初星学園放送部部長、アイドル科の真城優です。 作:magtaco
あとこの話を書くにあたってPの名前がないと不便だったので名付けましたが,今後この名前が呼ばれるのかどうかはわかりません
「あなたを、プロデュースさせてください」
「…………はい?」
あまりに唐突すぎて、頭がついていかない。
まるで時間が止まったかのように、思考がフリーズする。
「え? え? ちょ、ちょっと待ってください。あなたは学校の事務員さんとかじゃないんですか? それで昨日、勝手に放課後に音楽室を使った私を叱りに来たんじゃ……?」
「? いえ、そういえば自己紹介がまだでしたね。俺はこういう者です」
そう言って、彼は胸ポケットから名刺を取り出して差し出してきた。
私は少し戸惑いながら、それを受け取る。
《
初星学園プロデューサー科。普通科、アイドル科に続く初星学園第3の専門学科であり、「プロデューサー科制度」を用いて学園のアイドル候補生をプロデュースし、専門的なスキルを習得する専門大学である。
無論、学生がアイドルの卵をプロデュースするというシステム上、生半可な実力では入学は認められない。故に、その受験難易度は一般的な四年制大学を含めても国内最高峰……という話だ。
(……プロデューサー、科?)
頭の中で名刺の肩書きが何度も反芻される。事務員じゃなかったのか。しかも学生?
さらに混乱する思考の整理がつかないまま、彼は淡々と話を続けた。
「詳しい話がしたいのですが、昼食をご一緒してもかまいませんか? 学食でしたらご馳走しますが」
「あっ、いえ。お弁当持ってきてるので……」
「分かりました。では移動しましょうか。プロデューサー科の人間が《普通科》にいるのは少々目立ちますし、注目を浴びるのは真城さんの望むところではないでしょうから」
「……ありがとうございます。えっと、じゃあ、放送室が使えるので、そこでいいですか?」
「ええ、助かります。ご配慮、感謝します」
言葉のひとつひとつが妙に丁寧で落ち着いている。年齢は二つ程度しか違わないのはずなのに、話していると妙に押されてしまう。
私は一度教室に戻り、お弁当を取ってくることにした。
(……いったい、何がどうなってるの……?)
かばんからお弁当を取り出しながら、混乱はますます深まるばかりだ。
昨日のこと、今のこと、名刺の文字、スカウトの言葉……どれも現実味がなくて、夢の続きを見ているような気さえする。
「お待たせしてすみません。では、放送室へご案内しますね」
彼のもとに戻り、私は放送室へと歩き出す。隣を歩くスーツ姿の彼に、廊下を通る生徒たちの視線が集まるのがわかる。
(ああ、やっぱり目立つ……)
まるで全校放送で何か言われた後みたいな注目のされ方だ。
その空気のまま、なんとも気まずい時間を過ごしながら廊下を抜け、ようやく放送室にたどり着く。
「申し訳ありません。結局、注目を集める結果となってしまいました……」
「いえ……それは、仕方ないというか、当然というか……」
私は苦笑しながら首をすくめた。
そうだ。目の前のこの人は、私のことをスカウトしに来た。
アイドル科でもない、ただの普通科の生徒である私を。
「……あの、本気なんですか?」
「そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ。時間も限られていますし、食べながら話しましょう」
そう言って、彼は手慣れた様子でお弁当を広げる。
彩り豊かなおかずが丁寧に詰められていて、ぱっと見ただけで美味しそうだと思えた。
「よろしければ、どれか食べますか?」
「えっ、いいんですか?」
「ええ、どれでもどうぞ」
「じゃあ……玉子焼き、いただきますね」
箸を伸ばし、一口かじった瞬間、口の中にじんわりとやさしい甘さが広がる。
「……わ、これ美味しいです」
「ふふ、よかった。自信作なんです」
「えっ、これ汐崎さんが作ったんですか?」
「ええ。一人暮らしなので。ここに入学するために上京してきたんです」
さらりとした口調でそう語る彼からは、どこかまっすぐな情熱が伝わってくる。
「トップアイドルを自分の手でプロデュースしたいという思いで、日々学んできました。料理もその一環ですね。栄養学は、アイドルを支える上でとても重要ですから」
