悪食少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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第二種目・騎馬戦

 芳香が1番乗りでゴールした瞬間にプレゼントマイクの声が響く。

 

『さぁさぁ‼︎ お前ら‼︎ 一体誰がこんな展開予想したよ‼︎ スタートが誰よりも出遅れたのにも拘らず‼︎ 驚異の追い上げでトップ集団を猛追し‼︎ 周囲からの十重二十重の妨害すらもまるで意に介さず‼︎ 今この女がスタジアムへと1着で帰ってキタァァ‼︎ 宮古芳香が‼︎』

 

 そうして続々と後続もゴールインする。

 

 10分後、全ての順位が確定した。

 

 1位宮古芳香。

 2位轟焦凍。

 3位八百万百。

 4位爆豪勝己。

 5位緑谷出久。

 

 そうして……42位までが上位通過者として勝ち進み次の種目への参加権を獲得した。

 ミッドナイト先生が語る。

 

「さぁさ‼︎ 次からがいよいよ本選よ‼︎ 第二種目‼︎ それは……騎馬戦よ‼︎」

 

 先程の障害物競走という完全個人プレーが要求される競技から一転……今度はチームプレーが極めて重要視される種目。

 ミッドナイト先生より競技に関する説明が為される。

 

「参加者は2人〜4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ‼︎ 基本は普通の騎馬戦と一緒よ、ただ少し違うのは……先程の障害物競走の結果によって各自にポイントが割り振られる事……組み合わせで騎馬のポイントが全く異なってくるからね……そして1番気になるであろうポイントの発表‼︎」

 

 そう言うと一旦言葉を区切るミッドナイト。

 数秒して再度口を開き肝心要のポイントについて語り出す。

 

「割り振られるポイントは1番下の42位から順に5ポイントずつ増加していくわ‼︎ ただし‼︎ 障害物競走1位には1位入賞の栄誉として‼︎ 1000万ポイントが与えられるわ‼︎ ……上をいく者には更なる受難を、雄英に在籍する以上は何度でも聴かされる言葉よ……これぞPlus Ultra、予選通過1位の宮古芳香さん‼︎ 持ち点1000万‼︎」

 

 そう発表された刹那……41名からの鋭い突き刺さるが当の芳香は全くと言っていいほど理解していない……と言うよりもマジで理解してない、芳香の頭上には大量のハテナマークが浮かんでいる。

 芳香の隣に居た八百万百は創造したペンとフリップで要点を記入してそれを更に噛み砕いて伝えるとようやく理解した様でその受け答えを見た周囲の者達が形成している張り詰めた緊張に満ちた空気が一気に霧散していく。

 ソレを見ながらミッドナイトはルールの説明を続けていく。

 

「制限時間は20分、割り当てられたポイントの合計がそのまま騎馬のポイントとなり騎手は合計ポイント数が記載されたハチマキを装着……制限時間終了まで鉢巻を奪い合って保持ポイントを競い合う‼︎ 取ったハチマキは首から上に巻く事‼︎ 無闇矢鱈と取りまくれば管理に限界がくるから、ここぞと言う場面では取らない選択肢も重要となるわ‼︎ そして最も重要で最も肝要なのが‼︎ ハチマキを取られる又は騎馬の崩壊が起きても退場にはならず騎馬戦の制限時間終了まで続行が可能と言う点よ‼︎ 個性有りの残虐ファイト‼︎ それ故に悪質な崩し目的だろうとなんだろうと何でもありのバーリトゥードよ‼︎ 最低限のルールは身体的後遺症の残る怪我は1発で退場処分とします‼︎ じゃ、これより20分間はチーム決めの交渉タイムよ‼︎ はい交渉スタート‼︎」

 

 1000万ポイント……あまりにも大きすぎるそのポイントである持ち主はだいぶ記憶力に難がある芳香。

 故にチームを組むよりも奪おうと画策する者が多い中で最速で芳香とチームを組む事を選択した者が3人。

 

 障子目蔵と八百万百、そして轟焦凍であった。

 3人はそれぞれこの前の戦闘訓練で嫌という程に痛感している……芳香の個性の恐ろしさ……無尽蔵の暴食を。

 そしてソレを敵に回して耐久された場合……勝てる要素がないと。

 

 故に敵対したらまず勝てないと踏んでチームを組む。

 

 本選出場の1次予選を通過した訳だが2次予選のこの騎馬戦で脱落してしまっては意味がない。

 3人とも確実に勝ちに行ける最強の勝ち馬に乗る事を選択した。

 

