夢のヒーローアカデミア   作:ZAT23

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戦後の戦争

平壌に作られた仮設の医療拠点。そこには大量の軍人たちが運び込まれている。身体的な機能については一点を除いて健康なものが大半だ。

 

それは目が見えないということ。

 

彼らは武器を捨てず、戦う意志を見せ続けたことでドローン部隊に目を焼かれた兵士たちだった。指導者に見捨てられ、大国同士の戦いのダシに使われた。故郷を戦場にされた哀れな前座の役割を押し付けられたものたち。

 

コミックやアニメのクレジットがあるのならきっと、モブAやBという名前で処理されているだろう彼らにも一人一人に名前がある。生まれた故郷も、母親も。彼らの物語がそれぞれにあるのだ。

 

誰もがモブのように焼かれて光を奪われているが、きっと治療をしてから世界の現実を目の当たりにするだろう。外国の現在を全く知らない彼らが、UAIの街並みを見て何を思うのだろうか。

 

何人かはきっともう故郷には戻らないだろう。それでも幾人かは戻って、それでも忘れることはできなくなる。自分たちの当たり前が地獄のようであるのだと辛くとも知るところから。そこからしか世界は変わらないのだから。

 

正直に狩峰淡輝にとって彼らのことは重要ではない。モブというと響きは悪いが、多くの人間はそうだろうと思う。今のこの生活に関わらない。第何世界の誰かさんがどれだけ死のうが関係がない。そう思う人の方が、普通だと思う。俺は多分、普通だった。

 

オールマイトが異常であって、そう感じないというだけだ。そして俺にとって大切な人がそうであるなら、俺もまた無視はできなくなった。見ないことなどできないのだ。

 

彼らの多くはUAIランドの設備で即日の治療が可能だった。人工網膜の簡易移植はすでに試験運用を終えており、希望者にはすぐに提供できるだけのストックがある。手術と麻酔はロボットによって行われ、人間には不可能なほどの速度で患者を治療することができる。

 

しかし、問題は『緑化』されている緑人兵と呼ばれる者たちである。葉緑体を体に埋め込まれて共生しているように見えるが、おそらくは強い拒否反応やアレルギーが出ていないか耐えられたものたちが今も生きているにすぎない。それらの調査と除去が可能なのかなど、これらは本格的に調査が必要である。

 

肌や髪の毛が緑色になっている彼らは、南極にある難民たちのための国。WHOが作った世界最大の避難所で治療と研究を受けることになる。

 

それらにはコストが大きくかかるし、それはUAIの負担になるが必要経費でもある。人々に葉緑素を埋め込むという非人道的な施術には多くの死者が出たのだろうが、そのデータと結果については人類を救うかもしれない希望を見出せるほどだ。

 

光合成によって人が生きていけるのなら、この世からなくせる戦いや悲劇が多すぎる。

 

『緑化』に関わった個性や研究者は全員拘束しており、そこから情報は吸い出せるだろう。狩人相手に秘密を守れる人間などそういない。

 

そういう意味でも彼らを殺してしまうのは避けたかった。

彼らを全員殺してしまって良いのなら、もっと効率的なやり方はいくらでもある。実利を考慮しないとしても、人を殺す最短の合理に身を預けないこと。それがナイトアイが残してオールマイトが示してくれた人としての道なのかもしれない。

 

それすら失ってしまったら人ではない。自身が絶滅することも知らずに好物を貪る、獣と同じなのだから。

 

 

・・- ・-・・-- ・・- ・・・・

 

 

郊外の医療拠点は先ほどとはまた異なる。慢性的な飢餓状態にある村々から、重症患者が集められていた。夜明け前の治療テントは、まだ氷のように冷えていた。

 

そこに集まる彼らは夜通し戦っていた戦士たちでもある。とはいえ徹夜での災害救助の訓練くらいはこなしたこともあり若さもあって、何なら大人よりも機敏に動けている。

 

