夢のヒーローアカデミア   作:ZAT23

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ヴィランの根源

氷の入った麦茶が、良い音を奏でながら出してくれた。

どうぞと言われて、俺の前に置かれたのは何の変哲もないガラスのコップだった。

 

薄手の安物で、死柄木の方のコップには飲み口の縁が少し欠けているのが見える。彼のコップにはストローが付いていて、腕を失った生活に適応していることが見て取れる。二人とも慣れている感じがする。

側面に水滴が浮かび始め、下のほうで一粒に集まって、テーブルへ落ちる寸前で止まっている。

 

液体の中で氷が2つ、ゆっくりと角を溶かしていた。指先で触れると冷たい。汗をかいたガラスが指の腹に張りついてくる。

 

「あれからどうしてた」

 

問いは自分でも驚くほど平らな声で出た。なんならちょっと嬉しかったかもしれない。それを受けて死柄木弔は肩から先のない腕を投げ出したまま、笑った。

 

「そんな風に話せるのは嬉しいね。話しやすいな。そう……。あれはもう8年前だよな。世界の終わりかと思ったが、残念だったよ。ヒーローは惨めに生き残り、そして世界は変わりはしたが。前よりもっと歪になって壊れることはなかった」

 

彼が言葉を切るたびに、袖の空洞が力なく揺れる。二の腕の半ばで布が終わり、その先には何もない。

 

「世界にいくつかあった研究所を転々として生活する予定だったが、お前らの魔の手はすぐにきた。1週間も経たないうちに拠点は使えなくなった。そりゃそうだよな。先生があの中にいるんだったなら。筒抜けってのも頷ける」

 

魔王の手で魔の手ってか。やっぱりこいつはだいぶ変わったな。警戒を高めることにする。

台所で水音がした。あの女性が洗い物を再開している。まな板に何かが当たる規則的な音。作りかけの昼飯の続きなのだろう。

 

状況を理解した上でそれなら肝が据わっているというか、普通じゃない。

俺は麦茶を一口飲んだ。麦の香りと、わずかな甘み。喉を冷たさが下りていく。

 

「惨めに太平洋とか大西洋の小島を転々としてさ。無人島の地下に空間をどうにか作って穴倉生活さ」

 

彼の声には湿ったところがなかった。惨めと言いながら、それを本当に惨めだと思っていない声だ。

 

「黒霧の力があれば物資は問題ない。初期はちょっと過労気味だったけど。『死柄木弔を守れ』ってな命令が最後だったから、あいつは本当によくやってくれたよ。便利すぎだぜ実際さ」

 

「サバイバル生活……似合わないな。ディスカバリーチャンネルとか見ないだろ?」

 

台所の彼女が、少し笑ったのが気配でわかった。

死柄木が肩をすくめようとして、動かせる肩がないことに気づいたように、代わりに顎を上げた。

 

「案外そうでもない。おかげでいろんなことを学べたさ。インド洋で自分探ししてみろよ。結構見つかるもんだ」

 

その言葉に恨みや強い感情は見当たらない。事実を並べているだけの平坦さ、冷静さが彼のプロファイルと乖離していく。

 

「どこまで話したんだったか」

 

彼が視線を天井へ流す。この部屋の天井は低い。安アパートの、手を伸ばせば届きそうな高さだ。

 

「そうだった。サバイバル開始してからは面白かったぜ?連盟の仲間たちとどうにか日々を生きることに集中するのは悪くなかった。俺は、初めて仲間ってものの良さに気づいた」

 

台所から、女性がコップを持って戻ってきた。自分のぶんの麦茶らしい。俺と同じ安物のコップに、同じ色の液体。

死柄木の話を、初めて聞いたような驚いた顔で聞いている。

 

「Mr.コンプレスは割とまともな大人としての常識を語るし、何よりエンターテイナーとしてのプロ意識がすごかった。美学ってやつを学んださ」

 

