脳無が続々と転送されている。
道を開く様なワープゲートではなく対象のみを転送する系の個性ど解釈した面々は的確に脳無の頭部を潰していく。
時系列は脳無格納庫突入時点へと戻る。
脳無格納庫と目されている倉庫の前……電力を遮断したと同時に突入を開始する手筈であり……全ては滞りなく行われていた。
巨大化したマウントレディが軽トラックを足に嵌めて巨大化した質量のまま思い切り踵落としを行い脳無格納庫とされている倉庫の出入り口を破砕する。
そして即座にベストジーニストがその個性にて束縛する。
脳無格納庫に保管されていた脳無は実験段階なのか起動してはおらず突入に際しても全く動く事はなかった。
ジーニストがありったけの
虎は捜索の最中……大量の培養槽の1つに呼吸器を着けられた状態で液体に浸かっている攫われたチームメイト、ラグドールを発見し培養槽を砕き割って中のラグドールを救出する。
何度も必死に呼びかけているが様子がおかしい。
ラグドールの表情は虚ろであり視線は何処に向いているのか定かではなく……呼びかけにも一切応じない。
呼吸音や心拍音が聴き取れる事から生存しているのは間違いないがそれにしてもおかしい。
腕や脚の血管を確認しても薬物を投与された様な痕は見受けられず疑問が虎の脳内を駆け巡るがその疑問に答える者が居た。
電力が途絶えた深淵の闇に染まった倉庫の奥から響き渡る声と共に光が届かない真っ暗な奥から悍ましさすら感じさせる……絶望と死神が背後に寄り添って来た様なそんな恐怖を感じさせる声が響いた。
「済まないね……虎……前々からいい個性だと、丁度いいから……貰うことにしたんだ……こんな身体になってからストックもかなり減ってしまってね……」
真っ暗闇の中から響く声音にギャングオルカは警戒を解く事なく見えない誰かに対して怒鳴る。
「止まれ‼︎ 動くな‼︎」
そう叫びつつ
それを理解したジーニストは衣服の繊維を操作して見えない相手を雁字搦めに縛り上げる。
衣服を着ている以上はベストジーニストの拘束から逃れる事は不可能。
ギチギチに縛り上げている感覚が繊維越しにジーニストに伝わり……更に束縛を強める。
それを見ていたマウントレディは巨大化したままジーニストの耳元へとしゃがみ込んで叫ぶ。
「ジーニストさん‼︎ もし仮に民間人だったら……‼︎」
まだプロヒーローになって日が浅い故に『もしも』や『仮に』を念頭に置いて行動してしまい逡巡してしまうのは誰にでも通る道。
ジーニストやギャングオルカも新人時代は痛い程に経験したものだ……。
そしてその一瞬の迷いや逡巡……時としてそれが取り返しのつかないミスを引き起こす事も又……ジーニストやギャングオルカは経験則から理解していた。
束縛を極めて強く維持しながらマウントレディへ先達としてのアドバイスを行うジーニスト。
「状況を考えろ‼︎ その一瞬の迷いや逡巡で仲間が見殺しになる‼︎
そう叫んだ刹那……見えない誰かを束縛していた繊維が全て千切れ飛ぶ感覚が伝わって来た。
それはもはや反射的にと言っても過言ではなかった、反射的に全員の衣服をを操作して引き寄せる。
自身含めその場に居たヒーローや機動隊全員を爆風の範囲から少しでも遠ざける為に端の方へと引き寄せる。
全員何とか即死は免れたがジーニスト以外は気絶しているか身体を強打してマトモに動けそうにない。
脳無格納庫の前にあったのはマンションやアパート、雑居ビルといった建築物だが殆どが今の爆風で倒壊してるかそもそも粉々に砕けているかの状況であった。
ジーニストはボロボロになったコスチュームで繊維を操作しつつ
『
そう思い返しつつジーニストは心の中で叫ぶ。
話が違う……と、しかし即座に切り替えて眼前の相手を睨みつけて仰向けに倒れ込んだ状態からコスチュームの繊維を操作して何とか上体を起こしその体勢を保持して再度衣服の繊維操作による束縛を試みる。
「話が違うから……何だ‼︎ 一流はそんなモノを失敗の理由にはしない‼︎」
そう叫びつつ衣服の繊維を操作し束縛しようとした刹那……腹部を貫く衝撃波がジーニストを襲い腹に風穴が空き口腔内には血の味がベッタリと広がる。
……数秒遅れて地面を抉り抜く轟音と共に吐血する。
大量出血と共に意識が遠のく……薄れゆく意識の中耳に届いたのは空中に浮遊している
