夢のヒーローアカデミア   作:ZAT23

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これにて一章完!
まだまだやっていきますぜ!

まさかのAC狩人様のファンアートをいただきました。よければ見てみてね。
https://x.com/HyugaHayato/status/1967866266917670964


入学

 

「私が、投影された!!」

 

送られてきた封筒に入っていたデバイスが立体映像を映し出し、画角いっぱいでオールマイトの顔面が占有している。筋骨隆々の憧れの塊がこちらへと眩しく微笑みかけていた。

 

実のところ、合格発表までは一瞬たりとも心休まらないドキドキの期間を過ごそうと覚悟していたのだが、その間の鍛錬が疎かになることを狩峰淡輝は見抜いていた。

 

だからある種残酷なことだが、日本に戻り次第、というか帰国の前に耳打ちされてしまったのだ。

 

「当然だけど合格ね。詳細は合格通知で見といて、入学まではちゃんとメニューこなして、親孝行しとけよ〜」

 

「……え? ええええええええ!!!!??」

 

そんな無慈悲な合格通知を非公式に受けたのがミャンマーを出立して一日後である。だからこそ、合格自体には疑問は持っていなかった。持てなかったとも言う。

 

今こうしてオールマイトが私信のように直接語りかけてくれる映像を見て感動して鳥肌が立ちまくっているが、それは予想外だからではなく大好きだからに他ならない。

 

「君の行動は人を動かし、そして多くの人を救った。ヒーローとして文句なし。プロであってもあそこまで動けるものはそういない。いいや、これは私の贔屓目ではないよ。他の教師陣からの評価と現地の方々からのお言葉だから、しっかり受け止めるように」

 

そう言われても、どうにも素直には受け取れない。だって僕は恵まれすぎてる。いっそ卑怯なくらいに幸運で、なんというか、言葉が見つからないくらいだ。

 

「お膳立てされていたからできた?みんなのおかげ?そうだろう。そう言うだろうね。けれど、一人で戦うプロなどいないよ。周囲の手助け上等さ!どういう形であれ、人を助けるお仕事だ!」

 

合格は、わかっていた。わかっていたのに……。

 

「こいよ。緑谷少年。ここが、君のヒーローアカデミアだ」

 

オールマイトにそう言われると、涙が溢れて止まらない。

 

 

多くの助けを得て、僕の人生は変わっていく。

 

四月から()の高校生活が始まる

 

「ところで、君さ。ダントツの主席合格だから、色々期待されると思うけど……ファイトだぞ!」

 

 

「……へえ!?」

 

がんばるんだぞい!とでも言うようにオールマイトが両手を前に、握り拳を揃えて激励を送る。なんかちょっと笑ってない?

 

それでも人よりも秀でるということに一切の耐性がない。全く慣れないけれど、これが自分の選んだ道なのだ。

 

でもこれって……あんまりにも予想外だよ!君の仕掛けなんじゃないのか!狩峰くん!!

 

 

-・・・ -・-・ --・-- -・--・ 

 

 

緑谷出久の雄英高校主席合格。

 

日本に戻ってから入学までの間にそれを通知された緑谷家の荒れようは、それはもう大層なものだったとか。

 

狂喜乱舞、疑心暗鬼、東奔西走、茫然自失。七転八倒。阿鼻叫喚。

 

ご家庭を表現する上で不適切すぎる四字熟語が踊ったようで、あまり深く聞くこともせずその話は打ち切らせていただいた。

 

「次の平和の象徴になるんだろ?そんなマインドでいたら、これからどれだけ良いことしてもお母さん倒れるんじゃね?」

 

スクールカースト底辺マインドがどうにも抜けないようで、緑谷の性格の矯正が間に合うか不安になってきている。これ直るもんなのか?