ランプの明かりがゆらゆらと揺れる中、ベテランの軍人でもあり栄養士でもある士官が、雄英高校の生徒たちへと声をかける。まるで壊れ物を扱うように、浮腫でパンパンに腫れた患者の両足をそっと持ち上げ楽な姿勢に直してやっているようだった。

 

「この子はもう長い間、母乳やミルクを一口も飲んでいません」

 

彼は学生たちの目を見て、そして患者に向き合った。

 

「ここで一番やってはいけないのは、『可哀想だからたくさんあげよう』と思うことです」

 

遥は息を呑んだ。目の前の子は、まるで皮膚の下に水を詰め込んだように光って見えた。

 

「飢えた体は、急に食べ物を受け取ると壊れる。再給餌症候群というものは恐ろしい。心臓が止まるんです。肝臓が破裂する。腸が腐る。『救おうと思ったのに死なせてしまった』なんてことだけは絶対に起こしてはいけない。かつて歴史にあった悲劇を繰り返さないために、あなたたちは過去を学んでいるんです」

 

士官は、小さなカップを手に取った。100mlもない量であり心許ないように見える。

 

「最初の48時間は、2時間おきにこれだけ。たった30mlずつ。時計を見て正確に。『もう少しあげたい』って思っても。本人に望まれても我慢すること。ヒーローとして本能的に体を動かしてしまうと、医療の現場では人を、子どもを殺すことがあると覚えておいてください」

 

彼はカップを女の子の唇にそっと当てた。子どもは弱々しく首を振った。無理に飲ませず、ただ唇を湿らせただけだった。

 

「飲まなくてもいい。怖がってるだけだ。明日になったら、きっと自分から飲むようになる。それまで、俺たちは『待つ』のが仕事になる。もちろん危篤になれば他の方法で栄養と水分を補給するが、それも全員分があるわけじゃありませんから」

 

「覚えておいてください。飢餓の対応で一番大事なのは、スピードじゃない。どれだけ、ゆっくりと正しいことができるのか。ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり……それが、子どもが生きる唯一の道なんです」

 

外で、朝の最初の陽が昇り始めた。

 

「そして、君は非常に珍しい個性をお持ちと聞きましたよ。よければ別の子にあなたの力を使ってもらっても?」

 

「あ、ああ。よろしく、お願いします」

 

砂藤は人生で一番緊張していた。健康な同級生ではなく、触れるだけで骨が折れてしまうんじゃないかと思う子供。それも肋骨が浮き出ているような欠食児童である。もしミスでもしたら、自分が殺してしまうかもしれない。

 

ゴクリと気づけば唾を飲み込んでいた。

 

クラスメイトたちは、力仕事の運搬と看病へと分かれて医療活動へと参加していく。入学当初とは全く違う。訓練の成果をそれぞれが澱みなく発揮している。

 

でも、この場で一番に人を助けることができるポテンシャルを持っているのは砂藤力道だった。

 

患者の方には目隠しがされて、万が一ミスをしても大事にはならないよう腕のあたりをまずはデコピンの要領で打撃を加えていく。

 

それらの衝撃を変換し、彼女の中に元からあったかのように自然と生きるのに必要な糖が流し込まれていく。なぜか個性での変換は血糖値などの急上昇が抑えられる効果もあり、リスクが低いのだった。

 

そうして末端へと栄養補給をした後は、心臓マッサージの要領で中心静脈へと栄養を流していくのだった。そのリズムは一定で、そして一度の衝撃は大きくない。子供達もこれが医療行為であると認識できるのは意外と影響が大きく、それを拒否するものはいなかった。

 

胃腸がすでに機能していない子供への緊急的な措置であり、点滴すらもハイリスクと判断された子供にだけ砂藤の個性による栄養補給が優先されるとのことだった。

 

「すごい。これは……奇跡だな全く……」

 

感嘆の声に誇らしく思うより、安心のため息が大きく出た。

 

「さすがクラス委員だね!砂藤くん!かっちょいいぜ!」

 

透明なクラスメイトが褒めてくれる。嬉しいしようやく自分もヒーローになれたという感慨もあるのだが、砂藤には聞かなきゃいけないことがあった。

 

