悪食少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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林間合宿③

 そうして合宿2日目、明朝4時45分。

 お日様が顔を出し始めた時間……A組の皆は雄英指定のジャージへと着替えており集合していた。

 相澤先生よりおはようと朝の挨拶をされた面々は反射的に挨拶を返すが芳香以外の皆は眠気が勝っているのかやや眠そうな表情と声音で挨拶を返す。

 相澤先生が今日から行う合宿の目的を語り出す。

 

「本日から本格的に強化合宿を始める、今合宿の目的は全員の強化及びそれに伴う“仮免”の取得、そして具体的になりつつある敵意に立ち向かう為の準備だ……皆心して臨むように……という訳で宮古……いや、済まない爆豪コイツを投げてみろ……入学当初の記録は705.2m……さてどれだけ伸びてるかな?」

 

 体力テスト時のボール投げ。

 芳香が指名されるもあの時点で1.6kmを叩き出した芳香より爆豪の方が数値的にも分かりやすい……そう思案して爆豪を指名した相澤。

 芳香もソレを察したのか特に不満な様子なく見ていた。

 周囲も成長具合の確認であると察したのか最初に指名した芳香を外した理由を理解する。

 初っ端から1.6kmなんぞ叩き出したのだ……成長具合を実感するには基準とする数値があまりにもずば抜けすぎてる為に逆に参考にはならない、芳香にとっても他の皆にとっても。

 そう思案していると爆豪の物騒な掛け声と共に眠気を吹き飛ばす爆音と爆風でボールは遥か彼方まで吹き飛んで行く。

 10数秒ほど暫く放物線を描いていたが着弾したようで相澤先生の持っている端末に記録結果が表記されて結果を見せながら語る相澤先生。

 

「結果……709.6m」

 

 その記録にA組全員が動揺し上擦った声と共に呟く。

 あまり飛距離が伸びていない……。

 それに対して相澤先生は今見て貰った通りと前置きして告げてきた。

 

「今見てもらった通り……約3ヶ月間様々な経験を経て確かに君らは成長している……だがそれはあくまでも精神面や技術面……あとはまぁ多少の体力的な成長がメインであり個性そのものは大して成長していない……だから、今日からの合宿で君らの個性を伸ばす……死ぬ程キツいがくれぐれも死なない様に」

 

 そう告げられて……2週間に及ぶ強化合宿が本格的に始動したのだった。

 


 

 筋繊維は酷使すればする程に壊れて強くしなやかに再生していく。

 個性もまた然り……鍛え上げれば鍛え上げる程に強くなる。

 それを踏まえて芳香が行う個性伸ばし訓練は大別して3つ。

 1つ・空間を捕食した際の瞬間移動範囲の増加。

 2つ・創造物の創造速度短縮と種類増加。

 3つ・摂食範囲増加と摂食速度の更なる上昇。

 以上が芳香に定められた訓練である。

 許容上限のある発動型は上限の底上げを目的に。

 異形型やその他複合型は個性に由来する器官及び部位の更なる鍛錬を。

 それは通常であれば肉体の成長に合わせたモノを執り行うが集中的に鍛え上げるとなると無茶も出る。

 B組も到着し合計40人、40通りの6人で管理できるのかという当然の疑問がB組の拳藤より投げかけられるが相澤は語る。

 

「だから彼女らだ」

 

 そう指し示す先には4人の女性がいた。

 マンダレイとピクシーボブに加えて更に2人……ラグドールと虎と名乗ったその2人……。

 

「煌めく眼でロックオン‼︎」

 

「猫の手手助けやってくる‼︎」

 

「何処からともなくやってくる……」

 

「キュートにキャットにスティンガー‼︎」

 

 ピクシーボブがそう叫ぶと決めポーズをビシッと決めながら4人が一斉に叫ぶ。

 

「ワイルドワイルドプッシーキャッツ‼︎」

 

 そう叫ぶとラグドールが朗らかに語る。

 何でもラグドールの個性サーチで見た人間の情報が全て丸わかりらしい……居場所も弱点もありとあらゆる情報をその眼を通して理解できるとか、個性を使用して芳香を見た瞬間にほんの一瞬だけ恐怖と絶望、そして憤怒に顔を染めつつ吐き気を催していたが何があったのか話そうとはしなかった。