 

「そうなんだけどね。いやでも信じられなくてさ本当に。僕なんかが……って、ごめん」

 

「そうそう。自分を卑下する暇があるなら、別のことしろよな。世間にどう思われるかのイメージだって重要なんだぜ?平和の象徴になるなら、それだけで犯罪率が変わるんだからさ」

 

緑谷の夢は最高のヒーローになりたいというもの。それはつまりオールマイトに並ぶということだ。

 

それは人々の心の柱になるということで、それどころか平和の象徴なんて機能ですらある。はっきり言って人間には荷が重い。まさに英雄たる生き様である。彼が英雄になることを自分は信じて応援しているし、そう信じるに足る姿をいくつも見てきた。

 

けれど目の前の緑谷はそんな苦難を自分で体験できていない。一部は経験しているのだが、彼の真の輝きは死に間際になるほどに色濃く映し出される。だからこそおいそれと体験させることはできないのだった。端的にいえば鉄火場すぎると死んでしまう。

 

テロリストに出会えば、相手も含めて救おうとしてしまうから会わせることはできないというのが結論だった。

 

とはいえ、ここからが本番だな。

ミャンマーを経て、ワンフォーオールの定着率が急激に上昇したと報告があった。ここからは戦闘でも多少なり無茶をさせることができるだろう。理想に実力が追いついたらできることも増えていく。

 

目の前の友人がそんな地獄のようなデスマーチを計画しているとは夢にも思っていない緑谷は、気さくに質問を続けてくれる。フレンドリーなところ大変申し訳ないがお前の全身の筋繊維をズタズタにするのは確定だ。あと心もね!

 

「そういえば、狩峰君は入試の結果はどうだったの?ヒーロー科には入ったんだよね。どのクラスになったの?」

 

「堂々の最下位一つ上。ビリ回避しての合格だよ。やったぜ」

 

「最下位!!??じゃなくて、一個上か!でもでも、それって流石に無理があるよ!あれだけの活躍、無かったことにできるわけないのに!」

 

はっはっは。友人からの信頼が厚くて嬉しいぜ。だけどこれにはちゃんと理由がある。

 

「なんて言っても俺は受験期間中の無断外出して補導されてるから。減点されても残ってよかった。俺に試験中で襲いかかったのに受かった変な子を除けば実質最下位でしょ。まぁ幸運だったって胸張って言えるよ。周りからはコネ使いまくりの特待生って悪口言われるだろうけどね。実際こねくり回してやるから文句ないぜ」

 

それを聞くと、深刻そうな表情で神妙に聞いてくる。

 

「あの夜だよね?例の、ハンターが出たっていう」

 

ここまで真剣に問いかけるのには相応の理由がある。なぜなら緑谷出久は、俺があの狩人と何か関係があるのではと疑っているのだ。これまでも何度かアリバイがある状態でハンターは出現したが、全てではない。

 

それ以前に淡輝はAC操作の熟練者として彼にも知られている。テストパイロットとして世界でもトップクラスに習熟しており、狩人に関わることも可能だと思われても仕方ない。

 

それでも緑谷が自分を狩人本人とは思っていないのは、狩人の実績が異常であるということに尽きるだろう。

あまりに殺しすぎな上、あのオールマイトの物理的な静止を何度も切り抜けている戦闘能力。起きている間は無個性と同じである狩峰淡輝にはあの強化装甲服を纏っても到底不可能だと彼は知っている。

 

上記の理由から本人とは思っていないだろうが、関係があるとは確信しているはず。だいたい、ACの運用は個人では不可能であり大規模な支援者の存在が不可欠だ。

 

狩峰父子があの狩人のパトロンではないのか?そんな疑問は緑谷だけでなく世界中のメディアからも疑われているが証拠は一切出ていない。真相へと迫った記者は軒並み消えている。相手はヒーローではないというのに、無茶するものが定期的に発生する。だが、分かるよ。秘密は甘いものだからな。

 

「あの狩人のやり方は、間違っていると僕は思うよ」

 

狩峰君はどう思う?と問われている。彼は真っ直ぐにこちらを見て、視線を離さない。コミュ障モードとはえらい違いだ。

 

真剣に向き合ってくれる友人には、本気で返さねばならないだろう。

 

「全く同意見だね。あれは良くない。正しさと真逆の存在だと思う。ヒーローが止めてくれるんじゃないかな。そのうちさ」

 

これはまさに本心だ。あれは必要がなくなれば消える。そういう存在である。

 

「じゃあ!じゃあ、なんで彼を支援する人がいるんだろう。ACの運用は莫大なコストがかかる。世界で一番それにコストをかけている雄英の規模でも、Aクラスの15人分を用意するのが限界だって聞いてたよ」

 

「それなら簡単だ。必要だからだよ。誰かが必要として、それに応える奴がいた。商売っていうか人と人の基本だろ。残念ながら需要と供給がマッチしてるんだなきっと」

 

あまりにシンプルな回答に表情が歪んだ。

 