「あの、今は何人ぐらいいるんですか?」

 

自分がどれだけの人を救えるのか。それを恐る恐る聞いてみる。

 

「診断は現在進行形で増え続けているが、AIによる予測だとおそらく300名は超えるだろうとのことだ。うち半分が子供だな。150名ほどの重篤な飢餓の患者がいる。おそらくあと二日も保たないから、トリアージも必要だ」

 

「うそ……だろ?」

 

砂藤がこの力を使えるのは、おそらく一時間に3人できれば良い方であって途中で休憩だって必要だ。まる二日寝ずに個性の使用をすることはできない。途中で糖分を自分が補給しなきゃいけないし、集中が乱れれば衝撃を与えることになってしまうから。

 

すでにこの時点で、全員を救える方法がないのかもしれないと絶望しかける。

 

 

「ほら、これ食えよ。悩む前に食え。食いながら考えろ」

 

 

そこに差し出されたのはおにぎりだった。店で売っている綺麗なおにぎりではない。中に大きな唐揚げがドンと入った無骨な米の塊である。それにはちょっとかけすぎかもしれないくらいの塩がかかっていて申し訳程度の海苔と一緒におにぎりであることの最後の砦として機能していた。

 

それは、狩峰淡輝が作ったおにぎりであって、中々に雑でうまい男の料理って感じの一品だった。

 

食欲などないのに、それを受け取って自然と口に運んでいた。

 

塩気が強すぎる部分があって、それを誤魔化すように他の米の部分を頬張る。むしゃむしゃと食べながら、砂藤は気づくと涙を流していた。

 

「俺、ようやく役に立てると思ったんだ。雄英入って、このままじゃ何にもできない。ただ、お菓子を焼くのがうまい筋トレ好きで終わるんじゃないかって、ずっと不安でさ。でもこんな俺でも人を救えるんだって、そう思ったら嬉しくて……だから、全員を助けたいってそう思ったのにさ」

 

現実は変わらない。自分にできるのはせいぜい二時間に5〜6人だ。睡眠も必要だし、カロリー摂取もずっとしなくてはいけない。連続していけばこの治療速度は落ちるだろう。

 

2~3日で300人以上などというのは、土台無理な話だった。

 

「ゲイル先生が、言ってた意味がわかった。俺は、ちっぽけだ。腕が足りなすぎる。俺にできることが小さすぎるって今になって気付かされた。もっと、もっと訓練できたんじゃねえかって、今ならわかるのに……」

 

彼は必死に努力していた。間違いなくサボっていないし、誰もが認めるほどにハードワークをこなしていた。最高の設備で、本人は知らないが何なら未来の情報まで使って個性を開発して最短でここまで来たわけでもある。

 

それでも、現実は変わらない。

 

「関係、ないんだよなぁ……。お腹減って死んじゃう子にはさ。こっちがどんだけ頑張ったとか。さっきまで大変な戦いをしてたとか。そういうの全部、関係ないんだって。言い訳なんて、一つもする余地がないって、今気づいたんだよ」

 

一つ目を平らげて、そして二つ目へとかぶりつく。涙を流して悲嘆に暮れていても、その手と口は止まっていなかった。これを止めてしまったら、砂藤は自分を許せなくなるだろう。

 

淡輝にしては珍しく、いい淀んで言葉を選んだ。

 

「分の悪い賭けがある。これはマジで成功の保証はない。それでももしかしたら、ちょっとは可能性があるかもしれない方法がある。お前はボコボコにされてボロ雑巾みたいにならなきゃいけないんだけど、良いか?」

 

曖昧すぎる加害に等しい宣言、しかしそれを受けて砂藤は希望を見つけたように顔を上げた。

 

「お前!そんな、そんなの当たり前だ!いくらでもやってくれ!頼む!俺はどれだけ傷ついたっていい。それくらいなら、いくらでもだ!」

 

「うん、じゃあ。俺を信じてボコられてくれるか?養殖の匂いが出るらしいから、意図は説明できないんだけど、これで可能性が出るのは本当だから」

 