「流石No.4‼︎ ベストジーニスト‼︎ 僕は全員消し飛ばしたつもりだったんだ‼︎ 皆の衣服を操り瞬時に端へと引き寄せた‼︎ 判断力や技術力、ずば抜けた反射神経……弛まぬ鍛錬の賜物だね素晴らしい‼︎ 相当な練習量と実務経験で練り上げられた“強さ”だ……君のは要らないな、弔とは性の合わない個性だ」
それを聴きつつも意識が遠のく。
そうして……時系列は現在に舞い戻る。
脳無格納庫の前方の雑居ビルや高層ビルの倒壊などが起きた。
現在時刻は19時45分。
繁華街からも程近いこの場所には大勢の市民がいた為に被害は甚大であった。
ビルから聴こえる呻き声が木霊し……数秒前まではビルや家屋だった瓦礫の山から流れ出る血が地面を赤く染め上げていた。
そして虚空から黒い粘液が噴出し5km程離れていたBARから連れ去られた
独特の臭いでむせこんでいる爆豪勝己を見つつ死柄木弔の方へと向き直りまるで諭す様に優しい口調で語りだす。
「又失敗したね弔……でも決してめげてはいけないよ? 又やり直せばいい、こうして仲間も取り返して此処に居る……この子もね、君が大切なコマだと考えて判断したからだ……いくらでもやり直していい、その為に僕がいるんだよ、全ては君の為にある」
聴く者によっては恐怖を与える声、しかし……弔にとっては安心を与えてくれる声。
そう呟いた刹那……先生と呼ばれたその男はチラリと上空を見上げ……拳を振り被っていたオールマイトの殴打を両手でしっかりと、ガッチリと受け止める。
「全てを返してもらうぞ‼︎ AFO‼︎」
5年前のあの戦いで互いに文字通りの死闘を繰り広げた。
それを踏まえてAFOと呼ばれた男は楽しげな声音で、ねっとりと包み込む様な口調でオールマイトに対して言葉を返す。
「また僕を殺すか? オールマイト」
そう紡がれた声と共に……殴打とそれを受け止めた余波で2人の半径5〜6mに凄まじい暴風と衝撃が走り地面が割れる。
受け止めた手をプラプラと振りつつAFOは残念そうな声音で嘗ての仇敵へと語りかける。
「BARから此処まで大体5kmと少し……僕が脳無を送り優に40秒は経過したの到着……衰えたねぇオールマイト」
悍ましさすら感じさせる不適な笑い声と共にそう語るAFO。
それに対してオールマイトもいつもの様に安心させる為の笑みを崩さずに語る。
「貴様こそ‼︎ その工業地帯の様なマスクは何だ? 大分無理をしているんじゃあないのか⁉︎ 5年前の同じ過ちは繰り返さん……爆豪少年と宮古少女を取り返す‼︎ そして貴様は今度こそ刑務所へとぶちこむ‼︎ 貴様の操る
猛スピードで接近してからの殴打。
単純だが……何事も基本が最も強い、単純である基本が最も強い。
しかし……それはAFOも同様である。
不敵な笑みを崩さずにゆっくりと腕を動かして……己が個性を行使する。
「『空気を押し出す』個性と『筋骨発条化』の個性と『瞬発力』×10と『膂力増強』×12……この組み合わせは実に楽しいな、もう少し振り分けを考えるか」
AFOの片腕から解き放たれた強烈な空気砲。
それは先ほどベストジーニストらを吹き飛ばしたものと細部は少し違えどほぼ同一であった。
今回は若干個性の振り分けを再構築してみたのだが中々の好感触だったらしく嬉しそうな声音で1人呟いていた。
オールマイトはと言えば理外の威力を有した一撃で数キロ先まで吹き飛ばされており……攻撃範囲直線上の高層ビルや繁華街の雑居ビルや高層マンション、家屋などは空気砲によって纏めて吹き飛ばされる。
それを見た爆豪勝己はオールマイトの無事を祈りつつ叫ぶとオールマイトを吹き飛ばした当の本人であるAFOより告げられる。
「なに、心配はいらないよ……あの程度じゃ死ぬことはないさ、だから此処は逃げろ弔……その子を連れてね……黒霧、皆を逃すんだ」
そう告げるとAFOは個性を行使し指を稲妻の如く赤い線の入った黒く鋭利な触手のような物に変化させると黒霧に突き刺して個性を強制発動させる。
それに対してマグネが慌てふためき叫ぶ。
「ちょっと‼︎ あなた‼︎ 黒霧気絶してるのよ⁉︎ よくわからないけどさっきみたいなワープが使えるなら貴方が逃してちょうだいよ‼︎」
尤もな叫びに対してAFOは残念そうに首を横に振りつつマグネに対して諭す様に語る。