なんで、どうして、そんなやるせない憤りが渦巻いている。

 

彼の正義感にはあの残忍な殺人鬼を許すという余地はあり得ない。普通の人間なら当たり前だ。

だがしかし、奴が救った人もいるのもまた事実であってそれも彼の思考を加熱させているようだった。

 

知ってしまったら、短絡的な否定の言葉をもう緑谷出久は使えない。

 

本当に悲惨な国の現状を体験してしまった。これまで行っていたアメリカやイギリスなどの治安の悪い地域とは一線を画する世界を直に体験してしまった。2175年現在においてこそ、文明の光が届かぬ第四世界があることを知ってしまったのだ。

 

そこで人間がどんな扱いを受けているのか、そもそも同じ倫理観や正義感で語り合えぬ存在がいることは事実であった。

 

何よりも、あの彼。いや彼女を救ったのはヒーローではなく、あの血に塗れた狩人だったのだ。

狩人もまた、何かを救っているという認め難い事実に向き合うと言葉が出てこない。

 

「それでも、僕はあの狩人がいたらきっと止めると思う」

 

「ああ、それでいい。というかヒーローはそうしなきゃダメだぜ?」

 

どこまでも非合理で甘い、そんな彼の思考を肯定する。捕縛対象の狩人。その関係者の疑惑がある相手にそんな顔で宣言するなんて悪手もいいところだが、それがヒーローというものらしい。

 

「これは勘だけどさ、オールマイトですらあれはきっと止められない。やれるとしたらきっとお前だよ。緑谷。たぶんね」

 

彼の意見は全くもって正しい。全力で受けて立とう。だけれど、こちらにも夢がある。

そうなればあとは、どっちが我を通すか。実力で決めるしかない。

 

今はまだワンフォーオールを使っても、ACと殴り合うことはできないがそれでも出力が10%を超えてくれば戦いにはなるだろう。

 

その光景を脳裏に描き、思わず笑みがこぼれてきてゾッとする。

ああ、これは自分の思考じゃない。狩人の時の感覚だ。

 

ちょっとミャンマーでは狩人として活動する時間が長すぎたかもしれない。あれだけのことをやらかして何気ない顔して日常に戻れると思うなんて、あまりに虫が良すぎただろうか。

 

自分を取り戻す。いつもの自分を。ユーモアを大切にしているこれから雄英に入学する男子高校生を思いだせ。忘れたならもう一度作ればいい。

 

 

なんだか、無性に不安になって愛犬たちに会いたくなった。

 

 

 

-・・・ -・-・ --・-- -・--・ 

 

 

 

入試の結果について語ろう。

評価は主に、顕在的な筆記のスコアと実技のスコア。

 

そして受験者には明かされない評価点である、個性スコアと英雄スコアの合計によって算出される。

 

マイナスの指標は数多くあるため割愛するが、簡単に言ってしまえばこれらを合算したものが評価になって45名の雄英高校ヒーロー科入学を認めるに至った。

 

筆記については実技とセットだ。有言実行をどれだけするのか。しっかりとヒーローというものについて語れるのかを評価される。

 

多く大きく自分を見せて、実技では何もできませんでしたでは話にならない。小さなことでも自分のことを把握して、堅実にやれるものが高得点だ。もちろん大言を吐いて、そして実現させることができればそれがベストではある。

 

実技については、実際どの程度救助に貢献できたのかをサポートAIのマリアと実際に行動を共にした部隊の大人に評価をしてもらう。何ができたのかを、何を救ったのかをベースにした評価している。

 

さて、ここからは非公開のスコアだ。

 

個性スコアについて、これはかなり重視されている。

UAIランドに必要な個性を日米英から集めることも目的の一つであり、個性研究の対象として意義のあるものは優先してUAIランドに入ってもらう。別にヒーロー科でなくても良いのだが、相応の結果さえ残せばヒーロー科へは優先して入れたいとも思っている。

 

この際に、注意している点は単純な強化系の個性は加点が低い。なぜならそれらは、ACで代替可能だからだ。緑谷は現時点で個性加点は少なく、それ以外が高かった。

 

彼は個性に頼らず、自らの力で主席入学を果たしたのだ。もっと誇っていい。

 

判断力と行動力。指示を出すほどの経験に実際助けた人の数。現場で大人の指示にどれだけ従って動けたかというのも加点対象だった。

 

入試結果、TOP15の生徒は以下の並びである。彼らがAクラスとして最も高度な授業を選択できる権利を勝ち取った。

 

緑谷 出久

口田 甲司

黒色 支配

小大 唯

心操 人使

八百万 百

瀬呂 範太

物間 寧人

飯田 天哉

鱗 飛龍

塩崎 茨

骨抜 柔造

蛙吹 梅雨

麗日 お茶子

円場 硬成

 

緑谷はもはや説明不要。こんなのもう学生じゃないよ!はい省略!

