夢のヒーローアカデミア   作:ZAT23

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この先、アニメオリキャラが出るぞ


クラス委員

ホームルームの終わり頃、ゲイル先生が課題を残して去っていった。

 

「君たち。代表を決めたまえよ。日常ごとを取りまとめるクラス委員を決めて本人たちが職員室まで報告に来なさい。早々に決まればその時点で下校して構わない。ではまた明日」

 

車椅子とは思えないスムーズさで教室を後にするゲイル先生の挙動に違和感はもうない。

 

そして先生が十分に離れたと確信できてから騒然とするCクラス。まさかこんな普通の学校らしきイベントが起こるなんてと信じられないでいるのだ。

 

「いや、これは罠だろ。どのタイミングで地獄の責め苦が始まるんだよおいおいおい」

 

「私は、信じませぬぞ!匂い立ちすぎます!」

 

「嘘か幻のどっちかでしょこれ。普通すぎるよ……」

 

「幻か?なんだアレは?また幻術なのか?」

 

ちゃんと警戒心が上がっている。良いことだ。不測の事態に備えて疑いを持つのは基本である。

それはそれとして、これは別に罠ではない。ごく普通にクラス委員を決めて欲しいだけなのだが。

 

「ちょっとみんな待ってよ。本当かもしれないよ?だとしたらどう?クラス委員をやりたい人は?」

 

自然と拳藤さんがまとめてくれている。もう彼女でいいんじゃないかな。問題は男の委員を誰にするかじゃないのこれ。男女で分ける必要はあるのかと一応議論にはなったが、実際その方がやりやすいのだから男女で固定してしまって良いだろうということになった。

 

雄英高校およびUAIの方針は正しさではない。成果を出すことだ。結果にコミットするんだよおら!

 

シュバババと迅速に手が上がっていく。手を挙げた人を認識するより、立候補していない変わり者を見た方が早いレベルだ。

 

ヒーロー科において入学成績ワースト3。自分とトガちゃんだけが手を挙げない。最後の一人、爆豪すら手を挙げているというのだから本当にやる気がない二人です。

 

「爆豪本気か?投票になるだろうし無理じゃね?お前はこっち側だろ」

 

「いけるわ!俺に入れないやつはわかってんだろうな!」

 

「それで票集めできると思ってるのがすげえよ。なんで頭いいのに客観性がないんだ」

 

「クソを下水で煮込んだような性格さえなけりゃ理想のヒーローに近いのに、残念だよなぁ。いやでも俺はその方が親近感とか湧いていいと思うぜ!」

 

「いいところも知ってるから、お前が逮捕されてもズッ友だ!安心しろよな!」

 

「黙ってろ!クソ髪にアホ面。暴言吐きながら肩組むんじゃねえ!敵が触んな!」

 

クソ髪こと切島鋭児郎とアホ面こと上鳴電気は孤高に生きる爆豪へも積極的に絡んでいく男子達だ。結構仲良さそうに見える。

 

「拳藤氏の言う通り、多数決ということになりそうですな!」

 

まぁそうなるだろう。するとどうなるか。

 

それぞれ立候補をしたもの達は自分に入れる。だからこそ浮動票となっているのは俺とトガちゃんの二人だけ。

 

こいつらが決めるのかよ。ゴクリという唾を飲む音と共に失礼な内心が聞こえてきた気がする。

 

「え〜。そしたら私は、淡輝くんに入れることにします」

 

ニタァと笑うトガちゃんは早々に責任を放棄することを決定。つまりは最終決定権が自分に舞い込んできたということだ。別にクラス委員になるからといってそこまで特殊な経験なんて積めないだろうから適当に選んじゃうぞ?

 

「この投票、やる意味あるのかな☆」

 

「でもでもさ!誰かが自分以外に入れるかもしれないじゃん!やってみようよ!」

 

「確かに。そうしないと狩峰の独断で決まることになるか……」

 

「煌めき続ける僕が選ばれて終わりって意味なんだけどね☆」

 

青山の不思議発言にまともに突っ込む奴は流石にいなくなっている。

しかし俺の印象はちゃんと良くないな。不良とは言わないが、そこそこ不真面目なやつであるとは思われている。大金持ちってだけで鼻につくだろうし、個性のリミットテストを避けている唯一のサボり魔でもある。納得しかないけれど、まぁ面白そうなので煽ってみよう。

 

「優雅な白鳥が水面下でどれほど懸命に足を動かしているのかなんて一般人にはわからないか……」

 

ニヒルに笑って札束で作られた成金団扇で仰ぎ、煽る。もちろんそういうジョークアイテムであってゲンナマではない。金持ちキャラで殴るのは一種の技である。

 

挑発すると数人が立ち上がった。よしやるか?煽り耐性の低いやつから票を入れるのをやめることだってできるんだぞ!票が人質だこちとら!

