事の始まりは中国 軽慶市
〝発光する赤児〟が生まれたというニュースだった!
以降各地で「超常」は発見され、原因も判然としないまま時は流れる。
いつしか「超常」は「日常」に……
「架空」は「現実」に!!!
世界総人口の約八割が何らかの〝特異体質〟である超人社会となった現在!
混乱渦巻く世の中で!
かつて誰もが空想し憧れた一つの職業が脚光を浴びていた!!
突然起こったあまりにも前代未聞なその異変により今までの常識を塗り替えられ、新たな認識が浸透されるようになっていった世界――それでも事が起こるものは起こるのだ。
「げぼげぼ!!……ぉ…!!」
「あ゛ぁあ゛〜ぁ〜!!」
「だ、だず……!!」
――それは天候がすごく荒れた日だった。
そして、ある地では川が流れているが……そこは激しい風を伴った雨が激しく降ったのを受けて流れが激しくなっていた。
そんな川だが、そこには何と――数人の子供達が溺れていた。
そんな危機的状況に気付いた人々ももちろん狼狽えずにはいられなかった。
「こ、子供達が!!」
「た、大変だ!!助けなきゃ――」
「でも、どうやって!?流れが激しいぞ!!これでは助けようにも行けないぞ!!」
そう、子供達を助けたいのは山々だが……その川の流れのあまりな激しさを前に人々は手も足も出られなかった。
もはや〝八方塞がり〟――そんなところに突如その声が響かれる。
「私が行く!!」
「「「!!」」」
その声に人々が驚愕するのをよそにその声の主が勇敢に川に飛び込んだ。
――ショートボブにした青髪で身体の各部に鱗、左右の頬から顎にかけての膨らみの部分にエラ、掌に水かきがある女性であった。
彼女は自身の〝個性〟にものをいわせて子供達を助けようと激流の中を泳いであがいてみせた。
それは確かに機敏な動きを発揮していて、それ故に彼女は子供達を確かに抱えたが……
「…!!(くっ!勢いが激しい!!)」
やはり川の勢いが激しくて彼女でも苦戦せざるを得なかった。このままではおそらく彼女自身も溺れてしまうだろう。
ますます悪化してしまった状況に誰もが焦り、悲観する――その時であった。
――彼が来たのは。
「「「!!」」」
「あれは!」
「!!――来てくれたんだ!!」
その男がその場に姿を現した途端に人々のあれだけ苦悶していた顔も明るくなった。
――それは前髪を角のように二本立てたオールバックの金髪と白黒逆転した強い眼差し、きらりと光る白い歯。筋骨隆々のマッチョボディを誇る大男だった。
なぜかアウトラインと陰影が強調されたアメコミ画風で描かれるような彼の登場が人々に一瞬で希望を灯せた。それもその筈。
「もう大丈夫!」
「何故かっていうと――」
彼こそが――大災害の現場にいきなり颯爽と現れ、1人で1000人以上を救ったという伝説を打ち立てたヒーローなのだから。その名が……
「「「オールマイト!!!」」」
「私が来た!!」
そのヒーロー――オールマイトが早速、獅子奮迅の勢いで動いた事によって子供達と女性が無事に救助された。
「あぁ!!良かった!!」
「怖かったよね!!――もう大丈夫よ!!」
「「「うわぁぁぁん!!」」」
救助された子供達の無事を喜ぶ人々の光景を座り込みながら見て――目を細めて微笑んだ女性のそばにオールマイトが近付いた。
彼がその彼女に対して豪快な笑みを浮かべてサムズアップしながら――その勇気を称賛した。
「君は素晴らしいガッツを持っているね!!君の名は……?」
その問いかけに気付いた女性も明るい笑みを浮かべ――
「ん!おう!この私の名は――」
「爽、遊泳爽!」
●
「……ん、おっと寝てしまったか」
――それはどこかの職場であるが、そこで1人の男性が居眠りから目を覚ました。
彼は――オールマイトである。
ただ、あれから時が過ぎた為にその顔にしわが少し目立つ等歳月を重ねていたのだ。それでもそのゴリゴリマッスルは衰えをみせなかった。
そんな彼は――穏やかに微笑みながら、しかし目が少し潤んでいた。
「……久しぶりだな。彼女の夢を見るなんて……」
そう彼は――自身にとっては大切である女性の夢を久しぶりに見たという事実につい口角が上がった。
そして、窓に顔を向ける。その先の青空を凝視するオールマイトは思いを馳せる……
「爽……君は今、どこで何してるのかな……」
●
――ある地には壮大な建物が設置されていた。
実はそれこそが――学校である。故にそこに受かろうと多くの学生――受験生達が来ていた。どうやらその学校は名門であるらしく、受験生の人数が並外れていた。
そんな人々――の中にはある少年も含まれていた。
「間に合った……」
――緑がかった癖毛とそばかす、大きく丸い目が特徴的な小柄な少年。
彼は〝緑谷出久〟。
それもただの少年ではない――実は何とあのオールマイトから認められ、〝力〟を授かってきたのだ。
「(毛ぇ飲んだだけど本当に授かったんかな……?)」
……といえ、〝力〟を授かったばかりな為に試す時間はなかったようだ。それ故にちゃんと授かったのだろうかと不安に思わずにはいられなかった。
そんな彼――に対して罵声が飛んできた。
「どけデク!!」
その罵声にビクッとする出久はその源に素早く顔を向ける。するとそこには想像通りの人物の姿があった。
「オレの前に立つな!殺すぞ!」
――この少年は〝爆豪勝己〟。
出久の幼なじみである。といえ、彼は出久の事を見下げているようだ。
「お、お早う。がんバ張ろうね。お互ががい……」
そんな勝己と出久が会話――さえにならないものをする。
とにかく、そんな2人に構わずに他の受験生達が歩き進む。
――そして、その中には……黄色いメッシュが入った逆立つ黒髪を後ろで束ねているこめかみ辺りから髪毛が角のように立てている端正な顔立ちの少年の姿もあった。
その名は――一応〝森羅臨頂〟とされている。
――強大な力を秘めている少年である。
「……ハハッ!」
その少年もまた校門を通り敷地内へ足を踏み入れた――その思惑を抱えて、雄英高校ヒーロー科に入学する為に……
――人々はまだ知らない。
――この時に来ている受験生達の中の数人が後に世界、時代を揺るがす者達に成るのを……
――そして、その少年もまたその1人であるのをも……