六兆年と鬼物語   作:幻月

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多分今まで出一番長くかいたかな~


第五話 白き血の散る夜

 集落の騎馬隊の一人である青年は、一本道をひたすら馬に乗って走っていた。彼は長の息子で、今は他の村へ伝言を届ける為に馬に乗っていた。

 護衛は誰も居ないが、青年の腰につけてある太刀と、背中に背負っている弓矢、そして懐に入っている手紙と、その他水などが彼の持ち物だ。

 馬に乗ってひたすら一本道を走っているが、視界が悪くて襲われてしまえばひとたまりも無い。

「っち。まだなのか…」

 青年は走っている時間と一緒に焦りが込み上げてきた。

 「鬼が逃げ出した。」その言葉を聞いてから胸の鼓動が全く安定してくれない。そして握っている右腕も震えてしまっている。額からは異常すぎる汗が噴出している。

 

 はぁ…はぁ…

 

 普段から馬に乗っていてもここまで体力を消耗したことは一度もなかった。しかし呼吸が整わない。

 青年は一度馬を止めようと考えた馬を止めた。

 

「くそ…。早く帰りてぇ。」

 一度呼吸を整える為に、近くにある水辺により、手のひらを利用して水を一杯飲んだ。

 久しぶりに飲んだ水は、酒よりも美味かった。

 

「あの糞親父が…。あいつが自分で村まで行けば俺は…」

 長の息子である青年は、正直いって親が大嫌いだった。理由は、普段普通の子供は朝から晩まで遊ぶことができた。しかし、彼は違った。 幼少期の頃から、『村の未来の為』と親に言われ、村人の畑を耕す手伝い。付近の地理についての勉強。騎馬隊の訓練など、とても普通とは考えることができなかった。

 

 そんなコトを考えながら、草むらに横になった。

 

 

 

 

 ガササッ。

 

 

 

 

「っちょ!?なんだよ…?なんなんだぁぁぁぁ!!?」

 ちかくのしげみから、音が聞えた。

 

 

 

 

 

 

 ミャァ…

 

 

 

 

 

 

 出てきたのは一匹の白い子猫だ。しかもかなり弱っていて、よくみると後ろ右足を少しだけ引きずっている。それでもかなりの距離を移動してきたのか、毛には泥がたくさんついていて、小さい猫にとってはかなりの重りになっているのだろう。

 しかし青年は、突然出てきたネコを見ると腰に手を当てて刀を抜いた。

「なっ!?あ…焦らせやがって!!!」

 

 

 

 ミャァ…

 

 

 ネコは助けを求めるように小さくないた。

 青年は刀を上段の構えで握ると、ネコに向って刀をふった。

 

 

 

 

 

 

 シュッ

 

 

 

 鉄の刃が空気を切る音が、キレイに聞えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザシュ!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ミャ…ァ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シュッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガハァッ!!!??」

 

 

 

 

 

 

 理解不能。青年の頭の中にはその言葉だけが響いた。背後には誰も居なかったはず。そう考えていても背中の五ヶ所から出血している。

 青年の血は背後から切られて、勢いよく広範囲に飛び散った。着ていた服。自分の髪。自分の皮膚。そして地面に飛び散った血は、数年前に集落を襲った盗賊たちを切ったときの血に似ていた。

 青年は自分の切り殺したネコの死体を見ていた。 小さい猫の切れた部分からはいまだに血が流れていた。白い毛も完全に赤に染まり、もう生きている可能性は微塵もなかった。こんな姿で最後のときを迎えるのは絶対にいやだった。

「あぁ…俺もこんな姿で死ぬのか…」

 生き残る希望も完全に捨てた瞬間、体から力が抜けて地面に倒れた。

 

 ザッザッザ…

 

 そして背後から誰かが近づいてくる気配がした。ゆっくり地面を歩いてと近づいてくる。

(だれなんだ?俺を切ったヤツは?)

 青年は、自分の残っている力を利用して、体を後ろに向ける。

ようやく姿が見えたと思ったら、顔に布のような物を纏っていて素顔は見えなかった。視線をずらして、腰を見た。腰に刀があれば、どのような細工がされているのか拝んでみたかった。しかし、腰には刀も何もなかった。

「…先に手を出したのはお前だ。これから人間は全員死滅する…。」

 声はどうやら男の声らしい。低い音だが、はっきりと聞えた。

 (は? 俺が手を出した? なにに? それに人間が全員死ぬ? そんな話誰が信じる。 それに俺を殺すお前だって人間じゃないのか?)

