第三次世界大戦が終結してから、国家間の総力戦というものを行うことはできなくなった。内戦や内乱、国内の不安定化も原因であるがひとえにそれは世界が共通で抱えたトラウマからだ。
世界大戦の終わりは奇しくも前回と同じ、核兵器によって引き起こされた。
中国が個性による誤認によって弾道ミサイルを検知して報復攻撃を実行。それに呼応してアメリカが放った核ミサイルが空を飛んでいく時に、人類の誰もが後悔をした。
全てが無に帰すとわかってから初めて人類は学んだのだ。自らの愚かさというものを。
しかし、約束されたはずの破壊はついに起こらず弾道ミサイルの軌跡だけが消えていく。
なぜか途中で全弾撃墜され、そして全ての国が一度停戦を果たした。直後、世界へと発信された声明は歴史に今なお残っている。
『国際社会と国民の皆様へ
本日、わが国を含む、同盟国および、周辺国へ向けられた複数の核弾頭搭載ミサイルに対し、日本政府は自国の防衛システムにより迎撃・破壊しました。この行動は、わが国および世界全体への壊滅的な被害を避けるための、苦渋の防衛措置でした。
今回の迎撃が国際社会に与えた影響と、被害の可能性に対し、深い遺憾の意を表明します。核兵器の脅威が現実となる中、被害拡大を阻止するためのやむを得ない防衛行動であったことを、ご理解いただきたく存じます。わが国は、事態のさらなる拡大を断固阻止するため、直ちに以下の措置を国際社会に呼びかけます。
即時停戦と攻撃中止、国連安保理の緊急招集と調査、残存核兵器の撤廃。
これらの対応も全て、世界がまだ存続しているからこそできることであり、その幸運を全人類が一体となって認識すべきものと考えます。
私たちは改めて全世界に訴えます。核兵器の存在は人類の究極の脅威です。今日の出来事は、核兵器の存在自体が決して容認されないことを明確にしました。本声明は最初のものであり、新たな事実や国際協議の結果に基づき、追加の声明を発表いたします。』
日本の旧式の迎撃システムによって、全弾を落とすなどあり得ない。あらゆる専門家や、多少なり賢い人々は気づいていた。しかし、現実には世界が終わっていないという証拠に誰もが口を閉ざす。
政治学者も違和感を指摘する。大戦時においてもリーダーシップを発揮することのなかった日本の総理大臣及び内閣が、なぜか核戦争の後から人が変わったかのように果断に行動し実績を上げ続けていることを。
あまりに不自然すぎることが起きていたのに、滅亡が迫った衝撃に麻痺して世界はそれと向き合うことはできない。これを陰謀として処理するには、あまりに目撃者が多過ぎた。億人をゆうに超える人々が世界が終わる寸前の空を見ていたのだから信じざるを得なかった。
戦後、日本が主導した世界の核廃絶はあり得ないほどスムーズに進み。1945年7月16日以来の安心がこの世に戻ってきたのだった。
『奇跡の内閣』と呼ばれた彼らは戦後の日本を鮮やかに構築し、個性と共生する社会を形作り今日に至る。
まだ無個性の多かった時代だが、彼らは個性を持っていただろうと語られている。それほどに人間離れした仕事ぶりだったらしかった。
第三次大戦以降、ゼロではないが少なくなっていた大国同士の軍事的な大規模衝突。
かつて大戦を終わらせた男が、同じように笑いながらまた戦いを始める。
「久々だろうこういうのも。そこはもうどうなってもいいから、派手にやろう」
はっは。と笑い、指を動かせば再び殺戮のための機械が飛んでいく。大人たちは再びの戦争の気配に気づき。子供達は初めての感触に困惑する。世界が青ざめていくようだった。
それらは二つの目標に向かって飛んでいく。
一つ目。ミサイルの軌跡が描く中心。飛行機雲の集中線の先にいるのは彼だった。平壌市内の政治的中枢に殴り込みをかけたオールマイト。すでに目的だった人物は見失っていたが、敵も助けるべき市民もそこには逃げ遅れている市民も多い。
