緒戦を終えた芳香と八百万は観戦席に戻ると次の試合が始まるまでの間、感想戦を開始する。
「芳香さん……あの時私は軽機関銃の斉射で貴女を迎え撃とうとしました、その策は見事に失敗、傷一つ与えられずに引き寄せられ片手で首を絞められて惨敗しました……たらればを言うつもりはありませんわ……ただどうすれば良かったのか……」
落ち込む八百万の頭をポンポンと撫でながら芳香は語る。
「……軽機関銃の斉射が効かない時点でそれ以上の火力に切り換えるべきでした……具体的に言うならば銃撃ではなく砲撃に切り替えて爆風で私をフィールドから押し出せば良かった……と思います……」
それを聞き八百万百は深く考え込む……そして、はたと思い返した様に口を開き芳香へと問いかける。
「……そう言えば芳香さん、私と似た様な物質の創造が可能でしたわね? 何故お使いにならなかったのでしょう?」
「忘れてたの……アレってあんまり使う事ないから……それに私は記憶力に難があるから……忘れっぽいの」
そう語り終えると第一試合2ブロック目である緑谷VS心操の試合がスタートする。
試合がスタートした瞬間に緑谷が心操の言葉に反応……その瞬間にストンっと操り人形の如く従順に心操の言葉に従い場外へと脚を進める緑谷。
それを見て芳香は語る。
「……あの人と戦ってたら私負けてた」
唐突に口から出た敗北宣言に八百万は唖然とした表情で芳香を見つめる。
芳香はその理由を語る。
「私って……良くも悪くも必ず相手の言葉に反応しちゃうでしょ? あの個性が何かは分からないけど私は確実にあの状態に追い込まれて負ける……かもしれない」
その呟きは隣にいる八百万百以外には聞かれることはなく……2人は試合観戦に集中していく。
緑谷が場外に出るまさにその瞬間、指先を動かすと爆風と共に凄まじい衝撃が放たれる。
そして……従順な操り人形であった緑谷が意識を回復させている。
緑谷は相手の個性のトリガーを理解した様で心操がどれだけ捲し立てようとも決して口を開かなかった。
そのまま背負い投げで心操を場外に叩き落として2回戦進出を決める。
そして……試合はどんどん進んでいき気づけば1回戦最終ブロック。
麗日VS爆豪。
実況のプレゼントマイクは完全に私情を挟み麗日に勝利をなどと宣っている。
……いいのかそれで。
火力に持久力、耐久力……全てにおいて劣る麗日が取れる方法は2択。
速攻で勝負を終わらせるか爆豪の爆破を限界まで酷使させ爆破を撃てない様にしてからの突撃をするかの2択であり麗日は速攻を仕掛けた様で超低姿勢からのタックルで突撃し爆豪に触れて浮かす戦法を取ったと……芳香へ解説する八百万。
当の芳香は八百万の解説を聞きながら試合観戦を行う。
あまりの苛烈な試合運びに観戦していたプロヒーローから爆豪に対してブーイングが飛ぶが解説の相澤先生が放送用マイクを解説のプレゼントマイクからぶん取って語る。
『今遊んでるつったのプロか? 何年目だ⁉︎ シラフで言ってるんだったらもう観戦してる必要ねぇから帰れ‼︎ 帰って転職サイトでも見てろ‼︎ ここまで上がってきた相手の力を認めてるからこそ警戒してんだろ、本気で勝とうとしてるからこそ……手加減も油断も出来ねぇんだろうが‼︎』
その一喝でブーイングの嵐はピタリと止み……一瞬の静寂が響き渡る。
その後……爆豪が爆破で破壊したフィールドのコンクリの破片を空から降り注ぎその隙に突撃しようとした麗日であるが爆豪の凄まじい爆破による爆風と衝撃波で近づく事が叶わない。
なおも突撃しようとした刹那……不自然にバランスを崩してうつ伏せに倒れ込む。
個性使用許容上限オーバーによるダウン……当然動けるはずもなくミッドナイト先生により爆豪が2回戦へと進出した。
そして、2回戦第1ブロック……宮古芳香VS飯田天哉の試合が15分後にスタートとなった。
『さて‼︎ 2回戦第1試合……宮古芳香VS飯田天哉‼︎ 試合開始‼︎』
長ったらしい前置きはなく突然宣告された試合開始の合図。
