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雄英高校の校庭で絶望的な生存競争が行われているとき。
最も殺しに秀で、そしてヒーローを目指し諦めた若者が、師を見送るために殺したとき。
両親を失い、そして踏みとどまらせてくれた友人すら失った英雄が慟哭したとき。
全てをどうにかできるかもしれない。唯一の可能性を持った狩峰淡輝は、同じく全てを救えるかもしれない別の可能性を持つ唯一の存在と対峙している。
すでに曽祖母の存在は確信させることができた。相手が全く反応をしていないのが良い証拠だ。こいつは平常心の時はもっと口数が多い。
「俺一人だったら、お前は逃げ切ることはできただろうな。それくらい、お前のかくれんぼは完璧だった。そんな風に情けなく逃げることがお前にできるとは正直思っていなかったよマジで。ひいばあちゃんの発想とおすすめ作品群を聞くまではな」
思い出すだけで笑えるが、オールフォーワンがこの辺りのコミックを読んでいたとは。
「ジョジョの奇妙な冒険のDIO。NARUTOの大蛇丸。呪術廻戦の宿儺。ジャンプ以外なら、ハリーポッターのヴォルデモートあたりも入れてもいいか。ここら辺のサバイバル術をお前なら再現できるだろうとアドバイスされたんだって?」
友情、努力、勝利。というこいつから最も遠い概念を叩きつけるあたり、ひいばあちゃんは良い性格をしているとしか言いようがない。こいつは絵に描いたようなジャンプの悪役のような存在だろうに。いや、だからこそこの生存術かお似合いだよ。ホントにね。
「極め付けは、デスノートの夜神月だ。条件付けして記憶まで封印できるとなったら、お前はオールマイトとナイトアイが死ぬまでこの世から消えた透明の仮死状態になれる。ほんと、漫画っての発想の宝庫だよな」
目を細め、不快感を滲ませる。それは自身が漫画というものを参考にした誰にも明かさずに終わるはずだったことがバレているからかもしれない。恥じているのなら、可愛らしいところもあるものだ。
「ああ、確かに。でもオールマイトは本当に死んでいるだろう?フェイクなんかに釣られないように、オールマイトには個性で生死がわかるようマーキングしていたんだから。だから結局は、僕は最善の状況で目覚めたと言えるじゃないのかな」
「脅威がこの二人だけだったならそうだが、ナイトアイのおかげで俺がそこにカウントされてなかった。だから俺の勝ちって訳だよ。ジャンプの悪役なら、負けるのが当たり前だろう?その方法の死亡フラグに気付けなかったのは、残念だったな」
「もう一度言うぞ。こうなれば俺の勝ちだ。わかるだろ?俺は嘘をついてない。それくらいはわかるはずだ」
こいつには嘘は通用しない。今時AIですら人が嘘をついていることは見抜いてくるのだ。こちらの精神状態くらい即座にわかるだろう。だから嘘はつかない。
自分の力があるならば、一度発見してしまえばそれに対処するだけである。見つけられなかったり、考え付かなかったりすることはあるが、こうなってしまえば最善まで詰めることができる。
無数の挑戦が許されている自分と、一回きりの相手。どちらが有利などという話ではない。原理的に負けがないのだこっちは。
ただしそれは、必勝を意味するものでもないのだが。
負けが濃厚な状況にこいつがどう反応するか。いくつも予測はできているがこいつは一体何を選択するのかそれが問題だ。
「ああ、そうか。だが、僕に話しかけているということはどうやら。何か僕が必要みたいじゃないか。殺して済むならすでにしているんだろう。話し合いたいのは君の方じゃないのかい?」
ひいばあちゃんの話では、昔はもっと可愛げというか隙だらけだったらしい。つけ入るポイントは多く最善最適とは程遠い、個性とそこからの暴力だけは凄まじいヤンチャ小僧という印象だった。
きっと彼がそのままなら、オールマイトと正面から殴り合って雌雄を決してたでしょうねと自分には想像もできない予想を笑いながら話していたが、人は変わるものらしい。
「ああ、こちらの目的達成のためにお前の協力が必要だ。断るならとりあえず殺す」
「必要だというのに殺すという発言に嘘や矛盾を混ぜていない。つまり、協力させることと殺すことを成立させることのできる能力があるということだ。いくつも考えていた君らの意味不明な能力が、ようやくわかりそうだね」
「さっきまで余裕なさそうだったのに、今はやけに楽しそうだな。勝てると思っているのか?」
「いいや。僕の予想が正しければ、君らには勝てない。それよりも100年来の謎が解けるかもしれないんだ。こんなカタルシスはそうそうないぜ?」
本当に厄介な存在になってくれている。俺を一番多く殺してくれた黒幕だから、こいつの脅威は心身ともに骨の髄まで納得しているがあくまで弱気になってはいけない。こいつには負けないのは事実だから。
「協力してほしいという内容を言いなさい。当然ながら見返りも教えてくれるかな?ああ、驚いているね。単刀直入が過ぎたかな。悪いが僕はこんな風に交渉するのは慣れていないんだ。いつも欲しいものは奪ってきたから、知っているだろう?」
