悪食少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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林間合宿②

 林間合宿と時を同じくして警視庁刑事部、塚内の職務室。

 

「三茶、例のBARなんだがどうだった?」

 

 執務室で報告書の山に加えて人事関連の書類の山との戦いに一息入れて(ヴィラン)連合のアジト候補地の結果を部下である三茶に問いかける。

 三茶はバインダーに挟んだ資料を確認してから塚内へと手渡して語る。

 

「書類上では一切不備は有りませんでしたが酒類でも特に高価なものが仕入れられていますね……60年もののマッカランや80年もののブルゴーニュワイン……高級酒のオンパレードですよあの資金と客数のBARが仕入れられる様な酒じゃ有りません……ビルのオーナーに連絡しましたが此処のBARのマスターとは全て電話でのみ遣り取りしてたそうです、必要な金も電話も代理人を通してです……入居費用やその他全てを現金で一括で支払われたとか」

 

 三茶の報告を聴きながら報告書を捲り塚内は考える。

 AFOはマッカランを特に好んでいたと……無論マッカランがBARにあるだけでAFOに繋げるのはあまりにも荒唐無稽な話である、しかし連続失血死事件の容疑者トガヒミコや犯罪専門人材ブローカー義爛、更には全身がツギハギの男もそのBARに入るのが目撃されている……疑いが強まるばかりだ。

 この写真から判断するに犯罪者に人材を提供するブローカーである義爛とトガヒミコはこのBAR若しくはこのBARの中に居た人間と何らかの繋がりがあると見て良い。

 トガヒミコは連続失血死事件の最重要容疑者、そして犯罪専門の人材ブローカーである義爛がそんなトガヒミコと一緒に映っている……BARに監視カメラがあればその映像や音声から共謀罪や犯人隠避や隠匿、証拠隠滅で罪に問えるかもしれないが設備を確認するもカメラの類は設置されていない……だが……これだけでは証拠足り得ない、この一瞬の映像と写真ではあまりにも証拠能力に乏しすぎる。

 故に今出来る判断はこの付近……神野区のこのBAR付近にヒーローと警察を可能な限り配備しナニカに備える事が精一杯。

 神野区警察署長に連絡を入れて対応を指示すると……三茶へと語る。

 

「そう言えば……話は変わるが三茶、人事異動の件だ、お前には限定的だが赴任先を選ぶ権利が与えられた……それだけ期待されているという事だ、おめでとう、お前も次のキャリアを積む段階だ……都内の署長もいくつかポストが空いているが私のお勧めは富良野なだれ署だな……ラベンダーで花粉症となりクマどもとハチミツの争奪戦……エキサイティングな日々じゃないか」

 

 それを聴き……三茶は逡巡も迷いもせずに即答する。

 

ここに残る(・・・・・)、そういう選択肢でも良いでしょうか?」

 

 キャリア組の三茶からは考えられない言葉故に……塚内は一瞬思案して言葉を返す。

 

「出来なくはないが……出世への近道とは言えないぞ? 何故わざわざそれを?」

 

 キャリア組の出世ルートをわざわざ遠回りするメリットなど1つもない。

 遠回りをすればそれだけ出世は遠のく。

 

「上層部はまだ重く見てはいないですが……いずれ『奴ら』の事を考えなければならなくなる……あの『死柄木弔』という危険な男は遠からず警察の中で最大の問題事項となるでしょう……AFOとの戦いで得た知見……次は必ず『(ヴィラン)連合』に向けて活かす時が来るでしょう、そんな中で自分だけが塚内さんのサポートを離れる訳にはいきません」

 

 そう告げられて……塚内は心の底から嬉しく思った。

 

(申し分のない戦略眼だ……勉強と鍛錬を欠かしていない証拠か)

 

 三茶にはサポートなどの面で助けられる事が多い……教育しているつもりがいつの間にか助けられる側に回っていたとは……それを嬉しく感じ三茶へと語る。

 

「……分かった、では引き続き本庁でのポストを用意しておこう……これからも宜しく頼む」

 

 グッと握手を交わしつつそう語る塚内であった。

 


 

 日が暮れかけた夕方。

 芳香を除いたA組全員が疲労困憊でヘトヘトになりながら目的地へと到着した。

 あの後、目的地まで残り5km地点で土塊で造られた魔獣による襲撃は激烈を極め次第に処理能力を超えて決壊する寸前に芳香が大方の魔獣を捕食して鎮圧するも、この土塊の魔獣はピクシーボブによる個性『土流』で形成されたモノであり倒しても倒しても土という物質が有る限り無限に発生してくる。