 3人は心の底から理解していた。

 宮古芳香の真の恐ろしさは瞬間移動でも凡ゆるモノを無尽蔵に喰らう暴食でも、喰らった物質を変質させて変換し創造する事でもない……真に恐ろしきは肉体の限界以上まで常に引き出された異常な怪力と痛みの一切を感じない肉体を駆使した異常な耐久能力にある、しかも何かを喰えば体力や傷なども回復再生するオマケ付き。

 決して瞬間移動や創造などが脅威じゃない訳ではないが……この様な耐久上等の競技の場合は耐久レースと言っても過言ではない。

 

 なんせ……20分間ずっと逃げ切る事さえ出来れば事実上の勝ちになるのだから。

 

 そして……布陣を決める事になるのだが……頭脳戦においては正直な話、芳香には荷が重い……。

 故に八百万が総司令官として行動する事となった。

 

 轟が前騎馬で凍氷を駆使した攻撃・妨害・牽制を行う役。

 八百万は左翼から指示出しと全体の司令塔。

 障子は右翼で複製腕にて常に複数の『眼』を複製しそれらを360°動かして索敵役。

 

 そして騎手たる芳香の役割はただ一つ。

 

 その頭に巻いたハチマキを絶対に奪われない様に対応する事。

 

 役割分担を決めたとほぼ同時に……第二種目の騎馬戦が開始された。

 


 

 各チームは総数12チームで主要チームはこの様な形となる。

 

 宮古芳香チーム

 宮古芳香

 八百万百

 轟焦凍

 障子目蔵

 

 爆豪勝己チーム。

 爆豪勝己

 芦戸三奈

 切島鋭児郎

 瀬呂範太

 

 緑谷出久チーム

 緑谷出久

 麗日お茶子

 常闇踏陰

 飯田天哉

 


 

 ……芳香の1000万を全チームが積極的に獲りにくるため乱戦は必至……。

 

 そう思案しながら八百万は指示出しを行う。

 

「轟さん‼︎ 前方に凍結‼︎ 芳香さんは凍結の範囲に相手チームが入る様に空間を捕食して相手を引き寄せて下さい‼︎ あとは相手の攻撃は全て迎撃を‼︎」

 

 爆豪の爆破による爆音や上鳴による放電による轟音、耳郎のイヤホンジャックによる音の爆撃が……それに観客の歓声が無数に響き渡るこの場では言葉による意思の疎通は聴き漏らしが発生しやすくその遅れは致命的な物になりかねない。

 故に八百万は自身の個性で人数分のタクティカル・ヘッドセット*1を創り出してそれをチームメンバーが全員が装着する事で司令塔たる八百万百の言葉を聴き漏らす確率を可能な限り無くした滑らかな指示出しを行っている。

 それに加えてハンドサインを併用し芳香にも分かり易い指示出しを心がける。

 

「そこなのだっ‼︎」

 

 芳香も指示出しを受けてその指示の通り寸分違わず的確に空間を捕食し飛来してくる攻撃は全て捕食していくか身体能力を以って自身に飛来してきた瞬間に叩き落とすかのどちらかである。

 

 障子の索敵も非常に高精度であり死角が無くなる為に攻め入る際を与えない。

 

 しかし……爆豪は躊躇う事なく攻めてくる。

 爆破のエネルギーを利用した短時間の浮遊で騎馬から離れ直接芳香のハチマキを奪おうとしたが八百万の指示により先んじて空間を捕食していた芳香により爆豪の身体は突如としてあらぬ方向へと瞬間移動しそれにより爆破エネルギーを利用した飛翔もコントロールを失い墜落する。

 

 爆破による飛翔は爆豪勝己の天才的なセンスともう一つ……爆破エネルギーの繊細なコントロールが必須となる。

 見た目に反して非常に難しい技術を要求されるソレを苦もなく初の実戦で披露できるのはひとえに爆豪勝己という人間の天性の才故だろう。

 だが繊細なコントロールが必須という事は裏を返せば無茶苦茶な軌道の瞬間移動に対しては繊細なコントロールの爆破エネルギーの操作を的確にする事は極めて難しい。

 

 慣れればどうにか出来るだろうが……爆豪に乗じて他のチームも動いてきた。

 それらを幾つもの視界に収めて障子はヘッドセット越しに語る。

 

「6時方向から3組‼︎ 9時方向から4組‼︎」

 

 爆音や轟音が響き渡る最中……八百万百は考える。

 思考を止めるな、常に周囲の敵を揺さぶり続けろ、常に最適解を選択し続けろ。

 

「芳香さん‼︎ ハチマキの軌道上の空間のみを狙って摂食は可能ですか⁉︎」

 