 

「個性訓練してないだけならまだしも、苦しんでるやつの近くでそれ見ながらのほほんとお茶飲んでるだろ!その恨みはぶっちゃけあるぞ!」

 

「金持ちのイケメンはいつだってダルそうにして、やれやれとか言ってオイラの機会を奪っていくんだ!ちっきしょう!!」

 

やばい。負けそう。普通にこっちが悪いわ。でもだからって俺の一票は俺の自由だ!この権利は手放さんぞ!あと峰田の逆恨みは知らない。

 

「男女で分けてやれば問題ないでしょ。ほらタブレットで投票できるようにしたから、みんなやってよね!」

 

「ほらほら〜。もうほぼ決まったようなもんだけどやろう〜。男子は誰になるかな?」

 

まずは女子の投票である。5名しかいない女子の中での2位は一体誰だ!?

 

拳藤 一佳:7票。

芦戸 三奈:3票。

葉隠 透:3票。

角取 ポニー:2票。

渡我被身子:0票。

 

同率2位!割と平和な結果が出てつまらんなと感じてしまうのは、ちょっと血気が盛んだろうか。

トガちゃんは安定の0であるが、女子の候補は誰に入れたのだろうか?

 

「ポニーちゃんです。カアイイので」

 

かあいいからポニーちゃんだって。湿度の高い視線を向ければ、びくりとした角取さんは肩を抱きながら周囲を見渡している。角があるということは草食動物由来の個性だもんね。自分の血肉を狙う視線には敏感らしい。

 

さて悩みどころだ。ぶっちゃけCクラスの男子であればもう候補はあまりいない。

 

熱血バカと問題児を除くだけで候補は二人に絞られる。

 

宍田獣朗太君は育ちが良いがいざとなると猪突猛進なところがあり、個性を使うとより獣になってしまう。

砂藤力道は個性を使いすぎると低血糖で思考力が落ちていくが普段は問題ない。性格は温厚で真面目だし、お菓子でクラスを和ませることもしばしば。

 

個性の伸びが良くないと言って落ち込んでもいたので、ここらで自信をつけてもいいかもしれない。

 

よし。砂藤くんに入れよう。

 

男子はまず淡輝を除く全員が自分に入れたため、浮動票は女子の5つと淡輝の一つだけだ。

トガちゃんは俺に入れるらしいので、実際は5票がどこにいくのかという投票である。

 

結果発表〜〜!!

 

砂藤 力道:4票。

宍田 獣朗太:3票。

 

 

砂藤くんおめでとう!立派なクラス委員として頼むよ!

 

「俺、頑張るよ!頑張るから!」

 

腕で目元を押さえて、まるで引退を決めたレスラーのように肩を震わせている。

なんか、感極まっているようだった。

 

「いや、すまん。取り乱しちまった。だって俺、入学してから今まで何にも活躍できた気がしてなくて、でもこうやって4票ももらえたって思うと、くるものがあって……っ!」

 

彼なりに相当悩んでいたらしい。ムキムキの大男がみんなによしよしされている。

 

「そういや砂藤。サポート科の個性科学専攻の人たちが話したいって言ってたぜ。明日来てくれってさ。オイラも明日行くから行こうぜ!」

 

「ああ、ありがとう。まだ行ったことないから助かるぜ」

 

彼の個性は強力ではない。単純な強化系としての方向においては劇的な進化は見込めないということがわかっていた。そもそも筋力が上がっても身体強度が向上しないため仮に筋力増強が成長しても暴発した緑谷のような状態になってしまうだろう。

 

だからこそ、彼の個性はそもそもの方向性を大きく変える必要があった。

 

必要に迫られて死の間際まで追い込まれるとその片鱗は発揮される。個性は限界を超える時の精神や思い込み、必要性によって大きく成長するのだ。

 

彼に才能があることはすでに確認している。あとは自分を信じることができるかどうか。それだけだ。

 

 

さて待望のお昼休みです。

 

最新鋭の学生食堂は、まるで休日の巨大フードコートのような熱気に包まれていた。

 

長大なホールには、数百人の生徒が好きな席で食事を楽しんでいる。天井からは柔らかな光を放つパネルが浮かび、床は清潔感のある白銀色に輝き、足音すら軽やかに響く。

 

