悪食少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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蠢く悪意

 時は体育祭後の振替休日の2連休に戻る。

 


 

「塚内警視正‼︎ 玉川警視‼︎ お疲れ様です‼︎」

 

 此処は雄英からほど近い警察署の前。

 署の出入り口でビッと敬礼をしてきた所轄の警官に労いの言葉をかけて警察署へと入っていくと同業の者より向けられるのは驚愕の眼差し。

 そりゃあそうだろう……警視正と警視がこんな所轄に来ることなどほぼない。

 塚内と塚内の直属の部下である玉川三茶はとある解析結果の書類を受け取りに来ていた。

 USJ襲撃時の脳無と呼ばれていた(ヴィラン)の鑑定結果が出たとの報告を三茶が運転する車内で受け取り……警視庁に戻りFAXで受け取るよりも車で2分の距離であった為にそのまま受け取りに来た。

 三茶は塚内が最も信頼を置く直属の部下であり塚内と同様に警視庁刑事部のキャリア組である。

 塚内は警視であるが故に現場にはほぼ出る事は無かったがオールマイトの関係以降比較的多く現場にも出る様にしていた。

 もとより責任感が強く警察としての誇りを持ち、職務を果たし秩序を守らんとする情熱を持つ塚内と三茶の2人は見事なバディとして機能している。

 塚内は捜査指揮や人員配置、情報処理など管理・戦略側の仕事においては比類なき才能を見せており、三茶や現場で動いている者達からも現場で指揮するよりも管理する側に向いていると評されている。

 無論現場での指揮が劣るという訳ではないが……塚内はどちらかと言えば後方で人員を管理支援する方に才能が重きを置かれている。

 三茶の方も真面目で正義感が強く、事件の大小に囚われず真摯に仕事と向き合う性格であり塚内には絶対の信頼を置いているので関係は良好である。

 受け取った書類を三茶と共に確認して絶句した。

 ……現代社会の個性溢るる超人社会といえどもあまりの常識外れの検査結果に対して2人ともしばらくは一言も喋る事が出来なかった。

 20分ほどして……車へと戻った2人、助手席に座りながら塚内は語る

 

「なぁ三茶……さっきの検査結果どう思う……」

 

 三茶は運転を行いつつ先程の……文字通り身の毛がよだつ検査結果を思い返して……10年来の友人であり長い付き合いの上司へと語る。

 

「……あれほどの人体改造や非合法な実験が出来る財力と人脈、人目の付かない広大な施設、及びそれら管理の必要性があるのにも拘らず……この実験が出来るという点……そして既にアレ程のほぼ成功と呼んでも遜色ない実験結果を出せるという事実……それらを鑑みるとアレは脅威ですね、5年や其処らじゃ到達出来る実験結果じゃありませんよ、アレは……人体実験はその犯罪性から『人体』からのアシが最もつきやすい……にも拘らず……」

 

 其処で言葉を区切る三茶。

 その続きを塚内が引き継ぐ。

 走る車の音に掻き消されそうになるが三茶の個性は猫……故に猫の特性がそのまま人間の身体に上乗せされていると言っても過言ではない。

 故に消え入りそうな塚内の言葉をきちんと聞き取ることが可能であった。

 

「にも拘らず……この犯罪を行っているのが組織なのか個人なのか、それすらも掴めていない……尻尾も掴めていない……」

 

 塚内と三茶はあの時、宮古芳香の検視を担当した検視官からの正式な報告書となる前の報告書を読んでおり宮古芳香の異常性については理解していた。

 恐らく宮古芳香と脳無という(ヴィラン)を造ったのは同一の個人または組織である事など……とっくに理解している。

 しかしながら何一つとして証拠がない、故に憶測で動くなどあってはならない。

 法の番人たる警察官がその職権を濫用し状況証拠も確たる証拠もなく完全なる憶測や思い込みでの捜査を強行しようものならそれは……いつか必ず、間違いなく絶対に冤罪を生むだろう。

 それはあってはならない事態だ。

 塚内の脳裏にはAFOの影がよぎる……俊典があの時完全に頭を砕いた……そして塚内と三茶、俊典の3人は検視官と共にAFOの死を確認した。

 しかし言いようのない重い不安が塚内を掴んで離さない。

 

「三茶……悪いがちょっと寄るところが出来た、先に戻っていてくれ」

 

 部下へそう告げると三茶は車を停止してもらい……降車すると歩いて雄英高校へと向かっていった。

 雄英高校へと到着すると巡回中の教員に用件を告げ入館許可証を発行してもらいそれを首から下げると仮眠室へ直行し扉をノックすると中からは入室を促す声が聞こえて入室する。

 

「やぁ俊典……取り急ぎ見てもらいたいものがある……これは雄英高校へと提出するUSJ襲撃事件の報告書だ、脳無と呼ばれた(ヴィラン)の検査結果を添付してある……」

 

 それを受け取った八木俊典はぺらぺらと報告書の書類を捲って読み進んでいく。

 色々な検査方法を行い判明した事実。

 口が聞けない為に無反応だった訳ではない……何をしても無反応であり文字通り思考停止状態。

 素性を調べる為にDNA検査を行った所……前科者リストと照合された。

 素性……もとい脳無の素体は過去に強盗と女子高生の拉致監禁を行った後に逮捕された男性。

 そして数年前に仮出所した囚人であり、出所後すぐに強盗殺人と現住建造物等放火を行いそれらの容疑で全国指名手配中だった。

 

「奴の身体には少なくとも別人のDNAが10以上混在していることが分かった……」

 

 それを聞いた八木俊典は嫌な汗が流れ落ちるのを感じながら報告書に目を落とし……語る。

 

「…………もはや人間と呼べるのか、それは」

 

 報告書に記載された検査結果に目を通す。

 検査結果では全身丸ごと違法薬物で弄くられていたと。

 安っぽい言い方をするならば……『複数個性』に耐え切れる肉体へと強制的に作り変えられた改造人間とでもいうべきか。

 塚内は報告書の一部を読み上げる。

 

「脳の著しい機能低下はその負荷によるものだが……まぁ身体の方はさて置き、問題は個性の複数持ちの方……仮にDNAを取り入れた所で『馴染み浸透する特性』でもない限り個性の複数持ちなんて事にはなりはしない……OFAを持った君なら分かるだろ? 個性の複数持ちを後天的に行うには個性を与える個性が必要になる……つまりAFOがまだ生きている、あの時君は奴の頭を砕いた筈だったが……」

 

 AFO……その名を聞いて八木俊典ことオールマイトは過去の苦い思い出を反芻する。

 塚内も同様である……AFO及びその下部組織の殲滅でどれだけの仲間を喪ったか……AFOの討滅それは想像を絶する程の長い戦いの果てに得た平和の筈だったが、よもや生きているとは……。

 塚内は苦虫を噛み潰したような表情を少し和らげて語る。

 

「……話を変えよう、宮古芳香の件で話があるんだ」

 

 そう語る塚内の口からは驚愕の事実がもたらされる。




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