夢のヒーローアカデミア   作:ZAT23

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狩りの夜

オールマイトが国家中枢の宮殿にて敵を倒した後、この一連の騒ぎに対しての追及が始まるはずだった。

 

首相の関与は間違いなく、途中は明らかに自白までしていた。しかし、高度な記録設備はなく単純な録音では証拠能力は不足するのが現代である。

 

「調査は後日おいでなさい。そんなものじゃ誰も動きませんからね」

 

あまりに横暴な態度を貫く首相だが、それにも一理あった。狩峰淡輝は通信越しに報告されたそんな彼女の態度に何も驚かない。

 

映像や画像のディープフェイクの歴史は古く、2000年代初頭から加速したその技術は150年後の現在もはや人間どころかAIですら判別ができないレベルに達しており、映像や音声だけで物事を判断することの愚かしさは流石に一般常識のレベルに落ち着いている。

 

何を信頼して良いのか誰もわからない。そんな時に一人の天才が改竄不可能な記録方法を提案した。

 

たった一つの冴えたやり方。それがこれだ……

 

トリニティ・レコーディング・システム

 

「三位一体」を意味するTrinityはその名の通り三つの要素で構成されている。

このシステムでは、「複数の視点(ドローン群カメラ)」「時間(膨大なデータ)」「空間(3Dデータ)」という三要素が重要な基本を成している。

 

また各カメラは各地点の音や可視光以外にも赤外線などの電磁波を完全に記録しており、その状況の完璧な保存を可能にしている。それらの整合性をチェックするプログラムを走らせれば完成だ。

 

これがなぜ、未来の改竄困難な方式なのか?それは非常にシンプルだった。

 

データ量が膨大すぎて改竄のコストが見合わないのである。

 

1秒未満で1TB以上に達するそのデータ量は、改竄するものにとっては悪夢のような代物である。高度なAIであっても複数の視点の整合性を完璧に取ることなど不可能であり、どう足掻いても差異が生まれる。

 

ちなみに、この最新技術の記録媒体の見た目が150年前のVHS(ビデオテープ)に似ていることが話題になったりもした。

 

アナログデータとデジタルデータの単純な比較は難しいが、同じ容積に対してかつてのビデオから現在のトリニティデータは153万倍もの記録量を誇っている。技術の進歩ってすごい。

 

その記録には正式なドローン群や膨大なデータの扱いが必要であるため通常の放送などには決して使われないが、政治的科学的に重要な場面での信頼を担保する方式としてこの記録方法は世界に根付いている。

 

 

つまるところ、この世界において単純な記録の証拠能力というのは非常に頼りないものである。

 

首相は当然それを知っているため白を切る。それはいっそ美しいまでの手のひら返しであり、ミッドナイトはひくつく頬を抑えることができなかった。

 

「ありがとうオールマイト。どうやら私は少し動転していたようですね。最愛の弟を助けていただきありがとうございます。その女性化もあのテロリストの個性によって広げられたもの。私の本意ではなかったとご理解くださいね」

 

最強の英雄は揺るぎない。そして多くを語らなかった。

 

「ではこの場の処理もありますので、お引き取り願ってもよろしいでしょうか?ほら、女性がこんなに不安定な場所にいるなんて危険でしょう?」

 

「それは確かに!ではその前にこの女性化を解いてもらえますか?新たな気づきも得られるが、どうにも勝手の違いには私も苦戦させられていますから」

 

どの口で言ってんだという視線を受けながら、オールマイトに触れる首相。

 

「私が直接触れてない場合なら放っておいてもあと一日もすれば戻るはずよ。安心してくださいな。ちなみに別の種の特性にはご興味はなくて?今のあなたなら、猫耳だって似合うかもしれないわぁ」

 

「全世界のファンが解釈違いを起こしてしまうのでね。サービスはキャンセルさせていただこうかな」

 

笑顔で冗談を言う、その透き通るような青い目は笑っていなかった。

さすがにこれ以上抵抗するのはやめましょうかと。首相はこの戦いにおける敗北を認め、小さく舌打ちをしたのだった。

 