 

一見地味な個性だが虫や小動物を扱い、広く捜索ができる口田を筆頭に、対象の捜索などで活躍したものたちが好成績を残している。現地にない貴重な物資を生み出した八百万、それらの物資を小さくして運搬を容易にした小大などは特殊な活躍の仕方をしていた。

 

心操の『洗脳』は子供達を無事に誘導できたし、ある程度中国語が通用するということで言葉で避難誘導をすることができた鱗も評価されている。

 

基本的に、戦闘技能を重視した入試がこれまで行われてきていたが今年からはそこを大きく変える。次世代のヒーローは全身をACに包まれて戦闘をすることになるのだから、殴る蹴る以外の能力が欲しいのだ。

 

今年からヒーロー科はA,B,Cクラスに分かれてHRなどを行うが、授業については大学のように選択科目制を採用している。

支援タイプと戦闘タイプの生徒が同じ授業を受けるなど無駄にしかならないためこのような形を採用した。

 

定期試験でクラス替えを行うことが決まっており、半年後にもう一度試験がある。

成績上位のAクラスを維持すればACを開発してもらえるようになる。最初は四肢だけのアーマードになるが、Aクラスで実績を積めば全身のアーマードコアも作れるだろう。

 

 

入学式までは型破りな入学試験が大いに話題となり賛否両論を巻き起こしていた、そして結果が生徒たちに届き始めると否定的な意見が出始める。

 

他にも多くの有望な個性持ちがいたのになぜと、批判が殺到している。

受かった中には、なぜ自分が受かったのかと本人たちもよくわかっていない者もいるだろう。

 

実際のところそれは事実である。有用な個性や強力で有能な人材は多くいた。

しかし必要なのはそんな個性などではない。強い力や賢さなどは機械やAIでいくらでも代替可能なのだから。

 

本物のヒーローが必要なのだ。紛い物などではなく、敵によって養殖されていた職業人でもない。

神話の如き英雄を生み出すために、この場所を作った。

 

最後のスコア。英雄スコアがそれを評価している。

 

英雄性、それは誰かの危機に見えることが多い。それを試験などの環境で発揮できるものは珍しい。実際に死にかけたり、誰かが死にそうになった時に覚悟をできるかどうかが重要なのだ。

 

自分のキャパシティを超えるポテンシャルがあるかどうか。最初は泣き叫んで逃げようとしても、立ち向かうことができるようになるかどうか。その一点を最も重視してヒーロー科を選抜している。

 

そういう意味で彼らは有望だった。一見心が弱く見えても、窮地にはしっかりと立てる者たち。

個性がヒーロー向きでなくても精神性だけで英雄の可能性を見せてくれた。

 

これは持論だが、人間を、相手を真に知るには仲良くするだけでは情報が不足してしまうと思う。

 

敵対してこそ見えるものもあるのだから。

 

しかし致命的な敵対は取り返しがつかない。だから普通はやらない。でも、もし取り返しがつくのなら?

 

やらない理由はないだろう。

 

『裏ハンター試験』の際にわかったが、入学者の中には敵側の内通者もいた。けれど把握しているなら逆に利用できるのであえて入学してもらう。裏切り者がいるというのも緑谷にとって良い経験になるだろう。

 

入学式を終えてそれぞれがクラスへと分かれていく。

 

主席入学の緑谷は周囲の期待に震えている。

屈辱と挫折を経験しそれでも入学した爆豪はCクラスから登ってもらう。自分とトガちゃんも規則違反でギリギリのCクラスであるので仲良くしてほしい。

 

基本のホームルームは異なるが、緑谷と爆豪は選択授業でよく会うことになるだろう。

ああ、楽しみだ。やっとここから始めることができるんだ。

 

 

今日をもって、夢のヒーローアカデミアが始まった。

 

 




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