図書館に入り浸るまでのルーティンが固まると、毎日が安定して過ぎて行く。
だんだんと何一つ変わり映えのしない光景を見るのに嫌気が差してくる。
友達の挨拶も、ふざけた冗談も、秘密の話も。その全てをもう何度聞いたか覚えていない。
みんなそこにいるのに、いないような気がして一人ぼっちになっていく。
やがて興味は本を読むことだけに偏っていき、新しい物や違う世界を求めて活字の世界に逃げ込んだ。
ネットやテレビなども見ようかと思ったが、夕方以降にそれをつけると嫌でも事件の話が目に入ってくることになるから見ていない。だいたい、ヒーローがひっきりなしに登場するから元から嫌いだったし。不便で古臭いけど、何も押し付けてこない図書室が唯一の助けになっている。
だけれどここにきて、見ないふりをしてきた問題が無視できなくなってきた。だからせめてそれを解決するために、嫌だけれど人と話すことになる。
この時点ですでに、目覚めた数はたぶん150を超えていて。それはつまり同じ二日間を約1年もの期間を繰り返していることになる。初日はここで過ごして、二日目は家で本を読んでそしてまた戻る。以下ループだ。
家族が死に続ける地獄の中で、それだけをしていたのだから新しい本が見つからなくなったというのは死活問題である。
「他に本はないですか?」
このところ言葉を喋ることも極端に少なくなったけど、これは必要だから無理やりに捻り出す。最初の挨拶以外に話しかけるのは初めてだった。司書さんはいまいちピンと来ていないようだ。
彼女は40過ぎくらいの女の先生で悪い人じゃなさそうだった。ただ、これまでは図書館に入るための許可を出すだけのNPCだと思っていたからいつもと違う言葉が出てきてちょっとびっくりする。
「あら、こんにちは。え〜っと?いっぱいあるじゃない。どんな本を探しているのかな?」
「もうだいたい全部読んだから、他のがあったら読ませてほしいです」
「あはは。先生をからかうんじゃありませんよ〜」
何だか久しぶりにイラッとしたかもしれない。子供扱いして話を聞かないのはムカつく。だけどここでキレても仕方ないから、むすっとした表情のままでも会話を続ける。
「じゃあそれでいいから、教えてよ。見える範囲の本以外にないの?どっかにしまってるのとか」
「え〜。何かしらそれは。でも、まぁ。授業をサボってまで本を読みたい子には何かをオススメしてあげたいけれど」
児童向けの人気コーナーの作品をいくつか見繕って渡してみると、その反応はあまりに早いものだった。
「これはどうかな?」
「読んだ」
「あ、あらそう。まぁ人気だものね。じゃあこっちかな」
「読んだ」
「これも!?意外と読書家だったりして。そしたらこれかなぁ」
「読んだ」「読んだ」「読んだ」
その反応が続けば流石に司書先生は怒り出す。
「そんなには読んでないでしょう流石に!だってあなた図書館来るの今日初めてよね?これって書店じゃ最近は売ってないはずよ。どこで読んだのかちゃんと言える?」
「ここで読んだ」
「嘘おっしゃい。今日で初めましてなのに。じゃあそうね。読んだというなら内容を言ってみなさい」
その言葉に、本当に久しぶりに笑みが浮かぶ。
だって俺はただ本を読んでいただけじゃない。いつでもお父さんに話せるように中身をちゃんと理解して覚えていたんだから。
待ちに待ったお披露目に興奮しながらつらつらと内容を答える。そしてそれが何冊かで繰り返されるとさすがに司書先生も愕然とするしかないようだった。
「嘘でしょ!?いや、あなたの個性なのねきっと。それともお父さんが本屋さんとか?休日は図書館にずっといたりして。それなら私とおんなじね」
この世界ではなんでもありだ。信じられない光景を見たのならそれは知らない個性が原因であると考えるのが自然というもの。
「ごめんなさい。疑ったことを謝るわ。読書家で偉いし、そんなにちゃんと内容を理解して人に話すことができるなんてすごいんだから!え〜っと。そしたら、私のオススメコーナーがあるんだけど。この辺りは読んだことない?」