 そう芳香へ指示を飛ばすと芳香からは問題なしとのハンドサインが返ってくる。

 それを見た八百万は防御に徹しながら指示を飛ばす。

 既に集中砲火と言っても過言ではない程に他チームからの攻撃を受けている。

 耳郎のイヤホンジャック、上鳴の無差別放電……B組の人達からも色々と。

 その中でも爆豪や常闇……飯田の高速移動は特に脅威。

 瞬間移動ですぐさま攻撃範囲から離脱出来るとはいえまだ時間は5分も経っていない。

 それ程までに濃密な集中砲火に晒され続けている。

 地面が柔らかくなり沈みかけるが瞬間移動でそれを脱する。

 

 しかし移動先に既に爆豪の姿が……芳香のハチマキに手が届きかけたその刹那……爆豪の背筋にとてつもない悪寒が走り突如として方向転換、即座に爆破を応用した飛翔で自分の騎馬へと戻る。

 

 それを踏まえて芳香が語る。

 

「恐怖は消せないのだ‼︎ 特に死への恐怖は‼︎」

 

 爆豪の背に走った悪寒はこの場所に居たら喰われるかもしれないという一瞬の威圧である。

 死、飢餓、苦痛等は生き物が生き物である限り決して逃れ得ない恐怖の最たる例である、恐怖とは総じて根源的な物であり如何に傲岸不遜に立ち回ろうとも根本的には打ち消す事が難しい。

 己を奮い立たせる事で一時的には遠ざける事も可能だが消えるわけではない。

 特に……喰われるかもしれないという恐怖は別格だ。

 

 そして爆豪の動きを止めつつ芳香は八百万に指示された通りにハチマキの軌道上の空間のみを狙って摂食していく。

 刹那……各チームのハチマキは瞬間移動に付随して無理矢理引っ張られて地面へと落下する。

 それを見た八百万はグッと拳を握り自身の予測と推測が間違ってなかったと再認識しつつ認識する。

 

「芳香さんは先程の障害物競走の際に言っておりましたわ…… 瞬間移動の際に軽い物体なら慣性でそれ以上の距離を飛ぶこともあるのだと、ハチマキ程度の極めて軽い物体ならば瞬間移動の際に生じる慣性でハチマキが引っ張られ落ちるとそう踏んだのですが……正解でしたわ」

 

 そう語る八百万百。

 芳香の周囲いた8チームはハチマキを奪われて得点が0になるが肝心の落ちたハチマキを芳香は獲ろうとはしない。

 地面に落下したハチマキの束……それを見て轟は意図を理解しきれずに芳香に語る。

 

「……ハチマキ落ちてんぞ? なんで獲らないんだ?」

 

 その問いかけに対して芳香は周囲から豪雨の様に降る攻撃の雨を全て捕食しながら語る。

 

「あんなの獲る必要ないのだ‼︎ 適当に凍らせてくれると嬉しいのだ‼︎」

 

 そう語った芳香。

 その意図を理解しきれずに言われるがままフィールドを凍結させる、ハチマキごと纏めて。

 これで12枚中8枚のハチマキが氷の中。

 氷をぶち割ってハチマキを即座に取り返す者もいるだろうが時間的猶予が生まれた。

 気づけば残りあと5分。

 このまま逃げ切り続ける。

 爆豪の嵐を思わせる様な執拗な攻撃も……飯田の高速移動も常闇の黒影(ダークシャドウ)も芳香のハチマキを奪う決定的な要因には成り得ず……残り時間の5分が経過し騎馬戦の終了が宣告される。

 

『TIME UP‼︎ 早速上位の4チームを見てみようかぁ‼︎ 1位宮古チーム‼︎ 2位爆豪チーム‼︎ 3位緑谷チーム‼︎ 4位心操チーム⁉︎ いつの間に⁉︎ ま……まぁこれで騎馬戦が終わり最終種目へと4チームが進出だァァ‼︎ 1時間ほど昼休憩挟んでから午後の部だぜ‼︎ しっかり昼飯食べて英気を養え〜‼︎』

 

 騎馬戦上位4チーム。

 

 宮古芳香チーム

 宮古芳香

 轟焦凍

 八百万百

 障子目蔵

 

 爆豪勝己チーム

 爆豪勝己

 瀬呂範太

 芦戸三奈

 切島鋭児郎

 

 緑谷出久チーム

 緑谷出久

 麗日お茶子

 飯田天哉

 常闇踏陰

 

 心操人使チーム

 心操人使

 青山優雅

 峰田実

 発目明

 

 以上4チーム16人が最終種目へと進む権利を取得した。

*1
タクティカル・ヘッドセットは戦場での装備品となるその運用上、聴覚保護の為に発砲音や爆発音を遮るノイズキャンセリング機能と逆に非常に小さな音を増幅し音の方向が判別できる技術を利用した音響増幅装置の両方が備わっている




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