 そして魔獣の森でお馴染みピクシーボブの土流によりそれぞれに見合った鍛錬の場を即座に形成。

 マンダレイがテレパスを用いて複数人へ同時にアドバイス。

 そして……屈強な男性に見えるが女性である虎さんは殴る蹴るの暴行……言い換えるならば格闘訓練を実施しているらしい。

 単純な増強型は早速呼び集められて格闘訓練である『我ーズブートキャンプ』へとご招待されていく。

 各自に関連方法が定められてから相澤先生が語る。

 

「雄英も忙しい……ヒーロー科1年だけに人員を割くのは不可能だからな……この4名の実績と広域カバーが可能な個性は短期間で全体の底上げを行うには極めて合理的だ」

 

 それを聞きつつ芳香も自身の訓練へと身を入れていく。

 過酷な訓練は昼過ぎに昼ご飯休憩を挟んでその後30分休憩して再開される。

 そうして18:00ちょうどに過酷極まる訓練が終了し晩御飯の支度と準備に取り掛かる様に告げられる。

 本日の晩御飯からは自身らで作るらしく山の様に積まれたニンジンとジャガ芋、玉ねぎと塊肉……そしてカレールーのパッケージと精米後の米を見るにカレーライスである。

 芳香は指示された通りジャガ芋の皮剥きに専念している。

 ピーラーを用いて機械の如く無駄の無い素早い動作で瞬時に作業を行っている芳香。

 70〜80個あったジャガ芋の皮剥きを僅か2分で全て終わらせると次なる作業の指示を八百万から受けて玉ねぎやニンジンの下処理を行っている。

 そうして予定した時間よりもだいぶ食材の下処理が終わった為に予定よりも30分ほど速く食事の時間となる。

 食べ盛りの高校生であり訓練で空腹を訴えていた者達は掻っ込む様にしてカレーを喰らいその美味しさに感涙していた。

 芳香はと言えば盛り付ける役目に徹しており自分は一切食べようともしない。

 八百万から食べる様に勧められるもやんわりと断りつつ盛り付ける係に徹していた。

 


 

 皆がカレーを食べているのと時を同じくして教師及びプッシーキャッツ達は今後の話し合いを別館にて行っておりそれが終了すると教師陣やプロヒーロー達も食事を各々済ませる

 しかし……ラグドールは自身がサーチで得た情報を忘れる事が出来ず箸が進まない。

 ラグドールはサーチにより見たのだ……宮古芳香が培養槽に入れられて非道な人体実験の果てに死んだのを。

 鍛え上げたサーチによりその者の過去すらも一種の映像として認識できるラグドール……あらゆる情報を幅広く活用出来るソレは有事の際には(ヴィラン)の弱点や負傷者の怪我の部位や薬剤に対するアレルギーや今現在内服している薬などを即座に知れる。

 今回はソレが裏目にしかならなかった。

 あの時……宮古芳香をサーチした瞬間に、宮古芳香という対象の情報が極めて鮮明に伝わってきた。

 それはあまりにも非道で……普通の倫理観を有していれば人間に対して行うなど絶対にあり得ない過激且つ非道極まる人体実験の数々。

 それを追体験して吐き気を催して嘔吐しかけた。

 しかもその時の実験による負荷なのか……はたまた何かの薬剤を注入されていた際に死んだのかは医学者ではない自身には解明することは不可能だがたった一つだけ言える事があった。

 今現在の宮古芳香は肉体面では完全に死んでいるという事。

 

 年端も行かない少女に対してなんて事を……そう怒りに震えていたラグドール。

 そこへ雄英の教師である相澤が声をかけてきた。

 明日以降の件で話があるとの事で……二、三会話を交わし別れ際に相澤から語られる。

 

「ラグドール……貴女の個性なら宮古がどういう状態か察してしまったでしょう……ですがこの件は内密にしてもらいたい……」

 

 その言葉には……悲痛な思いが詰められておりサーチを使わずとも心情を察したラグドールは無言で頷いてその場を後にした。

 


 

 雄英が行っている合宿所から8km程離れた崖で数名の男女が立っており視界に捉えるは光り輝く合宿所。

 ツギハギの男はその光を見ながらゆっくりと呟く。

 

「虚に塗れた英雄達を地に堕とす……さぁ……(ヴィラン)とヒーローの争いの第二幕が開幕だ」

 

 そう告げるツギハギの男の周りには……9人の姿が見えた。




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