「俺の計画には、お前の個性が必要だ。そのあらゆる個性を扱うことのできる特殊能力も含めて、俺の意思でお前を動かすことができればあらゆる障害をクリアできる」
「僕という存在を知った上での要求がそれ?だけじゃあないだろう。ほら、もっと僕を説得するための情報を出してくれ」
「お前は何がなんでも死にたくない。だから、殺さないでおいてやるってのが有効だろう?」
「まぁ、確かに。そういう結論になってもおかしくはない。僕は全部が欲しいが、当然自分が生きていてこそだ。死んでも何かをしたいなんて、そんな狂った願望は持ち合わせていないよ。それこそオールマイトや弔のような頭のおかしい奴らとは違う」
とても冷静に自分の損得勘定と感情を解説する姿を見て、嫌な予感がやはりする。
「今こうしている間にも君の学友たちは死んでいる。確かめればわかるがこれは事実さ。はは。君は気にしていないようだが、それは一体なぜだろうね。やはりやり直しが効くからか?」
魔王は笑い、まるで推理ものの探偵のような口調でこちらを伺っている。
「もしも、ゲームの主人公のような存在がいるとしたら、どんな挙動になるだろうかとずっと考えていたんだ。5年前に負けてからは特に真剣に検討はした。本来なら100年前のあの女をもっと考察すべきだったと、流石に反省したからね。だがその上でさらに負けた。僕は学んでいたつもりでも愚かなことを繰り返してしまっていたらしい。人間らしくて恥ずかしいよ全く。だから今度こそ、考え尽くしてみたんだ」
ニヤリとその口元が月のように歪む。
「RTAを走ろうとするプレイヤーにとって、どんな要素がもっと嫌だろうね?ランダム性?難易度?いいや、そのどれもが絶対に避けたいものじゃあない。たった一つ。致命的な要素、それは……」
「……試行回数の制限だ」
探偵はこちらの心臓を言い当てる。
そしてそこまで発想が至っているのなら、その対策まで思いつけるだろう。
問題とは問いの不在である。適切な問いが思い付いているのなら、その問題は9割は解決しているというのは誰の格言だっただろうか。
「そんな存在と敵対するかもしれないのなら、こちらが取る戦法は限られる。まだ楽観的な推測を含むから不安だが、もし相手が記憶を継続しているのなら。有効な手段が一つあるんだぜ?」
その通り。それをされるとこちらは手出しができない。今までに無意識にそれをしたのは何名か。オールマイトと緑谷あたりは特にそれが顕著だった。
「絶対のルールを作って決して変更しないこと。これを徹底するだけで、相手の行動を制限できる。都合よく利用されなくて済む。状況によっては人を殺す人間と、何があっても殺さない人間。試行錯誤が許されるなら、どんな人間でも殺せる環境は整えることはできるだろう。でも、何があっても絶対にしないなら、試行は無駄になる」
それは正しい。でも、それだけじゃない。こいつにはこいつで、曲げられない部分を持っているのだから。
「お前は、そこまで強硬なルールで縛れないはずだ。だってお前は死にたくないんだから」
「そうさ。僕はそこまで頑なになれない。狂人たちのように全てを投げ打って信じ込むことができない。だからさ、たった一つだけ決め事をしているんだよ。それを、まだ知らない君に教えてあげようじゃないか」
「僕との会話に
「その点は多くの人がクリアし続けてくれている!僕は意外なことを人に提供し続けていたからね。それに驚かないやつはきっと僕の知らない世界をすでにみている。だから交渉すれば絶対に良いように使われれる。いくつかの自分が死んだとしても、この戦略を放棄したら負けしかない」
「繰り返し、そして問おうじゃないか狩峰淡輝。僕は、君に勝てないだろうが。負けないことも可能じゃないのか?幾度も繰り返した先に、未知の手段で圧倒されるかもしれない。けれど、その驚きを感じている脳で。今それができるとは、どうも思えないんだ」
「俺がお前を殺せるのは事実だ。それは無視できない」
「その通り。だからこそ、交渉しようじゃないか。2回目は無駄だよ。僕は即座に敵対し、暴力で状況を打開すべくあらゆる方法を使って、最終的に生き残りを目指す。そちらにとって僕が必要なだから交渉の余地がある。これが対等ってものだろう?」
これはまるで、時間をやり直せる四次元のチェスのようなものだ。
ここから未来に渡って、チェックメイトをかけているが。できれば相手のコマを取りたくない。
相手は盤外戦術を今だけは受けてくれると言っている。
それはこちらにとっても都合が良い。今のまま盤面を進めて殺し合うよりも、こちらとしてはゲームを将棋に変えてしまって相手を駒として欲しいのだから。
「君は今、何を失っているのか全てを把握できていない。雄英高校からジャミングされているね。だが大人として断言しよう。死者が出ていないわけがない。もしかしたら、みんな死んでいるかもね。ヒーローが全てを救えるほど、この世界は都合よくできていない」
まぁ、はっきり言ってその通りだ。結構共感してしまうのが嫌だった。こいつはかなりまともだ。やっていることは非道で虫を飼って殺す子供のような残酷さを隠しもしないが、それでも思考はまともである。
