とある村……わかりやすく説明すると少女の住んでいた村に、一通の手紙が届いた。その手紙は血が微量ついており、矢に結び付けられていた。
その内容はいたって簡単に書いてあった。
『我が集落にて、一匹の【鬼】が脱走してしまったのです。このままだと我が村は愚か、近隣の村にまで被害が出てしまいます。 そこで、我が集落に援軍を送っていただけませんか。』
この手紙を読んでいたのは、村の長。この村は、一つの町に等しいほど様々な文化が広がっている。
しかしこの村も今は大変な状況になっていた。
一人の少女の逃走。
さらに逃走した少女は、ただの少女ではなかった。【天性の感】を持っている少女。人々の中には彼女を【巫女】と呼ぶものすらいた。
巫女は、ある神社の中でのみ【天性の感】が使える。─── いや、感というより【予言】だ。この予言により、村は良い方向に進む。そして村は段々と大きくなってきて今に至る。しかし、巫女は予言を昔から嫌っており、村が危ない時(凶作)などの時にしかやってくれない。
村人たちは、村を救ってくれる巫女をありがたくおもっていた。
さて、話を戻そう。
手紙を読んだ長は、迷うことなく手紙を二つに裂いた。周りにいた護衛というか家臣というか、部下は用件を聞かないと悟った。
それも当然と思われた。巫女の逃走は村が危険な状況に落ちたときに、救うための手段が消えてしまうからだ。村が危険になって救う手がなければ村は滅び、村人は死と隣り合わせになってしまう。それだけは駄目だった。
「おい。巫女様の身内に何処に逃走したかきいたか?」
長は、一番近くにいた部下に問う。
「いえ……。いきなり居なくなったと言っております。捜索隊を身内内で出したところ、一度発見したらしいのですが、見失ったらしいです。」
「一度発見しただと……?どこでだ?」
長が身を乗り出すと、部下は落ち着いた口調で答えた。
「先ほど手紙を送ってきた集落に向う道らしいです。あの辺りは一本道なので確かな情報だと……」
そうか。 と短く答えた。
数分間の沈黙が続いた。
集落は、比較的に小さい。酷いい方をすれば、一夜で壊滅まで追い込めるほど村と集落の差がある。だが、村の長は巫女が人質に取られている可能性も零ではないと考えている。
巫女を失うことは、村の壊滅。
そう考えた村の長はついに決断した。
「集落に援軍を出す。鬼などどうでもいい。巫女様を保護したら集落ごと潰す。巫女様は争いは好まないがかまわん。」
同じ部屋にいた部下たちは『御意』と短く返事をして、早足で部屋を出た。村の長は ふう…… と息をつくと、援軍を出す準備を始めた。
(……【鬼】か。それが未だに存在しているなら……。)
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「ボクは認める気は全くない。ボク達はもう行かせてもうらう。」
「だまれよ餓鬼が!! はっきりといってやる。我らの同士が一人、今さっき殺された。 そこにいるネコだって特異な存在だ。」
さきほどまで冷静だった天狗が、人が変わったかのように怒りに満ちている。それも、少年が自分のことを【特異な存在】と認めないからだ。しかし、いきなり『お前は普通の人間とは違う』といわれて、誰が認めるだろうか。
「やってみればいいさ。抜け出せるわけが無い。私の力【無限迷路】は、特殊な力を持っている。我らの山から逃げたいのなら、埃に行くしかない。」
「ふんッ!! そんな子供の考えるような発想に騙されるわけ無い。」
…特異な存在に、特殊な力? ふざけすぎだろ。 自分のことを本来存在しない生物になりたい為にそこまで信じるのか。────まさか何かの宗教なのか? それならなおさら彼女を逃がさないとっ。