壁際にはタッチパネル式の自動配膳カウンターがずらりと並び、寿司やラーメン、ステーキ、エスニック料理、果ては甘味やスムージーまで、ボタン一つで湯気を立てながら現れる。こともできるのだが、最後は料理を仕上げる人によって手渡しする方式になっていた。この方が人は料理を美味く感じるのだから仕方ない。

 

はっきり言って食に関する楽しみを蔑ろにするのは許せないから、合理性をとことん追求させてもらった。

 

できたての料理を受け取った生徒たちが歓声をあげ、友人の席に駆け寄っては笑い合う。

 

 

中央の吹き抜けスペースには透明な円形モニターが浮かび、校内ニュースと同時に世界の最新情報も流れている。

その明るい空気の中、不意に映し出されたのは「工業都市での異臭。毒ガス事故か?」の速報だった。黄色いテロップとともに、現場の映像が数秒間だけ流れる。防護服を着た人々、避難する市民、重苦しいリポート。しかしそれでも食堂の雰囲気は沈まない。

 

隣の席から笑い声が響き、テーブルに並ぶ食事からは香ばしい匂いが絶え間なく漂ってくる。どこかで起こる異臭騒ぎなど今この場には関係ないのだ。

 

食堂で緑谷を見かけたので話しかける。

 

「やっほー緑谷。クラス委員に推薦されて食う飯は美味いか?」

 

気さくな挨拶をかました隙にトガちゃんにカッターで切り付けられるが手首を抑えた。それも背中で隠して事件自体を隠蔽。はい俺の勝ち。なんで負けたか、明日までに考えておいてください。

 

「狩峰くん!やめてよ!ちょっと自信なくてご飯の味が薄く感じてたのに、味しなくなっちゃいそうだって」

 

「そっちは順当に八百万と緑谷か。飯田くんとか向いてそうだけどな。やっぱ首席は人気か〜」

 

「うん。そう思うんだけど、僕なんかに入れてくれた人に申し訳ないかなって悩んでて。あ、飯田くんと麗日さんだ!」

 

手を振ればこちらに向かって歩いてくる二人。トガちゃんと俺も一緒にみんなでお昼にすることにした。

 

「なんだか普通みたいですごいです。雄英、入って、よかったれす」

 

はむはむと超絶レアのステーキを頬張るトガちゃんは幸せそうだった。犬歯が肉を貫く感覚がすごく良いらしく、こんな贅沢な生活をしていれば結構欲求は抑えられるのだとか。

 

平和な食堂であったのだが、今日は一つ事件が起きた。

 

「キャー!!」

 

「あっちい!」

 

「ええ〜!?何これ何これ!」

 

 

後から整理すれば大したことはない内容である。

 

蛇の個性を持つ学生が、猫の個性をもつ人の後ろに並んで配膳を待っていると猫側が後ろに気づいて反射的に飛び退ってしまったのだ。

 

持っていた熱々のあんかけかた焼きそばが宙を舞い、そしてとある男子にかかってしまった。暴れる彼は咄嗟に個性が出てしまい、食堂に色付きの煙が充満し始める。

 

誰かがポロッと口に出した一言が状況を一変させる。きっと彼女はさっき見たニュースの影響を受けていただけで、何も考えていなかっただけ。悪意はない。

 

「あれ毒ガスじゃないの?」

 

でもその一言は、人をパニックにさせるには十分すぎた。

どよめきは広がり、膨らみ、深まっていく。

 

人から人へと伝わるごとに増幅し、そしてパニックが起きた。出口へと殺到しようとする生徒たち。

 

そしてそれを見る前に、すでに淡輝は命令を出していた。

 

『ちょっと待て、このトラブルは続行だ。どうせ有害なものがないのなら何もするな』

 

この都市のAIはこんな状況も完璧にモニタリングしている。それぞれのデバイスに直接語りかけることも、どんな伝達をすれば彼らが比較的落ち着くのかも把握しておりそれをパニックの前に収拾することもできたはずだった。

 

『了解いたしました。避難訓練ももう少し実施すべきですね。彼らの反応では有事の際に逃げるだけで死人が出てしまいそうです。対応は、どのようにするのでしょうか?』

 

『まぁ大丈夫だよ多分。ダメだったらどうにかする。一旦見てみよう』

 

すでに緑谷と飯田くんはパニックを止めるために動いている。麗日さんもそこにいるようで、ヒーロー科のAクラスが三人もいるのだ。なら人を救ってもらわないと。

 

さっきまで笑い声で満ちていた広大な食堂は、椅子が倒れる音と叫び声に支配される。

生徒たちはトレーを持ったまま、あるいは料理を置き去りにして立ち上がり、出口に向かって一斉に走り出した。

 

