【劇場版】俺のポケットモンスター・ミュウツーの逆襲   作:越谷さん

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プロローグ

 黄昏色の培養液が満たされた、円筒型の巨大培養ポッド。成人男性すら簡単に入ってしまう程巨大な培養ポッドには、近未来的な機械に繋がる大量の管が接続されている。時折下部から気泡が生じると、気泡は脱出を図る様に上部へと浮かんでいった。

 そんな培養ポッドの中に眠る一匹の生命体。人間なのか、はたまたポケモンなのか。自分の体を抱き締めるようにして眠るその生命体は、薄らとその瞳を開けた。

 ――……ここはどこだ。

 培養液の中から外の様子を探る。

 どこかの研究室だろうか。懸命に稼働する多数の機械と、白衣に袖を通した大人達がちらほらと確認できる。なにかを話し合っているようだが、分厚いガラス越しでは聞き取る事は叶わなかった。

 ――……わたしは誰だ。

 視線を自分の掌に向ける。外で会話する人間達とは掛け離れた掌の形。自分がなにかは分からないが、外に居る人間とは別の種族である事は明らかだ。

 彼は真実を知る為、自分の体の内側に秘めていたエネルギーを解き放つ。すると自分を外界と根絶させていたガラスは音を立ててヒビ割れ出し、遂には耐え切れずに崩壊する。床に溢れ出した培養液に、ようやく研究員達は彼の覚醒に気付いた。

「おぉ!」

「遂に目覚めたぞ!」

 散らかったガラスと培養液も余所に、研究員達はどこか喜びを分かち合っているようだ。

「おはよう、ミュウツー」

 そう言って培養ポッドだった物に座り込んでいる彼に、一人の男が歩み寄る。シャープな顔付きに眼鏡を掛けた、老人と言っても差し支えなさそうな男。彼がこの研究所の責任者と考えて間違いなさそうだ。

 ミュウツー、それがこの生命体の名称だろうか。

「世界で最も珍しいと言われるポケモン、ミュウの遺伝子により生み出された最強のポケモン。それがお前だ」

 研究所の壁に飾られた一枚の写真。まだ文明が発達していない頃に描かれたであろう壁画に、男がミュウと呼ぶ生物が描かれていた。

 世界で最も珍しいポケモン、ミュウ。それがこの生命体の父なのか、または母なのか。正解はそうとも言えるし、そうとも言えなかった。

「お前はミュウを基にして我々人間に造られた世界最強のポケモン――ミュウツーなのだ!」

 生命の誕生とは、神の祝福によってもたらされる。この生命体は、その禁忌を犯した目の前の人間達によって生み出されたという。

 人間達は研究の成功に感動して手を取り合っている。生命体は自分の掌に視線を落とす。彼らとは違う異形の掌。それも当然だ。この生命体はミュウを基に造られたクローン。彼と同じ形で取り合える掌など、この世に存在しないのだ。

 ――……誰が生めと頼んだ。

 自分は世界で孤独だと知った生命体は、腹の奥底が煮えくり返るのを感じる。これが人間の言う、怒りという感情だろう。怒りによって生み出されたエネルギーは、培養ポッドを破壊したそれとは比にならなかった。

 ――誰が造ってくれと願った!

 内側から溢れたエネルギーは衝撃波となり、人間は勿論金属の塊である機械も吹き飛ばす。機械は衝撃によりエラーを起こし、煙を噴いて発火した。

 彼の生まれた意味とは。両親の愛によって生まれた訳でなければ、神の恩恵によって生まれた訳でもない。人間のエゴによって生まれた彼は、一体なにを理由に生きれば良いのだろうか。

 ――私は私を生んだ全てを恨む!

 火の海と化した研究所で、人間達が生命体から逃げようと酷く混乱する。自分達は一体どんな生命を造り出してしまったのかと、今更後悔しているようだ。

 それでも生命体の怒りは鎮まらない。溢れるエネルギーは止まる事を知らず、体内から体外へと解き放たれる。するとエネルギーは計測不可能な衝撃を発生させ、研究所を木っ端微塵に弾き飛ばした。

 

 優しくも荒れた波の音が、耳に聞こえてくる。

 どうやらここは絶海の孤島だったようだ。数瞬まであった筈の機械も、人間も、研究所も、今はどこにもない。ただ一匹の生命体が孤独に立ち尽くしているだけだ。

 これで怒りが鎮まれば、どれだけ楽だった事か。しかし生命体の怒りは鎮まらない。その証拠に、内側から限界を知らないエネルギーが絶える事なく溢れ出していた。

 そして彼は誓った。自分の生まれた意味を。自分の生きる理由を。

 ――だからこれは……攻撃でもなく、宣戦布告でもなく、私を生み出したお前達への、

 ミュウツーによる人間達への、

 ――逆襲だ。

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