悪食少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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職場体験③

「きゃぁぁぁ‼︎」

 

 帰宅途中の女性の叫び声が響き渡る。

 女性の眼前にはコンクリートをまるで紙でも破くかの如く軽々と砕き割る脳が剥き出しの化け物。

 腰が抜けて……怖くて立つ事も出来ない女性は振り下ろされる拳を前に……自身の20数年に渡る人生の思い出を垣間見た。

 コレが走馬燈なのかと、直感で理解して残り数秒もない自分の命を感じ、何処か他人事の様にすらも思っていた。

 多くの生物は死が極めて近づいた瞬間……脳内で大量のドーパミンが分泌され死へのストレスを可能な限り和らげようとする……『死』が近ければ近い程に逆に脳はソレを和らげる為にフル回転で快楽物質(ドーパミン)を作り出す……走馬燈と呼ばれる現象は死へのストレスから発生するのだと一説には説かれている。

 極限状態の女性、目の前に迫り来る剛腕ですら非常に遅く感じつつ恐怖で眼をギュッと閉じた刹那……衣服が引っ張られる感覚と共に後ろへと急加速、ソレと同時に耳を劈くは爆発音であり誰かに抱き抱えられる感覚が身を包む

 女性は恐る恐る眼を開けてヒーローの顔を確認すると驚きの声音を上げる。

 

「ジーニスト⁉︎ それに……ギャングオルカ⁉︎ あ、君は体育祭で準優勝してた子⁉︎」

 

 ベストジーニストは女性を安全な場所へと避難する様にサイドキックと爆豪へと指示を出すと即座に眼前の脳無を拘束する。

 

「ギャングオルカ‼︎ 塚内と検視官より報告は聞いていたな⁉︎ 脳が剥き出しのコイツらは既に生きてはいない‼︎ 頭部を潰せ‼︎ ソコ以外はどれだけ破砕しようとも意味がない‼︎」

 

 ジーニストは脳無を拘束しつつそう叫ぶとギャングオルカが即座に脳無の眼前へと飛び出してシャチ特有のクリック音で超音波アタックを行いその驚異的な爆音波により脳無の四肢を爆砕に至らしめる。

 無論即座に再生が始まるが一瞬の隙さえ出来れば良い……脳無が崩れ落ちた瞬間にニーキックを頭部へと決め込み頭部を完全に破壊する。

 しかし、ギャングオルカの遥か上空より翼を生やして飛翔していた脳無の一体がギャングオルカへと凄まじい飛行速度を以て襲い掛かろうとしたが先程のクリック音は反響定位(エコーロケーション)も兼ねていた……。

 接触する寸前にクリック音にて脳無の四肢と翼膜を爆砕するとその勢いのまま落下して来る頭部へと蹴りを叩き込み地面のアスファルトへと陥没する勢いで叩きつけて活動不能に追い込む。

 

「コレほどの脅威があと何体いる⁉︎ 避難誘導はサイドキックに指示しているがコレだけの広範囲……とてもではないが手が足りんぞ⁉︎」

 

 反響定位(エコーロケーション)で保須市全域の脳無と呼ばれた(ヴィラン)の位置を把握するが残った35体は東西南北全てに満遍なく散っており手が回らない。

 ミルコやクラスト、エンデヴァー、エッジショットも現着し戦闘に突入しているが相手の強さよりも数の多さよりも保須市全域に散らばっているという事象の為に戦域が拡大しており手間取っている……自ら隊からは路地裏でヒーロー殺しステインを発見したとの報告も受けており急いで脳無を対処しステインを捕縛しなければまたも逃げられる……焦りがジーニストとギャングオルカを包む。

 そんな折、青い色で統一された衣服を身に纏った女性とその女性に抱えられた少女がギャングオルカとジーニストの眼前に突如として現れる。

 

「貴方達知ってるわ、ギャングオルカにジーニストでしょ? アラ? 貴方は芳香と体育祭の決勝を争ってた子ね? 苦労してるようね、お互いに……戦域が拡大してるものね、あぁ私も名乗るべきね? 霍青娥……一応貴方達と同じプロヒーローよ、よろしく」

 

 のべつ幕無しにそう語ってきたその女性……女性に抱えられていた少女は自身らの事務所も指名をしていた少女だと理解するがギャングオルカとジーニストは今そんな状況ではないと理解して語る。

 

「ならば助太刀を‼︎ 見ての有様だ‼︎ 1人でも多くの助力を‼︎」

 

 ジーニストがそう叫ぶと目の前の霍青娥と名乗った女性はあり得ない事を宣う。

 

「嫌よ? こんな四方八方、東西南北全域に散らばった(ヴィラン)の相手なんて……」

 

 ソレを聞いてギャングオルカは詰めより胸ぐらを掴み叫ぶ。

 

「ソレでもヒーローか貴様‼︎」

 

「離しなさいな? まだ私の話は終わってないわ? 身構えなさい……全員此処で仕留めるわよ」

 

 ふわふわとした物言いでそう語ってくる青娥。

 ギャングオルカは問い返そうとした瞬間……周囲に突如としてエンデヴァー、クラスト、エッジショット、ミルコが現れソレと同時に市内全域に散らばったと報告を受けた脳無が全て集約される。

 

「嫌よ市内全域を移動なんて……最初から1箇所に集めた方が手っ取り早くていいわ……芳香、許可をあげるからあの脳無達も食べちゃいなさい」

 

 そう語る青娥。

 突如として空間を跳躍して集められたエンデヴァーらプロヒーロー。

 しかしながら彼らもまたプロの一員……現状を素早く判断しやるべき事は問いかけや質問などではなく戦闘だと理解した上で脳無の殲滅を行う。

 しかし脳無達もただやられる訳ではない、翼膜を有する脳無は飛翔して遥か上空へと退避しようとしたがちょうど5階建ビルと同じ高さで見えない壁に激突したかの様な音を響かせて落下する。

 落下した脳無は……芳香によって跡形もなく食されたりミルコの蹴りやクラストの盾により圧殺されものの数分もしない内に脳無は全滅を喫する事となった。

 全てが終わった後でギャングオルカは青娥への非礼を詫びる。

 

「……済まなかった、霍青娥」

 

 その謝罪に対し青娥は柔和な笑みを浮かべながら語る。

 

「全然気にしていないわ〜……ソレよりも貴方達をステインの場所まで送るわね〜……捕縛は済んでいる様だから行って引き継いであげて〜」

 

 そう語り手を合わせてパァンッと打ち鳴らすと芳香と青娥以外の全員の姿が消え失せる。

 ソレを確認して青娥は遥か上空を見上げて呟く。

 

「さてさて〜……貴方達の思い通りにはならなかったわね〜? お人形さん?」

 

「せいがー? どうしたのだー?」

 

「何でもないわよ芳香……さてと事務所に戻りましょうか」

 

 芳香がソレを聞いて聞き返して来るが芳香を抱き寄せると優しく頭を撫でて事務所へと戻る青娥であった。




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