金属製の椅子が床を引きずられ、甲高い音を立てる。食器が散乱し、汁物の匂いと混じって焦げ臭い恐怖の匂いが漂いはじめる。

 

「早く出ろ!」「押すな!」という叫びが重なり、通路はすぐに押し合いへし合いの人の波で詰まった。

 

 

逃げ惑う群衆に対して、緑谷出久はどう声をかけていいのかわからない様子だ。自信なさげに声をかけたり一人二人を止めることはできるが、大勢に対しての最適解が全くわからないでいた。

 

そんな時、出口に殺到する彼らの頭上、出口上部の壁にバタン!と張り付く人間がいた。

 

空中で回転しながら壁にぶつかり、少しだけ傷を負ってはいるがそれを感じさせない元気な声が食堂に響き渡る。

 

「だいじょーーーぶ!これはカラフルな煙というだけ、毒ではありません!」

 

あまりに突拍子もない登場に全員が呆気に取られて、パニックすら忘れる。そしてそこに差し込まれる冷静な情報。多くの人間が我に返って周囲を見渡し始めた。

 

倒れる人を起こしている者もいる。これでもう安心だろう。

 

麗日さんの個性で浮き上がった飯田くんが自分の個性で加速。壁に張り付いて大声を出すという解決策はスマートではない。けれどそれは有効でどこまでも真っ直ぐな輝きすら感じるものだった。

 

その後も避難誘導に飯田くんは全力で当たり、先生たちが駆けつけて事態は完全に収束していく。

 

「飯田くん、すごいや。あんな風にはっきりくっきり人に言うなんて、僕にはできない」

 

「言いたいこと、やりたいことを実際にできるやつはやっぱかっこいいよな。緑谷も今言いたいことがあるんじゃないのか?」

 

「うん。そうだね。この後のHRでみんなに言ってみるよ。やっぱり飯田くんがいいんじゃないかって」

 

後日談だが、Aクラスのクラス委員は百ちゃんと飯田くんになったらしい。良いんじゃないかな。

 

「あ、そういえばBクラスの委員って誰になったんだろう」

 

「轟と印照(インテリ)さんだったな確か」

 

印照才子、個性『IQ』。紅茶を飲んで目を閉じている間IQが倍増する。元のIQが150であるので、その倍。IQ300ということになる()()()。紅茶の銘柄によりIQの上がり幅に差が出る()()()

 

当然の疑問としてIQ300なんてあり得るのかと思うが、それは正しい。

IQ(知能指数)は「平均100」を基準にした偏差値のような指標であってIQ145の時点で上位0.1%である。

 

そもそもIQ300など存在しない。

無理やり作るとしたら凄まじく平均点が低いテストを生み出して満点を取らねばならず、IQ300まで測ることを想定した問題がこの世に存在しないのだ。

 

適当な個性判断の末にそのまま信じているパターンに当てはまっている時点で結構ポンコツなのではと思うわけだが、日常で抜けているが知性はある人だっている。

 

ギフテッドは往々にして一般的な人間としては癖があったりするものだから。

 

つまり何が言いたいのか。UAIの研究班はこの個性『IQ』を改定し『思考』として再登録した。

 

その際に行われるのは思考の加速と深化であって、そもそも彼女にとっての意識外の内容を詰めることはできない。相手はこんなことしないだろうという固定観念によって思考が制限されている中で思考が加速しても正解には辿り着くことはできないようだった。

 

彼女はこれまで学校のテストに最適化して個性を伸ばしていたようなので、かなり大きな矯正が入る予定である。

 

あ、あと確か性格に難があるとも注意事項があった気がする。相手を倒す最善最短よりも勝利を味わうため時間を使ったりと、負けることが決まっている悪役のような癖があるらしい。

 

勝利宣言とか勝ちを確信して手札のネタバレとかマジでやめようね本当に。

 

少しずつだが、クラスメイトや他のクラスとの交流も増えつつ高校生活が進んでいく。

ヒーローになるなんて、実際のところ狂気の沙汰ではあるのだが、それでも彼らは矛盾するように健全な若者でもある。

 

友人を作り、成績で一喜一憂し、そして成長していくのだろう。

 

俺はもう諦めたが、彼らには青春をしてほしい。

 

あ、なんかミッドナイトみたいな感じになってきたかもしれない。ようやく叔母さんの気持ちがわかった。自分にはもうないその輝きが愛おしくて、そして羨ましくて仕方ない。




印照才子ちゃんはアニメのオリキャラです。ポンコツなのとキャラデザ好き。
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