創世神の友創り *強者求むる 作:永射氷
始めに言おう、創世神である。此度の宇宙の。
そして、真の友を探し続けている。ずっと。
別に居なくともかまわないが、居た方がいいじゃないか?
だから、
私の努力が身を結ぶ時は、いつか来るのだろうか?
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シーヘイ王国、大都市カーワ。の、商店街の一角。
古物屋アメワリ。その店主、セクモ・アメワリ。
それが私だ。
「セクモちゃん、早起きだねえ」
「メイナ、君こそ」
只今、朝の5時。空が白み始めたところである。隣の本屋の娘、メイナ・リンはこの時間に起きてくることなど今までなかったのだが。今日はどうしたのだろうか?
「ちょっと遠出するから早めに出発しないといけないの。1週間ぐらいいないかも」
「遠出か、初耳だな。友達なのに教えてくれないとはなんと薄情な」
「もう! 昨日決まったの! 私だってこんなことになるとは思ってなかったんだから!」
これからどうなるかは分からない。しかし、期待はあまりしていない。ごく普通の人間だからね。
「昨日ねー、ウチに来たお客さんが魔導書の鑑定を依頼してきてさあ。父さん見るなりすんごい顔してお客さんに詰め寄っちゃって! それで何があったか知んないけど急に王都に行くことなって!」
「魔導書……なんだか面白そう。そんなヤバいやつなのか? 神の招来の呪文とか書かれてあったり?」
「そーんなワケ! でもそうなら私ワクワクしちゃう! 父さんがあんな焦ってんの滅多にないことだもん」
神。この世界に私以外の神はいる。創ったので。沢山創ったし、沢山ダメになった。勿論、神以外も沢山創ったよ。魔族やら、獣人やら、妖精やらなんやら。人間だって。
色んな種族がいれば、色んな感情が生まれるからね。多様性って、大事だろう?
にしても、本屋の店主が血相変えて王都に持っていくような魔導書か。本当に神の招来呪文が載っていたりして。なんにせよ、こんなイベント逃すわけにはいかないな。
じゃあ、やることあるからまた、と。メイナと別れ、古物屋アメワリの準備を続ける。店の周りの防衛魔法をチェックして、掛け直して。[店主旅行中、帰る日時未定]の看板を表に出して。そして私は王都へ向かった。
本屋の店主、メイトン・リン。彼は国立魔導学園に通い、それなりの成績を収めた優秀者である。魔導の研鑽をやめて久しいが、知識は衰えていない。よって、その魔導書がどういった類のものなのかすぐに理解できた。
「神に関する何らかの情報が書されている……」
「神に関する何らかの……って、何よそれ! もっと具体的に!」
あやふやな言い様に焦れたメイナが父親に説明を要求する。
が、この魔導書は古代の言葉を使われて書かれている上に、迂遠な言い回しを多用している。そして重要でない情報も多分に含まれている。よって、流し読みしただけでは何について書かれているのか杳として知れないのだ。
前置きから始まり、著者の生い立ちや神との出会い、親類縁者の話やらなにやら書き連ねる著者もいれば、大衆に広まることを嫌い、わざと分かりにくい文章でもって読者を苦しめる著者もいる。こういう書物は読みやすいようにはできていないのだ。
なんにせよ、希少で危険なものには違いない。だから、王都にいる研究員のもとへ届けるのだ。
この書の題名は[ハストプルウ]
邪神の名前だ
馬車へ乗り、王都へと向かう。リン一家は馬車と護衛を所有しているため、すぐに出発できたようだ。対して私はそんなもの持っていないので、乗合馬車で我慢するとしよう。やろうと思えば転移できるのだが……さすがにね。
大丈夫だ。到着が遅れても、イベントは見逃さないから。どんな場所でも"視"ることができるので。彼らがどこに行って何をするか、しばらくの間は"視"ていようかな。
にしても、ハストプルウとは。大昔にそんなのいたなあ、今どうしてるんだっけ? いや調べるのはやめておこう。知らないほうが楽しそうだ。
ガタゴトガタゴト、座り心地の悪い椅子の上で揺られながら外を眺める。
「貴女、ちょっとお話しません?」
ふくよかな中年女性に声をかけられる。私の他には5人が座っているが、その全員が私を見ている。にこやかに。
「もちろん、暇ですから。歓迎しますよ。ところであなた方はみなお知り合いで?」