 

-・・・ -・-・ --・-- -・--・ 

 

その後、苛烈な捜査がUAIから送られてくると思ったが実際のところは何も起きていない。

どうやら性別の変更は相当に混乱を引き起こしてくれたらしい。受験生にはさすがに配慮をしているのだろう。

 

「もう最っ悪ね。全部ダメじゃない。何がオールフォーワンよ。使えない兵隊よこして偉そうに」

 

爪を噛みながら愚痴るのはもはや熱さが喉元を過ぎ去った故の余裕からだろう。

UAIの人間がいなくなった後、冷房の効かない宮殿で不機嫌な女王が声を荒げている。

 

「ああ、きたない。早く片付けなさいよ。血の一滴も残すんじゃないわよ」

 

「ご報告をさせていただきます。先のテロリストへの襲撃ですが、事実関係が確認できました。襲撃者は個性持ちを中心とした中国人武装組織、約40名です。そのすべてがその……殺されています」

 

「何か言い淀んだわね。報告は正確にしなさいよ。クビにされたいのぉ?」

 

「し、失礼したしました!報告によれば凄惨な状態で、惨殺されているとのことで必要以上の遺体の損壊によって回収などの処理が遅れているようです。その、画像は見ない方がよろしいかと……」

 

「見るわけないでしょ。何よそれ。噂は本当ってわけね?あのハンターとかいう異常者が殺したのはテロリストだけ?」

 

「はい。そのようです。他国での目撃の際にはもっと多くの民間人やヒーローを含む被害が確認されていたため、だいぶ大人しい方ではあります。とはいえ最新の目撃情報は遠くにありますからこの辺りは安全かと」

 

「これで大人しいなんて、いよいよ頭おかしいわね。周辺の警備は放っておいて、ヒーローと兵を首都と宮殿に集中させなさい。オールマイトも理由をつけて近くに居させるか、いや私がUAIランドに入ってもいいわね。見学も兼ねてそうしようかしら」

 

ミャンマーのNo1ヒーローは非常に強力な個性を持った元兵士だ。

あれが警護につくならある程度は安心できる。UAIが寄港してからはずっと近くに控えさせているが先の騒動では表には出さなかった。オールマイトには勝てるわけがないのだから仕方ない。

 

ため息をつき、その苛立ちを何にぶつけようかと無意識に獲物を探し始めた。すぐに目があった新人のメイド。その意味に後から気づき、瞳が絶望に染まっていく。

 

今夜はこいつで遊ぼうかしら。

 

日常へと戻ろうとしたその時に、割れたガラスを勢いよく踏み締めるガシャリという異音に金属の何かがフレームを踏み締める硬質な音が重なった。

 

そこにいた全員が飛び上がり、見上げている。

脳無が打ち上げられて吹き飛ばれて開いた大穴を見れば、そこには人影があった。

 

 

月を背に黒い何かがこちらを見下ろしている。柔らかな逆光に隠されて詳細がわからないのだが、全身が金属の強化装甲服であるのだろう。

 

シルエットだけ見ればツバが広い帽子の両端が上がっているような格好であり、長いコートを身に纏っているようにも見えるそれは、液体が滴る何かを落とした。

 

今まさに綺麗にしていた床へ到達しべちゃりと音がする。

見たくない。見るべきじゃない。それでも誰も目を離せず、そして見ても誰もがそれを理解できない。

 

それは見知った顔だった。

 

「え……?」

 

ミャンマーのNo.1ヒーロー。その剥がされた顔面がそこに落ちている。

人の皮だけが剥がされたそれが、べちゃりと掃除されていた床にへばりつく。

 

「ひっ!」

 

ようやく絞り出した悲鳴によって時間が動き出す。

 

それを落とした元凶も、フラリと落ちてくる。

大きな音を立ててそれが降り立つ。わざわざ落とした顔面を踏みつけるように着地して、血飛沫を無駄に周りへと飛ばした。

 

室内の灯りに照らされてその姿が見える。

 

