夢のヒーローアカデミア   作:ZAT23

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個性把握検査

波乱のホームルームの後のガイダンスも終わり、ようやく教室も落ち着いた頃。ようやくゲイル先生が言っていた検査の結果に注目できる時間になっていた。

 

いやはや本当に楽しいクラスになりそうだぜ。絶対にクラス委員とかやりたくねえ。

 

「マジか、俺の祖先ってこんなルート通ってきてたんだな」

 

「ほんの少しだけど南米の血が混じってる!?なんかあたし、レゲエをやりたくなってきたよ!」

 

「うわっ……あたしの因子、低すぎ?」

 

口を抑えて驚愕するのはサイドテールの茶髪女子。爆豪に注意もしていた委員長気質な拳藤一佳である。動揺しているのか、口元を隠す手がちょっとデカくなったりしている。

 

彼女の個性は『バトルフィスト』。自身の両拳を巨大化させることができる個性だ。ARMORED との相性は悪く、そして単純な強化型個性でもある彼女は結構気にしていたのだろう。

 

彼女の入学時の成績はかなり精神性の部分で加点されているので、その認識は割と正しい。

 

「ここまで詳細の検査をすることはもうないが、君たちは定期的に個性因子と受容体の測定を受けてもらうことになる。普段の励みが数字として見えるなど、良い時代になったものだな」

 

「でも、せんせー!数字が上がってなかったらって思うと怖いです!テストとかで良い思い出がない!」

 

レゲエのステップを踏みながら答える女子はピンクな子だった。ピンク肌、ピンク髪の中から黄色いツノが生えている。彼女の名前は芦戸三奈。その瞳も特徴的で白目部分は黒く、瞳孔は黄色ってかっけえな。

 

「そうなったとて、諦めることはしないのだろう。ならば情報は多い方が良い。違うかね?」

 

「それはそうなんですけど!もっと、こう。なんというか、手心というか……」

 

「ゲイル先生に共感求めんなよ。手当たり次第か……」

 

「結果の心配などせずとも、その数値が上昇することは約束しよう。雄英のカリキュラムはそこについては世界一だ。しかしまぁ。その潜在能力を引き出す際の苦痛の方が、懸念すべきかと思うがね」

 

ゴクリ。と息と唾を飲み込む音がした気がする。フハハ!そうさ!その嫌な予感は正しい。あれはクッソきついから覚悟せよ。

 

「ゲイル先生に脅されるとマジで怖えよ!」

 

「自分、楽しみっス!プルスウルトラしたいっス!!」

 

「隠すようなものでもないから伝えるが、個性因子の成長は筋繊維に似ている。過負荷をかけられ傷つくと回復する際に肥大化するのだ。厳密には異なるが、印象としては同じだろう。つまり君たちにどんな苦難が降りかかるかわかるかね?」

 

「限界までの個性使用。それが課せられるってことだろうね。既にきらめきが止まらない予感がするよ☆ ちょっとトイレ行ってもいいかな?」

 

金髪の青山優雅はティーカップを持つ手が震えて、すでにお腹を壊し始めている。彼の一つ目の個性は『ネビルレーザー』。腹部からレーザーのようなエネルギーを放つことができる。撃ちすぎると腹を下すため、その光景をすでに体が察知し始めているのだろう。

 

「本来の雄英高校カリキュラムであれば、合宿で行われる個性強化訓練であるが、それは年に一度では少なすぎる。個性因子および受容体の回復度の平均。そしてUAIの治療施設の性能も併せれば、週に一度は実施可能であると結論が出ている。実際に試してみたからこれは間違いないよ」

 

これを知った先輩たちは嘔吐しそうになった人も多いらしいが、彼らはまだその過酷さを知らない。体感を伴わない恐怖にキャー!と楽しげに悲鳴を上げるだけにとどまっている。

 

時間を巻き戻す個性を見つけて過去の自分をぶん殴りたくなるだろうに。楽しみだぜ!

