『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回はあまり進展なし。


その13

 

 

 

α月※日

 

クリスちゃんにソロモンの杖を渡し、変質したソロモンの杖だったモノについて厳しい折檻を受けてから数日、今日も今日とて自分は喫茶店のマスターとして日々働いている。

 

さて、先ずはソロモンの杖───いや、もうソロモンの珠か見た目的に───についてだが、残念な事にその性能は未だ健在、ノイズの発生から操作、自壊に至るまでノイズに関しての扱いなら何でもござれな状態になっている。

 

フィーネを葬る際にBHCでデュランダルやカ・ディンギル、ネフシュタンの鎧もろとも消したと思っていたのに……案外頑丈なモノだ。と、回収した時はそう思った。

 

実は一度、ソロモンの珠の状態を知る為と月を知る為に店が休みの日に合せソロモンの珠の起動実験を月面で行った。ここなら人気もないし、フィーネが言ってたバラルの呪詛なるものを調べられるだろうと思い月面へと降り立ったのだが、その時色々知る事が出来た。

 

先ずはソロモンの珠、当初は自分の所為で形が変質したと思われていたソロモンの珠だが、実はこれフィーネの奴が自分にソロモンの珠を渡さないように計らった最期の抵抗なのではないかと思っている。

 

根拠、と呼べるか怪しいが、何回かソロモンの珠でノイズを出したり自壊させたりを繰り返して気付いた事なのだが、どうやらこのソロモンの珠はノイズを呼び出すというより“ノイズがいる場所に繋げる”様な所、つまり本来これは鍵のような役割を担っているのではないかと思われる。

 

そもそも分かり合えない人類を抹殺しようと先史文明時代の人類が造り出したとされるこの兵器、造り出したという事は当然その兵器をしまう格納庫らしきモノがあるわけで。人類なら誰彼構わず襲う性質を持つノイズ、同士討ちを避けるべくその格納庫を同時期に生み出している筈。

 

しかもその格納庫はただ場所に固定されたモノではなく位相差空間、言うなればノイズと同じ存在を曖昧にし、通常は此方からは干渉できない状態にあるのではないかと自分は考えている。

 

そうなるとあの時、BHCに呑み込まれる直前に自分がやられる事を悟ったフィーネは咄嗟にソロモンの杖を使い、ノイズのいる格納庫の扉を開け、自分の手に渡らないように格納庫の中へと放り込んだ。とも考えられる。

 

杖が珠へと変わったのも当時のノイズと一体化していた状態から無理矢理引き剥がした事による弊害なのだとすると、一応杖が珠へと形状変化した事も頷ける。

 

で、ノイズの格納庫にしまったのはいいが、BHCによる一撃は思いの外強力で、折角閉じられた格納庫の扉も無理矢理開かれ、珠となったソロモンの杖は再びこちら側に戻って来ることになった。というのがソロモンの珠に関する自分の考察である。

 

ただ、一つ気になる事があるとすれば自分の仮説が正しかった場合、その時起こしたフィーネの行動の意味についてだ。もし本当に自分の考えの通りなのだとするならフィーネは何故ソロモンの珠を自分の手に渡らないよう最後に小細工を弄したのだろう?

 

ただ単に自分の手に渡るのが癪なだけ? 確かに追い詰められた人間は時折理解しがたい行動を起こすときがある。だが、相手は先史文明の頃、太古の時代から策略を用いてきた輩だ。何の意味もなしに行動を取るとは思えない。

 

先史文明については自分もまだ分かっていない部分が多いから断言は出来ないが、もしかしたらフィーネは自身が死んだ後も何らかの方法で再生、或いは復活する用意があるのではないだろうか?

 

聖遺物も先史文明についても同様に分からない部分が多い所がある。それに昔は巫女として活躍していたらしいし、今頃案外あの世から復活する算段を立てているのかもしれない。クリスちゃん辺りなら奴の事で知ってる事もありそうだが、クリスちゃんにとってフィーネは幼い頃から共に過ごしてきた…………所謂親代わりのようなモノ、小さな存在ではない筈だ。そんな彼女にいきなり問い質しても教えてくれるとは限らないし、何より傷を抉るような真似はしたくない。

 

そんな訳でフィーネに関する件は今の所保留の状態だ。そして月の件に関する話だが…………正直、此方も詳しいことは分かっていない。ハッキリした事があるとするなら、この世界にある月は自分の知る月とは全くの別物と言うことだ。

 

遺跡、強いていうならそう呼べるあの月はその内部に自分の知るどの言語にも当てはまらない文字(象形文字?)が所狭しと刻まれており、人工的に造られたとされる空洞が幾つも見てとれた。

 