「そうなのよ。私たちね、神様の教えを広めるために王都に出張するところなの。あなたにもぜひ話を聞いてほしいと思って」
「信仰するつもりはないが。話は聞いてみたいですね」
「ええ、急に言われてもって感じよね? 分かるわ。じゃあまずは興味を持ってもらえるような話をしようかしら。実はね、人って死んだら楽園に行けるの」
楽園……ですか。
「人は死後、試練を受ける……ってのが定説よね。もちろん、それは正しいわ。でもね、受けないで済む方法があるの。生前の行動が素晴らしきものであれば、その試練は免除されるのよ。どう? 興味わいてきたでしょう?」
あ──……
そんな考え、広めないでほしいんだが。信じてしまったらどうする。死後に安寧がある……って思って死ぬのと、試練があると思って死ぬのとじゃ、心持が全然違うじゃないか。
はっきり言うが、死後に安寧なんてない。楽園なんてない。事実、試練を設けているのだ。なぜそれが定説として人間たちの間で広まっているかというと、ありとあらゆるところに刻んだからだ。崖の上、遺跡の中、湖の底、砂漠の真ん中。それっぽいところに意味ありげに刻み込んだ。
『努力せよ、鍛えよ。死した後、試練がある。乗り越えねば、消え去るのみ。不屈を持った精神だけに未来がある』
そんな感じの内容を。だってさ、そういうのはっきりさせとかないと勘違いしちゃうだろ? 楽園説とか輪廻転生説とか……無説、別世界へ移行説など様々な考えが乱立するに決まっている。死後に救いを求め、楽観的に考えたくなってしまうものだ。そして……死後に安寧があると信じて生活していた人間が、いざ死んだ後辛く苦しい世界に置かれてしまったら。どうなるかは自明の理だろう。
絶望する。心が折れる。耐えられなくなって消え去ってしまう。
そんな結末は望んでいないのだ。試練があると知っていれば、乗り越えれば未来があると分かっていれば、耐えようと努力できる。耐えきってほしいのだ、私は。
「とても……興味惹かれる内容ですね。その楽園てのは、具体的にどう行動すれば行けるので?」
「神様にお祈りを捧げ、よき行いをすればいけますことよ。そうだ! 王都にある私たちの集会所にきていらして。こんな馬車の中じゃ詳しい話は難しいもの。どうかしら?」
ふむ……行こうかな。新しい場所で新しいものと交流を持つのって楽しいよね。いかにも怪しげな集まりではあるが、それもまた面白い。
ぜひお邪魔させてほしいと女性に言葉を返し、自己紹介をしあう。この女性の名前はハナ・ミレット。王都への布教の第一陣、その隊長に選ばれたらしい。
と、そんな世間話をしている間にメイナ達は王都に着いたみたいだ。いやあ、速いね。朝イチで出発した上、加速の魔法が刻まれた馬車で走ったのだから当然か。こちらは昼出発の乗合馬車に滑り込んだ身だ。客を乗せた馬車は4つに護衛が乗った馬車が2つ、計6台の大所帯。もちろんのこと加速の魔法なんて刻まれていないので進みは遅い。だがこれを逃すと3日後になってしまうのだから文句は言えない。
今は夕方、そろそろ野宿の時間かな。王都に着くのは明後日になるだろう。この退屈な時間も、それを紛らわすための人との交流も、旅の醍醐味である。
ゴウッッッ!
前方、爆音、悲鳴
護衛達の馬車は最前列と最後列に分かれていた。んで、前方にいた護衛は半数死んだようだ。そして、前方へ意識を引き付けてからの後ろからの奇襲により、後方の護衛達も半壊状態。これはどうしたもんかね。
護衛達が弱いと批判するなかれ。ここはそれほど危険な地域ではないのだ。仮にも王都周辺なのだから、賊が出ないよう厳しく取り締まっている。獣除けの魔法や生物感知の魔法、一定以上の速さのものに対しての感知、防衛魔法もちゃんとかかっていた。仕事はしっかりこなしていたと言えるだろう。襲撃者がそれより上だっただけだ。
よし、戦おう! 今まで戦える素振りなど他人に見せてこなかったのだがね。邪神だのなんだの、楽園がどうこうだの、そういったイベントに首突っ込みたいなら一定以上の強さを見せておいた方がいいだろうからさ。
「ああ! 創世神さま! どうかお助けを!」
「「「お助けください!」」」
ああ、今助けようとしてるとこ……え?
なに……今、私に言った?!?!??
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