「荼毘は一番俺と近かったかもしれないな。同志ってのはこういうことを言うんだと思う」

 

「スピナーなんかは、一番普通の友達ってのがこうだったかもって思ったよ。同じゲームやっててさ。どうにかそれを手に入れられないか、工夫もしたもんさ。オンライン対戦はできなかったけどな」

 

そういえば、この部屋にはゲーム用のPCも置いてあるようだ。普通の人間としての暮らしを装うのなら必要なのだろうが、こいつは普通に趣味でやっていたんだろう。

 

「俺でもさ。仲間はできるんだって気づいたよ」

 

彼の声が、少しだけ柔らかくなる。

 

「ヒーローや普通の人間だけじゃない。道を外れたヴィランだって互いを信頼することはできる。世界の全部を壊してやろうって。あの荼毘でも笑っててさ。俺らも幸せにはなれるんだ、なってもいいんだって思えたね」

 

俺は麦茶の氷を眺めていた。2つあったうちの1つが、角を失って丸くなり、静かに回転している。

 

「無人島の木々の下。衛星監視を掻い潜っての星空の下で、青春のようなものを確かに味わった。俺たちは、初めて人間らしく暮らしてた」

 

星空。俺はその光景を知らない。知らないのに、瞼の裏に浮かんでしまう。きっと綺麗だったのだろう。

 

「俺はまだ変わることができる。知らないだけかもしれない。いろんなことを経験したら、考え方も変わるんじゃないかって。そこで考えたんだよ。自分の根源。オリジンってやつをさ」

 

「意外だな。お前がそんなことを考えるタイプだとは思わなかった。普通に嘘じゃないかって思うんだけど」

 

死柄木が、嬉しそうに目を細める。褒められた子供のような顔だった。

 

「ああ、よく気づくね。俺が変わったのにはもっと大きな理由があった」

 

彼が言葉を置く。

 

()()()()()だよ」

 

女性の手が止まった。ストローから口を離して、彼女は聞き捨てならないという顔で身を乗り出す。

 

「え。女の子? 初耳なんだけど」

 

本気の棘があった。この2人の間にある時間の厚みと湿度が漏れ出して、どうにも気まずさを感じる。それを死柄木が困ったように笑う。まるで長年付き合った彼氏が、彼女の嫉妬を宥めるように。

 

「悪いな。でもそういうのじゃない。ヒーローってやつだ。俺たちが初めてまともに触れ合った善人だよ」

 

女性は納得したのかしないのか、尖った口で麦茶を吸い上げる。カランという小さな音が精一杯の抗議らしかった。

 

「あれも拉致して一緒にいた。1人じゃ到底戻れない場所にしかいなかったからな。黒霧のワープは常に二段階で移動してたし、咄嗟に入っても逃げれない」

 

彼が浅く息を継ぐ。

 

「どうしても関わる必要がった。まぁ恥ずかしいから色々端折るが……。まぁなんだ。あいつの働きかけで、俺たちは変わっていった。ヴィランの中にも何か希望があると信じてる。そんな目を向けられたのは全員初めてだった」

 

俺は黙って聞いていた。

 

「俺たちも歩み寄り、数年後には奇妙な関係性に。よく聞くだろ、攫われたのに犯人と仲良くなっちゃうやつ。あれって本当に起きるんだよ。信じてなかったけどさ。だけど、影響は相互だ。こっちの毒気も抜かれてさ。荼毘と何度殺そうかって相談したかもわからない」

 

そう言って彼は笑うが、多分本当なのだろう。麗日さんは危ない橋を毎日渡っていたようだ。

 

「とにかく信じるかは置いといて、俺たちはそれなりに考えるようになった。人の良さや、明るい部分ってやつを知ったんだ。あんな人間と出会えてたなら、ヒーローになってたかもしれない。本当にそう思ったよ」

 

彼の目を見る。

 

嘘はない。印象としてはそう思う。数え切れない試行の中で、人が真実を語るときの目の緩み方だけは覚えてしまった。結構外れることもあるが、まぁまぁ当たる。経験だけは多いから。

