悪食少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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第3種目・ガチバトルトーナメント決勝 宮古芳香VS爆豪勝己

 芳香の戦いが終わり観戦席へとパーカー姿で戻る芳香。

 試合終了時のアレだろうと八百万は事情を察して芳香を個室へ連れて行き自身が創造した体操服を着用させる。

 

 着替え終わり席へと戻るとちょうど……始まるのは常闇VS爆豪の試合。

 2人とも中遠距離に秀でた個性故に長期戦になると思われていた試合だが意外にも……3分という極めて短い時間で決着がついた。

 そもそも常闇の個性『黒影(ダークシャドウ)』は暗くなれば強さを増す一方光に弱いと芳香は予想した。

 ならばそもそもの話爆豪勝己との相性は最悪の一言だろう。

 爆破の副次的効果で生じる一瞬の閃光……爆破自体の直撃はしなくとも確かに相手の体力を削り取っていける……じゃんけんの様にグーとチョキとパーみたいな物だ。

 一方には必ず勝てるがもう一方には必ず負ける、そして残ったもう片方とは一生勝ちも負けもなく勝負がつかない……相性の問題。

 

『常闇君降参‼︎ これにより爆豪君の決勝戦進出が確定‼︎ やって決勝は爆豪勝己VS宮古芳香に決定‼︎』

 

 しかし……相性差などという高度な問題(・・・・・)は実力が同等でなければ発生しない事象なのだ。

 如何に策を練り完璧に相手の弱点を突いたとしても弱者の刀は強者の身体には決して刺さらない。

 ……芳香の朧げな記憶に残る服装や髪色が青い色で統一された誰かが語った言葉が芳香の脳内に反芻される。

 

『ねぇ芳香……弱い者が負ける理由にはある種のパターンがあるが強い者が勝つ理由は千差万別なの……だからこそ怯まない事、敵の強さの掴めなさに……』

 

 芳香が朧げな記憶の中で瞬きの一瞬思い出すのは顔も不鮮明な女性……語る言葉は芳香には難しく理解が追いつかないが、顔も思い出せない程の不鮮明な遠い記憶の奔流の極めて短い短い記憶の流れ星……だがその女性を思い出すと不思議と落ち着いていられる。

 まるで子を思う親に包まれる様なそんな感覚を感じる。

 流れ星の如き美しく優しい記憶に包まれながら過ごしていると隣にいた八百万さんから肩を揺さぶられて我に返る。

 

「聞いてますの? 芳香さん……もうそろそろ出番ですわよ?」

 

「……ごめん、ぼーっとしてた……じゃ、行ってくるね八百万さん」

 

 八百万へと手を振って控え室へと移動する芳香。

 控え室で時間まで何をするでもなく指定時間まで何もせずただじっと座して待つ……すると突然控え室の扉が蹴り開けられ爆豪勝己が入室してきた。

 爆豪は何でテメェが此処にいる? とでも言いたげな表情をして数秒固まっていると扉に記載されたルームナンバーを確認する。

 

「此処控え室2のほうかよ‼︎ クソがっ‼︎」

 

 その言葉を聞きながら芳香は時計を見続ける。

 その無反応に近い反応が爆豪の思う所に触れたらしくバチバチと爆破音をさせながらテーブルにその掌を叩きつけて芳香へと怒鳴る。

 

「部屋間違えたのは俺だけどよ⁉︎ 決勝相手にその態度はオイオイオイ……どこ見てんだ⁉︎ アァ‼︎ 暴食女ァ‼︎ 俺を見ろや‼︎ テメェを徹底的に潰して俺が1番だって証明してやんよ‼︎」

 

 爆豪は他者を外見的特徴に準えて呼称する事が多々ある。

 芳香の場合は何でも喰らい尽くすその能力に準えてだろう……。

 

「暴食とはまた面白い言い方をするのだ……お前は徹底的に潰すのだ」

 

 芳香が断定系の言い回しになる……それは芳香が敵と見做した相手にしか使わない言い回しである。

 芳香の性格は忠実で律儀。そして言葉の節々にも見える程に常にハイテンション。だが、どこか間が抜けている。

 そして敵対者には「~だ」「~ではない!」という断定形の硬い口調で話すが、友人などとは気が緩むと砕けた話し方になる。

 そんな芳香と爆豪は試合開始前からバチバチと火花を燃やし続ける。

 そして……試合開始となり互いにフィールドへと降り立つ。

 


 

『さぁさ‼︎ いよいよラストだぜ⁉︎ 雄英1年の頂点が此処で決まる‼︎ 決勝戦‼︎ 宮古VS爆豪‼︎ 今‼︎ スタート‼︎』

 

 実況であるプレゼントマイクのその叫びと共に開始宣告がなされる。

 その刹那……両掌から爆破を行い飛翔した爆豪は芳香を見下ろして……躊躇う事なく芳香の身体を覆い尽くす様に爆破の弾幕を途絶える事なく放つ。

 その威力はコンクリートのフィールドを破砕する程の威力。

 そんなものを直撃した芳香を心配する声が上がるが麗日戦での一件があるからかブーイングは起こらない。

 飛翔していた爆豪がフィールドに降り立った刹那……違和感を感じて更に爆破の弾幕を仕掛ける。

 側から見ればもはや成す術もなく防戦一方にも見える芳香。

 実況のプレゼントマイクも大仰な言葉を使いながら叫ぶ。

 

