「Hatsuboshi IDOL FESTIVAL――初星学園一のアイドルを決める大祭も、いよいよ終幕の時間と相成った」
あれから、一年が過ぎ。僕たちは高校二年生となった。珍しく、現地でライブを見にきた僕の耳に、拡大された
「我が校が誇る夏の『
あれから、長いようで短い時間を過ごして。……大変だった、と少し振り返って、笑う。昨年度が終わった途端、初星学園に再度編入を果たしたりんちゃんは、破竹の勢いで活動を進めていた。
その活躍の裏には、プロデューサ―の力が大きいだろう。本人は、一人でいい、なんて言っていたが、僕がゴリ押しで付けさせた。
……悪評とポテンシャル。両者を天秤にかけると、若干だけプラスが残ったようで。プロデューサー科の中から、数人のスカウトを受けたらしい。そこから、りんちゃんの判断と、もちろんこの僕との面接を挟み――最も好印象だった者こそが、今の担当の彼である。
「――賀陽燐羽ッ!」
そして、結果が、コレ。流石と言うべきか、なんというか。的確なサポートを受けた彼女は、やはり敵なしだった。数多のライバルを薙ぎ倒し、H.I.Fソロ部門を優勝し――そして、
……ステージに、スポットライトが当てられる。H.I.Fの最後。『一番星』による――賀陽燐羽による、ライブが始まる。
「――アイドル」
「それは、私たちの永遠の憧れ」
「夜空に輝く星のように、大地に咲く花のように」
「みんなの心を熱く震わせて、かなしさをやさしく包み込んで、いつも笑顔にしてくれる」
「そんな素敵な人は――私の前から、消えてしまった」
誰かの台詞を引用しながら、彼女はゆっくりと登壇する。……そして、会場に居る全員の目を見てから、言った。
「――約束をしましょう。初星学園の、全てのアイドルたち」
「私に憧れなさい。私を目標になさい。『
「大丈夫――私はあなたたちを、
僅かに寂しそうに、しかし確かに微笑んで、彼女は――息を、吸った。
「――『Better fly』」
曲がかかる。まだ、僕と彼女しか知らない曲。あの日渡した中にない、最新の――
それは、蝶の曲だった。誰よりも飛ぶのが得意で、だからこそ、飛ぶのを恐れる、蝶の曲。
でも、大丈夫。蝶は一人ではない。蝶はもう、寂しくない。昨日より今日、今日より明日。少しずつ……いや、どんどんと階段を駆け上がるように、高く、飛んでいく。
高く、高く。木々を超えて、空を超えて――太陽すら、超えて。
彼女は笑う。歌に乗せて。そのはにかむような笑顔が、誰の真似事でもない。それは、誰よりも美しくて――愛らしい笑みだった。
……たまには、彼女の傲慢さを見習ってみようと思う。僕のおかげで、彼女は笑えたのだと。僕の力で、彼女はアイドルになったのだと。実際はどうか知らないが。今日だけは、そういうことにしておこう。
ステージの彼女と、目が合う。彼女は僕に、ピースサインを向けて、笑う。……僕はそれに、返事をしない代わりに――小さく、呟いた。
「――ホント、世話が焼けるよね……」
賀陽燐羽世話焼き幼馴染概念 了