 

しかし、すごいな。麗日お茶子。あのヒーローは孤立無縁の絶体絶命の中でさえ、たしかにこの怪物どもに人の温もりを教えてのけたのだ。ヒーローとして、最も難しい仕事を。

 

「楽しい日々が続いたよ。ちょうど5年前くらいまで」

 

俺は知っている。この先に何があるのかを。

改心などあり得ない存在が、この世界にはいる。俺はそれを嫌というほど見てきた。何度も。

 

「全部壊したいっていう衝動も収まったよ。体の痒みも忘れて、ただ真っ直ぐに生きることだけを考えてる。きっと俺の人生で一番人間らしかった時間だ。他のやつもそうだった」

 

釣りの話。焚き火を囲んだ夜。誰かが下手な歌を歌ったこと。彼はそういう断片を、大切そうに合間へ挟んでいく。

 

俺はそろそろ口を挟んだ。

 

「おい。こっちはもうオチを知ってるんだ。それがこの破局噴火とどう繋がる。結局は全部殺すんだろ」

 

死柄木が、こちらを覗き込むような顔をする。

 

「種明かしの前にネタバレか。お前ゲームも攻略サイト見るタイプだろ。仲良くできないね」

 

「趣味じゃない。やらざるを得ないゲームばっかでね。死にゲーに付き合う回数は少ない方がいいんだよ。PvPなら尚更さ」

 

女性が俺のほうを見た。多分ゲームの例えがわからないのだろう。空になった自分のコップを持って、台所の方へと移動している。

 

「話の腰を折るなよな。ああ、それでどこまで話したっけ。そうだ5年前、世界樹の調査があったろ。ちょうどその頃、俺は考えをまとめてみた」

 

彼の声から、それまでの湿った温かさが少しずつ抜けていく。

 

「全部壊したいって思い。全ての虫を、人ごと根絶させてくれという託された願い。オールマイトへの恨み。ヒーローへの嫌悪感。俺のオリジンってやつと向き合ったんだ」

 

一つずつ、荷物を降ろすように。

 

「ささくれたそれが、全部柔らかくなって冷静な頭で考えられたんだ。初めて、まともに考える能力をその時に俺は得たんだと思う」

 

ああ、これは良くない流れだ。麗日さんという素晴らしいヒーローの話を聞いた後だから余計に。

 

「それで、殺してみたんだよ。みんなを地下の隠し部屋ごとな」

 

彼の声が、初めて震えた。

 

「涙が出た。悲しかった。俺にも感情はあった。それが溢れ出してどうしようもなかった!」

 

「でも、それ以上に」

 

うっとりと目を閉じ、そして恍惚の表情で上を見る。

 

「気持ち、よかったぁ……」

 

台所の蛇口から、水滴が一つ落ちた音がした。それだけが、やけに大きく聞こえた。

 

「俺はきっと家族にも愛されてた。それを知ってて壊したんだ」

「俺は先生に期待されてた。だからこそ別の道をいく」

「俺はヒーローに救われたんだ。だから、だからさ恨みもないよ」

 

一言ごとに、彼から何かが剥がれ落ちていく。

 

「オールマイトも、ヒーローも。もうどうでもいい。俺にはもう関係がない。人も虫もどうでもいい」

 

そして。

 

「もうないんだ。俺はただ自由に、好きに選んでる」

 

彼が笑う。

 

「単純に、全部壊してみたいんだ」

 

その笑みには、悪意も殺意もなかった。曇りのない、透き通ったものだった。

 

「ぶっ壊して自分がどう感じるのかが知りたい。できればその光景を見てみたい。それをしたい。ただ、したい!」

 

最後だけ、声が跳ねた。子供が欲しいものを見つけたときの、あの高さで。

 

「俺はおかしいと、そう言われると思っていたけれど。どう思う?」

 

答えずに見ていると、死柄木の視線が女性へ流れる。

 