そこに降り注ぐ同盟国からの首都への爆撃。それはどんな想定にもあり得なかったが、どれだけ否定しようとも現実として迫ってくる。
その膨大な殺意を向けられたオールマイトは考えていた。オールフォーワンはきっとどこかで牙を研いでいて、いつの日か再び現れるだろうと。
「それにしたって、やりすぎだろう!!」
だけれどこれは、想定の規模とは違い過ぎていた。文字通り
しかしそれも、かつての感覚だ。今では奴のやりそうなことを自分以上に想像できる仲間がいて、準備もしている。
「だけどもう、お前の時代じゃない。もちろん私の時代でもない。後進に道を譲る時だ」
自分ではみんなを助けきれない。大量破壊兵器の雨から市民たちを助け切ることはできない。
「お前と戦うのはきっと、そちらから仕掛けてくることになるだろうと思ってたよ。でももう違う。今回は、『私が来た』んだからな」
オールマイトは戦争など決して起こしたくなかったが、いずれ起こることはわかっていた。ならこちらから仕掛けましょうという淡輝の言葉に頷いたのは自分自身だ。これから起こること全てが自分の責任である。
人は死ぬ。間違いなく犠牲は出る。
しかしそれでも、それでもだ。
「信じてるよ。狩峰少年。そして、期待してるぞ。緑谷少年」
-・・・ -・-・ --・-- -・--・
降り注ぐ砲撃は、その光の色と尾を引く線で世界の終わりを空に描く。
光点がいくつも瞬き、そして煙をあとに残していく様だけを見れば綺麗と言えるかもしれない。しかしそれがそれを埋め尽くすように敷き詰められたらどうだろうか。
まるでかつての世界大戦の如きその光景は、オールマイトですら見たことのない迫力を伴っている。
このままでは付近の人間はみんな死ぬ。自分の巻き添えを喰らって人が死んでしまう。
それを確信するが、それは何も起きなければの話である。自分なら無理だった。ある程度の砲弾やミサイルを散らすことはできるだろうが、全部はとても無理である。
そして光点が迫ると、それらは途上で爆発していく。空中で爆発したり、不発になって地面に突っ込んだりとそれらの本来の破壊を引き起こせていない。
『超多重防空雲が機能しています。想定以上の撃墜率です』
展開されたドローン群の本当の役目はこれだった。その全てを落とすことはできないが、人的被害の出る軌道のものだけを優先して撃ち落とす離れ技をUAIの統合サポートAIは難なくこなす。
その計算能力は既存のスパコンでは比較にならない。世界初の生体コンピュータと量子コンピュータが試験稼働を始めているが、まさかこれほどとは。
「いやはや。大きなことを言うだけあるじゃないか少年!」
一般市民には一発も通さないと事前に言っていた狩峰淡輝の言葉を信じた結果がこれだ。
おかげで最高の気分で集中できている。本来なら自分が必死の救助をしているときにやりたかったであろう奇襲が迫っていることにしっかりと気づくことができた。
迷いなく自身へと迫る影が3つある。
これは異常なことだった。敵はほとんど自分から逃げるものであり、交戦は起これど打倒を目指して正面からやってくるのは先日のミャンマーが5年ぶりであった。
敵が見えた。
二人は大柄だ。もう一人はあまりに小さい。可憐な少女という出立ちであるが、どうやら普通の人間ではないらしい。
頭部が鷹のような大柄の人物は、その大きな体を丸ごと隠せそうなほど大きな盾を構えている。
決して異形型の個性を持つ彼のことを人間ではないと表現した訳ではない。
問題は少女の方だった。
球体の関節。動かぬ表情。彼女はどうやら人形のような体を持っているらしい。何かの個性だろうか。UAI製のアンドロイドのような重量感を感じない。
「さて、厄介そうなものを持っているな?」
鷹人の持っている盾に注目すれば、違和感がそこから溢れ出していることに気づくだろう。
あの黒い盾はおかしい。肉を貼り付けたパッチワークのようなデザインに嫌な予感が止まらない。
あれは、生きている?
