オっス!俺、
勇者ラムルとの一騎打ちで死んじまったけど
神様の気まぐれで異世界に、しかも!人間に転生したんだ!
元魔族の俺が人間として生きられるか不安だったけど割とどうにかなったぜ!
「何をやってるんですか?」
この赤髪の天使はジグナスって言うんだ!俺にしか見えないらしい!まぁ天使なんて見ても良いことは特にないけどな!
「そろそろぶっ飛ばしますよ」
「すいませんでした」
流石に調子に乗りすぎた。だが今日ぐらいは調子に乗らせて欲しいものである。
「はぁ...早く下に降りたらどうですか?今日は入学式とか言ってませんでしか?」
「そうそう、じゃ俺行ってくるから」
「ええ、気をつけて」
「おう」
天使と軽い挨拶を交わして部屋を出る。
「俺ももう15歳で高校生かぁ...時間の流れはあっという間だな」
2階から1階に降りている間にそんな考えを巡らせる。
かつて魔族であった自分にとっては体感1年ちょっとぐらいであった。
「あ!にいちゃんおはよう」
「ワン!ワン!へっ!」
「おはよう
リビングに降りた自分に駆け寄ってくる可愛い弟の大樹と愛犬のシバ
「にいちゃん、制服似合ってるね!」
「だろ〜、にいちゃんカッコいいだろ〜?」
「うん!にいちゃんカッコいいよ!」
「サンキュー!」
可愛い弟からの声援のおかげでやる気のボルテージが最高潮に達するのが実感出来る。
「わん!わん!」
そんな事をしていると、愛犬の方から朝の日課をしろとの催促がかかってきた。
「あい、あい、ほれ、これが良いんか?これが良いんか?」
「わん!」
わしゃわしゃといつもの手つきでシバを撫でているとその声を聞いた母が呆れながら洗面所から顔を出してきた。
「あんた、制服に着替えてるんだからシバに触ってると毛がついちゃうでしょ」
「あーい」
母に返事をしながらシバを撫でる手を止める。
「くぅ〜ん...」
「ごめんな、シバ、帰ってきたら散歩に連れてってやるからなぁ」
「ワン!」
「よしよし、シバはお利口さんだな」
「...おはよう」
「お!
「...うるさい」
普段なら休みの日は昼まで寝ているはずの妹の千夏が起きている事も驚きだ。
「あれ?父さんは?」
いつもならこんなイベントの日に父がカメラを持ってリビングに居ない事はなかったので思わず聞いてしまった。
「朝早くから会社に呼び出されて行っちゃったわ」
「マジかよ!俺の入学式の日だぜ?」
「大丈夫よ、入学式開始までには戻るって言ってたから」
「...じゃあ大丈夫か」
少なくとも父は約束を破る様な事はしないだろう。
あの父なら、たぶんトラックに跳ねられても入学式に来そうである。
「にいちゃん、めぐみ姉ちゃん来てるよ」
「お、もうそんな時間か、じゃあ俺も行ってくるわ」
「忘れ物とかは大丈夫?」
「昨日ちゃんと確認したから大丈夫だって」
「いってらっしゃい、車には気をつけなさいよ」
「いってらっしゃい!」
「いってら」
「行ってきますー」
家族に見送られ玄関を開けると桜を思わせるような淡いピンク色の髪をポニーテールでまとめた幼馴染である
「おはよう、剛」
「おっはー」
いつも通りの挨拶を交わし、彼女の正面に立った途端彼女の声が上がった。
「あ!もー、あんたネクタイ曲がってるわよ」
「ちょっとぐらいなら大丈夫だろ」
「はぁ...ほら」
いきなりネクタイを掴まれ、彼女の近くに引っ張られる。
「ちょ、何すんだよ」
「動かないで」
めぐみは慣れた手つきでネクタイを結び直してゆく。
異性の幼馴染がネクタイを直してくれるというシチュエーション普通はテンションが爆上がりしそうではあるが...幼馴染といっても関係性は姉弟の様なものである。
「これでよし」
「...サンキュー」
「これぐらいしっかりしなさいよ」
「あーもう、うるさいなお前は俺の母親か?」
「
「う...」
