「……もう、ドゥーでもいいか」    作:ヨリヨリ

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三機のガンダムを退けたフリーダム。

だが、キラの心は晴れなかった。

 

勝利ではない。ただ、戦いを“終わらせた”だけ。

そして――

 

「……アスラン……!」

 

戦場に乱入してきたジャスティス。その赤い機体が、フリーダムの目前に降り立つ。

キラは咄嗟に無線を開こうとした。彼の“真意”を、確かめねばならない。

 

だが、そのときだった。

カメラの端――砂煙の向こうに、異様な“影”が映った。

 

「……っ……!?」

 

見る間に、それは輪郭を持ち、巨大な“黒いガンダム”として立ち上がる。

 

そして、容赦なくビームを放った。

オーブの街が、焼かれる。

炎と爆煙が地表を舐め、建物が吹き飛ぶ。

 

「やめろぉぉぉぉッ!!」

 

咄嗟にトリガーを引き、フリーダムのビームライフルが黒き巨影を撃ち抜く。

だが――

 

「弾かれた……!?」

 

光が、はじけて散る。

ビームは、届いていなかった。

 

キラの目が見開かれる。

 

「……っ、あれは……!」

 

その瞬間。

フリーダムの目前に、青い影が割り込んだ。

 

青と黒。奇妙に禍々しい機体――モノアイが、ぎょろりと動き、キラを見据える。

目が合った。

ほんの一瞬だった。だが――

 

そこに“意志”を感じた。

 

(こちらを知ってる?)

 

そう直感した瞬間、フリーダムは横跳びする。

直後、そこへ青い機体が撃ったビームが襲いかかった。

 

光がフリーダムの“いた空間”を貫き、地表を抉る。

キラは、戦慄した。

 

「こいつらは……!」

 

――兵器か? 人間か?

“誰が”オーブを焼いている? あれは、本当に“人の意思”で動いているのか?

 

答えは出なかった。

ただ、恐怖と怒りが入り混じった感情が、キラの胸を締めつけていた。

 

 

 

 

 

目前には、蒼きフリーダム。

C.E.世界の主人公が、ついにこちらを捉えていた。

 

対するは、俺の――ハンブラビ。

ただし、いつものそれではない。

 

地球連合の技術者が血眼になって改修を繰り返し、ようやく搭載された“新装備”。

ついに、ビームが撃てるようになった。

 

……が、正直どうでもいい。

 

「ドゥー、派手にやってる“フリ”でいくぞ。アストレイの足元と、武装だけを狙え」

 

『……了解、相棒』

 

僅かな間があった。

しまった。つい“アストレイ”と言ってしまったが――どうやら伝わったらしい。

 

ドゥーのサイコガンダムが、轟音と共にビームを放つ。

狙うのは、既に崩れた建物や無人の広場。その射線は、あからさまな“威嚇”。

その意図に気づく者など、この場にはいない。

 

「来たな……」

 

フリーダムがビームライフルを構え、サイコガンダムへ牽制射撃。

だが、その一撃は、サイコ・フィールドに阻まれ弾かれる。

一瞬、フリーダムの動きが止まる。

 

(よし、驚いてるな)

 

こちらの性能を把握しきれていない……その“スキ”を逃す手はない。

 

「……サービスしてやるよ」

 

スロットルを全開。ハンブラビが宙を切り、フリーダムの目前に飛び出す。

狙いすましたビームを撃つ――当然、避けられる。

だが、それでいい。

 

(どうだ、“C.E版ハンブラビ”、かっこよかったろ?HGプラモ出せよバ〇ダイ)

 

その瞬間、通信が入る。

 

『ゲーツ、気をつけて。白いの、嫌な感じ……してきた』

 

ドゥーの声は、珍しく強張っていた。

 

「わかった」

 

こちらに向けて照準を合わせ始めたフリーダムに、ビームを乱射。

着弾地点はズラし、“あくまで戦っているように”見せかける。フリーダムは上空へ跳躍、軌道を変えた。

 

同時に、ビームライフルの反撃。

だが――サイコガンダムが前に出て、ビームを防いでくれる。

 

頼もしすぎるぜ、ドゥー。

 

(いいぞ、その調子で暴れるだけ暴れて……“壊すなよ”?)

 

だが、次の瞬間。

 

「っ……!」

 

ジャスティス。

紅のMSが、爆炎の向こうから飛び出した。

 

(やはり来たか、アスラン・ザラ……!)

