塚内は主戦力と共にBARへ予定通りに突入を開始した。
……時間は突入より少し前へと遡る。
BARには不似合いで不釣り合いな程にただただ拘束の利便性のみを重視した無骨な椅子に座らされて両掌を重点的に拘束された爆豪勝己は
ヒーロー側でなく……
TVに映る雄英の謝罪会見を横目で観ながら死柄木は大仰な身振りを交えて語る。
「何故
それに呼応するかのようにスピナーと名乗ったヤモリの姿をした異形型個性の人間は壁にもたれ掛かりつつ自身が狂信し信奉するステインの言葉を引き合いに出して呟く。
「護るという行為に対価が発生した時点でヒーローはヒーローではなくなった……これがステインのご教示‼︎」
耳障りがいい部分のみを切り取って捲し立てるスピナーを無視して爆豪勝己は目視可能な範囲で周囲を見回し悟る。
宮古芳香が居ない事を……圧縮から解放された時点で居なかった事を含めるとそもそも今自分がいるこの場所とは別の場所に居ると考えるのが最も理に叶う。
しかしながら……この状況下でどうやって逃げるか……そう思案していると死柄木弔は黙っている爆豪勝己の拘束を外すように仲間へと指示しトゥワイスと呼ばれた仲間は心底嫌がりつつも爆豪の拘束を外していく。
爆豪は自由になった両掌や身体を動かしつつ……爆豪に対して持論を展開してきた死柄木弔を何処か冷めた眼で見るが向こうは気にしてもいない。
「人の命を金や自己顕示に変換する異様……それをルールでガチガチに縛り付けて守る社会……観劇として持て囃し、娯楽として消費し……敗北や自分達の好みが……演目が意に沿わなければ敗北者や被害者であろうとも構わず責め立てる国民……俺たちの戦いは『問い』だ……ヒーローとは、正義とは何かを問いかける、この社会が本当に正しいのか……一人一人に考えてもらう‼︎ 俺たちは勝つつもりだ! 君も勝つのは好きだろう? ここにいる者は皆事情は違えど人によって、ルールによって、社会によって……縛られ苦しみもがいた末に此処にいる……爆豪勝己くん、君ならそれを」
そう告げ爆豪に手を伸ばそうとした刹那……眼にも止まらぬ速さで死柄木弔へと接近し躊躇う事なくその顔面へと爆破を向ける爆豪。
死柄木弔が顔面に装着している『手』の装飾品が床に転がるがそれを気にするのは死柄木弔のみ。
爆豪は爆破の反動で少し仰け反り体勢を崩して吹き飛ぶもしっかりと床に着地して拘束された上でくだらない持論を展開されて溜まりに溜まったフラストレーションを全て払い除けるかの様に、苛立ちを紛らわせるかの様に掌から極小規模の爆破を連発しつつ叫ぶ。
「黙って話聞いてりゃダラッダラよぉ、要領は得ねぇし……馬鹿は要約できねぇから話が長ぇ……要は‼︎ 『自分達を否定した奴らに嫌がらせしたいから手伝ってください』だろ⁉︎ 無駄だよ‼︎」
そう叫ぶ爆豪勝己の脳裏に浮かぶのは幼き頃TVで観たオールマイトの戦うワンシーン。
幼心ながら……爆豪はあの姿に憧れた、オールマイトの勝つ姿に憧れた。
だからこそ自分の原点はもう……誰が何を言おうとも揺らぐ事はない。
そう思い返して
「俺は……オールマイトが勝つ姿に憧れた‼︎ 誰が何を言ってこようとも其処はもう曲がらねぇ‼︎ それによ‼︎ 俺はまだ戦闘許可解けてねぇぞ‼︎」
威勢よくそう叫びつつも爆豪は周囲を見回して自身の立ち位置を即座に把握する。
(あんだけ大掛かりな襲撃で得た成果は俺と暴食女2人だけ……言質も取れてる……此処に居ない暴食女はわからねぇが少なくとも俺は利用価値のある重要人物‼︎ 俺を仲間にする都合上、本気では殺しに来ない、相手は目視できる範囲に7人……こいつらの方針が変わる前に何人か半殺しにして脱出が先決……だがモヤワープ野郎とクソ仮面が邪魔すぎる‼︎)
そう叫ぶ爆豪を見て呆れ返る
マジシャンの様な服装をした男が呆れつつも語る。
「その気がないなら懐柔されたフリでもしとけばいいのに……愚かというか短絡的というか……向こう見ずっていうか……また圧縮して攫う用意だけはしとこうかな」
何処からともなく出したステッキや万国の国旗によるクローズアップマジックを幾つか披露しつつゆらりと動き爆豪を攫おうとした刹那……他ならない死柄木弔が手を出すなと無言のまま身振りと手振りのみで指示を出す。
「いいから……手を出すな、コイツは……大切な札だ……爆豪勝己君、出来れば少しは耳を傾けて欲しかった所だ、君とは分かり合えると思ってたのに」
それに対して爆豪は
「はっ、ヤロウのヤンデレの何処に需要があるんだよ……分かり合えると思ったダァ? 頭ん中お花畑か? ツマンネぇ妄想も大概にしとけボケカスが‼︎」
