にでもいて何処にでもいないシュレディンガーの猫状態していると思えばいい。

 

不確定なのに固定とか色々矛盾している理論だとは思うが、奴の不死性を鑑みれば強ち間違いではない事だと思う。奴のあの能力を見ればどうしようもない程の無敵性を有していると思えるが、この仮定が正しいとなると自分達にもまだ勝機があると考えられる。

 

存在を隠しているのであれば何処かに奴の本体ともいえるモノがそこに在る可能性が高い。恐らくは奴は時空位相の異なる所に身を隠しているモノだと推測しているが、この可能性の信憑性は正直五分五分と言った所だろう。

 

何せ奴の能力は時空を操るのだ。所構わず出現し、消えたりするのであれば今頃は誰もが予想できない場所に転移している可能性も充分高い。

 

だから時空に干渉する収斂時空砲なる兵装がアンジュちゃんのヴィルキスやサラちゃんの焔龍號に搭載され、エンブリヲを殺せる武器とされているんだけどね。

 

 もしこの理屈が正しいのなら奴の本体を引きずり出す事もグランゾンならば可能かもしれない。あらゆる事象、物質に干渉できる重力を操るグランゾンなら空間を高重力で歪ませ、奴の本体にまで一気に手が届くかもしれない。

 

問題は奴の本体が何処にあるかなのだが……やはり、あの時奴が乗っていたあのラグナメイルが関係しているのだろうか? それならそれで問題はないのだが、そんな簡単に行くとは思えない。

 

それに残りのラグナメイルの存在も気になる。タスク君の話ではアンジュちゃんのヴィルキスも元々はエンブリヲの下にあった一機を奪った代物らしいし、残る他のラグナメイルは奴の管理下に置かれていると考えた方がいいだろう。

 

奴のラグナメイルが放つ収斂時空砲、咄嗟に撃ち出したとはいえBHCと同等以上の威力を持つ武器、それが向こうにはまだ複数残っている。そう考えればやや此方の戦力に不安が残る所だが、嘆いても仕方がない、最悪自分が全部対処するつもりで相手するしかないだろう。

 

 もうじき奴との最後の戦いが待っていると、多元世界で培った勘がそう囁いている。恐らくはその時は近い、疲れを残しておく訳にもいかないので今日はこれで終わりにしたいと思う。

 

 

 

π月※日

 

 本日未明、向こう側の地球でスパイ活動をしていたリザーディアさんからアウラの所在に関する報告が来た。現在アウラはミスルギ皇国にあるアケノミハシラの地下深くに幽閉されているらしく、今もそこで拘束されている。

 

やはりそうかと自分が納得している一方、大巫女様達は歓喜の表情で盛り上がっていた。これでアウラ奪還の目処が立つ、急いで出撃準備に取り掛かろうとした彼女達を前に……自分は待ったを掛けた。

 

エンブリヲは何でもアリの反則的な奴だ。オマケに奴の性格上此方が攻め入ろうとした所を最悪のタイミングで邪魔してくる可能性もある。まだアルゼナル側の準備が整っていない以上迂闊に攻め込むのは危険だと思われる。

 

 以上の提言を大巫女様達の前で口にした所、返ってきたのは無礼の一言、まぁこれまで自分がしてきた事を考えれば当然の反応なので仕方がないんだけどね。それにいつまた奴のあの時空融合の攻撃が来るか分からない以上、悠長に構える訳にもいかない。その後の大巫女様達とやりとりを経てどうにか二日という時間を戴いた自分は、すぐさまアルゼナルに急行し整備兵であるメイちゃんと共に各パラメイルの整備を行った。

 

他にもアウローラと呼ばれる艦の整備を行ったのだが……いやー、何気に凄いよねあの艦。潜水だけでなくまさか飛行航空艦としても機能を有しているし、珍しい性能を持つアウローラに結構驚いた。

 

けれどこれから必要とされているのは優れた航空機能を有する機体だ。海を渡って行くよりも空を飛んで一直線に目的地に行ける方が今後は必要になってくると思われる為、ジャスミン女史の監修の下、アウローラの改修作業に取り掛かった。