「こいつはさ。俺の協力者の1人だよ」

 

彼女は洗い物の手を止めて、こちらを振り返った。濡れた手をタオルで拭きながら、会釈をして微笑む。玄関で俺を迎えたときと、同じ表情だった。

 

「ダークウェブでもなんでもない。普通のSNSにごまんと投稿されてる、世界が壊れてしまえばいいのにって思っている。普通の人間の1人だ」

 

彼女は否定しなかった。

 

「どうやって繋がったかって?普通に愚痴を聞いて、それで会って話しただけさ。何にも変なことはしてない。テロの話なんてしてないぜ?」

 

死柄木の声が、妙に優しい。

 

「みんな思ってるんだよ。全部壊れてくれないかなってさ」

 

俺はこの部屋を見回した。脱ぎ揃えられた靴。壁の学会ポスター。冷蔵庫に貼られた、たぶん2人で撮った写真。作りかけの昼飯の匂い。演技で作れる密度ではない。ここには本当に生活がある。

 

「必要なことを知るために、俺は別の名義を手に入れた」

 

彼が続ける。

 

「大学院生の戸籍は奪ってないぜ。共感してくれた人がさ、丁寧にくれたんだよ。なんなら、俺に似せて、事故にあったことにして。俺が成り変わっても周りが不思議に思わないように、家族とか友達と疎遠にしてさ。それで自分をくれたんだ」

 

「プレゼントは私って。文字通りのことあるんだな」

 

「はっは!それで俺は5年間。大学院で普通に学んだ。賛同者の1人だったこいつと暮らすことにして、恋人ごっこもやってみた」

 

彼女がタオルを畳んで、俺の向かいに座り直した。死柄木の隣。2人の距離は、恋人ごっこと呼ぶには近すぎた。

 

「付き合うだのセックスだの、バカにしてたけど。無知ってのは怖いな?知らなかっただけだ。実際、悪くないもんだよ。生きる気力が湧いてくる」

 

彼が女性のほうを見て、彼女は肩をすくめる。

 

「人と暮らして、触れ合って、恋とか愛とか。そういうのも感じてさ。俺も心があったかくなるんだよ。ひび割れが治って、あったかいのが塞いでいく感じ……」

 

彼の顔に浮かんでいるのは、まぎれもない幸福だった。

 

「それでやっぱり。全部壊してみたくなった」

 

俺は、この男が自分とは違う生き物なのだと理解した。

 

とても当たり前の感想だった。人の暖かさを知って、愛を知って、温もりを知って、美味しいものを知っている。俺と同じものを口にして、俺と同じように誰かの手を握って。

 

そうして、最後の結論だけが違う。

 

「そうか」

 

俺の口から出たのは、単純な感想。

 

「それは、なんていうか。研究者ってのは合ってたんじゃないか。意外とさ」

 

死柄木が、はにかんだ。

 

「ああ、教授からも褒められたよ。一緒によく飲みにいってくれてさ。話が長いんだけど、面白い。美味い店も知ってる」

 

ただ、そうしたいからそうする。

 

緑谷出久とオールマイトが人を助けるのと、同じ純度で。こいつは世界を壊す。動機の奥に恨みも復讐も探せば探すほど、そこには何もない。透き通った好奇心だけがある。

 

「お前は人にとっての天敵なんだな」

 

特に敵意も悪意もない。それは俺ももう同じだった。

 

「排除されても仕方ない」

 

死柄木が、迷いなく頷いた。

 

「うん、そう思う。でも、俺は嫌だからがんばったさ。カルデラに関わる岩盤にはすでに崩壊を仕込んでる」

 

彼が事務的な口調に切り替える。

 

「地中って熱いんだぜ。それだけで片腕が壊れちゃったよ。でも、片腕を犠牲に世界を壊せるなら。こんなコスパって聞いたことないよな」

 

彼が本気で得をした顔をする。

 

「これから噴火を止めることはできない。1週間前にはもうやったから」

 