「……そんな夢を持ってるのに、どうして私を? アイドル科には、私なんかより可愛い人が大勢いるじゃないですか」
「以前から、あなたのことは知っていました。校内放送で話している声、いい声だなと。それだけだったんですが……」
汐崎さんは穏やかに笑みを浮かべる。
「昨日、たまたまあの音楽室で、あなたの姿を見かけました」
彼がふと目を細めた。
その仕草はどこか遠くの情景を思い出すようで──見られていた、と気づいた瞬間、私の心臓がドクンと跳ねる。
あのときの姿を、誰にも見られていないと思っていた。いや、むしろ、誰にも見られてはいけないと思っていた。
夢中になって歌って、踊って、自分でも信じられないくらい楽しんで。
けれどあれは、誰に見せるでもない、自分だけの衝動だったはずなのに。
「パフォーマンスとしては、正直に言えば粗削りでした。ダンスは不慣れで、動きもところどころ危なっかしかった。当然です、学んでいないのですから」
言葉は真っ直ぐで、遠慮がない。けれど、責めるような口調ではないことに、少し救われる。
そうだ、私は何も知らない。ただの普通科の生徒で、たまたま、勢いに任せて体を動かしただけ。
「でも、俺はあなたから目が離せなかった」
その一言に、少しだけ息をのむ。
思いがけない評価にうまく返せず、視線が一瞬だけ彷徨った。
「そして何より、声です。歌のうまさとか音程の正確さとか、そういう意味じゃありません。言葉を届ける力がある。放送で鍛えられたんでしょう。発声や抑揚などの“声の技術”が、歌になっても生きていた」
彼の目が、真っ直ぐに私を射抜く。冗談でもお世辞でもなく、何かを真剣に伝えようとしている目だった。
放送部として、毎日向き合ってきたマイク。言葉がきちんと届くように、話し方や抑揚を工夫してきた。
今まで共演したアイドルの皆さんに褒められたこともあるけれど、それはどこか社交辞令のような、成長を見守ってもらっていたからこその評価、という印象だった。
だからそれが、たしかに何かになっていたのだと、初めて知らされた気がする。
「だから、確信しました。あなたは自分の才能にまだ気づいていない。でも、トップを目指せる力を、あなたは持っている」
ひとつひとつの言葉が、じんわりと胸に降り積もる。
ただの放課後の出来事だったはずなのに、それがまるで、人生の分かれ道のように思えてくる。
「もう一度言います。どうか、俺にあなたをプロデュースさせてください」
その言葉にあわせるように、汐崎さんはもう一度、ゆっくりと手を差し出した。
表情は柔らかいのに、その瞳は真剣そのもので、ふざけてなどいない、心からの申し出なのだと分かる。
正直な気持ちを言えば、心は傾いている。
頭の中は混乱しているのに、私の心は、あの手を取りたいと思っている。
自分がアイドルになるなんて、今まで一度も考えたことがなかった。
これまで何度も見てきた、あのステージ。
キラキラと輝く光の中、全力で歌い踊り、観客に笑顔を届ける、あの人たち。
見ているだけで元気をもらえて、憧れて、眩しくて──私には遠い世界の話だと思っていた。
でも、彼は私にもそれができると言ってくれて、私自身も少しやってみたいと思っている。
それでも、熱くなっている心とは対照的に、冷静な理性がそんな私を引き留めているのも分かる。
理性と感情との乖離に、私の天秤は揺れ動く。
「……今、この瞬間、私はあなたの手を取りたいと思っています。
でも……いまこの場の勢いで返事をするわけにもいきません。これは私だけじゃなくて、貴方の人生も左右する選択ですから」
葛藤を繰り返した末に、天秤は心の方に傾いた。
けれど、心を優先して理性を無視するのも、やっぱり違うと思った。
「だから、少しだけ時間をください。私の気持ちをはっきりさせるために、話したい人がいるんです」
「……分かりました。では、もしやる気になったときは、こちらにご連絡を」
そう言って汐崎さんは、スーツの内ポケットから一枚の紙を取り出して差し出してくる。私はそれを受け取って、四つ折りになった紙をゆっくりと開いた。
そこに印刷されていたのは──SNSアカウント登録用のQRコード。
(これ、LINEのQRコードだよね。こんなのいつも持ち歩いてるの?)