帽子だと思っていたものは、センサーの類なのだろう未来的な機械と様々な機器が凝縮されていた。コートのように見えたのは堅固な装甲であり、それはつまり全身を覆う強化装甲服ということだ。

 

それを今の世界では何と呼ぶか。つい先ほどここで大暴れしたものもそうだったが、それらの正式名称は『ARMORED』 であり、全身を覆うものは『ARMORED CORE』と呼ばれている。

 

買収騒ぎの折にUAIランドから流出した技術であると言われているが、世界でも技術と財力のあるものたちは積極的に開発している汎用戦力だ。

 

オールマイトの右腕として市民権を得つつあるそれはしかし、あまりに高価であって維持費も恐ろしい程にかかるのだ。だからその高価な兵器を使って神出鬼没な活動をしているヴィランというのはわかりやすい矛盾である。

 

当然ながら日米英が背後にはいるだろうと思われているのだが、それにしては彼に殺された各国の政治家や要人、ヒーローが多すぎるとしてその正体や目的は謎に包まれている。

 

 

けれど、一つだけ確かなことがある。それが現れるのは基本的に夜であり、そして現れた時には必ず血が流れるというものだった。

 

「な……なんであんたがここにいるのよ!」

 

その問いへの回答は銃撃だった。

手に持っていた巨大なリボルバーの如き機械式の銃が構えられ、一切の躊躇いなく引き金が引かれる。

 

パン。という銃声ではなく、ガァン!という衝撃音が耳を打つ。

銃を構えていた衛兵の頭に当たった大口径の銃弾は、銃を構えようとしていた兵隊の頭部を乱雑な肉塊へと変えて後ろに吹き飛ばす。

 

応戦して銃撃をするが、その装甲に弾かれてただ跳弾をするだけだった。

 

狙いをつけて撃つ。狙いをつけて撃つ。この動作を丁寧に繰り返し、無駄な行動を繰り返すだけの兵隊を一人ずつ血飛沫に変えていった。

 

一目散に逃げようとしたのは首相である。彼女だけは異常者の登場による威圧を無視して最短で会場から逃げ出していた。運動不足のせいで大した速度は出ていないが、それでも初動の違いは大きかっただろう。銃弾の雨が降り出す前に彼女は外へと逃げ出せた。

 

 

走る走る。必死に走る。そこから1分もしないうちに銃声が止んだ。その静寂が何より恐ろしい。

 

なぜあれがここに?私を狙っているのか?目的はなんだ?交渉材料は何がある?

 

生きるために必死で材料を集め続ける。どうにかシェルターまで到達し転がり込んだ。

自分も入れてくれと喚く執事を蹴り出して、それを閉め切ったらひとまず安心だ。

 

シェルター内部からは通信機器で指示が出せる。ここから国政を動かすこともできる機能すら備えているため不足はない。監視カメラで状況を把握し、そして指示を出さねば。

 

今は宮殿一階で親衛隊を虐殺しているところのようだった。高い給料を払っているというのに、立ち向かうのは半数もいないようで、逃げた奴らは後で殺すと心に決めた。

 

「お前たちも戦いなさい。オールマイト相手に動けなかったことを飼い主に報告されたくなければね」

 

オールフォーワンから派遣された兵隊は脳無と感染の男だけではなかったが、オールマイトを前にすればいないものと同じような矮小な存在である。隠れていることに最初はこちらも賛成したが、それが飼い主の機嫌を損ねるかどうかは別の問題である。

 

強力な個性を備えた本物の戦闘員たちは、そこらの犯罪者やヴィランとは一線を画すほどの武力がある。

 

覚悟を決めた5名の精鋭が、ハンターへと攻撃を開始した。

 

獣のような足で自在に跳ねる小柄の一人が頭上を取ると、そこで手榴弾を撒き散らす。

 

同時に射撃を加えるのは巨漢の一人であり、グレネードランチャーを両手で発射している。室内で使うのは頭が悪いことこの上ないし文句もあるが、ここに至っては仕方ないだろう。爆炎が敵を包んだ時には、思わずガッツポーズをしてしまった。

 