「俺たちは【特異な存在】。見た目は人間でも、貴様ら塵とは違う存在。」

 (特異な存在だと?どう見てもにんげ…!!?)

 青年が気になったことがある。気になったのはどうやって五ヶ所もきったかだ。

「お前の持っている手紙…。村に届けてやるよ。」

(手紙…?あぁ俺が糞親父にもらった最後の物か。)

 

「んじゃ。死ね。」

 「!!」

 青年は最後の最後でありえないものを見た。命乞いもする気は無い。だが、青年は驚愕した。

 男の右手、いや、爪が五本同時に伸びた。爪の長さは、約二尺。そして、五本が全て鉄でできた刀のように鋭利で、月が反射するほど美しかった。

 男の振りかざした爪は月光で鮮やかな軌跡を描いて、青年を切りつけた。嫌な音と血が同時にあたりに広がった。

 

ザシュッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 今さっき、ボクは目の前に居る女性、天狗に驚くことを言った。それは、「今夜山の祠に同士──【特異な存在】が集まる」という信じがたいことだった。

 だが、ボクはずっと前から鬼と呼ばれてきた。それが【特異な存在】なのか、はっきりとはわからない。

 疑問を考えるれば考えるほど自分の胸が痛くなるような感じた。

 そして、決定的な疑問は何故ボクは人間に捕まっていたことに気がついたかだ。天狗はさっき、「風の噂」と言っていた。それが、天狗の能力なのか、それとも人間に化けてあの小屋の中を出入りしていたのか、はっきりとはしなかった。

「まぁ落ち着けよ。お前は私たちの同士とさっきから言ってるだろ?」

「違う!!ボクは、同士なんかじゃない。」

「ふぅ…。めんどくさいやつだなぁ…。」

 天狗は、近くにある大きめの石の上にあぐらをかいて座った。

「いいか?お前がどんなに否定したとしても、この世界の法則を超えた【特異な存在】は、見た目は人間でも、人間とは違う。」

「だまれ!!!」

 反射的に叫んでしまった。 この会話が少女に聞かれてしまえば、唯一の大切な人が僕を避けてしまう。それだけは絶対に嫌だ。

「黙らない。お前はこの世界に生まれてまだ9年。だが、11年前に生まれてきていればお前の考えは私と完全に一致したはずだ。」

 

 11年前…? 

 

 とっさに思考能力を働かせても無駄だった。 何故なら生まれていないからだ。

「なにがあった…?」

「話す必要など無い。」

 少年が、チッ と短くしたうちをすると、天狗はポツリと呟いた。

「お前を信じさせる方法か…。」

 

 数分間の沈黙が続いた。少女は寝てしまったのか、小屋から出てくる気配はなかった。

 

 突如天狗は立ち上がり、ある方向に向った。

 その方向に居たのは、ネコだ。

 しかしそのネコにはいくつかの不快な点があった。なんとそのネコ血がついていた。

 確か、さきほど血だらけの猫を洗ってあげた記憶がある。そして、目つき、毛の色、体格がそっくりだった。

 「ちょ!?そのネコは…」

 少年が叫んでも天狗は無視して、猫の目の前に行くと、かがんだ。

 

「…っ!……。」

 

「会話しているのか…?」

 本来人間と動物は会話することができない。その理由は誰でも知っていて、言語が全く違うからだ。犬なわ ワンッ と鳴くし、他の動物だって同じだ。人間と動物は長い間一緒に居れば、それなりに言うことは聞いてくれるが、せいぜい芸をやらせる程度だ。

 

「おい!!なにを話しているんだ?」

 天狗は、ネコとの会話を一時中断して、こちらを一瞬 ギロッ っと睨んだ。

 その瞬間だけからだが全く動かなくなった。

 

 さらに、小屋の扉が動いた。

 

 ズズズッ…

 

 鈍い音を立てて木製の扉が開いた。

 

「うにゅ…。まだ話をしてるの…?」

 やはり寝ていたらしく、寝起きらしい。

「最悪の状況かもな…」

 少年が誰にも聞えない声で呟いた瞬間、天狗は立ち上がった。

「えっ!?あのネコって…」

 ちょうど天狗に重なって見えてなかったらしく、少年と同じ反応をした。そしてこれで確信した。このネコは、橋に向う途中に血が付いていて、洗ってあげたはずのネコだ。

 

 

 立ち上がった天狗が、かすかに聞える程度の声で、少年に向っていった。

 

「…そこの鬼。お前を鬼だと信じさせてやるよ。」

 これまでに無いずっしりとした重い言葉が、胸に突き刺さった。

 

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