安眠求めて旅に出たクズが伝説巻き起こす話   作:がしやま

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第11話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今週中に夏油傑はとある田舎に姿を現す……みたいなのを金髪男から聞いた。

 

 どうやら夏油傑含む渦巻高校生たちはこの時期超忙しくて全国規模で色んな所を行ったり来たりしてるとかで、渦巻高校生たちの通う高校に突撃訪問しても夏油傑と会える確率は五分五分とのこと。

 だから例の田舎とやらで待ち伏せしていた方がすれ違いもなく確実なのだとか。

 

 なんか宗教系の学校らしく、じゅじゅつ? のろい? 云々オカルト系のこと言ってた気もするが、そこら辺の話は内容が難しすぎて半分ぐらい聞き流してた。だいじょーぶ、夏油傑に会える場所さえ知れたらそれでよいのだ。

 

 

 

 とりま、目的は決まったから金髪男が教えてくれた田舎へレッツラゴーした俺たち。ゴールも目前だったということもあり気分はさながら遠足を前日に控えた小学生。ギャラドスのおかげでわりと早く到着したということもありしばらく田舎の空気を満喫していた。

 

 いやー、のどかな土地ですねぇ。近くで川とか流れてたよ、水が透き通ってて魚泳いでた。年甲斐もなくはしゃいじゃったよね。

 

 でも羽休めにコダックとコイキングに川遊びさせてたらコイキングが流されてて結構焦った。コイキングになった途端コレだよな……魚のくせに水にも抗えねーのかよ、なんて悲しいポケモンなんだお前は。

 

 

 

 と、色々ありつつも田舎を満喫していた俺たち。

 そんな我らに声をかける田舎特融のコミュ力カンストばーちゃん。初対面なのにあの絡み方は何?出会って速攻背中バシバシ叩いてきたんだけど。俺とアンタは友達デスカ? しかもやけに強く叩いてくるから終始俺の竹刀が疼いたよね。ぶっ殺すぞクソババア。

 

 しかし俺は大人な男だ、我慢してやったさ。ばーちゃんの長ぇお話しに黙って付き合ってやったさ。方言にクセありすぎて何言ってるのか全然わからんかったから途中で危うく眠りかけたが最後までギリギリ寝なかった。偉い、俺。

 

 

 

 そのままばーちゃんの勢いに流されるがまま家に連れてかれて昼食をご馳走してもらった。漬物がうまかった。そして田舎のばーちゃんたちのコミュ力に恐怖した。気付いたら食卓囲んでたよ、心霊現象?

 

 にしても漬物うめっ。魚もうめっ。白ご飯が進むぜ。そういう商売始めれそう。

 そんな調子でクソうめぇばーちゃんのご飯を味わっていると、なんだか外がザワザワ騒がしい。騒ぎ方からしてただ事ではない様子……クマでも出た?

 

 気になってばーちゃんの後に着いて行ってみると、村の住人たちが深刻そうな表情を浮かべながら何かを話し合っていた。井戸端会議にしては少々空気が重い。

 

 何の事話してんだろ、と会話に耳を立ててみるが方言だらけでいまいち内容が頭に入ってこない。

 しかしよーく聞いていたら「変死体」とかいう物騒なワードが……え、変死体?

 

 

 驚きすぎて硬直していたものの、しばらくしたら皆が揃ってゾロゾロどこかへ移動し始めたため遅れて後をつけてみた。その時の俺は危機感より好奇心が勝っていたこともあり、俺にしては珍しく怖がりながらもちょっとノリノリでアイツらの後を追っていた。不謹慎だけどやることなくて暇だったんだもん。

 

 ただやっぱり少し怖かったからコダックを召喚し、護衛としてお供させる。いざとなったら進化させて戦わせるので無問題。

 

 

 ――なんていう考えは、檻の中に閉じ込められた二人の少女を前にすっ飛んだ。秒で俺の想定裏切ってくるの草。

 

 

 俺は静かにターンを決め、スタスタ小屋から出る。

 そのままギャラドス召喚して逃げようとしたらコダックが「コダッ!! コダッ!!!」と必死に引き留めてくる。なんだよお前、こういう時だけマヌケキャラ捨ててんじゃねーよ!

 

 

「バッキャロ! あんな頭クルクルパーのイカレポンチ野郎共とこれ以上関わり合いになってみろ!

 ロクなことにならんぞ!」

 

 

「コダッ! コダッ!!」

 

 

「もうガキ共のことは見なかったことにでもしとけ! 俺らの目的は夏油傑、それ以外は知らん!!」

 

 

「コダァァァァァ!!!!」

 

 

「離せ離せ離せ離せ!!!」

 

 

 絶対関わり合いになりたくない! おもっきし犯罪じゃんこんなん!