割と高い位置にある本棚。そしてその表紙の言葉はどれも難解そうで難しくまだ読んだことのないものだった。哲学書のあたりは何を書いてるのかわからないから本として見ていなかった。
先生が取り出したのは哲学書だったが、オススメはそのものではなくてもっとわかりやすい解説本のようだった。それを探している。
「まだ読んでない。それでいいから貸して」
「え、いやこれは例えで出しただけで最初に読むには難しいと思うから……」
「いいから貸して!」
「うーん。最初から躓いて欲しくないんだけど、でも熱心な読書家さんみたいだし……。そうね。じゃあ明日までにわからないところをメモしておくのはどうかしら。私は今日早めに上がるから、貸し出しもしておこうね」
淡輝はこくりと頷いた。ああ、そういえば今までもずっと途中からは一人になってた。都合が良かったし興味もなかったから気にしたことがなかったが、司書先生は今日早上がりらしい。
司書先生がいなくなってしばらくすると、保護のために警察が来る。それまで夢中でもらった本を読んでいた。
一冊あたりの情報量が多すぎてちょっと眩暈がする。合間で最近のハウツー本を読んでいるとどれだけ簡単にされているのかわかった。
そして1ヶ月近く理解も曖昧なまま哲学コーナーの本を読んでいるとある本に出会った。
その本の名前は『ツァラトゥストラはこう語った』というもので、とても内容が難しくて読み進められなくて途中でやめた。
なんだよ。超人って。意味不明だ。これじゃお父さんに説明してみろと言われても出来ない。パラパラと翻訳した人の序文を読んでいると、変に心に残った言葉があったから先生に聞いてみることにした。
『永遠回帰』という言葉の意味をちゃんと理解できていないけれど、これはきっと大事なことだからこれを知りたいと思ったのだ。
「永遠回帰ってどういうこと?」
「あら、よく見つけたわね。それはちょっと難しい言葉だけど、すごく面白い考え方なの」
自分の好きな盆栽について質問をした時の爺ちゃんみたいに喜んでいる。きっと先生も好きなんだろう。
「想像してみて。もし、この人生が、今この瞬間から、何もかもまったく同じように、何度も何度も永遠に繰り返されるとしたら?あなたが今日食べた朝ごはんも、学校で先生に言われたことばも、夕焼けの空の色も、ぜーんぶ、永遠に繰り返されるの」
その例え話に、淡輝は息を吸うことすらできない。だってそれは、それが自分の状況なのだから。
「もしそうなったら、あなたは『そんなのつまらない』って思う? それとも、『またあの楽しい瞬間を体験できるんだ!』って思うかしら?」
可能な限りの不快の感情が溢れ出るが、表情は置いてきぼりの無表情のまま答える。
「全部から逃げる。何も考えなくなって、それで一人になって本を読むに決まってる」
「あらあら。でもそこで本を読むなんて素敵ね。きっと何かの言葉と出会って何か考えが変わる時がくると思うわ。うん。読書は決して無駄にならない。時代と場所を超えて著者とお話ししているようなものだもの。覚えておいてね。本を一人で読んでいても、決して一人にはならないのよ」
脇道にそれてヒートアップしてしまった話題を戻すように先生は姿勢を正した。コホンと小さく一つ咳をしてから話を戻す。
「もしも繰り返すことになった時、『もういやだ!』って思うのか、『よし、それならその繰り返しごと好きになってやろう!』と思えるのか。ニーチェっていう人は、そこで好きになることを選ぶことが生き方の強さなんだって言っているの。つまり永遠回帰は、同じ毎日が永遠に続くとしても、それでも生きることにYESと言えるか?を試す問いかけということね」
そこまで言われて、ようやく理解が追いついた。そして生まれてきたのは怒りだった。
ふざけんなよ。繰り返しても好きになれって?馬鹿じゃないのか?
