『ふぇぇ~~~~~~~~~~~ん!! びぇぇぇ~~~~~~~~~~~!!』
『燐羽がアイドルじゃなくなるなんて、ヤダぁ~~~~~~~~~~!』
『うわぁぁん! ヤダヤダヤダヤダ~! アイドルやめないでぇ~~~!』
恥も外聞も投げ捨てた――言うなれば、子供の癇癪。しかしそれを、高校生がやっているとなると……なんとも、迫力がすごい。
「ふふっ……流石、月村手毬」
思わず、笑ってしまう。僕でも、ここまで子供っぽくわがままを貫き通すことは出来ない。こればかりは、彼女にしか出来ない役目だろう。
随分と拡散されたらしい動画を見ながら、顔を綻ばせる。りんちゃんの困った顔が、愛らしい。動画は一応、保存しておくとしよう。
……それにどうやら、三人で話し合いもしたようだし。
『仕方がないから……もう一度だけ』
『私たちが憧れた……太陽の真似事をしてあげる』
どうやら彼女たちは、りんちゃんからそんな言質を引き出したらしい。……想像以上の成果だ。
りんちゃんに連絡すると、『別に。アイドルやめるのを、ほんの少し……遅らせることにしただけ』なんて、いかにもな返事が返ってくる。……うん、りんちゃんはこうでなくっちゃ。
「彼女に任せて、良かった――」
じゃあ、ここからは、僕の仕事だ。月村手毬のライブ映像を流しながら、思考を彼女に繋げていく。昨日、やっと曲の方が終わったので、ここからは、歌詞を考えていく時間だ。
作詞は好きだ。曲が良ければ、その上にストーリーを載せていくだけで良いから。詞で詰まるときは大抵、曲のほうがダメなのだ。そういう、曲のクオリティチェックの意味合いでも、やはり作詞という作業は、僕の癒しの一つだ。
月村手毬が、ラスサビで全力の大声を張り上げる。息も絶え絶えで、喉が張り裂けそうになるほどだ。……いい。すごく、いい。
彼女なら、僕の曲を任せられる。純粋に、そう思った。
想いを言葉に乗せる。月村手毬の感情を、生き様を、彼女そのものを、僕はただ、文字と音で象ってゆけばいいだけだ。
タンっ、と、心地よいタイピング音が、部屋に響いた。
「順調、好調、絶好調ぉ~」
ありがとう、月村手毬。キミは間違いなく、りんちゃんを連れ戻すのに、必要な要素だった。
そして――ただ連れ戻すんじゃない。アイドル『賀陽燐羽』を、完全な形で取り戻す。あの、拗れてしまった時間を、やり直す。そのための最後のピースは――僕の曲だ。
「……絶対、認めさせてあげるよ――賀陽燐羽……!」