……刹那、飯田の姿が芳香の視界より消え去る……辺りをキョロキョロと見回した芳香……次の瞬間、立ち幅跳びの要領で跳躍をしてきた飯田の蹴りが……エンジンで加速させた飯田の蹴りが脳天へとクリーンヒットする。
観客からは悲痛な叫びと共に『モロに入った』や『非常に重そうな蹴り』がクリーンヒットした事に対してどよめきの声が響いていた。
しかし、脳天直撃の重い一撃の蹴りを入れたのにも拘らず……飯田は『勝ち』を確信できていない。
蹴りは確かにクリーンヒットした筈なのに肝心の芳香は吹き飛びもしないし仰け反りもしない……蹴りで体勢が崩れる事すら無かった。
蹴り抜いた感覚も何かおかしい……異常に硬すぎる。
飯田はふと思い出す……トレーニングで蹴り技を練習する際にいつも使っているトレーニング用の人形を蹴る時のあの感覚と非常に酷似していた、とても硬く……とても重いトレーニング用の人形に……しかしその様な思案は一瞬で頭を振って忘れ去る……眼前に居る生きた人間、ましてやクラスメイトの事をトレーニング用の人形と一緒にするなどというのは失礼極まりない……その様な思考に一瞬でも陥った自身を恥じ、飯田は眼前の芳香との試合に集中する。
芳香は今し方脳天を蹴られたのすらまるで意に解さずに飯田へ向かって叫ぶ。
「今度はこっちの番なのだ‼︎」
そう叫ぶ芳香であるがヒット&アウェイと素早い動きで常に視界に入らないようにして翻弄し続ける。
芳香の弱点とも言えない弱点だがまさにコレである……思考能力の大幅な欠落により速すぎる相手との戦闘はやや不利がつく。
『蹴りの連続だァァ‼︎ 飯田天哉の繰り出す重い蹴りの連撃が防御すら取らない宮古芳香の身体に連続して吸い込まれる様にヒット‼︎ しかしながら宮古芳香の身体は吹っ飛びもしないし仰け反りもしないいい⁉︎ 飯田の蹴りは効いてないのか⁉︎ はたまた宮古芳香の痩せ我慢か〜⁉︎』
芳香と飯田の距離は概算で150m程……故に飯田天哉はヒット&アウェイを徹底している。
奥の手であるレシプロバーストも現状は使わずに純粋に『エンジン』の正当な使用法のみで蹴りを繰り返している。
レシプロバーストは現状では15秒しか保たない……それを過ぎるとエンストを起こしてしばらくの間エンジンが使用不可能になる。
まだ底が見えない芳香を相手に動きを止めるのはあまりにも愚策。
素早い動きで翻弄し続けて肩や太腿などに蹴りを繰り返していく飯田。
内心では女性に対し蹴りを入れるなどと思う所も無いわけではなかった……。
飯田は何撃目かの蹴りを芳香の背中へと入れるが衝撃で吹き飛ぶことも無く体勢が崩れる事すらない。
……飯田天哉は思い知る。
如何に芳香の弱点とも言えない弱点を突こうとも……如何に重い蹴りを連発して入れようとも耐久力という一点に関しては恐らくクラス内でもトップに位置するであろうと。
しかし……人間の弱点と呼ばれる鳩尾や肝臓に蹴りがクリーンヒットした……激痛が襲っている筈なのだ、普通ならば立っているのも厳しい筈。
一気に勝負を決める為に……レシプロを解禁しようとした刹那……『しゃくっ』と何かを咀嚼する音が嫌に鮮明に響き渡り……飯田天哉の身体が浮遊感と共に強制的に芳香の方へと引き寄せられる。
空中で無理矢理エンジンを始動させて何とか回避しようとしたが今度は芳香が飯田のいる場所へと瞬間移動をしてきた……更に飯田自身も引き寄せられている。
「言った筈なのだ‼︎ 今度はこちらの番なのだ‼︎」
互いに瞬間移動が行われた為に空中でぶつかってそのまま揉み合いになり芳香が飯田へと馬乗りになった状態で地面に倒れ込むと間髪入れずに芳香の放った拳が飯田の顔面へと直撃する瞬間に止まる。
「……降参宣言してくれるならこれ以上はしないのだ」
その言葉に……飯田は……降参宣言をした。
それを聞き届けた審判であるミッドナイトはマイク越しに語る。
『飯田君‼︎ 降参により宮古芳香さん3回戦進出決定‼︎』
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