 

接近戦に持ち込もうとするジャスティスは、サイコガンダムに肉薄する。

迷いのない動き。勘が鋭い――

 

「勘のいいやつめ」

 

言いながら、ビームサーベルを抜く。

迫るジャスティスの斬撃を、ハンブラビのブレードが弾き返す。火花が散る。

 

刹那の交錯――

その奥で、サイコガンダムの瞳が、じりじりと赤く染まっていた。

 

(……まだ大丈夫だ。だが、ドゥーの負荷は高まっている)

 

俺は――その重圧ごと、受け止める覚悟を、もう決めていた。

 

 

 

 

サイコガンダムのコックピット。

振動とノイズに包まれた閉鎖空間の中――通信が入る。

 

『ドゥー、派手にやってる“フリ”でいくぞ。アストレイの足元と、武装だけを狙え』

 

……アストレイ?

 

知らない単語だった。

それでも、深く考えるのはやめた。

 

「……了解、相棒」

 

彼が言うなら、それが“正解”だ。

“フリ”ならば、殺さずに破壊の演出だけ。

“アストレイ”は……恐らくあの、赤と白の新型機。

 

なら――

 

足元と、武装だけを撃てばいい。

両手を操作し、感覚を重ねる。

サイコガンダムの目が赤く輝き、両手の砲門が熱を帯びる。

 

「…………」

 

照準、合わせて、ずらす。

“人”がいない場所、“無人”の建造物だけを焼く。

空が焼ける。炎が走る。爆風が瓦礫を巻き上げる。

 

(よし、これでいい。これなら、誰も……)

 

その時だった。

視界の端――白い機体。

 

(来た……)

 

白いガンダムがこちらへ向けてビームを放つ。

咄嗟に防御行動。

サイコ・フィールドが瞬時に展開され、熱線が弾かれた。

 

だが――その機体の“視線”が、妙だった。

まるで……心を、覗かれているような感覚。

 

「……ゲーツ、気をつけて。白いの、嫌な感じ……してきた」

 

胸の奥がざらつく。

理解ではなく、本能が警鐘を鳴らしている。

 

それに、相棒の動きが――微かに“ブレて”いた。

普段のような、鋭さがない。

 

(だめ。……あの白いのが、ゲーツをおかしくしてる)

 

ボクのゲーツを。

ボクだけの、相棒を――惑わせるな。

 

その思考のまま、右手が勝手に動いた。

 

照準は、白い機体と、それに近づく赤い機体――二機の間に。

牽制でも威嚇でもない。“排除”の一歩手前。

 

「……ボクが、ゲーツを守る」

 

サイコガンダムの砲門が開き、赤と白のガンダムに向けて咆哮する。

――ボクの世界に、彼を“奪う”者は要らない。

 

 

 

 

やばい――

まただ。ドゥーが、暴走し始めている。

 

通信は沈黙したまま。

サイコガンダムは、フルスペックで火を吹いていた。

白と赤、二機のガンダムに向け、容赦なくビームを連射する。

それでも、驚異的な精密さで――味方やオーブの民間施設だけは避けている。

 

(……いや、感心してる場合じゃねえ!!)

 

こちらが“抑える役”を忘れていたら、普通に死人が出ていた。

だが、問題はそこじゃない。

三機とも、今後の戦場に必要なんだ。

フリーダムも、ジャスティスも、サイコガンダムも――ここで潰し合うなんて最悪だ。

 

……と、

警告も間に合わず、フリーダムの頭部カメラが吹き飛んだ。

 

(まずい!!!)

 

ジャスティスが飛び込み、サイコガンダムに斬りかかろうとする――

その刹那、俺は反射的にハンブラビを操った。

 

「ドゥーッ!! 落ち着け!!」

 

咄嗟に叫ぶが、返事はない。

完全に“視界”からこちらを切っている。

 

(やるしかねえ……!)

 

ハンブラビは急降下。

ジャスティスの一撃を蹴り上げで弾き飛ばし、瞬間加速でサイコガンダムに取りついた。

 

「クソ……間に合え!」

 

俺は手持ちの武装を、わざとジャスティスとフリーダムに見えるように捨てた。

攻撃の意思がないことを示す。牽制だ。

 

そして――

コックピットを解放する。

視認性の高い位置に、わざと姿を晒す。

 

風が吹き込む。視線が痛い。

 

「……ドゥー。もう、いい。帰るぞ」

 

俺は、サイコガンダムの装甲に手を当てて、静かにそう言った。

 

その瞬間。

サイコガンダムの発光が徐々に収まり――ビーム砲が静止する。

 

変形モードへ移行。

大気を切り裂き、彼女は帰路へと向かった。

ハンブラビはその背に乗ったまま、飛び去る。

俺は開いたコックピットから、二機を――ジャスティスと、フリーダムを、見下ろす。

 

……彼らは撃ってこなかった。

こちらの意図を、理解していた。

あるいは――俺たちの“絆”を、見ていたのかもしれない。

 

 

 

 

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