『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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ViVidstrike、面白いですねー。
オルフェンズも二期が始まりましたし、この秋は楽しくなりそうだ。




その22

 

 

β月(・┰・)日

 

あーあ、俺ってばいっつもどこかで何かしらのヘマしてるよなぁ。幾ら一対多数の状況だからって、もう少し周囲に気を配るべきだったか。

 

幸い未来ちゃんは傷一つ無いし、何回か話している内にある程度元気を取り戻している。やはり顔見知りの相手との会話は心の負担というものが幾分か軽減される様だ。

 

その代償に自分の素性も知られてしまったけど……そこはまぁ仕方がない。自分の身位自分でどうにでもなるし、いざとなったらまた日本から出ていけば良い。フラワーの女将さんや商店街の皆には不義理を働く事になるけれど、自分がいる所為で皆に迷惑が及ぶ方が不義理と言える。そうなった時はほとぼとりが冷めた頃合いを見計らって謝りに戻るのも選択の一つだ。

 

尤も、未来ちゃんもクリスちゃんと同様に言いふらす様な子じゃないからそんなに心配は無いけどね。

 

しかし、問題なのは今自分達が置かれている状況だ。連中───いや、ウェルの奴は自分が傷を負って動けない事を良いことに自分の首に爆弾を巻き付けやがった。一見すればお洒落なアクセサリーに見えなくもないが、此方が不審な動きを見せれば即座にボカンとさせる気満々みたいだし、お陰でマトモに動けやしない。

 

オマケに仮面まで奪われてしまう始末。一応まだ自分に利用価値を見出だしている内はいきなり殺されたりはしないだろうが、それでも油断ならない状況なのは変わらない。

 

しかし、何も悪いことばかりではない。仮面を奪われた事により素顔を晒してしまった自分の事を知って貰った切歌ちゃんはあれから自分の所によく顔を出しに来ている。

 

何でも自分の居場所が無くなった事に酷い喪失感を感じているらしい。自分の見張りをと言って連中の所から抜け出して来るみたいだが、実際は部屋の隅に座り込み一日中其処で蹲っているだけだ。

 

────無理もない。無二の親友である調ちゃんがクソッタレなフィーネに肉体を乗っ取られているのだ。親友が本来マリア某に発現すると思われたフィーネの覚醒によって人格ごと塗り潰されたと知れたら、その気持ちの辛さは計り知れないものがある。

 

最初は碌に会話も出来なかった自分達だが、自分の根気強い(しつこいとは言わないで)説得と、自分のフィーネの魂を調ちゃんから消滅させる方法と作戦を話す内に彼女は自分にも心を開くようになってくれていった。

 

まず、何故塗り潰された筈の調ちゃんの人格…………いや、魂が残っていると思うのか、それは切歌ちゃんから聞かされる話にあった。何でも切歌ちゃんは調ちゃんがフィーネに乗っ取られたと知った最初の内は縋る様に何度も話し掛けていたらしく、それに対し調ちゃん───いや、フィーネはそれを酷く嫌がったらしい。

 

恐らく、まだ調ちゃんの魂をまだ完全に塗り潰せてはいないのだろう。自分という障害を消すのにあの時の奴にとってあの瞬間は絶好の好機の様だったからな。目覚める期間や準備と言うのが足りなかったのだろう。

 

そして、本来なら充分な根を植えて覚醒する筈のフィーネの魂が、中途半端な覚醒によって十全な力を発揮できず、調ちゃんの魂を完全に上書き出来ず、その為彼女の親友である切歌ちゃんの呼び掛けに調ちゃんの魂が引っ張られてしまう。だからフィーネは切歌ちゃんとのやり取りを拒んでいるのかもしれない。

 

勿論、理由はそれだけではない。どうやら切歌ちゃんはフィーネの力の一部を行使出来るらしいのだ。シンフォギアを纏わずバリアを展開出来る所から見ると、多分それもフィーネが調ちゃんを完全に乗っ取れなかった要因になっているのだろう。

 

シンパシー、或いは波長とも言える二人の間にある何か、それがフィーネの力を分散させて弱らせているのであれば、フィーネの魂を調ちゃんから切り離す事も可能かもしれない。

