「……もう、ドゥーでもいいか」    作:ヨリヨリ

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SEEDまでのつもりだったけど需要がありそうならSEED DESTINYまで行こうかなと


7

 

 

 

コックピットの中。

戦闘の終わりを告げる警告灯の沈黙とともに、静寂が戻る。

 

「……すごいな、このリニアガン。ジンが一撃だ」

 

モニターの隅で、戦果がカウントされていく。

ほんの数ヶ月前、ジン一機を落とすのに必死だった頃が、遠い記憶のようだ。

 

(いや、武器もすごいが――)

 

脇でじっとしているドゥーをちらりと見やる。

 

「……助かったよ。お前の指示、全部的中だった」

 

弾が来る方向、タイミング、回避の角度まで。

敵の姿が見える前に、すべてが伝えられていた。

 

返事の代わりに、彼女は軽く頷く。

視線は前を向いたままだが、口元は少しだけ柔らかく緩んでいた。

 

礼の代わりに、そっと頭を撫でる。

いつもなら、眉をひそめて「やめて」と言われるのがオチだが――

 

今日は、違った。

 

ドゥーは何も言わず、すり、と俺の胸元に体を預けてきた。

まるで、そっと甘える猫のように。

 

「……なんだ、今日は素直だな?」

 

冗談めかして問いかけると、彼女はぼそりと呟いた。

 

「……だって、ボクは……ゲーツの“相棒”だから」

 

声は小さく、どこか熱を帯びていた。

 

色っぽい……というほどではない。

けれど、どこか心をくすぐる響きがあって。

 

「……そ、そっか。なら、頼りにしてる」

 

なんでもないふうに言ったつもりだったが、耳が少し熱い。

 

この妙な距離感が、心地いいのか、くすぐったいのか。

結論を出す前に、帰投指示が入った。

 

「ハンブラビ、帰還どうぞ」

 

俺は操縦桿を握り直す。

膝の上のぬくもりを意識しすぎないよう、そっと息を吐いた。

 

(……なるべく、気にしないようにしよう)

 

そう思いながら、推進器を点火した。

ハンブラビはゆっくりと母艦へと向かい始めた――。

 

 

 

ネルソン級での任務を終え、アレキサンドリアへ帰還した。

 

ハンブラビのハッチが開き、脚を降ろすと――

そこに、SEED世界で一番会いたくない顔が待っていた。

 

「やぁ、君がゲーツ・キャパ中尉ですか? 会いたかった。ムルタ・アズラエルです」

 

(げっ)

 

「っは、ゲーツ・キャパ中尉です!」

 

慌てて敬礼を送る。

 

……が、隣のドゥーはというと――完全にスルー。

 

(無視はまずい無視はまずい無視はまずい!!)

 

「ドゥー・ムラサメ少尉です。……申し訳ございません。任務で少々疲れておりまして」

 

代わりに答えると、アズラエルは薄く笑った。

 

「いえ、構いませんよ。用があるのは、あなたですから」

 

その双眸が、まっすぐ俺に向く。

ぞわりと背筋を撫でるような視線。

 

(ドゥー……ムッとしてるのが伝わってくる)

 

「私に……ですか?」

 

一応、返事を返す。

それが間違いだった。

 

「優秀だそうですね? 君のような“扱いやすい人材”、うちの“生体CPU”にも見習ってもらいたいもんです」

 

(生体CPU……ブーステッドマンのことか?)

 

嫌な言い回しだと感じる間もなく、アズラエルは言葉を重ねた。

 

「それで――君、僕のところに来ませんか?」

 

「えっ?」

 

まさかのスカウト。

なぜか、評価されているらしい。こいつに。

 

「……中尉。いや、ゲーツ・キャパ。君、“使いやすい”って評判ですよ。

なら、次は私のところで。もっと効率的な“運用”を考えたいと思っていましてね」

 

その瞬間、ドゥーが俺の前に立ち塞がった。

 

(やばい。嫌な予感しかしない)

 

慌てて手を伸ばすが――バシンと払いのけられる。

 

(いてぇ)

 

「……“使いやすい”?」

 

ドゥーの声が震えている。

いや、それは怒りの熱だ。

 

「……ゲーツは、ボクの“相棒”。

“誰にも”渡さない。あげない。奪わせない……っ!」

 

ビリッ。

 

その瞬間、空気が軋んだ。

周囲のコンソールが一斉にノイズを発し、格納庫の整備士たちがざわつく。

 

「な、なんだ!? 機体反応が……!」

 

サイコガンダムの警告灯が真紅に点滅し始めた。

反応炉が異常出力を記録し、機体が――勝手に動き出す。

 

(まずい、まずいまずい!!!)

 

整備士たちの怒鳴り声が響き、警報が鳴る中。

 

「……え……? 」

 

アズラエルが、尻もちをついて後ずさるのが見えた。

その顔には、明らかな恐怖の色。

 

(どうする? どうすれば――)

 

俺は、迷わなかった。

 

「ドゥーッ!」

 

背後から彼女を抱きしめる。

ぎゅっと、両腕で包み込むように。

 

「……!」

 

ドゥーの身体が、ビクリと震える。

その瞬間――サイコガンダムの動きが止まった。

 

「……安定した! 出力が戻りました!」

 

整備兵たちが安堵の声を上げる。

俺は、震える彼女の頭をそっと撫でた。

 

すると、ドゥーは静かに……俺の腕を、強く、掴んできた。

俺は震えるドゥーを、しっかりと抱いていた。

 

アズラエルは、震える指先で埃を払うと、

こちらを睨みつけて口角を歪めた。

 

「……いいですか、ゲーツ中尉。この女、ドゥー・ムラサメ。

あなたの“相棒”とやらは――明らかに危険です」

 

足音を立て、俺の目前に詰め寄る。

 

「上層部には報告しますよ。“情緒不安定な強化人間は戦力にならない”と。

いや、はっきり言いましょう。“処分”を、検討すべきです」

 

(っ……!)

 

怒りで言葉が出ない。

けれど――ここで黙る選択肢はなかった。

 

「……私が、制御します。いえ……言って聞かせます」

 

その言葉に、アズラエルが鼻で笑う。

 

「彼女は――私より、ずっと優秀です。ですから……!」

 

絞り出すように叫んだ俺を、アズラエルはじっと見つめたまま、やがて肩をすくめた。

 

「……いいでしょう。ええ、いいでしょうとも。

では――“結果”で示してもらいましょうか、ゲーツ中尉」

 

忌々しそうな口調で吐き捨てると、アズラエルはくるりと背を向け、格納庫を去っていった。

彼の足音が遠ざかる中――

俺はただ、まだ腕の中にいるドゥーの温もりを感じながら、息を吐いた。

 

 

 

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