「お前こそ、ずいぶんと都合の良い世界を作ろうとしてたんじゃないか?」
すると、今まででもっとも剣呑な目をしてこちらを睨む。これまでの怒りが全部演技だったかと思うほどの剣幕だった。何をそんなにブチギレているのか。
「なんだ。気づいていたのか?その上でここまでやらかしたのか?僕が世界を救っていたと、わかっていてここまで愚かなことをしたのか。それなら話は違う。交渉には影響しないが、はっきりと文句を言わせてもらわないと気が済まない」
「何をそんなに怒ってる?正直意外だ。自分がもう何度も殺されていること以上に、そんなに怒るとは思わなかった」
「それはそうだろう。僕は今まで、誰より世界を。人類を救い続けてきたんだから。僕にその点で文句をつけることができるのは、あの女くらいだよ。まさか自覚してなおここまでの惨状にしたのであれば、僕は怒りを覚えるのは自然だろう」
「自称魔王どころか、自認勇者だったと?」
揶揄するその表現に、何を当たり前なことを言うのかと。むしろ驚きと軽蔑を持って返される。
「ああ、そうだ。僕が科学を取り上げなかったら、今頃どうなっていたと思う?」
この世界の技術は遅れに遅れていたがその黒幕が白状してくれるとは。本来なら恒星間旅行すら楽しめていたと言われているが、それを遅らせていたのは世界を支配していたこいつだ。
「核戦争でまず人類文明は滅んでいた。一部の放射能耐性を持つ人間が生き残るかもしれないが、文明としてはリセットだろう。そして、僕が防いだ核戦争を超えた先に、いくつの破滅があったと思うんだ?」
ゴミをそこら辺に捨ててはいけませんとでも言うように。常識を説く大人のような口調で、捲し立てる。
「超知能AIによる人類への反抗。それは絵空事なんかじゃない。そのために必要な電力を賄うために核融合発電は絶対に阻止すべき技術だった。生命科学は、どこかの馬鹿のガレージで世界を滅ぼすウイルスを生成できるレベルまで安価にしてはいけない。核兵器のスイッチなんてものを老化し認知能力が衰え続けるアホどもに握らせておくなんて、頭がおかしいとしか思えない!」
「科学も恐ろしいが、なぜ個性を制限しない?僕は先進国は全て、そして後進国も台頭してきたものたちは全員とはいかないがチェックしていた。中には興味深いものもあったから、どうなるか制御しつつ見守っていた危険な個性はあったが、それでもコントロールはできていた。キャスリーンベイトに核物理学を教えるなんて!!宇宙を終わらせたいとしか思えない!」
「恒星間旅行なんて人類には過ぎた願いだ。新幹線に乗っていればいいじゃないか。その程度で幸せなんだよ人類なんてものは。どうしてわざわざ自滅の道を歩ませようとする?お前らは、人を全員殺す気か?」
どうしよう。はっきり言って反論できない。
人を助けるため、人を救うための歩みは全て。取り返しのつかない失敗の危険性を孕んでいる。
そんなミスが起きてしまったら、自分がどうにかしようと思っていたから。だからここまでできてしまったのかもしれない。
こいつの懸念は正しい。これまでの努力を全て否定することはできない。それくらいには人類は愚かなことをし過ぎていた。
でも、それでも。必ず負けると決まっているわけじゃない。そこで勝負をしないという選択をオールフォーワンは実行していた。
いいや、それは選択じゃない。選ぶことを遅らせていただけだ。
おかしくて、笑ってしまった。ここにきて全一君に正論で論破されるなんて思っても見なかったから。
それに、逆に俺の方が暴論で相手を殴るのだから。
「どこまで正しいことを言っていても、最後の最後は力がなきゃ交渉に頼るしかない。そっちは曲げないルールを持っていると言ってるけど、俺がそれを解決する手段を見つけることができるかもしれない。そこには無限の可能性がある。今この世界にこの問題を解決する手段がゼロであると思う方が無理がある」
決裂して、全部こっちの思い通りにするための手段を模索したっていい。
でも、ここで勝負をしないなら。それはこいつと同じ。選択を後回しにするだけだ。
今ここでこいつの提案に乗れば、もうこいつを懐柔する希望は失われるだろう。
100%ではないが、オールフォーワンの力を自由に使うことすらできる予定だった。これができれば多くの、本当に多くの問題をまとめて解決できてしまう。
けれど、やり直さなければUAIで南極で、世界中で今まさに散っている人々の命が失われたままになってしまう。
今、UAIで誰が死んでいる?両親は?百ちゃんは?緑谷は?同級生たちはみんなどうしているんだろうか。
選ばなくては。
希望を求めて後に回すか。今、確実に失うか。
一度きりの、やり直しの効かない選択を。
ヒーローたちが日常的にやっていて。自分はずっとできなかった選択を、やらないといけない時が来た。
狩峰淡輝は深く深く息を吸い、そして選んだ。
MAKE A CHOICE
次回はまた一週間後に、そろそろクライマックスです
再開したら最後まで連続で投稿し切る予定です
よければこの物語の最後までお付き合いください