 助ける? 無理無理無理無理!! ああいうことする奴らは理由がどうであれ一貫して皆イカレてんの! 頭のネジ外れてんの! 下手したら俺も巻き込まれる!! そんなのやだ!!!!!

 

 

「い、いいか~コダック、大人しくしてたら帰りにお前の好きなササミを買ってやる、な? これで妥協しろ」

 

 

「コダッ!」

 

 

「『いやっ!』じゃねーんだよ大人になれコダック!」

 

 

 聞き分けの悪いコダックを前にとうとう我慢の限界を迎えた俺はポケットからモンスターボールを取り出して最終手段に移る……が、それよりも先にコダック全力の体当たりが俺のみぞおちにクリーンヒット。

 て、てめぇ……!

 

 

体当たりの衝撃でヨロヨロ後ずさる。その際何かにおもっきしぶつかり転倒。

 痛みに耐えながらユラリと立ち上がり、ゆっくりと目を開くと、そこにはマジギレしたオッサンが……うわ、すげーしわ寄ってるよオッサン。そんな怒らんでいいじゃんかぁ、ちょっとぶつかった程度じゃない。ね?

 

 

「『まさか、お前はあの化け物たちの味方をするつもりか!』」

 

 

「『余所者が我らの問題に口出しするな!』」

 

 なになに、なんかめっちゃ怒り始めたんだけどコイツら。ぶつかって押し倒しちゃっただけで色んな人がキレ始めてマジヤバタニエン。騒がし過ぎて最早動物園、なにこのキチガイ村エグすぎ。てかガチやべぇ、鍬クワ持ち始めたよアイツら。

 に、逃げる? 逃げた方がいいよなこれ。うん逃げよ、逃げるしかない逃げろ!!

 

 

 しかしあろうことかコダックは勇敢にも小屋へと立ち向かっていく。やめとけやめとけおい!

 

 慌ててコダックの後を追い、なんとかこれ以上余計なことはさせまいとモンスターボールを構えるが時既に遅く、コダックは牢屋に体当たり。それによりすっかりテンパッてしまった俺はコダックを捕獲するべく勢いに任せて突進するもすんなり躱され、そのまま牢屋を蹴破ってしまう。

 

 やっべ……。

 

 当然ながら住人たちは更にブチギレた様子で騒ぎ出す。

 一気に住人たちの反感を買ってしまった俺はお得意のポーカーフェイスで平然を装いながらもパニックとなり裏では汗がダラッダラ。

 

 だがこのままだとマジでやばいことになると早々に気付き、腹を括る。

 17歳、俺。葛藤の末全面戦争を決意。

 

 心を落ち着かせるために一つ息を吐き、コダックをゴルダックに進化させる。ギャラドスに任せると死人がでるので、ここは加減のできるゴルダックだ。それにこんなクソ展開にしてくれやがりました責任もとらせたい。テメーのケツはテメーで拭えってんだ、自業自得だぜ。

 

 

 フンと鼻を鳴らし、後方からゴルダックの雄姿を眺める。おーおー、派手にやってんな。くれぐれも殺すんじゃねーぞ。

 

 

 

 ……さてと、ゴルダックが頑張ってる間、こっちはこっちでどうするか考えますか。夏油傑が来るまでこの村に滞在しとかにゃならんってのに早速トラブっちゃったよ。どうするべきだと思う、そこの少女たち。田舎のジジババ共が団結したら怖いんだからな、宿とか貸してくんなくなっちゃう。

 

 ずっと俺の背後でビクビク身体を震わせ、怯え続けていたガキ二人に目をやる。すると二人はビクリと肩を揺らす。そんなあからさまに怯えんでもええやんか……。

 ここまで関わっちまったことだし、もう見捨てたりとかなんてしねーよ。

 

 

 

「あ、あのっ……! わたした、ち……皆が言う化物じゃ、ないの……化物は、別でいるの…………だから……!!」

 

 

 

 金髪の女の子が必死でわけわからんことを訴えてくる。そもそもその化物とやらの話を知らんのだが俺は。怖いんだけど。

 とりま知ってるフリでもして適当に相槌打っとくか。いちいち聞き返すのも面倒だし。

 

 

 

「わかってる」

 

 

 

 そう言うと、何故だか二人は目を見開き、宝石みたいなキラキラの眼差しを向けてくる。

 ここの連中情緒大丈夫そ? 本当のこと言っただけでこれって相当だよ、闇が深すぎる。多分カルト宗教とかできたら一瞬で洗脳されて信者になるタイプとみた。この村二度とこない。

 

 でもあの異常者共の相手は全部ゴルダックがやってくれるし、俺はガキ共に寄り添ってる体ていで高みの見物決めと――

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

 ズプン、と足元が沈む。

 さっきまで硬い床だったはずが、気付いたら沼のようにズブズブの液体に変わっている。意味わからん。

 

 

 何が起きた、何故こんなことが……?

