『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回、ボッチの過去の一部が明らかになる…………かも?


その15

 

 

@月Γ日

 

“フィーネ” 終わりを意味する名を自称する団体からの宣戦布告から数日、今のところ世間はこれといった混乱に陥らず日々平穏の時を過ごしている。

 

あのライヴの時、あわや二年前の惨劇の繰り返しになるかと思われたが、今回の首謀者であるマリア女史は意外にも人質の解放を許し、自分や未来ちゃん達を含めた全ての観客達を場外に逃がすまでノイズ達に手出しをさせなかった。

 

その後は未来ちゃん達を守ることに意識を割いていたから詳しくは分からないが、どうやら彼女の狙いは翼ちゃんや奏ちゃんにあるらしく、自分達が退場した後、派手にやり合った様だ。

 

世界中に中継されたあの状況でシンフォギアなんて纏えるのか不安だったが、そっちの方は緒川さんが上手くやったらしく、映像中継を断ち、世界中の人々にシンフォギア装者である二人の事を知らされずに済んだみたいだ。

 

その後も合流した響ちゃんとクリスちゃんによってどうにかマリアちゃんを撃退したみたいだけど……いやぁ、彼女達のやることはド派手だね。ライヴ会場から放たれる虹色の光の柱が夜空を穿つように立ち上った所を見た際は乾いた笑みを浮かべたものだ。

 

アレは多分……絶唱の力なのだろう。気になって後日、人気のなくなった時間帯にてグランゾンを出して現場を調べて見たら4つの絶唱が一つに集約された様な非常に高いエネルギー数値が観測された。

 

これも櫻井理論の中にあるシンフォギアに関する確立された技術の一つなのだろう。そうでなければ四人分の絶唱を一つに集約してブッパするなんて自殺行為もいいとこである。

 

尤も、それだけ当時の事態は切迫していたという事なのだろう。戦いという現実の中でその身を晒す彼女達の事だ。その手段を用いた時は少なからず迷った筈。

 

やっぱあの時、自分も出張った方が良かったかなぁ。後先を考えずにグランゾンを出せば取り敢えずその場はどうにか出来ただろうし、以前ソロモンの珠を解析した時、その特性もある程度理解したからノイズを出されても対処する事も可能になったから人的被害を出す心配もなかった。

 

未来ちゃん達を守る為…………ていうのもなんだか彼女達を言い訳にしているみたいで気が引ける。───やっぱ、自分も少しは手助けをするべきかもしれない。

 

それにマリア…………彼女が本当にフィーネだというのなら尚更自分がケリを着けるべきだろう。前の戦いの時に一応葬ったつもりでいたが、まさかここまで早く復活するとは思わなかった。

 

というか、フィーネの復活は何を以て復活としているのか、これもやはり先史文明の成せる業なのだろうか。人格や記憶、所謂魂のみの復活とはいえそんな事まで可能としているなんて先史文明の異端技術は本当にデタラメだ。その内錬金術とか出てこないよな?

 

 

 

@月β日

 

先のテロの時の事も兼ねてバイトに訪れたクリスちゃんに自分も“フィーネ”の探索、捜査に協力しようかと訊ねたら余計なことはするなと怒られた。

 

まぁ、確かに彼女の言う通りだ。世界的有名なアーティストが起こした世紀の宣戦布告、まだそれほど月日が経っていない今の日本の世情は混沌としている。唯でさえ情報が錯綜としている中、唐突な第三者からの情報提供はかえって捜査の邪魔になる可能性がある。

 

やはりいつも通りに単独で捜査するしかないか。余計なことはするなと言われたが、だからと言って何もするなとは言われていない。二課には優秀なオペレーターがいると聞く、情報が纏まった際に彼等に送りつけるだけでも意味はあるだろう。

 

彼等も政府を通して蒼のカリスマの存在は聞き及んでいる筈だし、その名を使えば少なくとも無視はされない筈、あとは自分の情報と彼等の情報を照らし合わせれば捜査の効率は格段に良くなる筈。

