(あれ?ここどこだ?あのあとひたすら歩いていたはずだが...)
(まぁいいや、取り敢えず今周りはどんな感じかなっと)
あの暗闇の中を歩き続けているうちに意識を失っていたらしい。周囲確認の為、目を開けようとしたが瞼は意思に反して上がる事は無かった。
(あれ?目が開かない...でも周りになんかの気配はするな...よし!)
(誰かいますかー)「うぁぁうー」
(あれ?)「うぁー」
出てきた声はまともな発音ではなくまるで気の抜けたかの様声が出るばかりであった
(なんでまともな声が出ないんだ?)
「おめでとうございます!元気な男の子ですよ!」
(え?え?どゆこと?)
突如として目の前から大きな声が聞こえてきたが、それよりも気になる事があった。
少しの間思考してその結果に思い至る。
(元気な?男の子?...そっか俺、転生したのか...)
そんな思考をしていると不意に後ろ側から抱きしめられた。
「うう...」(なに?なに?)
「よしよし、生まれてきてくれてありがとね」
「うう...無事...で本当に良かった...」
両親と思われる声が頭の上から聞こえてくる。
暖かい声で自分が生まれてきた事を祝い喜ぶ声であった。
「もうあなた泣きすぎよ」
「いや、だって...」
「ふふ、見てとっても穏やかな顔をしてるわ」
「本当だね...」
(なんか優しそうでよかった...けど、なんで魔力を感じないんだ?いや、生きてるよね?俺の親生きてるよね?)
自分を産んだのは魔力を持たないゾンビかグールではないかという不安が頭の中を駆け巡るが当の両親たちはそんな事も気にせず名前をつけようとしていた。
「名前考えてきてくれた?」
「もちろん!強くて、健康でいられる様に願いを込めて...|剛<<ツヨシ>>、どうかな?」
「いい名前ね」
(あれ?今言ったツヨシって俺の名前??)
「これからよろしくね、剛」
「あぅぅ?」(よ、よろしくお願いします?)
「ふふ、もうお返事もできるのね」
「君に似て賢いんだよー♪」
あまり見えていないのでどんな状態かはわからないが、声が聞こえてくる向きを考えると自分を挟んで両親が会話している事になる
(なんだろう...仲が良いのは良いんだけど目の前でイチャイチャされるとなぁ...)
あまり見えてはいないがイチャイチャする声ははっきりと聞こえるのでそのせいで胸焼けが起きそうになる。
その後も両親のイチャイチャは続いたが、先生と呼ばれる者によって遮られた。
しばらくして父親も帰り、母親からお休みの時間と言われ横になったは良いものの意識は眠りに落ちることはなく、鮮明に保たれていた。
自分が横になってからどれほどの時間が経っただろうか。
目があまり見えない為周りがどうなっているのかもわからない。
しかも意識ははっきりし続けている為余計辛い。
(やっぱり周りが見えないのはきついな...)
『何をやっているんですか?』
突如として頭の中に声が響くその声は自分を転生させたあの天使の声だった。
(え?なんであんたの声が聞こえるんだ?)
『今は貴方の脳内に直接語りかけています』
(脳に直接ってなんか怖いね)
『そんな事はどうでも良いのですが...貴方なぜ目を開けないんですか?』
(いや、生まれたばかりで身体が思う様に動かないんだよ)
『貴方の|能力<<スキル>>を使えば良いでしょう』
(え!俺の|能力<<スキル>>使えるの!?)
『取り上げてないので使えますよ...』
(いや、悪人を転生させるとしたら力は奪うでしょ普通)
『はぁ...もうどうでも良いので早くしてください』
(オッケー!教えてくれてありがとう!)
意識を集中し、かつて自分が奮っていた|能力<<スキル>>を発動する
(|能力<<スキル>>:|他を犠牲にして得る利<<スケープゴート>>)
(発動内容は身体強化...対象部位は眼球)
今この身体が耐えられるかはわからない為慎重に慎重に強化を重ねていく
(よしよし今のところ問題はなしだあとはこのまま!)
ついに目を開けるとそこにはあの天使が立っていた
(うわ!)「あう!」
「そんなに驚く事ですか?」
(そりゃあ目の前に写ったのが天使だとね...)
「言いたい事はありますが、まぁ良いでしょう」
「それより、|能力<<スキル>>の方の使用感はどうでした?」
(特に変わったとこはないかな)
「そうですか。それなら安心ですね」
(何であんたこんなに世話を焼いてくれるんだ?)
「私の役割が貴方の補助要員だからです」
(あ、そうなの?)
「ええ、ですので多少の困りごとであれば私が力を貸しましょう」
(それは助かる、生まれたてでこの世界の事何も知らないし)
「ええ、それに人間に生まれ変わって慣れない事も多いでしょうし」
(ちょっと待て、俺、人間になったの?)
「?私言いましたよね?"良い人生"を...って」
「うあー!」(あー!アレそう言う意味なのかよ!)
「...わかっていなかったのですか?」
明らかに怪訝そうな顔を浮かべる天使にあの突然の事態で言葉の意味を全て読み取るどう考えても無理だろと言いそうになったが、何とか言葉を飲み込む事が出来た。
(危ない、危ない)
「いや、貴方の思考は読めていますが...」
(え?嘘?俺の今の事も全部読んだの?ヤダ!恥ずかしい!)
「...要件は伝えましたので、私はこれで」
(あ!ちょっと待ってくれ)
「何ですか?」
(あんたの名前聞いてなかったから)
「...ジグナスです」
(ジグナスね、これからよろしく!)
「ええ、では」
そう言うと彼女は暗闇の中に溶ける様に姿を消した。そして暗い部屋に残ったのは
(人間かぁ...俺やっていけるのか?)
漠然とした不安のみであった。