「僕のはまだ出来立てでねマグネ……転送距離は酷く短くてとてもじゃないが使えたものじゃないし彼の座標移動と違って僕の元から送り出すか僕の元へ持ってくるしか出来ない完全下位互換の劣化個性だ……しかも更なる制約として送り先は人限定で尚且つ馴染み深い人物でないと機能しない……だからこそ彼にやってもらうんだ、さぁ行け……常に考え続けろ、弔……君はまだまだ成長出来るんだ」
そう告げるとAFOは数キロ先から戻ってきたオールマイトの相手をするべく立ち塞がる。
眠り香からいち早く復帰したMr.コンプレスが気絶している荼毘を圧縮してポケットにしまうと爆豪勝己に狙いを定める。
オールマイトはAFOに付きっきりになってしまい爆豪勝己までは手が回らない。
助けに行こうとした瞬間にAFOに妨害されるがそれはAFOも同じ事。
爆豪勝己の攫いを補助しようとした瞬間にオールマイトに重い一撃を入れられて吹き飛ぶ。
爆豪自身も卓越した戦闘センスがあるとはいえ現状5対1。
トガヒミコ、コンプレス、死柄木弔、トゥワイス、マグネは恐らく爆豪の四肢を圧し折ってでも無理矢理に連れて行く気であろう。
今の状況下では多少乱暴な手を使う事もやむなしと判断しているのが透けて見える。
爆豪は必死に考える。
(取り敢えずあのクソ仮面には絶対触れられちゃいけねぇ‼︎ あとの奴はどーでもいいが……ちっ‼︎ 俺がいるせいで‼︎ オールマイトが戦いづらくなってやがる‼︎ 邪魔しか出来てねぇ‼︎)
苛烈な、激烈な、惨烈な攻撃を掻い潜り爆破で反撃をするもののこのままではジリ貧どころかジワジワと追い詰められて又も誘拐されていくのは眼に見えている。
どうにかしなければならない、自身1人で。
チラリと上空を見ると空をジェット噴射の要領で飛び回る小柄なジジィが見えたがそれでもAFOの手を抜け出せてはいない。
極限の焦りと極限の緊張が爆豪の脳裏を支配していた……。
その裏で繰り広げられているもう一つの激戦。
グラントリノも2分遅れて加勢に入るがあの頃とは戦法も個性の扱い方も何もかもが違う。
オールマイトの殴打を捌きつつもグラントリノを見る余裕があるAFO。
グラントリノを軽く吹き飛ばすとゆっくりと口を開いて語る。
「そう言えば……僕が何故此処にいるのか、疑問には思わなかったかい? オールマイト」
戦闘中にも関わらず唐突に繰り広げられる雑談にも近いソレをオールマイトは無視して殴打の応酬を繰り広げたが続く言葉で動揺を隠しきれない。
「この脳無格納庫は壊されてもしょうがないが……データの抽出がまだ済んでいないんだ、宮古芳香のね……アレのデータは実に貴重なモノだ……吸い取りが終わるまでは君たちの相手は僕が務めよう」
人を人とも思っていない言葉にオールマイトは怒りを更に深く強めてその膂力から繰り出される殴打を見舞うが受け流される。
「巫山戯るな‼︎ モノの様に扱って‼︎ データの抽出だと⁉︎ 宮古少女は物じゃあない‼︎」
憤怒に駆られ、激情に駆られ……手痛い反撃を喰らいそうになる刹那、グラントリノが援護に入りギリギリで対応できたオールマイト。
グラントリノは静かに語ってきた……あの時とは何もかもが違うと、扱う個性も戦い方も……腹をもう一度抉られたくなければ安易な口車に乗るなと叱責され落ち着きを取り戻す。
落ち着きを取り戻したオールマイトを見ながらAFOは語る
「僕はただ弔を助けに来たのと……宮古芳香という
そう告げながらAFOは『空気を押し出す』個性と『筋骨発条化』の個性と『瞬発力』×10と『膂力増強』×12の個性を組み合わせてわざとオールマイトを狙わずにその背後や周囲で倒壊したビルの瓦礫で潰されても軽傷ですみ生きている被害者を狙って……空気を強烈に押し出した……。
やっている事は非常に単純である、玩具や工作で作る空気砲と大差ない……大差ないがその威力は空気砲なんて軽いものとは比にならない、このまま直撃すれば数キロ先のビル群まで粉々に破砕する程の威力である、直線上には繁華街や住宅密集地、高層マンション群の方面にも空気砲が届く為に最小で見積もっても2000人以上の死者が一瞬で生まれ街にも当然ながら甚大な被害が出る……ただでさえ、今この時でさえ周囲のビルが倒壊した為に一般市民に甚大な被害が出ている、これ以上の被害が拡大するのはどうあっても防がなければならない。
「と、そう考えるよなぁ……ヒーローは守るものが多いもんなぁ?」
AFOの狙いを即座に察知したオールマイトはその空気砲を強引に打ち消す為に同様の威力の殴打を利用した空気砲を撃たざるを得ない。