爆豪の背後、僅か数センチ背後にはBARの出入り口にもなっているドアがあるが鍵が三重に掛けられており直ぐには開錠できない。
仮にそれが無くとも鉄製の分厚いドア……爆破でブチ破るにしてもその隙にワープが圧縮でまた攫われるのは眼に見えている。
それを理解しているのか微細ながら焦りが見える爆豪に対して死柄木は普段以上に落ち着きながらBARに設置されているモニターへと向けて語る。
「『先生』……力を貸せ」
そう語る。
それを聞き逃す事なく爆豪は死柄木弔へ向けて告げる。
「先生ダァ? テメェがボスじゃねぇのか……ツマンネェなぁ‼︎」
そう叫んだ刹那……ドンッドンッと鉄製のドアを握り拳で叩く音と共に間の抜けた様な、緊張した空気を無に帰すような声でピザの宅配業者を名乗る男の声がしたと思った刹那……BARの壁が破砕されてオールマイトが殴り込んできた。
そして場面は突入開始直前に戻る。
塚内は各方面との折衝を終えて突入指示を出す。
クレア・ボヤンスが視た建物内の間取りと見取り図を照らし合わせて被害者と
そして、それ自体はとても上手くいった。
壁の破砕と同時にオールマイトが爆豪勝己を保護しつつ
ドアはエッジショットがほんの僅かな隙間から侵入して鍵を強引に切断する。
エッジショットの個性は身体を薄く細く引き伸ばす事が可能であり弛まぬ鍛錬によりダイヤモンドすら容易に切断が可能な領域にまで達した。
鉄の錠前などエッジショットからしてみれば柔らかいプラスチックの様な物だ、難なく切断ができる。
開け放たれた扉の前には重武装の機動隊。
死柄木弔は眠り香により急激な眠気が襲ってくるがそれを凌駕する程の常軌を逸したドス黒い憎しみ……死柄木の脳は極度の興奮状態に陥りアドレナリンやドーパミン、βエンドルフィンを分泌して眠気を無理矢理に遠ざける。
しかしながらイレイザーヘッドの抹消により全員個性が封じられており取れる手立ては無いに等しい。
オールマイトは爆豪を保護した後で
「もう逃げられんぞ
そう叫ぶオールマイト。
しかし死柄木弔は未だ諦めきれない様で泥の様に濁った怨嗟の声音を響かせて叫ぶ。
「ふざけんな……これからなんだよ……始まったばかりだ‼︎ 正義だ平和だ……あやふやなもんで蓋されて中身がぐずぐずに腐り落ちたこのゴミの様な社会をぶっ壊す……その為の仲間も集まり始めた……ふざけるな、此処からなんだよ、ふざけるな、失せろ……消えろ、お前が……お前が‼︎ 嫌いダァァァ‼︎」
そう叫んだ刹那……何もない虚空より黒い液体が噴出し脳無が続々と出現する。
エッジショットが黒霧を気絶させた上でイレイザーヘッドが個性を抹消している為に黒霧のワープでない事は確か。
ざっと目視できるだけで30体程の脳無……それと共に
数秒もすると元々其処に居なかったかの様に消え失せる
捕縛を担当したシンリンカムイからは謝罪の叫びが木霊するがイレイザーヘッドが此処に居た
此処に居ない第三者の仕業である事は明白。
外壁にその手を伸ばしてぶら下がっていたシンリンカムイは万が一の逃走をされた際に外で待機していた塚内とエンデヴァーに状況を伝えて応援を要請しようとしたが外にも大量の脳無が出現していた。
その数はざっと見た限りでは50数体。
この状況に塚内は無線で別動隊のベストジーニストに連絡するも応答はない。
「ジーニスト⁉︎ そっち制圧完了したんじゃないのか⁉︎ 脳無格納庫の制圧は‼︎」
そう無線越しに叫ぶも返ってくるのは激しいノイズ音のみであり状況が掴めないが恐らくは向こう側が何か不測の事態により失敗した。
いや……それは正しくないと思われる、脳無格納庫の制圧には成功したが即座に制圧し返されたと見るべきか。
……塚内の脳裏にはAFOの陰が浮かび上がった……即座にオールマイトとグラントリノへ向けて叫ぶ。
「オールマイト‼︎ グラントリノ‼︎ 此処はいいから向こうに‼︎ 奴が来ている可能性が極めて高い‼︎」
そう叫ぶとオールマイトとグラントリノは即座に脳無格納庫と目されている倉庫へと移動していった。
脳無も数が多いが塚内が直々に選抜したヒーローと機動隊員ならば問題ない……この様子なら2〜3分もあれば殲滅が可能だろう。
問題は……。
拭えぬ恐怖を覚えながら脳無格納庫の方を見て……オールマイトへと希望を託す塚内であった。
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そんなもん書く暇あるなら本編進めろボケ