「まさか。こういう展開になると思って、あらかじめ用意しておいただけですよ。女性と無理やり連絡先を交換するわけにはいきませんからね」
私の表情を読んだのか、彼は軽く笑ってそう言った。
……やば、ちょっと引いたのが顔に出てたかもしれない。
彼から視線を逸らしたくなって、反射的に手が顔の前に上がっていた。なんというか、気まずいというか、恥ずかしい。
でも、なるほどと思った。見ず知らずの男性と連絡先を交換するのって、やっぱり少し構えてしまうものだ。けれど紙媒体なら、必要がなくなったときに破って捨てればいいだけ。それなら、私の気持ちひとつで決められる。
堂々と普通科まで私を呼び出しに来たことからして、そういう気遣いには少し疎い人かと思っていた。
けれど、こんな配慮までしてくれるとは、少し意外だった。
「では、私はお先に失礼しますね。今日これ以上居座ったところで、邪魔なだけでしょうから」
気がつけば、汐崎さんは目の前のお弁当を平らげていて、そう言いながら手際よく後片づけを始めていた。
ずっと私と話し続けていたはずなのに、いつの間に食べ終えていたのだろうか。
「今日はお時間を取っていただいてありがとうございました。
──花海さんは明日からしばらく外部での活動に出るそうなので、話すなら今日がいいと思いますよ」
「えっ」
去り際、そう言い残して彼は放送室の扉を静かに閉じて出ていった。
いったい彼は、どこまで私の思考を読んでいるのだろうか。まるですべてを見透かされているようで、思わず背筋にひやりとしたものが走る。
何はともあれ、彼の言う通りなら、話すなら今日この後以外にない。
花海さんは、放送部を立ち上げのときに偶然出会い、右も左も分からなかった私に親身になって相談に乗ってくれた人だ。今の「アイドルを紹介する放送部」の基盤となる企画も、彼女が一緒に考えてくれた。だからこそ、今回のことも自然と彼女に話したいと思った。
私はテーブルに置いていたスマホを手に取って、少しの葛藤の末に花海さんにメッセージを送った。
『放課後、少しだけお話しできませんか?』
私が送ったメッセージに対する花海さんからの返答は、
『もちろん大歓迎よ! だけどごめんなさい、今日は日直の仕事があるから、出来ればこっちの教室まで来てくれないかしら?』
とのことだった。
それからというもの、スカウトの衝撃と頭の中でぐるぐると渦巻く悩みのせいで、午後の授業はほとんど右から左に抜けていってしまった。
結局、なんの考えもまとまらないまま授業が終わるや否や教室を飛び出し、そのままアイドル科の校舎へと足を運んで今に至る。
普段はあまり縁のない場所。廊下を歩くだけで、どこか落ち着かない気持ちになる。
スマホの画面を見つめたまま、私は小さく息を吐く。
アイドル科の校舎の廊下は、どこか空気が違う。壁に貼られたポスターや、すれ違う生徒たちの姿も、私の知っている日常とは少し違って見えた。
前にもこの校舎に入らせてもらったことはあるけれど、自分も今後ここで過ごすことになるかもしれないと考えると、胸の奥がそわそわして、どうにも落ち着かない。
花海さんのクラスである1-1教室を目指して歩き出すと、ふと視線の先に見覚えのあるレッスン室の扉が見えた。
(あ……あれ、前に見学させてもらったレッスン室だ)
花海さんを探している途中、ふとレッスン室の扉が開いているのが目に入った。
「ワンツー、ワンツー。はい、そこでターン! 疲れても指先までしっかり意識しろよ!」
中を覗くと、トレーナーの指導のもと、何人もの生徒たちが鏡の前で真剣な表情を浮かべている。ダンスの動き一つひとつに集中し、汗を流しながら懸命に取り組む姿は、どれも本気そのものだった。