 

そんな訳で早速マリア=カデンツァヴナ=イヴ、彼女の過去を洗いざらい調べて見たのだが、色々キナ臭い事が判明した。当時、両親のいない彼女は亡き妹と共に米国が保有する聖遺物研究機関“Federal Institutes of Sacrist”通称F.I.S.に所属、レセプターチルドレンとして活動していたとの事。

 

レセプターチルドレン、過去の出来事を基に推察するのならば、恐らくこれは……いや、F.I.S.という組織そのものがフィーネが用意した駒の一つなのではないだろうか。

 

いや、この場合駒というよりも保険という表現が的確か。当時アメリカと通じていた奴はアメリカに聖遺物に関する知識と技術を提供する代わりに一つの組織を設立させる事を要求した。それが米国が保有する聖遺物研究機関F.I.S.の成り立ち。恐らく奴は自分が復活するに足る適合者を探す為にこの組織を用いたのだろう。

 

そして今の自身がしくじった際にその代替え品として用意されたのがレセプターチルドレン。聖遺物研究の環境が整った所で復活すれば色々好都合と言うわけか。

 

流石先史文明の魔女、やることに卒がなくて吐き気がする。なんでよりによってあんなのが俺の婆ちゃんと同じ名前なんだよ。悪意すら感じるぞこの巡り合わせには。

 

まぁ、そんな訳でマリア女史の過去を調べるついでにF.I.S.なる組織とフィーネの狙いに付いて判明したが、一番肝心な事が未だ抜けている。今までフィーネが復活している事を前提に話を進めているが、一体どうやって奴は復活しているのかだ。

 

肉体は完全に消滅している。これは間違いない、肉体という器が滅び魂という中身が次の器を探してさ迷うのか、それとも先史文明の頃より連なるフィーネの血筋が器となり人格や精神ごと乗っ取ってしまうのか。どちらにせよ亡霊と言うことは変わり無い。

 

ここら辺はクリスちゃんが知っている筈なんだけどなぁ。話を聞こうにもなんでそんなことを聞く、なんて質問されたらこっちが困るし、余計なことはするなと言われたばかりだから気が引けるんだよね。

 

べ、別に怒られるのが怖い訳じゃないんだからね。余計な心配をさせたくないだけなんだから勘違いしないでよね!

 

なんて、ツンデレっぽく誤魔化せば目を瞑ってくれないかな…………ないか。

 

寧ろ蜂の巣にされそう。

 

 

 

@月Σ日

 

そう言えば、そろそろクリスちゃんの学院は文化祭の時期か。クリスちゃんああ見えて引っ込み思案だし、遠慮がちな所があるから上手くクラスに溶け込めているだろうか。

 

いや、クリスちゃんの事だ。多分クラスの皆から誘われてもその気質から逃げてしまう事が多いんだろ。どうせ「自分はこんな所にいても良いのだろうか」なんてセンチな事を考えているに違いない。

 

まぁ、クリスちゃんの事は響ちゃんと翼ちゃんに任せよう。同じ学校だし、学年は違っても顔を合わすこと位はあるだろ。

 

それにしても文化祭かぁ、俺もやったなぁ。クラスごと、部活ごとに出し物あって結構楽しかったっけ。

 

…………そういや、一つ面白い部があったっけ。奉仕部だったかな? 俺は行ったこと無いけど、割りと相談出来たり、悩みを解決したりと結構活躍してて時々耳にしたっけ。

 

 




Q.ボッチの学生時代って?

A.腐った目をしたとある男子生徒曰く
「俺も大概ボッチだが、アイツはそれ以上だ。初めて顔を合わせた時、ビビったよ。こんな奴がいるのかって」

「俺が普通のボッチなら、アイツは伝説の超ボッチだ。気分はさながらブロリーに会ったベジータ王子」


奉仕部(ガイルとは言っていない)


次回もまた見てボッチノシ



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