 コンクリートか土かの違いはあれどセメントス先生みたいなモノだ……圧倒的な物量差で畳み掛けてくるか圧倒的な優位を押し付けてそのまま押し潰してくる。

 芳香は土塊の魔獣を喰らって失った体力などを回復しつつ動ける為に疲労や怪我とは無縁の存在であるが他の仲間は違う。

 自身の掌から自律機動人形を30体ほど創り出すとサポートに当たらせるが全員が限界まで個性を行使しており……特に掌から爆破を行う爆豪や体内の脂質を創造の工程で使用する八百万、帯電で放電しすぎればショートしていく上鳴などは限界を遥かに超えた限界でありこれ以上の個性行使は望めなかった。

 皆がヘトヘトになりつつも魔獣の強襲を何とか対処していくが脂質の消費が個性の条件となっている八百万の疲労具合は群を抜いている。

 歩く事もだいぶ厳しい状態であり自律機動人形に支えられつつ何とかギリギリ歩けている状態であった。

 

 そうして……ようやく目的地へと到着したという訳。

 最初に3時間と言われたのはあくまでも此処の行き来が慣れており尚且つプロヒーローとしての日々の戦闘などで培われた身体能力があってこその3時間であったらしい……しかもピクシーボブ曰く『もっとかかると思っていた』らしく、言外に後1〜2時間はかかる道のりであった事が示唆された。

 実力差自慢とも取れるが根底にあるのはこれくらい軽く乗り越えられなければプロヒーローなぞ務まるわけねぇだろというご鞭撻であろう。

 今日からの2週間……とても楽しそうである。

 

 なおピクシーボブに見初められていた爆豪、飯田、轟、緑谷は疲労困憊故に動く気力がなく虚無の眼差しとなっている。

 相澤先生より5分間の休憩後に荷物を下ろして食堂にて夕食……その後に入浴で就寝とのお言葉を賜り芳香以外の各自が暫し地面に座って疲れを取る。

 そして……5分後にのそのそと動き出して食事となるが芳香はその都合上……食事や睡眠、休息と言ったモノが一切必要無い。

 故に食事を取る事はせずに隣に座る八百万や轟に延々と料理を取り分け続けていた。

 


 

 そうして……疲労困憊の肉体を癒す為の入浴となる。

 露天風呂があるなんて最高だという芦戸さんの言葉に同意する女子組。

 皆15歳とは思えない発育の暴力である……そう語るのは耳郎さん。

 

「何で皆そんなおっきいのかな……私もいずれ、ねぇ……どう思う?」

 

 女子の中でも特に大きい芳香の胸をガン見しつつ光を失った眼差しで告げてくるのはちょっと怖い、呪詛のような言葉もだいぶ怖い。

 得体の知れない恐怖を感じつつ当たり障りのない言葉でお茶を濁す……そうして女子ならではの会話が開始される。

 日々のスキンケアの方法や使用している化粧品だったり、制汗剤や保湿クリームの話題で盛り上がる。

 芳香のすべすべした肌の手触りが絹のようであり温泉に入っても尚ヒンヤリと冷たいその身体が湯に浸かり火照った身体を冷やすのにとても良いと芦戸に至っては芳香にベッタリとくっついている。

 芳香もソレを嫌がる事はなく芳香と芦戸以外の女子達はその光景を見て頬を紅潮させているが決して温泉のみの所為ではないであろうことは想像に難くない。

 芳香は肌のケアなどは特に入念な手入れを欠かす事なく行っている。

 そうして楽しく会話を弾ませていると男子風呂の方が騒がしい。

 薄い仕切りなので声は筒抜けとなっている。

 

「やめるんだ峰田君‼︎」

 

 芳香ですら大体何が起きたか察した……。

 そして他の皆も察した様で引き攣った表情を浮かべている。

 壁をよじ登る音と共にPlus Ultraとの叫びが聞こえるが校訓を穢すんじゃないという飯田の叫びには男女全員が首を縦に振って賛同していた。

 仕切りを乗り越える刹那……洸太君といったか……マンダレイの従甥が峰田に対してヒトのあれこれから学び直せと冷たく告げて峰田の手をペチッと叩くとそもそもの体勢が不安定な峰田は重力に従い落下していった。

 それを見て芦戸が洸太君ありがと〜……そう声をかけると洸太君は反射的に振り向いてしまう、女子風呂を覗いてしまった為に急いで視界を切ろうとしたが洸太君が居るのは不安定な足場の上、そんな急に体勢を変えると……体勢を崩して男子風呂の方へと落下していく。

 何とかギリギリで緑谷が助けたらしい。

 

 怪我がなかった事に安堵し……逆上せる前に湯船から上がり寝巻きへと着替えて就寝するA組の皆であった。

 翌日から本格的な訓練が始まる故に……それに思いを馳せつつ芳香以外の皆は眠りについた。

 芳香には入眠という機構が備わっていない為に皆が寝たのを確認して起こさない様に慎重に襖を開けて外へと移動して星が煌めく夜空を飽きる事なく朝日が昇るその瞬間までずっと見続けていた。




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