(そういえば、このレッスンは自主参加だって言ってたっけ)
誰に強制されたわけでもなく、自分の意志でここに集まっている人たち。みんなそれぞれ、アイドルに賭ける想いがあって、この世界に挑んでいる。
そんな空気に触れると、私は急に自分がこの場所にふさわしくない気がしてきた。
興味本位でやってみただけのライブの真似事が楽しかった。スカウトされたことに気分が高まって、やりたいと思ってしまった。そんな勢いだけでここに来たけど、彼女たちの真剣な顔つきを見ると、途端に足がすくんでしまった。
ここにいるみんなは、本気でこの世界に挑んでいる。その中に自分が飛び込むのは、やっぱり場違いなんじゃないか。そんな思いが、胸の奥にじわりと広がっていく。
「真城先輩!」
ふと廊下の奥から自分の名前を呼ぶ声がして、はっとして振り返る。そこには花海さんがいて、手を振りながら小走りでこちらに向かってくる。
「花海さん! 日直の仕事があったんじゃないんですか?」
「思ったよりも早く終わったから、こっちから迎えに行こうと思って。それで、何の話かしら? わたしに出来ることならなんでも相談に乗るわ!」
花海さんにそう言われて、自分がここに来た要件を思い出した。
そうだ。私は花海さんに相談しに来たんだ。
結局、なんて言って相談するのかも考えないままここまで来てしまった。どうしよう。直球にアイドルになりたいって言うのもアレだし……。
私は少し戸惑いながらも、何とか言葉をまとめて、花海さんに問いかける。
「あの……実は、新しいことに挑戦したいって思ってるんです。でも、自分にできることなのか、不安で……最後の一歩がどうしても踏み出せなくて」
「へぇ、いいじゃない! それって放送部の新しい企画とか?」
「えっ? あー……はい、そんなところです」
本当は違うけれど、ここで話を止めるのも変だと思い、とりあえずそのまま流すことにした。
「えー! どんな企画? もしかして前からリクエストが多いって言ってたライブ放送!? てことはこれ、初回ゲストの打診も兼ねてるのかしら!?」
「ちょ、ちょっと落ち着いてください花海さん……!」
勢いよくまくし立てる花海さん。その底抜けの明るさが、今の私にはとてもまぶしく感じられる。
「あら、ごめんなさい。それで、何に悩んでるの?」
「……その新しく挑戦しようとしてることが、本当に自分の力で出来るのかな……って。私、全然皆さんみたいな夢とか想いとかないですし。途中で折れて諦めちゃうんじゃないかって、怖くて……」
さっき見ていたダンスレッスンの光景が頭をよぎる。鏡の前で真剣に汗を流すみんなの姿、自分とは違う世界にいるようなその空気。
考えていたことを一つひとつ言葉にしていくたびに、胸の奥からじわじわと不安が湧き上がってくる。自分は本当にこの場所に飛び込んでいいのか、途中であっさり諦めてしまうんじゃないか──そんな思いが、言葉にすることでますます現実味を帯びていく。
咲季さんは、私の話を聞き終えると、一瞬きょとんとした顔をした。「そんなことで悩んでたの?」とでも言いたげな、拍子抜けしたような表情。それから、ふっと優しく微笑んでくれる。
「……悩んでる理由が“自分の力が足りないかもしれない”っていうことなら、わたしは絶対やるべきだと思うわ。だって真城先輩は、十王星南に押し付けられただけの放送部の活動を、誰もが認めるコンテンツにしてみせたすごい人だもの」
私は首を横に振る。
「でも、それは私一人の力じゃありません。花海さんや、アイドル科のみんなが協力してくれたからこそ、できたことなんです。私一人の力なんて、全然……」
花海さんは、少しだけ真剣な表情になって言った。