 

推論と推察、そして切歌ちゃんの持つシンフォギアの特徴と本当の使い方を教えていく内に切歌ちゃんはみるみる内にその表情を明るくさせていた。

 

勿論、これは分の悪い賭け、そもそも話した作戦の内容は妄想にも似た机上の空論だ。しかし切歌ちゃんはそんな自分の話を最後まで聞き入れ、最後にはなるようになるデス!と開き直っていた。

 

開き直っちゃダメだろと思うが、現状それしか思い付かないのもまた事実。切歌ちゃんは調ちゃんを守りフィーネに完全に乗っ取られない様に気を付けるように言い付けてしかるべき時が来るまで待つように促した。

 

これで、一つの憂いは消えた。後は自分の事のみだ。幸いにも自分の怪我はナスターシャ教授とマリア某さんの手解きによって最低限の治療は受けている。怪我自体もあの時咄嗟に後ろに下がった事によって直撃であっても致命傷は避けられていた為、全力で動けるようになるまでもうそこまで時間は掛からないだろう。実際、日記を書ける位には回復してるしね。

 

となると、やはり目下問題となるのは首に付けられた首輪と自分と一緒に捕まった未来ちゃんの安否だけ。

 

自分の首輪はどうにかなるが、問題は未来ちゃんだ。昨日から別区画の場所に連れていかれてしまい未来ちゃんの居場所が分からなくなってしまった。

 

切歌ちゃんに訊ねても分からないらしい。どうやらこの大型ヘリ、自分が思っている以上に入り組んでいるようだ。

 

 

下手に今動いても此方が不利になるだけ、よしんば首輪が自力でどうにかなっても、その後に未来ちゃんを人質に取られてしまったら意味がない。

 

やはり、もうしばらく様子を見るべきか。自分の不甲斐なさに情けなくなるが、これ以上事態の悪化は避ける為、今は大人しくする事にした。

 

 

 

β月Ω日

 

ウェルの野郎、マジで許さねぇ。よりにもよって未来ちゃんをシンフォギア装者に無理矢理仕立てあげるとか、頭がイカれているとしか思えない所業だ。

 

確かにリディアン音楽院に集められた生徒はシンフォギアに適する可能性が高いとされてきている。そういう意味では未来ちゃんも響ちゃんや翼ちゃん達と同様にシンフォギアに適する確率は高いのだろう。

 

しかし、だからといって強制的にシンフォギアを纏うのと自らの意思で纏うのとではその意味は大きく変わってくる。ウェルの野郎はそこら辺自信があるようだが、未来ちゃんはなんの訓練も受けていない普通の女の子だ。いずれはシンフォギアの負荷に耐えられなくなり、最悪の場合彼女の肉体は限界を超え、ノイズと同様に自壊…………死に至る事になる。

 

つまり、あのくそ野郎は未来ちゃんを急造品に仕立て上げやがったのだ。代替品ともいう。どちらにしても胸くそ悪くなる話には違いない。未来ちゃんに何を吹き込んで彼女を言い様に操っているのかは知らないが、本当に良い度胸している。

 

まぁ、そんなウェルの悪知恵も響ちゃんのお陰で破られる事になる。神獣鏡(シェンショウジン)と呼ばれる聖遺物は魔を祓う特性を有しており、それによりシンフォギアの能力を著しく低下させ、海中に沈んでいたフロンティアなる古代遺跡を甦らせてしまったが、フロンティアを浮上させる直前、集束されていた神獣鏡の光に飛び込み、以前遭遇した忍者の人によって救助されていた。

 

遠くから眺めていただけで状況は詳しく分からなかったけど、どうやら響ちゃんも何やら事情を抱えているようで、未来ちゃんと戦っている最中ずっと苦しい表情をしていた。極限に高まった神獣鏡の光に自分から呑み込まれていった時は流石に焦ったけど、忍者の人に海面から助け出された時は二人とも特に怪我はなく、未来ちゃんに至っては正気を取り戻した様にも見えた。

 

恐らくは神獣鏡の凶祓いの力が幸となったのだろう。鏡とは本来在りのままの形を映し出すモノとされ、古の時代では祀りの重要な配置にあったとされている。きっと響ちゃんがあの時光に自ら飛び込んだのは未来ちゃんの中にある悪いモノを取り除いてやりたいという一心から生まれた行動なのだろう。