ニーチェとかいう人は有名なんだろうがどうせ自分でやってみたことなんてないんだろう。やってみてから書けよと叫びたくなる。
怒りのままにその本を投げ捨てて、二度と触れないことを心に決めた。
そうして時が過ぎていく。
……
…………
………………
同じ時間だけが繰り返し過ぎていく。
-・・・ -・-・ --・-- -・--・
そこから1年が経つ頃にはすでに確信していた。
思考があまりに早くなっている。考えが深くできすぎる。端的に言えば、頭が良くなった。
知識を詰め込んだだけでこうなるのだろうかと疑問に思い調べてみる。しかしそれらしい根拠は見当たらなかった。
調べていて気づいたけど。この状態は少しおかしい。
肉体の状態があの朝に戻るならなんで記憶が続いてるんだ?記憶は物理的な脳内の電気信号とシナプスの配置であってそれはリセットされるはず。
じゃあこの連続する意識らしきものはどこから来ているんだろう。
魂ってあるのかな。
哲学を学びながら、宗教や霊魂についての本を読み始めた。個性終末論などのオカルトに片足を突っ込んだ仮説がいくつか出てくる。魂は存在しそれを確認した個性もあったとか。それは研究というには主観が強すぎるが、個性が出現してからの論文は過去のように厳密さを求められない。
一つだけ、面白い仮説があった。個性にまつわる超常は人間から生み出されるものではなく別次元から引き出しているだけという仮説だ。
魂の領域がこの世界とは別にあり、そこから力が引き出されているのだとか。その根拠はよくわからなかった。研究者はこれを最後に何一つ学説を発表しておらず、どうやら心を病んでしまったようだった。
僕の魂、記憶は別次元のどこかに保存されているのだろうか。
そんなことはわからない。でも、そうでもないと説明がつかない気がしている。この状況は一体なんなんだ?
そうして時が過ぎていく。
……
…………
………………
同じ時間だけが繰り返し過ぎていく。
-・・・ -・-・ --・-- -・--・
あれからずっと本を読んで過ごしていた。
起きてから3冊、寝る前に一冊。次の一日で6冊くらい。
司書先生に教えてもらった哲学という分野は非常に面白かった。
何より理解に時間がかかるし、読んでもわからないことが多いから一冊で結構長持ちするのも素晴らしかった。
昔より考える力が増えて、自分がいかに子供であったかを自覚しそしてその純真さを今はただ懐かしく羨ましく思っている。
幸か不幸か、自分の精神状態は起きるたびに最善へと戻る。これは個性の効果だ。一度寝れば落ち込むことすらできない。
その状態で思考をして行動を決定していく。
だってもしこれが無限に続くとするならば、何かをしてみるだけ得じゃないか?