俺は口の中が乾いていくのを感じた。麦茶を飲もうとして、けれど氷しか残っていなかった。

 

「残りの腕は?」

 

「俺の輸血、臓器提供用の遺伝子を同じにした脳無がいてさ。そいつに腕をくっつけてどうにか使ってもらえるようにした。調整できない触るだけの初期バージョンな。威力は高くなってるけど」

 

臓器提供用。自分のコピーとして飼っていた脳無に、自分の腕を移植して、消耗品として使ったらしい。やり直しもできないくせに無茶をする。

 

「あまり持たずに壊死すると思う、でもそれまで黒霧と世界樹を触り続ける。超再生があるから、死ぬまでそれを続けてくれる」

 

世界樹を壊す。世界の傷を治し続けてきたあの木を、腐り落とすまで触り続ける。

 

「先生のことだ。きっと生き意地汚く残るだろうけど、でも万全ってわけにはいかない」

 

「初動で殺して、氷河期にして、社会は終わりだ」

 

俺は氷の溶けた麦茶を、それでも一口飲んだ。薄くなった味が舌に広がる。

 

「生き残るかな。残るんだろうな」

 

そして未来に想いを馳せて、その光景を確信する。

 

「でもきっと、そのうち俺みたいのは現れる」

 

彼が天井を見上げる。低い天井の、その先の空を見るように。

 

「これはさ。人類全体に生まれるガンみたいなもんなんだよ。そいつが世界を壊せるくらいの力を持ったり増えるなら、きっと人類はその度に崩壊してくれる」

 

女性が、そっと死柄木の背中に手を添えた。労わるような、ごく自然な仕草で。

 

「それを見届けられないのだけが、残念だよ」

 

両翼をもがれた人類種の天敵が、幸せそうに笑っていた。

 

俺のコップの中で、最後の氷が溶けきった。

 

 

 

つまりは魔王オールフォーワンを筆頭に、今まで戦って殺してきたヴィランというものは、偽物だったらしい。

人気チャートなどを意識している職業ヒーローと同じだ。かつて軽蔑した彼らのことを、今は全く別の感情で捉えている。

 

本物なんて、出てこない方がいい。

 

オールマイトの鏡像は、緑谷の対比が生まれてしまえば。世界が壊れてしまうのだ。

 

本物のヴィランには、悪意など必要ない。

動機もなんでもいい。必要なのは、どこまでも社会と相入れない衝動と。

 

それを実行できるだけの力。それだけだ。

 

それを人は後からヴィランと呼んで恐れるのだろう。

 

その惨禍が起きれば、きっと人々の中から本物のヒーローが生まれてくる。でも、それでは遅い。

それじゃあいけない。

 

これは仕組みからして仕方ない。ヒーローは事件の後に救いたいという衝動から生まれるのだ。

 

そんなものを認めるわけにはいかなかった。ヒーローにできないことをやるために俺はこれまで死に続けてやってきた。

 

 

人が危機に陥る前に、人を救うことができるのは衝動ではない。

 

理性によって人を救う。救ってみせる。

 

「やけに協力的だな?それを信じてみてくれと?」

 

「言ったろ。全部を壊してみたいって。俺のこの計画だって、全部に含まれるに決まってる。気になるんだよ。壊れた時の気持ちがさ」

 

理性で自信を律した破壊を求める怪物に、一体どうすれば何を捧げれば人を救うことができるのだろう。

 

「これから何度でも確かめるさ。やりようはある」

 

「せいぜい頑張れよ。俺が崩すために、積んでくれ」

 

素早くその場で弔を撃ち抜き、そして自分の脳天を消しとばす。最後まで穏やかな表情の女性を残して。

 

思考という武器だけを頼りに、呪いのようなループをめぐる。やることは何も変わらない。

 

死柄木弔を止めれば、みんなを救える。

 

その一つの仮説が否定されただけなのだ。無数の仮説を、試さなくては。

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