グランゾンのスキャンからそれが遥か太古の時代からの代物で先史文明時代のモノだという事は理解した。どうやらフィーネの語るバラルの呪詛云々の話はどうやら間違っていないようだ。

 

人工的に造られた呪い、それが現在のあの月ならばどこか別の所に本物の月があるのかもしれない。嘗て多元世界の様に異空間に月が収納されていた様に月も隠されているのではないか、そう思ってグランゾンのスキャニング能力を使い周辺宙域を調べたのだが…………それらしいモノを発見する事は出来なかった。

 

もしかしたらノイズの格納庫を開く鍵がソロモンの杖だった様に、月を隠した場所を開くための鍵───即ち、聖遺物が存在しているのかもしれない。ありそうな場所…………例えば日本が保有する海底神殿にある聖遺物収集所とか、それっぽいのは見付かりそうだ。日本政府には貸しがあるし、今度見てこようかな。

 

そんな訳でソロモンの杖改めソロモンの珠、フィーネの画策や月の呪詛についての話は以上となる。どれも中途半端でモヤモヤ感が残る結果に終わったが、次回調べる際には色々分かってくると思うので今回はこれで終わりにしようと思う。

 

PS.

 

そうそう、この間の戦いの影響の所為で少しばかり月の軌道がズレていたのでついでに直しておいた。いやー、このまま忘れてたら他の国にこの事を知られてしまい“月が地球に落下!”なんて騒がられたりする可能性があったから早々に解決出来て良かった。

 

…………まぁ、気付くまでに少し時間が掛かった為、多分何人かには気付かれたと思うけど、大丈夫だろう。月も元に戻したし、気付いた人も誤作動だと認識を改めるだろうし、うん。特に問題はないな。

 

 

 

α月Σ日

 

今日、響ちゃんの同級生からお誘いがあった。何でも近いうちにこの街で世界的有名なアーティストがやって来てライヴを披露するのだとか。それもツヴァイウィングのコラボレーションで。

 

その事を語る響ちゃんの同級生、板場弓美ちゃん。ハイテンションのままそう語る彼女に圧倒される一方で一緒に来ていた安藤創世ちゃん、寺島詩織ちゃん、そして未来ちゃんにも勧められ、ライヴの日に自分も行くことになった。

 

何で自分が誘われるのか、理由を訊ねた所、自分は彼女達と同じシンフォギアについて多少なりとも関わった間柄、ツヴァイウィングの二人からライヴのお誘いもあったしこれを機会に親睦を深めよう。というのだ。

 

まぁ、その後に弓美ちゃんが呟いた保護者枠と言うのが正しい所なのだろう。ライヴ時間は結構あるだろうし、終わる頃には夜も深くなっている頃合いだ。年頃の女の子を夜道の中出歩かせるのも気が引けるし、自分も奏ちゃんからのお誘いを無下にする事も無くなったから別に構わない。

 

で、クリスちゃんにもライヴ一緒にどうかなとバイトに来ている時に誘ってみたのだが、どうやらその日、ちょうど二課の任務が入っている為一緒には来られないのだとか。

 

何とも間が悪い。とぼやきたくもなるが、クリスちゃんが自ら志願した事らしいし、問い質すのも野暮なので無理はしないように軽く小言で済ますだけに留まった。

 

どうやらソロモンの珠に関する任務らしいし、ソロモンの珠に固執するクリスちゃんの事だ。きっと心中穏やかではないだろう。響ちゃんもそんなクリスちゃんが心配で今回の任務で一緒に行くみたいだから大丈夫だと思うけど…………無理だけはしないでほしい。

 

まぁ、話を聞く限り大した任務じゃなさそうだから心配はしてないけどね。上手くいけばライヴに間に合うみたいだし、合流出来る事を楽しみに待っている事にしよう。

 

───それにしてもこのマリア某さん、何でまた急に日本でライヴする事になったんだろ? 日本に何か特別な思い入れがあるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いよいよ、世界最後の舞台の幕が上がるのね」

 

「私達の使命は大きく、そして重い。油断してはなりませんよ」

 

「大丈夫デス! マリアは私達が必ず守るデスよ、だから安心してください」

 

「キリちゃんは少し能天気過ぎ、もう少し緊張感持とう」

 

「いや、眠たそうにしている調に言われたくないデスけど?」

 

(もうすぐだ。もうすぐ僕が英雄になる物語の第一歩が始まる)

 

月軌道の変更、月の落下という空前絶後の大災害を前に一つの小規模な組織が世界に宣戦布告する。

 

───その災害が既に解決されているのは未だしらないままで。




Gが本格的に始まるのは次回。

次回もまた見てボッチノシ

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