 

元々が優秀な艦だった為にさほど時間は掛けずに作業は終了、改修と言ってもエネルギー供給の効率化とか飛行速度や加速といった所だけなので外見は別段変わった所はない。本当なら試運転でもしてみたい所だが、それをするには時間が限られている為、アウローラの飛行運航はぶっつけ本番となってしまった。

 

時間は掛けなかったとは言っても、手を抜くような事はしないから心配はないと思うけど───いや、訂正。ちょっと不安かもしれない。

 

アウローラの機能変更に付いてカタログスペックをジャスミン女史に確認を込めて拝見させた所、何故か苦笑いで返されてしまった。もしかしたらどこか不安に思える箇所があったかもしれない。

 

ジャスミン女史は何でもないと言っていたが……果たして本当に大丈夫だろうか? もし詰めが甘い所があるのなら明日もう一度アウローラを見た方がいいのかもしれない。

 

勿論他のパラメイルに関してもだ。一応各ライダーの身体能力や癖に合わせて最高の状態に仕上げたと思うが……何分相手が相手だ。油断せずに気を抜かないでいこうと思う。

 

 

 

π月*日

 

 向こう側の地球に攻め込むまであと一日、最後の追い込みという事で自分とメイちゃん達整備班は朝早くから各機体の最終チェックに勤しんでいた。

 

どの機体も全てオールグリーン、ヒルダちゃん達にも確認という事で乗って貰い、それぞれ満足のいく返事を受け、今日のは後の仕上げとなった。その後自分達は最後の戦いに備えて各自心身を休める事に勤め、自由行動に各自思い思いに生活させて上げる事にした。

 

ノーマ側の代理代表格であるジャスミン女史からも許可を貰った事だし、皆それぞれゆっくりと休んでいる中、第一中隊の隊長であるサリアちゃんが自分の所に訪れてきて唐突に自分に頼み込んできた。

 

 ヴィルキスに乗せて欲しい。真剣な表情でそう告げる彼女に対し、自分は何故だと聞き返した。聞く所によるとあの機体……ヴィルキスは本来ならジル司令官から譲り受ける筈だった機体らしく、後からやってきたアンジュちゃんに取られたのだと彼女は言う。

 

……いや、何故それを自分に言う? 俺ってそんな事を許可出来る人間じゃないよね? と、再びサリアちゃんに訊ね返した所、そのジル司令官から自分に聞けと突っぱねられたという。

 

どうやらジル司令官は自分にリベルタスの計画が滅茶苦茶にされた事を根に持っている様だ。まぁ自分がやった事だから仕方がない。とは言え、ヴィルキスはラグナメイルというパラメイルの元となった機体だ。指輪や歌という特殊な制御装置も施されているし、正直サリアちゃんではヴィルキスを十全に扱うのは無理だと思う。

 

無論、これはサリアちゃんに限った話ではない。ヒルダちゃんやクリスちゃん、ロザリーちゃん達にも言える事だ。けれど、今までヴィルキスを乗るのは自分だと思っていたサリアちゃんからすればアンジュちゃんはヴィルキスを自分から奪った盗人にも見えるだろう。この事が後の禍根に繋がる事だと感じた自分はその後、サリアちゃんと納得するまで話し合う事になった。

 

数時間程格納庫で話し合った結果、どうにか理解して貰える事に成功した。サリアちゃんはヴィルキスに乗る事に拘らず、今の機体で頑張ると言ってくれたし、彼女のやる気に応える為にも自分も最大限に……いや、それ以上に頑張っていこうと思う。

 

……それにしても、ジル司令官てばいつまで怒っているのだろうか? 確かに自分も悪いと思うけどもうすぐ最後の戦いが始まるのだ。上の立場に立つのならそろそろ気持ちを切り替えて欲しいのだけれど

 

まぁ、自分が言う事じゃないから放っておくしかないんだけどね。

 




そろそろクロスアンジュ編も終わりが近いですね。

原作の方も相変わらず面白い。個人的に最後に鍵となるのはアンジュのパンツに違いない!(キリッ

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