よくよく見れば、もう一人の大男が持っている巨大な斧のようなものも蠢いている。
『生きた人間を加工して、個性を発現できる状態で武器化しているようです。注意してください。個性受容体を超えた因子を与えられても1~2日は生存できるという報告もあります。どんな個性を与えられているか分かりません』
それを聞いた時、どこかであの男が笑っている姿を幻視した。人間をおもちゃか粘土か何かかと思うような無邪気な冒涜はオールフォーワンに決まっている。
そうして怒りを力に変えようと決意をした瞬間、脇腹が爆発した。
ズガァンという金属が爆発的に何かにぶつかる音。それに遅れて激痛と衝撃が体を浮かせる。
凄まじい衝撃と激痛が爆ぜて、体勢を大きく崩される。
起きたことはシンプル。
いつの間にか間近にいた男が至近距離でパイルバンカーをぶちかまし、その隙にこれまたいつの間にかそこにいた目隠しをした女が短剣を突き入れてくる。
直撃の寸前に嫌な予感がして身を捩り、不完全だが右手を盾にする事ができたがそれでも致命の一撃を入れられる。脇腹から入ってきた短剣が臓器を抉るその寸前。全力で跳躍し、その軌道を逸らした。
余計に筋肉を傷つけられたがそれはいい。五臓六腑は守られた。必要であれば内蔵をぶち撒けてでも戦い抜くつもりだが、まだ命をかけるのはここじゃない。
彼らはオールフォーワンの手先であって本命ではない。
大剣男は片腕を犠牲にしての一撃を放ったようで、その一撃のみで離れていく。無事な左手からワイヤーを射出して高速移動で離脱する姿には一切の迷いが見えない。その方角にいるはずの存在は自分も知っていた。
「気をつけてくれ……。こいつらは手強いぞ、いやそれくらいは知っているかな」
呟き心配をしてみるが、彼の方がよほど状況を理解しているのだろう。これは多分杞憂なのだが、世界で自分だけは彼を心配し続けると決めたからこれは続けさせてもらう。
『オールライトの大きな損傷を確認。48%の出力低下。機能制限を行います。短剣から複数の毒物を検知。コンテナと合わせて解毒薬を調薬し届けます。あと3分お待ちください』
そしてインカムに届けられるのは、身につけた義手と連動するサポートAIからの報告だった。
このオールライトを一撃で破損させるとは、どんな威力だよ一体。
「よし。じゃあやろうじゃないか。私はここにいるぞ」
「がはは。やっとだ。ようやく会えたなオールマイト。あの一撃を受けてもたったのそれだけとはやっぱりやりやがる!」
その男はもう一人の大柄の男。その体躯はオールマイトに比する程であり、筋骨の大きさも負けていない。兜の中の口は弧を描き、好戦的な表情を隠しもしない。
「一応確認だけれど、君たちはオールフォーワンの刺客だと思っていいんだろうね」
「ああ、あいつは色々してくれた。後継とかなんとかは知らんが、おかげでお前と正面からぶつかれる。近海の男はやっぱりこうじゃないとな」
「一騎打ちでなくていいのかい?近海の男たちの礼儀はどうなっているだろうね」
その返答をしようとした時、彼の後ろにいた少女が体から雷を迸らせて、それを掴んだ。
振りかぶると、雷がこちらへと飛んでくる。
先ほどの将軍は実際の雷速だったのだろうが、こちらはそれに比べかなり遅い。だからこそ、これを脅威と認識し過剰なまでに回避行動をとっておく。
余裕を持って避けると。雷の槍は地面に当たって拡散し、広範囲に雷が散らばった。
「黙っていろお前ら。馴れ合う必要があるか?あれを殺せばいいのだからそうすれば良い」
結論から言えば、少女がこの場で最も好戦的であった。
「ま、色々あるんでな。勇ましく戦って死んでくれや、オールマイト」
そう言ったのが合図だったのだろうか、死角から現れた短剣の女が今度は歪な杖のようなものを持っている。
それもまた蠢いており、人が元になっているのだろう。
先端が瞬くと、鋭い結晶の塊を射出してきた。散弾のようなそれは避けることを許さない。
これまた嫌な予感がして、避けようとするが一部は受けてしまった。
『結晶弾は着弾後成長するようです。被弾を避けてください』
右の義手で受け止めるが、刺さった結晶が伸びて侵食しているらしい。右手が悲鳴をあげていた。非常に頑丈な義手でこれなのだ。肉体に刺さればひとたまりもないだろう。
「こっちも忘れてくれるなよ」
大ぶりの一撃。背負った特大の斧ではなく、盛大な踏み込みから繰り出されるのは拳だった。
差し出された手を握るのが当たり前であるように、振り翳された拳には拳で答えるのが礼儀だろう。
デトロイト・スマッシュ!!!