 

響ちゃんもシンフォギアこそ纏えていなかったが、忍者の人に抱えられていた際の表情は穏やかだった。きっと、何かが上手くいったのだろう。

 

さて、これで憂いは取り除かれた。後は自分の目的を果たすのみである。切歌ちゃんも先程ヘリから飛び降りてウェルとフィーネの魔の手から逃れたみたいだし、これで思う存分動くことが出来る。

 

尤も、本格的に動くのはまだ先の話だ。ウェルのクソ野郎が最高潮に調子に乗った所から一気に地獄へ叩き込んでやる。

 

その為に一芝居打つ事になるが……まぁ、あの人ならば適任だろう。二課の司令官であるあの人ならば。

 

待っていろジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス、お前のにやけたその顔に渾身の正拳突き(とっておき)をプレゼントしてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全くこういう無茶は俺の役割だというのに」

 

「帰ったら、キツく叱ってやらなくちゃいけませんね」

 

「あぁ、特大のをくれてやる!」

 

F.I.S.、今はフィーネと名乗る組織の手によって復活を果たした古代遺跡フロンティア。超常なるその力でアメリカの艦隊を全て破壊し尽くした先史文明の遺産は高度を徐々に高く昇り積めていき、今も上昇を続けている。

 

そんな中、二課の司令官である弦十郎と緒川は先の騒ぎで投降してきた切歌と共に先走り、フロンティアへと先んじてしまっていた響の後を追っていた。

 

今の響はシンフォギアを纏えないただの小娘、故に敵に接触する前に早めに連れ戻す必要があるのだが、恐らくは間に合わないだろう。

 

彼女は困っている誰かを見捨てる事のできない人間だ。それが譬え自分と敵対している者であろうと揺らぐことはない。本来なら甘ったれた理想だと断じる話だが、弦十郎はそうは思わない。

 

助けられるものがいるならば、全力で助けに行きたい。響の掲げる人助けは弦十郎にとっても理想だったからだ。だからこそ弦十郎は口では怒っているフリをしているが、内心では嬉しさに満ち溢れていた。

 

自分の弟子が、誰かの為に頑張ってくれる。そう思うだけで弦十郎の口端は自然と緩んでしまっている。

 

しかし、そんな彼の表情も次の瞬間には強張ったモノになる。

 

「────緒川」

 

「了解です」

 

恐らくは隣で運転する部下も気付いているのだろう。目の前の丘から感じられる凄まじい迄の闘気、それに当てられ大粒の汗を額から流しながらも緒川は車を停止させた。

 

現れたのは────蒼、フルフェイスの仮面を被った魔人が弦十郎の前に立ちはだかった。

 

「まさか、お前の方から出てくるとはな。探す手間が省けた」

 

「たまには運動しませんと体が鈍ってしまいますからね。定期的に動かさないとどうも落ち着かない性分でして」

 

「フッ、いいだろう。どちらにしてもお前を倒さなければ進めないのなら、相手をしてやるまでだ。緒川!」

 

「はい! 先行して響さんの後を追い、ウェル博士の身柄を拘束します!」

 

司令の指示に部下である緒川は再び車に乗り込み、下された命令に従うために動き出す。横を通っていく緒川に目もくれず静かに弦十郎を見下ろす蒼のカリスマ、互いに隙を見せられない状況の中、ただ無音だけが二人を包み込んでいく。

 

静まり返る空間、それに反して二人の集中力は極限に高まり────刹那。

 

二人の姿は唐突にかき消え、衝撃によりフロンティアの大地は穿たれた。

 

 

 

 




ボッチの中の人物評。F.I.S.篇。

フィーネ:ま た お 前 か!

切歌:親友を助けるために頑張れ!

調:BBAなんかに負けるな!

ウェル:右ストレートでブッ⚪す。

マム:怪我を治してくれてありがとう。麻婆どうでした?

たやマ:…………良くわからん。


実際、この話ではボッチとマリアはあんまり話してません(笑)

それでは次回もまた見てボッチノシ

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