 

「淡輝くん。淡輝くん。なんでそんな楽しげなんです?辛いのとか嫌じゃなかったです?」

 

「はっは。よくぞ聞いてくれたよトガちゃん。この個性伸ばしは限界に挑戦しなくちゃいけないけど、その追い込み方は個性に合わせたものになる。俺のは追い込みようがないし、やるとしてもお昼寝くらいなもんさ。みんながグロッキーしてる時に合法的にお昼寝できるなんて最高じゃね?」

 

「サイテー、です」

 

肩を抑えながら恨みがましく最低評価をいただいたが気にしない。

 

「やっぱ金持ちってのはこうなんだ!くそッ!」

 

おおっとトガちゃんに続き、峰田という三大『人としてどうなんだこいつ』メンバーから非難をいただいてしまった事実は重く受け止めなければいけない。

残る一人は爆豪だが、彼は我関せずというかこちらの存在をなき物としているらしかった。

 

「トガちゃんなんかはさ、吐くまで血を飲まされるよきっと。これがほんとの血反吐ってね!」

 

やったねトガちゃん!吐くまで飲めるよ!

 

笑顔で親指を立てたら、サクッとコンパスが太ももに刺さった。うん。これは流石にこっちも悪いので受けいれよう。ただそのコンパスの血を舐められるのは嫌なので没収だ。

 

返してください〜。という声にお応えして、血を拭き取って除菌した綺麗なコンパスをお返してあげた。

一連の流れはあまりに平和に行われ悲鳴も何もなかったからか、実は起きていた傷害事件に峰田は気づかない。

 

「淡輝くんは、なんでそんなに嫌なんですか?こんなにお願いしてるのに、それに本当には嫌がってないように見えるのです」

 

トガちゃんは理解ができないようだった。彼女がこれまで血を飲みたいと言ったらどうなったのか。それは当然ながら、怯えた目を向けられ、化け物だと指を差されるようになる。この個性社会においても個性由来の奇行は理解されていない。

 

「嫌だよ恥ずかしいだろ。体の感覚とかまで知られちゃうじゃん。思春期の男子だよ?」

 

「ほら、血を吸われるって方を普通嫌がるのに、そっちじゃなくて変身した後のことを嫌がってます。淡輝くんは変なのです。あとやっぱり血の匂いが素敵。月の香りみたいな匂い……ゲイル先生もです……。やっぱり血縁じゃないです?」

 

ニタァと笑う彼女の表情は、ちょっと近寄りがたいが別にもう慣れた。ていうか月の香りってなんだよ。嗅いだことないし、詩的すぎるとちょっとわからん。

 

「匂いを褒めるとかこれもう始まってんだろおい。金持ちは女子とだって仲良しかよ!オイラ、オイラはっ!!くっそ!!人は生まれながらに平等じゃなさすぎる……」

 

「いやどっちも後天的なものだけどね」

 

恥ずかしいのも事実だがトガちゃんが俺の血を摂取した時、何が起こるのかわからないからというのが理由だった。死んだら夢として起きるというこの死に戻り現象は、全てが自分の個性由来のものではないとわかっている。

 

ここまで大規模な現実の改変の連発など、最低でも全一がワンフォーオールを含めた数十万ほどの個性因子をまとめて初めて可能性が生まれるレベルらしい。当然ながら全人類で最も個性受容体を持つであろう全一君ですらそれほどの量は保持できない。文字通り桁違いであって、人外の領域だ。

 

世界はもともと夢のようなものであるという説を自分は信じている。そうでもないと説明がつかないだろ。そんな悪夢に自分になってしまったが故にトガちゃんが巻き込まれたらどうする?こんな危険は冒せない。というか元の性能が低い俺だからこんなもので済んでいるが、元からプロヒーロー相手でも戦えるほどのポテンシャルがあるトガちゃんなんかが『目覚め』たらどうなるやら。

 

まぁ、そんなことより彼女にも結構友情を感じてしまっているから、こんな悪夢に関わらせるなんて絶対にしたくない。文字通り死んだ方がマシなのだ。彼女のことは殺せるが、そこまで酷いことはしたくない。

 

「っるせえぞ!いい加減に黙れモブども!」

 

「ただのモブはコンパスで教師刺さないぞ。いい加減にしろ」

 

ぎゃいぎゃいとツッコミ合うくらいには打ち解けているのだろうか。ガチギレに見えるが、まぁそれ以外の関わり方のレパートリーが少なそうだからしゃーない。

 

トントン。と床が叩かれると誰もが黙って教壇を見る。

 

「ではこれより、個別の詳細検査へと移る。最初の負荷実験にもなるため、早速だが個性を酷使してもらおう。着替えて指定の機関へと向かい、それが終わり次第順次帰宅して構わない」

 

自分の個性の検査はあまりにやり尽くしているため、ほとんどやるべきことはない。

だからそれぞれの検査をモニタリングをすることにした。

 

 

 

-・・・ -・-・ --・-- -・--・ 

 

 

 