大ぶりの右に合わせるのは、こちらも渾身の右ストレートだ。
常人であれば首が跡形もなく消し飛ぶような一撃を互いに左の頬で受け止める。一歩も引かず、力を逃さず。どっしりと腰を据えた拳撃はその衝撃派だけで人形の少女は飛びそうになるほどだ。
目隠しをした女に捕まって足が浮いている。
「いい威力だ!」
そう言って繰り出される次のアッパーやフックを防御するも、冷や汗をかいてしまうのは避けられない。
おいおい嘘だろ?渾身のデトロイト・スマッシュが少しも効いていないじゃないか。流石に何かの個性だろう。それでなければおかしい。
『以前に戦った脳無と同じショック吸収であれば、刺突攻撃が有効です。右腕を変形。鋲モードへ変形します』
即座に右腕は対応し、衝撃に強い相手にも有効な形に変わっていく。本来相手を穿つような傷を与えることはしたくないが、UAIの医療技術に信頼をおくようになってからは多少なり戦術に幅も出たのだった。
しかし、彼はあの時の個性とは違うように思える。あの脳無は常に発動しているタイプだったが目の前の闘士は多少なり傷ついている。先ほどまでと違い全力でないのに、傷がつきここぞという時にダメージが軽くなっている感覚だった。
発動型の個性だな。そして……。
何より不穏なのは、ダメージの蓄積と比例して彼の体から蒸気が上がっていることだ。熱量を溜め込むように、圧力が高まっているのを感じる。
先ほどの一撃よりもはるかに強い何かが来ると確信できた。
だが、そんな大きな隙は与えない。左右のストレートと手刀。掴み技に振り下ろし。多彩な技を高出力で連打していると流石に防戦一方となっている。
だが、それを許すような甘い連中では当然なかった。
凄まじい速度で伸びてくるのは槍の先に斧がついた斧槍である。まるで蛇のように曲がって見える技巧を見せつけながら鷹の戦士が戦いへと参戦してきた。
赤く分厚い布が途中でつけてある軍旗のように見えるが、その実態はこれもまた個性を過剰に詰められた人なのだろう。
それを掲げることで、その槍自体が叫びを上げた。
号令にも聞こえるその声は、きっと元が軍人であったのだろうと想像をさせる。
『敵全体の動き、および発生するエネルギーが先ほどより23%上がっています。耐久力にも強化が入っている可能性があります。注意してください』
「味方への強化まであるのか。多彩で羨ましいね本当に、ただ私はこれしかできないんで、ね!!」
全力全速で結晶の杖を持った女性へと接近し、その意識を刈り取る。
そのはずだったが、上から落ちてきた鷹の戦士に阻まれる。先ほどよりも一層ダメージが通らない。これは特定条件下での無敵に近い個性だろう。
厄介すぎる。
カウンターで雷の槍をくらい、一瞬体が止まってしまう。
その隙を逃さず大男が身体から迸る闘気のようなそれを拳に集めて大きく構えた。下からのアッパーをガード越しとはいえモロにくらう。
頬肉とその先の頭部の肉が削り取られた。顔面を削られそれでも勢いは殺せず、体が空へと舞い上がる。回転する。
回る世界の中でも周囲を冷静に確認し彼らの連携に舌を巻く。
落下の際に結晶の砲撃と、雷の束が迎えようと予備動作を始めていた。空中を蹴ることもできるが、しかしオールマイトは力を溜めることにした。
避けることはせず、こちらも不動で次の攻撃の準備へと切り替える。極限の集中は、いかに相手を倒すかしか考えていない。