読書によって得た合理性は狩峰淡輝の新たな行動指針となっている。
別に劇的な何かがあったわけじゃない。でもそう思いついたからやってみるだけだ。
再びあの銀行に向かってみた。父さんがいつも死んでいくあの場所に自分も向かう。
そして、あまりにあっけなく失敗する。
バカだった。自分で何かできるなんて思うなんて。知識があるだけじゃ何の役にも立たない。
その現実を叩きつけられると、しばらくまた逃げる期間になる。
そうして時が過ぎていく。
……
…………
………………
同じ時間だけが繰り返し過ぎていく。
今度は昔のアニメなどを見る。タブレットを持ち込んで見るのくらい楽勝だった。だけれど状況は変わらない。また飽きてくるほどに逃げると同じ疑問に向き合うことになる。
半年くらいで無視できなくなってきて、大体一年でまた挑戦してみるのだ。
起きると精神的には全快するのだ。思い出してくると体調も悪くなるが、その前に本に逃げれば問題ない。
最近見たアニメの主人公たちみたいに何度もやれば何か変えられるんじゃないのか。なんて思いついたので今回も動き始めた。
未来からきた主人公が周りに理解されずにイライラさせられる作品をいくつか見て、自分なら上手くやれるんじゃないかと思えてくる。
公権力やヒーローへの頼り方ももっと工夫をすればどうにかなるかもしれない。
前は何もしてくれなかったけど、ちゃんと調べて報告すれば、警察もヒーローだって事前に動いてくれるのではなかろうか。
そう思って色々とやってみた。
「一体何を言ってるんだ?もしや君の個性かい?」
「未来がわかる?それはすごい個性だけど、ちょっと待ってね。お名前と生年月日は?」
「こら!警察をからかうんじゃないよ。君の個性は『目覚め』だろう。個性届けに検査の結果までしっかりと残ってる。君がそんなことを知れるわけがない。だいたい、それが本当ならどんな規模のヴィラン組織だよ。そんなのは日本に存在しないよ」
警察はダメだった。だから事前にもっと調べて動かぬ証拠を突きつけたこともある。けれどその時にはなんだかもっと偉い人が出てきて全てを無かったことにされた。どうやって知ったのかと拷問されて家族ごと殺される。
そうしてまた一つ自分は大人になった。
ああ、なるほど。黒幕はしっかりと警察にも根を張っているらしい。頼りにしていた相手が敵の手札だったなんて笑えない。
じゃあヒーローならどうだろうかと頼ってみるが、そこではもっと相手にされなかった。
子供のイタズラとして処理されてしまい、証拠も何も、そもそも真面目に見てもらえない。殺意すら湧くほど世界の大人というものは子供に対して真剣に話をしようとしないのだと身に沁みた。
警察は敵で、そしてヒーローは何一つ役に立たない。
じゃあもう自分が頑張るしかないじゃないか。
最初にダメだった自分で解決するという試行錯誤に戻ってきて、狩峰淡輝の悪夢のような戦いが始まる。
その目には苦難に立ち向かう覚悟と、希望を灯しながら。
幼い自分は立ち上がったのだった。
そして俺は今、お父さんのいる銀行の一室で倒れていた。
顔にはスーパーの袋か何かが被せられていて、それはほんの少しだけ周囲を見渡せる。ひどく濁った視界には世界の影しか映らない。
何かがやってきたり、物が動けば影としてわかる程度。そして息をするたびに呼吸に合わせて袋が口に張り付いてうまく吸えない。
誰かが来た。何かを引きずって、そしてこちらに近づいてくる。
この時に初めてアレと出会うことになる。黒幕でもなんでもない。相手の手札の一枚でしかないアイツ。それでもここからずっと自分の悪夢の象徴としてこびりついてくるこれに出会ったのはこの時だった。
「だあぁめじゃないかぁ〜!銀行に勝手に入るなんてさぁ!」
手足は縛られて、そして目隠しまでされている。不快な声がキンキンと刺さり内容がこぼれ落ちていく。
「だいたい今は学校の時間だヨォ!?不良じゃないか!よくないねェ!」
言っていること自体はまともというのも気持ちが悪い。
「大人のいうことに返事ができないなんて、親の顔が見たいなぁ!?見ようか。じゃあ、一緒に見ちゃおうね!頑張って運んだんだからさァ!」
被せられていた袋ごしにしか状況がわからず、混乱が増す。
「淡輝!大丈夫か!?淡輝!!」