「ああ、頼むぜ。せっかくなら、衝撃をカロリーに変える方の防御を練習してやるよ!」

 

自分が傷つくことで人が救えるなら願ってもないと、砂藤はここで晴れやかな笑顔を見せた。対照的に曇り続けるのは淡輝の表情である。

 

なぜならば、これはやり直しによって確度を上げることができないアイデアだったから。基本的に淡輝は、この周回をやり直そうと思っていなかった。死者の数は最低限に抑えられているし、この際に治療で全員を救うことなど不可能であると理解しているから。

 

あのオールマイトと緑谷の爆発力は毎回引けるわけじゃない。こっちの気持ちにも呼応する彼らは、数を重ねれば必ずうまくいくとも限らないのだ。だいたい、アメンドーズが二体もいる状況をやり直すのはリスクが高すぎる。

 

だからこそ、この暴力的なアイデアは無意味になるかもしれなかった。怪我をすれば救える数が減るかもしれない。

 

それでも、ヒーローならばその可能性を掴み取るのだと砂藤は全身で決意していた。

 

「移動するぞ」

 

そして、何の意味があるのかすらわからない暴力が始まる。

 

最初の一発は右ストレートだった。

 

拳が砂藤の頬にめり込む。鈍い音がして、首がわずかに横に揺れるだけ。淡輝の拳が跳ね返り、逆に自分の手首がビリッと痺れた。砂藤は眉一つ動かさない。

 

次は左のフック。今度は腹に。ドスン、という重い音。拳が腹筋の岩盤に埋まる感触。砂藤は「うっ」と小さく声を漏らし、それでも耐える。まるで鉄板の上に厚いゴムを張ったような反発で、拳を弾き返す。それらを繰り返している

 

お互いの呼吸が荒くなる。次は蹴りだ。右足を大きく振り上げ、脛を狙う。怪我だけではなく、苦痛や痛みも重要らしい。理解はできないが匂いが違うのだとか。

 

もう一度、もう一度。顔面へ、胸へ、腹へ、脇腹へ。拳が、肘が、膝が、踵が、立て続けにぶつかるたびに、鈍い肉の音が響く。筋肉は強くしなやかでも、皮膚はそうはいかない。各所で血がにじみ始めた。服の袖が赤く染まる。息が切れ、汗と血が飛び散る。

 

ACを使っていないとはいえ淡輝もすでに戦闘経験はこの世の誰と比較しても多い方であり、決して素人ではない。

 

体はアザで変色し、それでも砂藤は息も絶え絶えで立っている。地面に引き倒し、そして殴る蹴るの暴行を加えていくのだが、決して狩人には任せない。あれにやらせればすぐに殺してしまうだろうし、何よりこれまた味が違うらしいから。

 

 

狩峰淡輝が、苦しみながらこれをしないといけないらしい。

 

 

初めての料理友達、悪夢を超える手伝いをしてくれた恩人。いつも美味しいものを作ってくれる尊敬できる人をこの手足でひたすらにいじめ抜くという。そんな地獄がここにはあった。

 

砂藤は何度倒れても、ヨロヨロと体勢を立て直し最初とまったく変わらない姿勢で立つ。

 

 

「多分、これくらいで、大丈夫だと思う……」

 

涙か汗かはわからない。自分から出た水分を拭って彼を支えてやる。自分がやっというのに、相手の無事を心配するなんて異常すぎる。

 

「どんだけ狂ったことしててもさ、信じてるぜ狩峰。だけど、この後、何が起こるんだ?」

 

「あとは、お眼鏡に叶うかどうかを祈るだけだ」

 

この暴行は人気のない家屋で行われている。決して偶然には誰もこないように配慮した場所で。しかし、付近にいる鼻が効くものにはきっと勘付かれる程度には密閉などもしていなかった。

 

これはある種の釣りでもある。

 

「なぁに、してるんです?あんまりにいい匂い。淡輝くんは、そうやっていつも私を煽ってさ、もう、けっこう、限界なんですよ?ずっとずっと我慢させられて、それなのに自分は百ちゃんの血を浴びるほど飲んで?意味わかんないと思います。思いますよね?もう、なんでもいいから飲みたいって思っても、仕方なくないですか?」