説教に対して反抗を試みるも、流石に母親から頼まれてると言われると言い返す事が出来ない。
「ほら、早く行くわよ」
「あいよ」
こうして特別でなんて事はないいつもの1日が始まりを告げた。
「そう言えばあんた何で
「え?家から近いから」
「あんたねぇ...」
「何だよ、別に良いだろ」
「もう少し将来の事とかちゃんと考えてるの?」
適当に答えていると。いつもの口うるさい説教が始まってしまった。
「うるさいな、将来の事はもう少し後でで良いんだよ」
「それに...」
「それに?何だよ?」
「...あんたならもっと上の所にも行けたでしょ」
「うーん、行けはする...けど」
「けど?」
「お前とかに会えなくなるのはなんか嫌かなって」
「...何よ!私のせいだって言いたいの!?」
「んな事言ってねえだろ!」
登校する最中もそんなくだらない事を喋りながら歩いていると
今日から通う事になる桜浜高等学校が見えてきた。
校門をくぐり、正面玄関に張り出されているクラス割表を見て、めぐみと話す。
「お前何組だった?」
「5組よ、あんたは?」
「俺7組」
「クラス別れちゃったわね」
「まぁ教室近いし良いんじゃね?」
「そうね、じゃあまた後で」
「おう、また後でな」
めぐみと別れ自分のクラスへと向かって歩いてゆく、先程見た掲示板では自分の知り合いはクラスに1人もいなかった。
知り合いがいないのは不安ではあるが、新たな出会いに心が躍らずにはいられなかった。
「俺の席は...お!ラッキー!1番後ろの窓際じゃん!」
廊下に張り出されている席順を確認し、後ろの席だった事にテンションを上げながら教室に入ると自分の席の周りに大勢の人が集まっていた。
(しっかし何で俺の席の周りにこんなに人だかりが...あ!)
そんな事を思いながら人混みの中心を見ると、そこには1人の少女がいた。
中性的な顔立ち、純白のような白い肌、短く切り揃えられた美しい金髪に透き通った海のような蒼い瞳
遠目から見たら精巧に造られた人形かと勘違いしてしまいそうになる程美しい少女であった。
(はー、すっげえ美人だなぁ...ちょっとアイツに似てるか?まぁ良いや)
前世の
「ちょいと失礼」
人混みができているとは言え荷物を早く置きたいので一声かけて人混みを掻き分け席へとゆく。
「やあ、久しぶりだね」
人混みを掻き分け席にたどり着くとその少女に声をかけられた。
まるで小鳥たちの囀りの様な美しい声
見た目だけでなく声までもが美しすぎて
自分が普通の人間だったならあまりの美しさに気絶していたかもしれない。
しかし久しぶりというのがどうにも引っかかる。
「いや、初めましてだろ?あんたみたいな美人に会ったら忘れられねぇよ」
こんな美人には生憎と会った記憶がない。
いや、あるにはあるがそれは前世の時なのでノーカウントだろう。
「いいや、久しぶりだよ」
「あ?何を言って」
そんなわけの分からない事を言われたと思ったら、突然目の前の美少女に抱きしめられ、耳元で囁かれた。
「久しぶりだね、魔王ソドン」
「!?誰だ、お前」
(コイツ!俺の前世を知ってるのか!?)
突然自身の前世の名を告げられ、動揺を隠し切る事が出来なかった。
「私の事忘れちゃったのかい?」
似た人間には会った事がある。
自身と幾度となく殺し合いを繰り広げた勇者。
「じゃあ、自己紹介をしようか」
「私の名前は
"コイツの言葉をこれ以上聞くとまずい"と本能が告げ続ける。
今すぐに耳を塞ぎたいが抱きつかれているし、周りに人がいるので塞ぐ事が出来ない。
「君の宿敵の勇者ラムルだよ」
「これからもよろしくね♪」
本能が理解してしまった。目の前に居る少女はかつて自分と殺し合った勇者本人であると。
そしてもう一つだけ確定した事がある。
自分はどうやらまともな学園生活は送れないらしい。