しかし、凄まじい速さでその煙から出てくるのは動きを鈍らせていない異常者だった。

 

煙と爆発の中でも丁寧に射撃をしているところを見るに、視覚以外にも当然備えているようで催涙効果のあるらしい煙も一切の効果が見られない。

 

動きの速いものはすでに銃撃で殺されており、そして残るのは近距離タイプだ。

 

中に人間が入っているのなら、押し潰せば死ぬのだろう。どれだけ堅牢であっても潰す力には弱いはずだ。巨大なハンマーを振りかざす女と、両手に斧を持った巨漢が迎え撃つ。

 

ハンマー女へと銃口を向けて、そして手に持った槌へと銃撃を加える。

どれほどの衝撃なのだろうか。凄まじい重さと速度の槌が弾かれ、女は体勢を崩して転んでしまう。

 

その隙に、巨漢へと向き直りいつの間にか手に持っていた新たな武器を振るった。

 

「圧縮技術!?実戦で運用できるなんて聞いていないわよぉ!?」

 

その武器はいつの間にか手元に現れたとしか言えなかったが、それが可能であることは知っている。科学の最先端技術を使っているテロリストなんてものは悪夢でしかない。

 

改めて出てきた武器を見れば、それは表現が難しい。なんとも見たことのない武器だった。

複雑な機械であることはわかるが、なんというか折りたたまれた太い弓のような。変な形の何かである。握る場所から遠く、おそらく敵と接触するであろう場所には細かな突起がついている。

 

そこを見れば、やけにハイテクなノコギリのようにも見える。

 

たったの三回。それだけ振るった時に何が起きたか。

 

一度目。右足とともに前に出て振りかぶるハンターは自然体だった。

急に出現したものに驚きつつも巨漢は図体に見合わないほど精細な動きを見せつけ、腕についていた合金性のプロテクターで受けようとする。奴は筋力に優れプロテクターの下の皮膚にも銃弾程度なら弾く鱗が生えているはずだ。

 

なのに、そのノコギリは通過した。

 

腕を通過したとしか表現できない。一切の抵抗なく振り切った後には床に向かって落ちる腕。

 

二度目。続けて振りかぶる。先ほど右上段から振りかぶった勢いのまま、左足で踏み込んで今度は袈裟に振り下ろされる。今度は金属の斧の柄で受けようとしたのだろう。またしても、ノコギリは通過する。

 

長さを失った斧に愕然としている巨漢の隙を、狩人が見過ごすはずもない。

 

三度目。下からの振り上げを行えば、男の体が縦に裂ける。

 

その三回の接触の際、武器が青紫に発光しているように見えたが、あれは溶断でもする機械なのか?

 

 

体勢を立て直し、背後からハンマーで襲いかかる女は口から何かを吐きつけながら突っ込んでいった。何かの個性なのだろう。しかし、いつの間にか持っていたリボルバーのような銃は、さらに巨大な砲に変わっていた。

 

それを至近距離で放たれて、女はのけ反る。おそらくそのままでも死ぬだろう致命傷が入ったとわかるが、狩人は死を曖昧になどしない。右手からノコギリを消してその拳を女の腹に突き入れた。

 

鋭く尖った爪のようなものが出た手が難なく女の体内を進み、複数の臓器をつかんで引き抜いた。まるでそれを浴びるかのように奪い取った狂気の怪物はその赤い塊をカメラに投げつけて映像が途切れる。

 

 

いや、それは目をつぶってしまったからだ。

 

実際のところ映像は途切れてはいないが、ほとんど赤しか画面に写っていない。その赤のフィルターの奥で奴は死体を漁っているようだった。何かを拾って懐の収納へとしまっている。

 

奴が動き出す。それを阻もうとするものはこの付近にはもう一人だっていなかった。

 

『降参よ。交渉をしましょう。あなたの望みは叶えるわぁ』

 

『情報が欲しいの?知っている限り話すから、あなたの目的を少しでも教えて』

 

どんな言葉も交渉も相手に一切の影響を与えない。それはまさに恐怖だった。

 

『聞こえているのよね!?なんで、無視して部屋をくまなく探してんのよ。そんなところに機密を置いてるわけないでしょ。そんな置き物が欲しいならいくらでもあげるから、止まりなさい!』

 

一切の無駄がない戦闘と、無駄だらけの探索というアンバランスさがグロテスクさを際立たせている。これは一体なんなんだ?