『あーっと⁉︎ 爆破の弾幕が絶える事なく宮古を襲っているううう‼︎ 爆破の弾幕で姿は見えないがこれはもう勝負あったかぁぁぁ⁉︎』

 

 爆破が着弾し爆炎と爆煙に包まれている芳香であるが……対戦相手である爆豪は微塵も油断せずに更なる追撃を行なっていく。

 観客や実況席からは見えないが……フィールドで実際に相対している爆豪と審判である2人には見えていた。

 爆破と爆破の間で薄らと見える芳香の身体には僅かな傷一つ付いていないのが。

 それを見てある種のプライドを逆撫でされたのか爆豪は顔を憤怒に染めて更に爆破の威力を底上げして今撃てる限界威力を引き出して連発しながら怒鳴り声をあげる。

 

「舐めプしてんじゃねぇよ‼︎ 暴食女ァァ‼︎ テメェが攻撃してこねぇのはなんだ⁉︎ 俺を舐めてんじゃねぇよ‼︎ っらぁぁぁ‼︎ 徹甲弾機関銃(A・P・ショット・オートカノン)‼︎」

 

 そう怒鳴る爆豪は自身の個性である『爆破』……その大元であるニトロの様な汗を掌全体ではなく一点に集中して起爆させることで爆発の範囲を狭めて貫通力を上げる様に意識し更にそれを両手で連続して放つ。

 他とは明確に一線を画すその爆破は凄まじい威力と反動を誇ったソレは爆煙を一瞬で吹き飛ばし爆煙に包まれていた芳香の姿が実況や観客席にも露わになる。

 体操服は被弾によりボロボロになっており、またもや上半身はスポーツブラのみの姿となっているが肉体には傷一つ付いていない完全に無傷の姿が露わとなる。

 それを見た爆豪は何かを確信した様に怒鳴る。

 

「ハッ‼︎ やっぱりなぁ‼︎ 暴食女ァァ‼︎ テメェは俺の攻撃を避けていた訳じゃねぇ‼︎ かと言ってまともに喰らっていた訳でもねぇ‼︎ 『喰べて』いたんだろ⁉︎ 爆破エネルギーを余す事なく喰らい尽くしてやがる‼︎」

 

 それを肯定するかの様に芳香は無言で足元の自身と同等の大きさの瓦礫を手に取り一瞬で捕食する。

 そもそも芳香は先の一戦、轟との試合で大氷壁を一瞬で捕食していた。

 アレが出来るなら爆破が着弾した瞬間に喰らう事すら難しい訳がない。

 続けて更なる弾幕を仕掛けようとした刹那……爆豪は自身の肉体が不自然に引き寄せられるのを感じ取った。

 空間を捕食した瞬間移動だと悟った爆豪……次の瞬間に眼前に見えるのは芳香の姿。

 

「ハッ‼︎ 至近距離での戦闘ってか⁉︎ 俺はそっちの方も得意なんだよ暴食女ァァ‼︎」

 

 捕食すらさせない様に爆破による弾幕を超至近距離から放つ爆豪だが着弾した感触が異常であった。

 その手に伝わる爆破の感覚……切島の時の様にただ硬いだけじゃない……そもそもあの時の爆破よりもずっと貫通力を増した爆破……これならば耐久性に秀でた個性だろうと砕き制圧する事だって訳ない、

 しかし眼前の芳香には微塵も通用していない……爆破を捕食された感覚もない、なのに……まるで効いていない。

 今まで防戦一方に回っていた芳香は短く呟く。

 

「これで終わりなのだ? こっちの番なのだ」

 

 そう呟いて芳香はあまり使っていない方の……自身の個性の副次的な能力を行使する。

 爆破エネルギーと瓦礫を変質させて掌から生み出すのは芳香自身を模した自律した動作を行える等身大人形……本体たる芳香とはそれぞれ髪の長さであったりそもそも間接部は金色のリングで構成されていたりと各部分の違いがあからさまに顕著であるために見間違える事がないのが唯一の救いと言える。

 芳香はそれを20体ほど生み出すと語る。

 

「戦いとは数なのだ‼︎ 仲間を増やして戦うのだ‼︎」

 

 突如として増えた対戦相手。

 身体の頑強さは本体である芳香には遠く及ぶべくもない……通常の爆破で砕け散る程度の硬さでしかない。

 問題は……それが無限に再生して襲ってくる事と本体も時折混ざって攻撃してくる事。

 倒した先から芳香本体が倒れた人形を捕食して芳香自身の失った体力などを回復しつつ追加で新しく作ってくる為に恐ろしく耐久戦や持久戦に向いた能力と言える。

 それはあまりにも数の暴力であった。

 爆豪も善戦してはいるのだが……無限に等しい戦力を滅することなど個の戦力には無理な話……。

 30分にわたる特大の爆破も全て通じずに……無限に舞い戻ってくる軍勢の前に爆豪勝己は敗北を喫したのだった。

 

『爆豪くん気絶により敗北‼︎ 優勝者は宮古芳香‼︎』

 

 その言葉がスタジアム中に響き渡った。




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