襲撃者たちはその様子に眉を顰め、大男だけは笑った。
その理由はすぐにわかった。
殺到する必殺の遠距離攻撃を防ぐのは、どこからか飛来した機械のコンテナである。
サプライボックスを送る手法は空軍を今だに保有する国にはあるにはあるが、これは速すぎる。
音をはるかに置き去りにする速度で突貫し、すべての攻撃を受け止めてそのままに、後衛の女二人へと突っ込んでいく。それは超音速ミサイルのようなものであり、人に使うような攻撃ではなかった。
鷹の戦士が咄嗟に体を挟んで盾で受けるが、その運動エネルギーを受け止め切ることはできなかったようでギリギリ横にそらすことが精一杯である。肉がはぜるような音がして、盾が壊されて戦士は横に弾け飛ぶ。
おそらく全身が砕けているだろうが、殺してないよな!?狩峰少年!!
そのままポッドは離脱し、加速。そして再突入してもう一度引き倒そうと音を超えて飛んでくる。
大男の場所まで残る二人が即座に集まり、彼を盾にするような陣形を組んでいる。
怒号をあげて、彼が地面を掴んで持ち上げる。
そう見えたが、実際には地中にある何かを引き上げている。四角の鋼鉄の墓標。そう見えたのは一瞬で、それはコンテナであるようだった。
凄まじい音を立ててぶつかる二つの金属は周囲に破壊をばら撒きながら、千切れ飛んでいく。
その中から、直前で飛び出したものがあった。
それに合わせて右腕を発射。最後のロケットパンチが敵へと迫る。
内蔵されたあらゆる武装とエネルギーを限界まで酷使し、換装の時間を確保。飛んできた各パーツを受け止める。それが次々と鎧になっていく。
ひとつ、またひとつ、火花を散らしながら身体に叩きつけられ、肉体に吸い付くように固定されていく。肩に重厚な装甲が食い込み、胸骨を圧迫するかのように胸部プレートが衝突し、強引に収まった瞬間、内部で駆動音がうなりを上げる。
左腕へは、滑るように金属の鞘が飛び込み、骨格に沿って組み上がっていく。指先は次々に包まれ、硬質の爪のような端末が噛み合うたび、青白いラインが走り起動を知らせるようだった。
脇腹や背中に食い込む衝撃は、常人であればそれだけで死ぬほどの威力だがオールマイトには関係がない。最後に頭部へと迫るヘルメットが、鋼鉄の翼のように両側から閉じ合わさり、視界が暗転した瞬間、内部スクリーンに光が走る。
『戦闘モードを起動。ARMORED ALL MIGHT
「これを見せるつもりはなかったけれど、ここで時間をかけるわけにはいかないんだ。できるだけ多くの人に声と笑顔を届けるのが仕事なんでね。こんな道草を頬張っている場合じゃあない」
戦いの中でこそ平和の象徴が最も輝くというのはなんという皮肉だろうか。
それに歯噛みしつつも、食いしばって笑顔で立つ。
ワンフォーオールの残火は、使うごとに時間が過ぎるほどに消えていく。斜陽の中で衰えつつあっても、それでも彼は最強だった。彼の中で炎はまだ燃えている。熱い心はまだ燃える。
「私は行くよ。どこまでもね」
分け隔てない微笑みを敵にも向け、顔を削られた出血や胸の傷などなかったように、堂々と立つ男は揺るぎない。
平和を望む意志を誰よりも示し、残酷な戦争へとその拳で挑む。
憧れのヒーローを体現するため、他の何も考えず、みんなの夢を守るために。