 完全に油断しきっていたこともあり反応も遅れた、もう膝下まで沈んでる。何かが俺の両足掴んで引きずり込もうとしてやがる……!

 

 助けたガキ共がどうにか俺を引っ張り上げようとしているものの明らかに力が足りていない、このままじゃ全員道連れ……てかなんだよいきなり! この沼なに!? イカレたジジババ共といいこの現象といい、この村終わってるよ!

 

 

 

 ゴルダックがこちらの異変に気付いてすぐさま助けに向かおうとするものの、急に引きが強くなり俺の視界は一面真っ黒に。くそっ、全身が沈んだ! ガキ共の手は引きずり込まれる直前で離れて道連れは免れたらしい。

 

 うおおおおおお一人で死にたくないいいいいい!!! 手ぇ離すなよ俺を一人にするなあああああ!!!!

 

 

 

 というかここ何!? 息はできる……水ではないようだが、液体のような何かで辺りが満たされている。常に浮遊感があり動きがいつもより鈍くなる。

 あれか? 鬼滅の刃序盤に出てきた女好きの沼鬼みたいな能力か……? 多分これ、ガキ二人が言ってた化物の仕業だよな? こんなタイミングで面倒くせぇ~~~。

 

 

 すぐにポケットを漁り、モンスターボールを構える。

 ここでコイキングを進化させてギャラドスに元凶を倒させるしかねぇ! そうすりゃこっからも出れるだろ!

 いけ、コイキ――

 

 

 

 しかしその直後、腹部に今まで感じたことのないような激痛が走る。思考が一時停止し、ポロリとモンスターボールが手から転げ落ちた。

 おそるおそる目線を下にずらす。

 

 

 ――ま、じかぁ……!

 

 

 何かが突き刺さっている。

 黒い触手のような何かが、俺の腹を貫通しているのだ。うにょうにょタコの足みたいに動いていて気持ち悪い。血がボタボタ尋常じゃない量流れ出ていて、痛みが一向に止まない。

 この血の量……冗談抜きでやばい。

 

 

 クソッ、モンスターボールどこいった! ギャラドスさえ召喚できればどうにかなるってのに……!!

 

 

 痛みに耐えながら必死に暗がりの中を手探りするが空回りばかり。更に焦りも加わり、冷静さが削られていく。もうまともに思考すら回せない。

 

 痛みと不安でみるみるうちに顔が真っ青になっていく。身体が震える、心臓の音が速くなる、鳥肌が立つ。

 

 

 そんな最中、正面から気配を感じて視線を向ける。

 そこには赤い瞳をギラつかせながら舌なめずりをする化物の姿。心臓が片手で握りつぶされているような気分だ。

 

 

 え、ここで、死ぬのか俺…………?

 

 

 途端、背筋がサッと冷たくなり、呼吸が止まる。そして恐怖のあまり頭が真っ白になる。視界に移る赤が、今目の前にあるどうしようもない現実をまざまざと突きつける。

 

 マジか~~~安眠のために頑張ってきたけど、まさかここにきて死ぬの? こんなに頑張ってきたのに?

 やだやだやだやだ、俺死にたくねーよう! 折角今世は投資家になって人生エンジョイしてやろうと思ってたのに! まだハワイの本場ロコモコも食ってねーのに!

 

 ……でも、今回ばかりはちょい無理あるわなぁ…………なんでこんなに呑気なんだろ、俺。一周回って冷静になってんのかもな。笑えねー。

 

 

 ……まあ、死ぬのは初めてではない、前世で一回死んでる。痛いのは嫌だが、気持ち的にはまだ楽なのかもしれない。俺は、誰も知らない死んだその先を知っている。だからちょっと余裕があったりなかったり。

 

 

 なのになんなんだろうな、この感じは。虚無感と絶望感をナニカが上回っている。

 なんだこのやりきれなさは。このモヤモヤ~っとした、うっぜぇナニカは。これは、これは……。

 

 

 

 

 ――――これは、怒りか……?

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