この施設にいるのは自身から何かしらを放出するタイプの個性の者たちだ。

Cクラスの時間ということで、爆豪 夜嵐 上鳴 青山 芦戸の五人がここにあたる。

 

上鳴電気の個性『放電』は高電圧の電流を放出する個性である。代償としてだんだんと知性が失われていき、最終的はただウェイウェイ言うだけの置き物になってしまう。

 

今まさになっていた。

 

「ウ、ウェイ?ウェイ〜」

 

最大の電圧、電流を試し、最大持続時間を測っているとこうなった。すでに放電もできずそこでアホ顔サムズアップしているだけの機械になっている。

 

 

「やばい。枯れる。涸れちゃう。でも終わらない。なんなのこの点滴〜」

 

ピンクの頭を振り回して、その手からは酸性の液体を出し続けている芦戸が叫んでいる。彼女の『酸』は身体中から溶解液を噴出することができる個性だが、それは体内の水分を使用する。あまりに続けると脱水症状になるので、2L程度が限界なのだが……

 

UAIの誇る点滴が複数突き刺され、そこから水分補給をされる体制になっていた。

 

「実験動物感がやばいよ〜。マッドなサイエンティストが見守ってる感じする!ねぇ!爆豪は大丈夫なの?キツくない?」

 

「んなもん、余裕だわ!っこの程度、ものの数じゃねえんだよ!」

 

同じく点滴を打たれた状態で身体に電気毛布を巻かれたミイラのような爆豪が叫ぶ。

 

 

 

余裕だと豪語するのはリミットテストの趣旨に反している。ほらきた、温度が上昇したようであの爆豪が少し黙って俯いた。

 

彼の手には発汗を集める手袋がされており、その限界値を見極めるための実験でもある。

 

 

「ははは!!これキッツイっスね!5分もやってたら何かが千切れそうっス!!」

 

 

夜嵐イナサは風を起こして、ダミー人形を持ち上げさせられていた。それをどれだけ維持できるかをやらされているのだった。全体として体力を消費するのと、何より集中力を酷使するようでだんだんと雑になっている。

 

「この年齢でオムツを躊躇なく履かせてくるなんて、さすが雄英だ。この僕でもちょっと引くよね☆あ、そろそろ限界かも……」

 

ひい!という芦戸の悲鳴もすでに彼には届かない。そして限界を超えてレーザーを照射し続けると彼は、どんどん出力が上がっていくようだった。それはまるで、命を燃やす最後の輝きのようで……

 

「   あ……   」

 

そして何かが、今、死んだ。

 

 

何とは言わないが、まるで花火のようにレーザーが輝き。そして止まらない煌めきがきっと溢れ出している。

 

「クソ野郎が!あっち行けおい!」

 

「文字通りはやめなよ爆豪!漏らすのって恥ずかしいんだよ!?」

 

「てめえも体引けてんじゃねえか!黙ってろ!」

 

UAIの誇る最新オムツはあの倍の量でも外界に影響は出ないから安心してくれ。すでに地獄の様相を呈しているが、まだまだだ。最初の限界に到達しただけである。

 

ミリオ先輩に倣って言うならばこうだ。

 

『でも、ここからがマグマなんです』

 

ゲストを紹介しよう。Aクラスの入学者。ミャンマーにおいて最も多く穏便に子供達を保護した素晴らしい個性の持ち主が、ここで協力してくれることになっていた。

 

「なぁ、みんな。まだ頑張れそうか?」

 

そう言って問いかけるのは新たな個性の発動のために必要な工程だ。

 

「余裕だわ死ね!」

 

「もう無理〜」

 

「ウェイ……」

 

「頑張るっス!制御効かねえっスけど!」

 

「もう何も怖くないよ☆ ———なにもね………………………」

 

五人がそう答えると、個性『洗脳』を持つその男。心操人使は指示を出す。

 

『限界超えて、がんばれ』

 

そうして、デスマーチが始まった。命懸けのギリギリであるが、その線引きはしっかりと見ているので大丈夫。みんな一度は死ぬまで追い込んで確認済みである。安心してプルスウルトラして欲しい。

 

彼の個性は素晴らしい。かなりざっくりとした指示でも無意識下でそれを実行しようとするため、表に出ている精神的な問題などを全て無視して行動させることができるのだ。本人の心は成長しないが、個性は伸びる。

 

本当にすごいや。彼の個性を知った瞬間に入学を確定させたほどだ。本当に素晴らしい個性だぜ。ARMOREDとの相性も抜群だし言うことはない。彼は良いヒーローになるだろう。