ただでさえ毎日の活動により日に日に活動限界が少なくなっている中……余りにも大きすぎる一撃であった……。
オールマイトは一撃で余力が全て持っていかれ……マッスルフォームの維持が困難になる。
その状態を確認したAFOは泥の様に纏わり付く様な声音で語りかけてきた。
「考えてしまうよ、弔がせっせと崩してきたヒーローへの信頼……その決定打を僕が打ってしまって良いものか? でもねオールマイト、君が僕を憎む様に……僕も君が憎いんだぜ? 僕は君の師を殺したが、君も僕の築き上げてきた物を跡形もなく奪っただろう? だから……君には可能な限り醜く惨たらしい死を迎えてほしいんだ、だから先ずは……君が守ってきたモノを奪う、怪我を押して隠し通し続けたその矜持、惨めな姿を世間に晒せ、オールマイト……平和の象徴」
そう告げながら先程の攻撃を、『空気を押し出す』個性と『筋骨発条化』の個性と『瞬発力』×10と『膂力増強』×12の個性を用いた空気の圧縮による砲撃を再度繰り出そうとしてきた。
それを見たグラントリノが回避を叫ぶが避けれるわけがない……オールマイトの背後には倒壊したビルに生き埋めとなっている大量の人が居る……。
避けたらその人達は間違いなく確実に死ぬ。
故にオールマイトにはたった一つの行動しか許されなかった。
すなわち、同等の威力を有した攻撃にて颶風を生み出しての相殺……相殺し無理矢理に微風にまで威力を消失させる。
しかしながら、その代償は余りにも大きかった。
空を飛ぶTV中継のヘリコプターよりオールマイトが隠し通していた本来の姿が曝け出されてしまう。
それを見たAFOは笑みを浮かべ告げる。
「恥じるなよ? オールマイト……それがトゥルーフォーム、本当の君だろう?」
そう告げるがオールマイトはいつもの様に笑みを浮かべながら言の葉を紡ぎ出す。
「身体が朽ち果てようとも……その姿を世間に晒されようとも……依然として私の心は平和の象徴、一欠片とて奪えるモノじゃない」
それを聞いたAFOは仰々しい身振りと手振りを交えながら言葉を語る。
「素晴らしい‼︎ 素晴らしいなオールマイト‼︎ 参ったよ、君が強情で聞かん坊な事をすっかり忘れていた……じゃあ
その言葉を聞いてオールマイトの動きが止まる……表情も浮かべていた笑顔から一転、真顔になり呟く。
「嘘だ……」
そう呟いたオールマイトを見てAFOが言の葉を紡ぐ。
「事実さ……分かってるだろう? 僕のやりそうな事だ、あれ? オールマイト……どうした? 笑顔はどうした? 笑顔は?」
オールマイトが後悔と悔恨に苛まれる最中……オールマイトの背後、倒壊したビルの隙間から這い出た女性が小さくか細い声音で叫ぶ。
「助け……助けて……オールマイト……」
それを聞いてオールマイトは再度笑顔をその顔に浮かべ右腕のみマッスルフォームを展開しながら叫ぶ。
「もちろんさ、お嬢さん……あぁ、多いよ……ヒーローは守るものが多いんだよAFO‼︎ だから負けないんだよ」
そう叫ぶオールマイトであるがオールマイト自身既に察している。
何度も大規模攻撃を相殺した……とうに活動限界を超えていると。
しかし……それらは戦う事を諦める理由にはならない、目の前の敵に負けて良い理由にはならない。
加えて爆豪少年も救い出さなければならない……やる事が多いが諦めていい理由にはなり得ない。
爆豪勝己は疲弊していた……極めて短時間の間に何十発と高威力の爆破を繰り返しており既に両掌から決して少なくない量の出血と表皮は既に破れて皮膚の下の肉が露出している。
その為、掌が空気に触れる度に激痛が走る。
掌に激痛が走り爆破も段々と撃てなくなっているこの状況……それが相手にもバレつつあるのが理解できどうするか脳をフル回転させて考えるが名案などそう浮かぶモノではない。
激戦は……混迷を極めつつあった。
感想・ブクマ・特に評価。飢えております。 低評価をもらったら少し傷つきますが、傷も創作のプラスになることはある(私の場合です)。でも無評価=虚無は創作のマイナスにしかならないッス(私の場合です)! なので、無言で投げれるので、ぽちぽちっと☆を頂けると嬉しいです。多い分には困りませんよ‼︎
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