 

かかった。

 

トガちゃんが、その頬を赤く染めて、はぁはぁと興奮した様子で首だけを扉から出してこちらを見ていた。潤んだ瞳はまるで溶けているようで、ほとんど白目を剥きながら今は砂藤をじっと見つめている。

 

 

「砂藤くん。カアイイねえ?」

 

 

その目線は今までずっと淡輝に向けられていたから、茶化すくらいしかしていなかった。でもわかる。これを向けられて初めて理解した。これは色恋なんかじゃない。生命の危険が、警鐘が鳴り止まない。

 

「ヒイっ!」

 

スッと遮ってくれたのは、これまた淡輝だった。そしてトガちゃんがキレるその寸前にどうにか爆発を回避する言葉発することができた。

 

「変身していいってさ」

 

「え……?……いいの?」

 

「いいよな?砂藤?」

 

理解が遅れている砂藤は、ただ頷くことしかできなかった。ここまでされて信じているのだ。これくらいは変わらない。ひどく嫌な予感がするが、それを押さえつけて答えた。

 

「え、まぁ……。それが予定なら、それで助けられるんなら、それで……」

 

そう言うか言わないかのところで、渡我被身子が跳躍して凄まじく速い動きで砂藤の背後をとった。

 

「いただきまぁあああす!!!!」

 

ガブリと思いっきり犬歯を突き立て、そして彼女は血を飲んだ。

 

 

渡我被身子の個性『変身』は血を飲んだ相手になることができる個性である。変身した時には遺伝情報ごとその人物になりきっており、つまりは個性因子も含めて複製していることになる。

 

他者になりきる個性は世界的にも多く確認されているが、ここまで模倣をした時に発現する共通の能力があった。それは『個性』の模倣、コピーである。

 

それがこのトガちゃんの個性のいきつく先であり、これまでいくつかその成功例を見たこともあった。あまりに再現性が難しく、彼女の感情に左右される部分があったから訓練すらできない内容なのだが、今回はどうだろうか。

 

まず、最低限の条件としてトガちゃんが相手にときめかなくてはいけない。

 

そのためには血だらけのボロボロになっても頑張る姿とかがいいらしい。そして戦う相手も大事なのだとか。一人で訓練してボロボロになった相手でも一度だけ成功しているのを見たが、あまりに成功の確率が低すぎた。

 

だからこそ、淡輝が苦しみながらやる必要があったのだ。家族同士で争ったりするのは最高とのこと。うん。やっぱ異常者だ。でも今回はマジで何度も助けられた。おかしくて助かる。

 

 

 

そうして、気づくとそこには女子高生としてスカートを履いている、砂藤の姿が爆誕していた。

 

「わりい。ナイトアイに言われてたのに、忘れてた」

 

羞恥の叫びが響き渡るが、時間がないことを思い出す。

 

「じゃあ、トガちゃん。いきなり本番で悪いけど、個性使えそう?」

 

「え〜?どういうことです?変身してその人の個性使ったことなんてないですけど」

 

「理論的にはいけるんだよ。ほら、角砂糖を食べてみて」

 

 

結論、いけました。

 

「マジかよ……」

 

そして応用であるはずのエネルギーのカロリー変換に関しても、トガちゃんは難なくこなしてしまった。

 

「ま、マジかよ……」

 

それだけではない。明らかに砂藤よりうまかった。やはり天才か?

 

「……!?っっっっ!!」

 

ずっと頑張ってきた彼にちょっと泣きが入ったのだが、気にせずに行こう。二人がかりなら本当に間に合うかもしれない。

 

 

「よし。じゃあ、その拳で人を救ってくれ!頼んだぜ、ヒーロー!」

 

「ま、任せろ……。はぁ……」

 

「私は別に、ヒーローじゃないですケド」

 

締まらないが、現実には関係ない。世界を変えるために、やれることをやるだけだ。

 

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