 

『あんた、なんなのよぉ!意味わかんないわよぉ!』

 

最後には泣きながら懇願するが、彼はくまなく宮殿を探索し尽くすと、遂にシェルターの前まで到達した。

 

ゆっくりと見上げたそいつと目がった気がして、ヒッと変な声が出る。

 

直後、カメラを銃撃されてそいつの姿は見えなくった。

でも、きっとそこにいるはずだ。

 

ゴゥン。ゴゥン。

 

心臓が飛び出るかと思った。どれほどの衝撃ならここまで音が響くのだろう。狂人が律儀にノックをしている。

 

限界。もう限界だ。あれはきっとここにくる。シェルターなんて意味がない。殺されるに決まってる。

 

気づけば彼女は一人の人間として泣きながら、

 

「もうだめ!助けて!オールマイト!助けてよぉ!ヒーローなんでしょぉ!?」

 

恥も外聞も投げ捨てて、先ほど敗北し心底バカにしていたヒーローに助けを乞う。

そんな通信へ返答が来る前にそれは聞こえ始めてきた。

 

妙な音がする。

何かが壁を削っているような、切っているようなそんな音。

 

通信機を持っていられない。落としてしまった。

 

だんだんと、それが大きくなっている。音が重なるごとに近づいていく。

 

 

祈るようにその扉を見続けるが、妙に高い音が響き始めた。

 

回転する何かが、扉を削っていく音がする。何かは絶えず熱量を与えているようで、こちらから見ても扉が赤熱し火を吹き始めた。

 

やがて回転する刃が見え始める。それがこちらまで届くと、だんだんと下へ亀裂をゆっくり広げてくる。

 

もうだめだ。立てない。私は死ぬんだ。絶望から動けないでそれをただ眺めているだけになっていた。

 

「あんた、ほんとに、なんなの?なんで、あんなガラクタを拾ってるの?」

 

亀裂を広げて、それがシェルターに入ってくる。血と臓物を被った狩人が、むせかえるような生臭く鉄臭い空気とともに入ってくる。

 

一緒に入っていた護衛が狂乱し、銃を撃ちながら突進するとローキックを喰らって足を折られて転がされる。

 

その腕を踏み潰し、もう片方にノコギリを押し付けた。

今度は光らず、通過もしない。ただ突起が皮膚を突き破ってひっぱり、切れ味最悪のノコギリのように苦痛を齎すだけである。

 

その反応をじっと見て、そしてその場で頭を踏み潰す。

 

「なんで、そんな風に殺すの……?」

 

 

これまでと変わらず、一切こちらに反応を示さないで淡々と殺し続ける姿が理解できない。

 

「せめて何か話せ!なんで喋らないのよぉ!」

 

泣きながら、色々と漏らしながら最後の反抗心で叫んだ。

 

すると、ハッとしたように頭を動かし、こちらを注視するような反応を見せた。

ようやくだ。きっと何かを話してくれる。これにはきっと理由があって……

 

「いや、どうなるかなって、気になって」

 

合成音声のように肉声が誤魔化されているが、それでもその本心は伝わった。

 

こいつは純粋に気になってそうしている。残酷な嗜虐心とか、血が好きとか、そういう類の異常者じゃなかった。

 

こうしたらどうなるんだろう。そんな子供のような好奇心にさらされているのだ。

弄ばれる虫のように手足をちぎられ、反応をじっと見るのも妙に納得してしまった。

 

目は見えないのに、虫を見るような視線が自分に向けられた気がする。

 

それ以上、純真で狂った好奇の視線と目を合わせることに絶えきれず、セイン・ミャ・ルイン首相は気を失った。

 

 




所属不明AC『Hunter』の外見イメージはこんな感じ。
あくまで参考なのでご自由にご想像ください。


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