六兆年と鬼物語   作:幻月

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第七話 無限迷路の覚り

(くそ!! 抜け出せないだと!? もう何周この祠を通ってるんだ? 彼女だってもうそろそろ、走るは限界なはずだ。早く抜け出さないと……っ!!またかよッ!!)

 

 ボクと、彼女は天狗の言っていた能力を全く信じなかった───というより信じられなかった。しかし、今、ボクと彼女は天狗の言っていた【無限迷路】とかいうふざけすぎな能力によって、山から抜け出せない。そして、どんな方向に走っても山の祠らしいところに着いてしまう。

 

 (一体ボクの何に価値があるんだっ。 こんな能力があるのなら一人でも───いや、その同士とかと一緒にやればいいじゃないか!!)

 

 再び祠に出たので、一時休憩する。ボクだけでなく、彼女も息が上がってしまっている。このままだと森の中でいきなり倒れてしまう可能性もある。幸い祠の近くには湧き水があるため、そこで水を飲んで休めば、いいが正直言って時間が無い。

 目的は、早くこの山を抜けて遠くに行く。これが 駆け落ち とかいうものなのかな? ……そんなことは今はどうでもいいか。

 そんなことを考えていると、彼女は立ち上がり、再び走ろうとする。彼女もよほど走ることが好きなのか、それとも単純に山を抜け出したいのか、ボクを置いて行ってしまった。

 ボクは再び立ち上がると体を伸ばした。

(……ボクの価値ってなんだ? こんな迷路を作れるくらいなら、何も持っていないボクは勝ちなんて無いはずなのに……)

「価値?おおありじゃな。御主は我らに必要なのじゃ。たとえるなら小判が15枚ほどかのぉ。」

 突然ボクの目の前に立っていたのは、小柄の小さい男の子だった。服装は、至って普通の和服に、下駄、首と腰にかけているのは、二個の小さい袋。なにより気になったのは帯に挟めている十露盤だ。

 顔まではなにやら布を巻いていて、はっきり見えない。話し方には違和感を感じる点があるが、多分地域によって言葉が違うのだろう。

「君はだれだ?」

「なんじゃ?御主が先に名乗れば我が後から答えてやるぞ。名前を答えたくなければ、銀貨を一枚ほどじゃ……って御主!!我を無視するでないぞ!!無礼者っ!」

 こういう人は無視したほうが良さそうだな。色々と迷惑そうだし。

「うぅ…無視するでないっ!! 我をを誰だと思っておるのじゃ!!この山に住む【さとりの一族の一員】じゃぞっ。どうじゃ驚いたじゃろ?さぁ泣け!わめけ!そして、金を出せっ!!そうすれば御主をたすけ……って我を無視しゅるなぁ!!」

 無視だ。これ以上関ると嫌な予感がする。てか、【さ……

「…とり族の一員】とか言ってたな。さとりってなんだ?……じゃと?」

「なっ……きみは……」

「……君はなんで僕の心が読める!? じゃと?」

 いきなり現れた【さとり】という少年の事を、頭の中で考え始めた。

「「考えていることがばれている……?そんなことができるのは占い師……いや、ここまで完全に心を読むなんて不可能だ。しかもボクと全く同じ速さで言葉を話すなんて人間にはできるわけが無い。いったい彼は何者なんだよ……。」 じゃと?」

 

 少年は、思考能力が停止した。考えれば心を読まれる───いや、自分と同時に話すことなんて、心を先読みしなければ無理だからだ。そうなれば、心を読まれている者は何もできない。

「ふっ……。御主、随分と考え事が多いようじゃのぉ。まぁ良い。心を読み続けるとめんどくさいうえに、御主じゃ金は出てこない。」

 そうさとりの少年が言うと、顔につけていた布を外して、腰の袋の中から眼帯を取り出し、左目を隠した。

 布をはずした事で、これまで見えなかった顔がはっきりと見えた。黒い髪は、耳を隠す程度まで伸びていて、目は、細めであった。

「そうじゃのぉ。御主は【さとり】について知りたいのかのぉ?御主は頭が悪そうだから、簡単に行って上げるぞ。我らさとりの一族は……って御主!!にげるでないぞぉ!!!我を、無視しゅるなぁ……グスン」

 泣いた……。ないちゃった……。でも無視して彼女を追いかけるか。

 

「グスン……。御主……。我らの計画に参加せんのか……? ズズッ」

 少年はその言葉を聞いて、さとりの少年を見た。 さとりの少年は左目の眼帯を外しており、心を読まれているのだろう。

「そうか参加せんのか……。 ならば、逃げたほうがいいぞぃ。」

「「……君は天狗の仲間じゃないのか?」じゃと? 仲間じゃが、我は御主等を巻き込みたくない。……ほら、彼女が帰ってきたぞぃ。」

 さとりの指を差した方向を見る為に、後ろを向くと、息を切らした彼女が帰ってきた。

「はぁ…はぁ…。でられないよ~。 …えっとそこにいるの誰?」

 

 さとりの存在に気がついたらしい少女は、さとりと軽く挨拶を交わす。 

 

 

 その後、さとりは席を外すと言って、いなくなった。

 さとりも、天狗と同じ特異な存在だ。しかし、それぞれの得意な存在は何かしらの能力を持っている。しかし少年は持っていない。これはもしかすると、自分が特異な存在ではないことをショウメイすることが出来るということなのかもしれない。

 まだ、【3刻】もたっていないのに、数日過ごしている気分だ。これまで過ごしてきた9年間が、ここまで長い時間だったと考えると身震いしたが、逆に、これからの時間がこれまで長いと、9年間の監禁生活の分、楽しく過ごせるのかもしれない。

 

 いずれにせよ、この山を抜けるしかない。そして天狗に会いにいき、自分の存在を証明させたい。

 

 ……ところで天狗は今何をしているのだろう。

 

 ふと考えてみたが、少女と再び出口を探す為に、走り始めた。

 

「あの人だれだったの? 根は優しそうな人だったね。」

 

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