 

ちなみに連続で他クラスの限界訓練をさせている彼の声もそろそろ限界に近いようだがまだまだやらせていただく。

 

他にもざっと見回ってみるが、糖分を摂取して筋力を上げる砂藤は糖分をぶち込まれていたし。トガちゃんは連続何人の変身ができるのかを試されていて、血の入ったグラスをショットのように並べられている。バーカウンターで酔い潰れている家出少女のような体勢で潰れている。

 

峰田の頭部から生える黒い球体『モギモギ』は強力な粘着力を発揮する未知の物質であるが、それを取り過ぎると彼は出血し始める。

 

「死ぬ……。死んじまう……。ひでえ。ひでえよ……。オイラがなにしたってんだ……」

 

峰田の頭部から流れる血液が目尻を経由して落ちていく。まるで血涙のようなそれは、すでに枯れた涙の代わりらしい。

 

セクハラの代償がここまでの拷問というのはやり過ぎかもしれないが、本人の希望なんだから仕方ない。失血死を防ぐために輸血され続けていると結構作れているようだった。あれは血液由来の何からしい。

 

取陰 角取は体のパーツを操るタイプの個性であって、それを空中で戦わせ続けている。辛そうだが、峰田よりも絵面はだいぶマシだ。だいぶだいぶマシだ。

 

切島と鉄哲の二人は体の強度を上げる個性であって、それぞれ耐久試験のように見える。これが一番絵面がまずい。普通に処刑か拷問だろという攻撃が加えられ、それぞれの攻撃に対しての耐久性を計測していた。死ぬほどの攻撃はしないし、ちゃんと完治できる範囲に留めておくから安心してほしい。

 

『獣化』の宍田と『透明化』葉隠は常時発動型であるため、少し限界値を試すのが難しい。

それでも『獣化』の方はより獣に近づく発動型でもあるためそちらを全力でやらせつつ、その性能と反動である理性の飛び具合も計測する必要があった。戦闘ロボットとの肉弾戦をこなし、そして間でチェスをさせるという試験に落ち着いた。これはいまだにごく一部の愛好家が続けているエクストリームスポーツ、チェスボクシングである。頭おかしくなりそう。

 

「我の手番が……。グルルル……。どうなって?いや、ここはどこですかな?」

 

ちゃんと頭おかしくなっていた。結構良いパンチを頭部にも喰らっていただろうから仕方ない。

 

『透明化』は、実際に透過しているわけではなく光を曲げてそれを通過させているように見せているだけと判明していた。だから高出力の光を浴びせて、曲げられる限界を見極めるのだ。おそらく限界を超えると彼女の裸体が露わになってしまうのでちゃんと服を着てもらっている。

 

「あっつ!あっちちち!ねえこれ日焼けしちゃわない!?美白は大事なんだよ!?」

 

葉隠さんの肌の色を確かめることができる日が来るのかは知らない。透明なのに美白とはこれいかに。

 

生まれ変わってもここは雄英高校だ。スローガンをただひたすらに実践しようではないか。

 

 

限界は超えるためにある。更に向こうへ!

 

プルスウルトラ!

 

ちなみにこの地獄は強度を増しながら週一で訪れる。これで個性が伸びない方がおかしいと言うものである。

 

実際問題、個性を伸ばすことを考えるなら日常的に死にかけるべきだ。その時の最後の足掻きが、生への執着にこそ限界を超える力があるのだ。これは科学的なデータをとっている。もちろん公表などできないが。いよいよマッドなサイエンティストの黒幕と言われても反論できない様相を呈してきたが、必要だからやるまでだ。

 

すでに数人が泣いている。

プルスウルトラだろぉ!?しろよ!ウルトラ!!そんな罵声すらもなく、ただ淡々と続けられる非人道的な訓練は彼らが本当の限界を迎えるまで続いていくのだった。自己申告など気にしない。こちらがお前らの限界を知っているから教えてやるだけだ。

 

 

その日は検査入院すると保護者たちには事前に伝えられていた通り、全員が入院することとなる。

明日は動かない体を治癒しつつ、ベッドの上から座学である。

 

うーん。無駄がなくて美しい。惚れ惚れする合理性だぜ。

 

週一の地獄とそこからの座学を二連続。これが一番早いと思います。

 

翌日、オンライン授業でケロッとした健康体を披露してクラスどころか学年におけるヴィラン扱いになったのは言うまでもなかった。




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