「お、とう、さん」
「どうなってんのォ?この子ったらさァ!すんごい悪い子じゃん。おじさんが学生の時にはねェ。いつも言うことを聞いててねェ……ずっといい子だったんだから……」
「お父さん!お父さん!」
そして、何かが脇腹に入ってきた。やけに歪なナイフが、肋骨を避けて入り込む。
悪趣味な突起が刃にはついていて、一定以上は捻らないと奥に進まないようになっているそれは、刃物としては最低だった。しかし、拷問器具としてはこれ以上ないほどに有効で、苦しみを与えるためだけに特化した形は今まさにその仕事を十全に果たしている。
想像を超えた苦痛を与えられた時、叫ぶこともできない。息を呑んで、そしていつも当たり前にできていた呼吸の仕方すらも忘れてしまう。
俺が呻いて、お父さんが叫んでいる。
そして、そこを支配し続けている証として笑い声が止まらない。
「やめろ!やめろぉ!!もう言っただろう!これ以上何も知らない。それでアクセスできるのか調べてみろ!!だからこれ以上やっても、何もないんだ。ないんだって言ってるだろうが!!」
周囲が真っ赤になって、痛覚がぼやけてきた頃にそんな言葉が聞こえた気がした。
「ああ、そうだね。信じるよォ」
そして、あいつは袋を取った。
中肉、中背。普通の背格好であるというのは後からの冷静な分析であって、当時はそんなことに気づけるわけもない。
ただひたすらに気色の悪い部位に目が奪われる。
その頭はカツラのような何かを被っているとわかる。しかしそれはあまりに無造作で乱暴で、自分の地毛が下からも見えている。
そいつは、額に滲む誰かの血を拭うと、ニタリとその白塗りにしたピエロのようなメイクを歪ませる。
ピエロが恐怖を煽る存在になってから時間は長いが、ここまで醜悪で邪悪で、人間離れしているものはどんなスリラー映画でも見たことはなかった。
そいつのカツラは、元は誰か女性のものだとわかる。無理やり頭皮ごと髪の毛を奪ったそいつは、それを無理に被っているのだった。
彼のコートには、幾つも釣り針がついていて、そこに今回の被害者たちの耳が幾つも引っ掛けられている。
あ、あれは。多分、自分のだ。
古い耳はすでに腐っていて、異臭が立ち込める。そんな臭いをそのうち放つと思うと嫌でたまらない。もっと嫌な苦痛や死が間近だというのに不思議とそんな想像で嫌な気持ちになるのだった。
寒くて寒くて、これ以上は顔を上げることもできない。
ピエロが笑い、自分の姿を父に見せつけている。
後に知ることになるヴィラン名は『モルヒネ』という怪人だ。円馬透真という本名を探り当てるまで非常に手間がかかってしまった。
「じゃあ、これで一発芸してよ。面白かったら助けてあげちゃうかもよォ」
息子が死にかけている目の前で、息子の耳を使って何か笑わせろとそいつは言う。デバイスをこちらに向けて、動画でも撮っているらしかった。
「ほらほら!!お母さんのチャンネルで、みんなが見てくれてるよォ!!すごいや!もう20万人も!流石に登録者が多いと違うなァ。でもでもでも!BANされる前にさァ早く!早くしないと死んじゃうよ?」
母さんのアカウントを使えているらしい。ああ、父から聞き出したのか。最悪なことに生配信だ。
まさに子どもの仇であるそいつを喜ばせないといけないという抵抗感にも、世界中から見られているという屈辱にも父は一瞬で打ち克ったようで、すぐに何かしらをし始める。
必死に笑わせようとして、滑稽な動きを歯を食いしばってどうにかしている。
世界へとその醜態が流される。安眠を求めていた人々に、悪夢のような無様な芸が届けられる。
それを見て、淡輝の中の何かが、もう一度折れて、ぐちゃぐちゃに壊れる音がした。
ピエロの笑い声がこだまして、血に塗れた必死のギャグを聞きながら死んでいく。笑うという事ができなくなって、父の顔を一切見れなくなったのはこの時からだった。
痛みを決して忘れさせない笑顔のモルヒネが脳裏に焼き付いて離れない。
立ち向かうと決めた覚悟は直後に粉砕され、希望などというものは一笑に付される。
狩峰淡輝は孤独な思考という名の洞窟に再び閉じこもることに決め、以前のそれよりもはるかに長い期間を過ごすことになる。
もう先生と本だけでいい。そう思って、家族と関わることをやめた。