悪食少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

1 / 68
雄英入学
入学試験


「ここが〜雄英高校なのね、おっきいのねぇ」

 

 そうのんびりとした様な口調で校舎を見上げるのは1人の少女。

 名前を宮古芳香(みやこよしか)と言うその少女は自分が今から試験を受ける学校を見て感動したかの様に眼を輝かせる。

 

 肩程度の長さにまで伸ばした暗い藤色の髪と同じ虹彩を有しているその少女はゆっくりと歩いて行くが彼女の身体は常人のソレよりもやや硬い。

 脚が上手く動かずに舗装された通路で転びかける。

 受け身を取れずに顔面からすっ転びそうになるが、顔面を強打する直前にそうはならずにフワフワと浮遊した自分の身体を間の抜けた声音をあげて見る。

 

「? 浮いてる……」

 

 フワフワと浮遊する感覚を感じつつ……辺りを見回すとショートボブの髪型の女の子が芳香を見て安堵した様に呟く。

 

「よかったぁ転ばなくて、あっ‼︎ ごめんねコレ私の個性、今解除するね? 転んじゃったら縁起悪いもんね、私は麗日お茶子、よろしくね」

 

 麗日お茶子と名乗った女の子のお陰で転ばずに済んだ芳香。

 ニコリと笑みを浮かべる様に意識して表情を動かして謝辞を語る。

 

「ありがとう、私は宮古芳香、よろしくねぇ」

 

 そう語り試験会場までの短い距離ながら2人は試験の内容を考察しつつ一緒に歩いて行った。

 


 

 試験説明会場へ入ると、隣に座ったのは先程の麗日お茶子と名乗った女の子。

 芳香は重なる偶然に驚きつつも説明を受ける。

 

 チラリと試験用紙を確認するとお互い別の会場だったので残念そうに肩を落とす2人。

 

 そうして各種の説明が終わり、試験会場に到着した芳香はジャージに着替えて試験の開始を待つ。

 放送マイクから発せられた『スタート』と間延びした放送を聞いて駆け出す。

 

 20〜30秒後……走って行きようやく接敵したので指笛を鳴らして、仮想敵の3pロボットを呼び寄せる芳香。

 指笛の音に反応して背部に装着されたブーストスラスターを起動させ、凄まじい移動速度で芳香の背後を取るロボット。

 

『標的発見! ぶっ殺す‼︎』

 

 やや人間臭い言葉を機械的な音声で紡ぐ目測の大きさが5m、横幅は15m程はありそうな4脚型のロボット。

 重装甲且つ重武装のロボットから繰り出された打撃は芳香の左顔面に吸い込まれる様に直撃した。金属製で形作られた打撃の威力は一切減衰する事なくそのまま芳香をビルの外壁に叩きつけた。

 

 鈍い打撃音とビルの外壁が打ち砕かれ、周囲に轟音が響き渡る。

 普通ならば試験など続行不可能な威力である、金属製のアームの打撃をモロに喰らったのだ、当たりどころが良くて骨折、今の様に打ち所が悪かったらすぐさま病院への救急搬送も視野に入れなければならない。

 しかし、芳香の身体は骨折の痕や打撲痕どころか擦り傷一つ負っていない。

 

 何よりも外壁に叩きつけられたと言うのにまるで意にも介さずに……陥没したビルの外壁から身体を動かし抜け出して地面へと着地する。

 高さで言うと5階分に相当する高所から飛び降りて尚……芳香の身体は無傷であった。

 

 着地の際に鈍い音を立て、コンクリートが数センチ程ヒビと共に陥没する。

 

 先程芳香を殴打したロボットは更なる追撃を加えようとするも動く事が出来なかった。

 人間的な感性を有している訳では断じてない、ロボットなのだから与えられた命令には従うのが道理だ……ならば何故動かないのか……。

 

 その理由は、口をモゴモゴと動かしている芳香がつまんなそうに語った。

 

「これぇあんまり美味しくないですね〜、殆ど食べても、はぁ……」

 

 先程の左頬に直撃した打撃の一瞬。

 あのほんの僅かな刹那の一瞬で幅10mはあるであろう重武装重装甲ロボットのほぼ全てを食い破り、メインコンピュータすらも食い千切り、0.5秒〜1秒程の極めて短時間で咀嚼し嚥下する。コンピュータに必要な基盤が無くなればロボットは動く事が出来ない。もっと言うならロボットのメインコンピュータとなる基盤を失った場合、それは人で言う所の脳を失ったと同義なのだ。

