創世神の友創り *強者求むる 作:永射氷
「ああ! 創世神さま! どうかお助けを!」
「「「お助けください!」」」
え……嘘だろ、私に言った? いやいやそんなはず。自分がこの世を創ったなんて誰かに伝えたことは一度たりともない。だって恥ずかしいジャン! 知られてるわけない、はずなんだが
「創世神クウトチカ様! どうかお助けください!」
「お助けください」「我らに幸運を」「ああ、神様」「クウトチカ様」
あ……違った。全然知らないやつだ。
『え? 私?』って顔で振り向いちゃったよ。手を振られたから振り返したら相手が自分じゃなかった時の気持ちだ。
ま、そりゃそうだ、だれにも言ってないのだからバレるはずがない。つまりはクウトチカってやつが創世神を自称し始めたってことだろうな。それは別にいいよ、好きにやるといい
ポケットから魔道具を取り出す。剣の柄を2個。それぞれに魔力を流し込み、剣身を作る。二刀流だ。サーベルの形に整え、周りの人間へ防御結界を展開してやってから、前方の襲撃者へ向かって一息に突っ込んだ。
斬る。斬る。斬……れない。2人を斬り伏せたが、続く3人目で流れが止まった。身体から30cmほどの距離に魔法障壁、結構固いじゃないか。ただの賊とは思えないな。
「
人の体を吹き飛ばす魔法だ。荒れ狂った風がこちらへ発射された。
魔力操作で風の流れを阻み、誘導し、脇へ反らす。
ノーダメージ
「!?」
驚いている隙に一閃。先ほど攻撃した場所へ、寸分たがわず剣を当てる。当てると同時に当たった部分の魔力を爆発させ、障壁を割る。また一閃。首を取る。
「
「
2人が同時に呪文を唱え、火と風が組み合わさり炎の竜巻ができる。それが私を巻き込まんと大きく、大きく成長する。素晴らしい息の合わせ方だ。この練度、大聖堂すら一瞬のうちに焼け落とせるほど大きく高くできるのだろうな。
障壁を張って魔力を後ろへ放出、体を押し出して無理やり突っ切る……ことは可能だが、周りに引火すると面倒だ。どうせ私が消火する羽目になるだろうし、消しとこうか。
炎の竜巻。それと全く逆の回転の竜巻を作り、それに水を少々混ぜ込む。炎と水、竜巻と竜巻。ぶつかりあい、相殺。水蒸気と風、それらが晴れた先で、地面に倒れこむ襲撃者が2人。生き残った護衛は3人。
前方、クリア
さて後方は、と。
ザン、と矢が通り過ぎる。風を纏った矢だ。矢の周囲を切り裂く魔法がかかっているので余裕をもって避けなければならなかった。2射、3射目が降りそそぐ。すべて避けると、今度は地面から氷が生えた。魔力の動きは把握できていたのでこれも避ける。攻撃、避ける、攻撃、避ける。
「おいバカ! そいつは味方だ! 俺たちを助けてくれた!」
瞬間、攻撃がやむ。今の攻撃は後方の護衛達のものだった。襲撃者を下し、前方へ加勢しようと駆けつけたところにいた、見知らぬ女。この私を襲撃者の仲間だと思い、攻撃を加えてきたわけだな。良かったね、私は君たちの顔を覚えていたので反撃せずにすんだよ。
「え……マジすか? えっ、と…サーセンッ!」「貴女、1番目の馬車に乗ってたお客さんよね? ごめんなさい、手引きしたのかと」「悪い! 本当に! すまんかった!」
「……」
別に全然いいのだけど、呆れてるふりでもしておこう。
「悪かった! 詫びは後でする! とりあえず今は協力してくれ。こいつらをそのままにしておけねえ。拘束魔法をかけて連れていく。こいつらがどういう集団か分かんねえし他に仲間がいるかもしんねえ。急いでここを離れたい!」
「いいだろう、私は探知魔法が得意だ。周囲の警戒にあたる。ほかに何かしてほしいことは?」
「んじゃ客を落ち着かせてやってくれねえか。なんかあったらあんた呼ぶよ」
