青の日   作:アンタンポン

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あの日の私へ

私は、ずっとあの日に囚われて生きてきた。

 

青い空の下、爆音が響いた日。

大人たちの悲鳴と、火の手と、あの焦げた匂い。

手を伸ばしても、もうそこに家族はいなかった。

 

──どうして私だけが、生き残ったの?

 

小さな私は、何度もその問いを繰り返した。繰り返して繰り返して、結局答えなんてどこにもなくて。

誰にぶつければいいのかもわからないまま、ただ、泣いていた。

 

気がついたら、雨が降っていた。

 

気が付いたら、ずぶ濡れのまま、私は人のいない広場に座り込んでいた。

息が苦しくて、辛くて、どこかに行ってしまいたかった。使用人たちは小さな私を気遣ってくれたけれど、それも振り払ってどこかへ。

 

「……これ、あげる」

 

顔を上げたら、そこに、男の子がいた。

歳は、たぶん私と同じくらい。イギリスでは黒髪が珍しかったから、よく覚えている。

その子はこちらを見て、心配そうに笑っていた。

 

彼の手には、青い薔薇のブローチが握られていた。

 

「大丈夫だよ。これ、幸運のおまじないだから」

 

どうしてだろう。

あんなに人が怖かったのに。

誰の声も聞きたくなかったはずなのに。

 

私は、そのときだけは、素直に受け取ることができた。

 

その子が去ったあとも、私はずっと青い薔薇のブローチを握りしめていた。

 

──ありがとう。

 

そう言えたのは、ずっと後だった。

 

***

 

私が強くなろうとしたのは、その子にもう一度会いたかったからなのかもしれない。

 

誰にも負けたくなくて、泣いている自分が許せなくて。

泣く私は、きっと家族を失った、あの日の私で。

だから、私は泣かないように、泣かないように、泣かないように……強くあろうとした。

 

でも。

 

──貴方は、私の前で、泣いてもいいって言った。

 

私が、怖いと思って閉じ込めていた感情を、貴方は少しずつ、少しずつ、溶かしていった。

 

あのブローチを渡してくれた子が、彼だったと気づいたとき、私は、どうしてこんなに時間がかかったんだろうと、悔しくて仕方がなかった。

 

もしかしたら、私はとっくに、貴方に助けられていたのかもしれない。

 

あの日も。

その後も。

ずっと。

 

私は、貴方の隣にいることを、こんなに願っていたんだ。

 

きっと、あの日の私に伝えたら、少しだけ笑うだろう。

 

──ちゃんと、会えたね。

 

***

 

ねえ。

 

貴方は、私の「青い日」なんだよ。

 

悲しいことも、苦しいことも、全部含めて、貴方がいたから、私は歩いてこれた。

 

だから私は、これからも貴方と歩いていきたい。

 

弱い私のままで。

泣いてしまう私のままで。

 

貴方と一緒に。

 

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