 もはや4脚の破片のみを地面に遺したままスクラップと化した、ソレを手に取り、口に入れてバリバリと音を立てて咀嚼し嚥下して文字通りチリひとつ残さず喰らう芳香。

 そんな芳香の個性は『なんでも食べれる』個性である。

 何でも食べるという事でエネルギー的な眼に見えないモノすら食べてしまう。

 芳香は闘いで傷つくと、辺りに在るモノを喰らい、体力を増幅及び回復させる事が可能となっている。

 これを応用したのが、肉体の欠損すら無かったことになる再生である。

 

「さてさて〜、先程の轟音で仮想敵のロボット(新しい餌)が一杯ですねぇ、丁度いい……周りに誰も居ないですねぇ」

 

 先程食べたロボットの金属を体内で抽出して、掌から金属製のネットを複数創り出す。

 

 それらを投擲し、ロボットを拘束し凄まじい膂力でロボットを15体同時に引き寄せる芳香。

 

 ロボットに記されたポイント数は1pが4台、2pが3台、3pが8台……。

 しかしいずれのロボットも拘束されているとはいえ試験用にチューニングされた特別機体である。

 1pのロボット1台すら少女1人で引き寄せれる程機体重量は軽くないしそもそもの話、武装や装甲、搭載された機構、諸々を計算すると1番軽い1pですら総重量は850Kgである。

 

 2pや3pのロボット達はそれよりも遥かに重武装重装甲の為、更に重量がある。

 それらを意にも介さず、その手で手繰り寄せると……10〜15m程の距離があるにも拘らず、眼にも留まらぬ速度で……時間にして大体1〜2秒程だろうか? その範囲に存在していた筈のロボットが全て鉄クズのスクラップへと変わる。

 

 ゴクンッと呑み込み、捕食したロボットの構成物質を変質させて掌からEMP射出弾とそれを撃ち出す銃器を創り出すと、ネットで束縛した残りのロボット達へ向けて撃ち込んでいき、一時的にロボットの機能を喪失させる。

 特殊なコーティングによりEMP攻撃への耐性は高いがそれでも4〜6秒程、復旧に時間がかかる。

 

 そして復旧にかかる4〜6秒という時間は、眼前の少女が捕食を行う速度よりも凄まじく遅く余りにも致命的な空白であった。

 

 群がるロボット達を喰らい続けて129pを獲得した芳香。

 

 試験終了が5分後に迫り来る最終盤。

 

 ソレは轟音とビルの倒壊と共に姿を現した。

 

 説明で『お邪魔虫』と称されていた0pロボット。

 

 宮古芳香が0pロボットを視界に収めて感じ取ったソレは余りにも巨大で、余りにも埒外な形状の()であると言う感覚であった。

 

 他の受験者が我先にと背中を見せ逃げ惑う最中、人の波を掻き分けて0pロボットの脚下に到達する。

 

 芳香は振り下ろされる鉄の(かいな)をぼんやりと見ながら考える。

 

 果たしてこの餌を何口で食べようかと。

 

 芳香に向けて振り下ろされるビルなど粉々に砕くであろうその巨大な鉄の腕は刹那の一瞬で芳香に左腕部位を形成するパーツを跡形も無く捕食され物理的に消え失せる。

 

 0pロボットは消失した左腕部位を何かのトラブルにより機能不全に陥ったと判断して、右腕部位による振り下ろしを敢行した。

 

 刹那、似つかわしくない音が0pロボットの音感センサーへと木霊する。

 

 シャクッシャクッと何かを貪り喰らって咀嚼する様な音が辺りに響き渡り、次なる攻撃の一手を構築する時間もなくそこで0pロボットはメインコンピュータ基盤が故障し、機能を永久に停止した。

 

 芳香が45m程の巨躯を誇る0pロボットを跡形もなく喰らい尽くしたのと同時のタイミングで実技試験は終了した。




感想・ブクマ・特に評価。飢えております。  低評価をもらったら少し傷つきますが、傷も創作のプラスになることはある(私の場合です)。でも無評価=虚無は創作のマイナスにしかならないッス(私の場合です)!  なので、無言で投げれるので、ぽちぽちっと☆を頂けると嬉しいです。多い分には困りませんよ‼︎

評価付与
お気に入り登録
感想

劇場版は入れた方がいいですか?

  • 絶対いる
  • 絶対みたい
  • 超要らん
  • そんなもん書く暇あるなら本編進めろボケ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。