了解、と返事をして馬車へ戻る。戻るついでに怪我人へ止血の魔法を使ってやった。
「! ……ありがとう」
「貴女! よかった無事で! 剣を持って飛び出した時はほんとに驚いたわぁ」
ハナ・ミレット。神の教えを布教するため王都へ出張するという中年女性。彼女が手を組んで涙ぐんで待っていた。彼女らに簡単に説明をし、慌てず待っているように言いつけて別の馬車へと向かう。同じことをもう3度繰り返し、終わったころにちょうど呼ばれた。
「あんた、ありがとよ。準備は完了した。今から来た道を戻るつもりだ。探知魔法が得意なんだったな、最後尾で警戒しといてくれねえか?」
ま、そりゃ、そうだよな。戻るよな、そりゃ。来た道のほうが安全度は高いし、距離だって近いし。正しい判断だ。けど……面倒くさいなあ。
戻ったら事情聴取が待っているだろうし、いろいろと時間が取られそうだ。こうなりゃ転移すればよかったぜ。
王都に行きたいからここでバイバイする、のは流石に変人すぎだな。こんな襲撃受けておいてなお一人で先に進むのは要らぬ疑念を抱かせそうだ。
あ~あ、なんとかなんないかなあ
なりませんでした。普通に戻ってきました。騎士団へ引き渡し、きっちり事情聴取を受け、感謝を述べられ、謝礼もちょっと貰い、帰宅。
もういいや、走っていこう。転移したいがまあナシだ。バレやしないだろうが、万が一があるからね。長距離転移はできることを知られると国に囲われてしまうのだ。
走ること一昼夜。あっさり王都ミウへ到達した。尖塔が多く建つ硬質な都。魔動力を用いた機構が街全体に通っており、水道や炎道がどの家庭にも引かれている先進都市。砂と植物の汁を混ぜ合わせて作られた軽く頑丈な白壁に、機構に使用される魔力の通りがいい
宿を取り、ちょいと歩いた先でメイナとばったり出会した。もちろん、たまたまではない。いると分かっていたからそちらへ向かったのだ。
「セクモちゃん! 何でいるのぉー!! うそー! もしかして着いてきたな? あ、てか聞いてよ! あの魔導書の話だけどさ、実はすっごいヤバい邪神について書かれてたみたいでさあ!」
会うなりベラベラと喋り出すメイナ。その話、人に言っていいやつなのか? ま、信用されてるってことかな。話が早くて嬉しいよ。
話は一通り聞いた。"視"ていたので知っている内容だったが、疑われないためにも情報共有はしっかりしておかないといけないからね。
昔の伝手を使い研究所へ連絡を取ったメイナの父親メイトン氏。今はやることが終わったと言わんばかりに王都散策に繰り出しているらしい。
「なんか専門のチームで解読するんだって。しかも危険な内容だったら中身は公開されないんだって! 父さんが持っていってあげた本なのに教えて貰えないなんてケチじゃない?」
「まあ、色々あるんだろうさ。邪神ハストプルウ。邪神というくらいなのだから悪いやつなんだろう」
「すーっごく悪いやつだったみたい! なんか、人をね、空中に磔にして餓死するまで眺めたり! 恐ろしい魔物を無理やり世話させて、1番懐いた人を同じ魔物に変えてしまったり! 顔が似てる赤ちゃんを沢山集めて誰が誰の子か分からなくしたり! 他にも変な事いっっぱいしたらしいよ」
「そりゃあ変なやつだな。関わらないに越したことないぜ。魔導書の事はすっぱり忘れて、専門の人に任せようじゃないか」
「もーう! 嘘つきめー、そんなこと思ってないくせにぃー! 面白そうだなー、知りたいなーって顔に書いてあるぞお?」
そりゃね、わざわざ走ってやってくるぐらいには興味あるさ。
さて。それはそうと、どうやって関わろうかね? こっちにも一応伝手はあるし、それを使うか……ううむ。
いや、こうしよう。
「実はなんだが。ハストプルウに関する品物を私が持っている…って言えば、研究チームは食いつくかな?」