「そんなの大した問題じゃないわ。だってわたしたちのことを動かしたのは、あなたの力なんだもの」
花海さんの言葉が、胸の奥に静かに染み込んでいく。自分では大したことがないと思っていた行動や想いが、誰かの心を動かしていたのだと、初めて実感する。驚きと戸惑い、そして少しだけ誇らしいような気持ちが入り混じって、思わず息を呑んだ。
「それに、今自分で言ったじゃない。“自分一人の手に負えない”って思ったなら、わたしたちの力を借りればいい。先輩が何をするにしても、私たちはなんでも協力するわ。今みたいにね」
胸の奥にずっとかかっていた薄い靄が、静かに溶けていくようだった。自分でも気づかないうちに絡まっていた不安や疑いが、言葉の余韻にそっとほどけていく。
思えば私は、彼女たちのことを誤解していたのかもしれない。
私がアイドルに転向するなどと言えば、半端な奴だと幻滅されるのではないか、アイドルを舐めるなと嫌な印象を持たれてしまうのではないか。そんな勝手な想像で、彼女たちを無意識に敵のように扱ってしまっていた。
でも違う。彼女たちは私がどうなろうとも、今までと何も変わらず私のことを助けて、傍にいてくれるんだ。
それが、みんなに希望を届けるアイドルの姿なんだ。
「……ありがとうございます。なんだか、少し勇気が出ました」
私は深く頭を下げて、花海さんに礼を言った。
「元気が出たみたいで良かったわ! ゲスト出演の話、いつでも待ってるから!」
「はい。ぜひまた出演してください。外部講演、頑張ってくださいね!」
そう言って、私は花海さんと別れてアイドル科の校舎を後にする。
その帰り道、私はポケットから四つ折りにした紙を取り出し、そこに記載されたQRコードを読み取り、汐崎さん──プロデューサーに、メッセージを送った。
「……申し訳ありません。待たせてしまったようですね」
「いえ、大丈夫です。そわそわして早くに目が覚めてしまっただけなので」
翌朝、私はいつもよりずっと早く学校に着き、放送室で汐崎さんを待っていた。
やがて現れた汐崎さんが、私の正面の席に静かに腰を下ろす。自然と背筋が伸びて、互いに向き合う形になる。
「昨日の夜、両親とも話し合いました。無謀な挑戦なのに、私のやりたいことならなんでも応援するって、そう言ってくれました」
私は一度深呼吸をして、しっかりと彼の目を見据える。
「私を、プロデュースしてください」
時は遡り、咲季と真城が話をした放課後。
真城を見送った咲季は、自分も明日に備えて早く帰ろうと、鞄を持ち直して足早に昇降口へ向かった。
足音が静かに響く中、ふと隣のレッスン室の扉が開き、ことねがタオルで額の汗を拭きながら姿を現した。彼女は軽やかな足取りで咲季の方へと近づいてくる。
「あれ~? 咲季、こんなとこでなにしてんの? 明日から外部講演始まるから、今日は完全休養日じゃねーの?」
「あらことね。レッスンお疲れ様。真城先輩が相談があるって言うから、さっきまでここで話してたの」
「え!? 真城先輩来てたの!? なんで呼んでくれねーんだよー!」
「なによ。そんなに話したいことがあったの?」
「そうじゃねーよ! お前知らねーの!?」
ことねはやたらと興奮した様子でまくし立てる。その勢いに咲季は一瞬きょとんとし、何のことかと首をかしげる。そんな咲季の反応に、ことねは少し呆れたように肩をすくめ、続けた。
「真城先輩、今日プロデューサー科の人にスカウトされたんだって! もう学校中で噂になってんぞ!」
その言葉を聞いた瞬間、咲季の胸に衝撃が走る。同時に、これまでの出来事が一つにつながったような感覚が広がり、思わず口元に笑みが浮かんだ。
「なるほどね。嬉しいわ真城先輩! あなたにだって、絶対負けないんだから!」