「今は18時15分よね? 失礼……遅かったかしら? エスコートよろしくお願いするわ」
定型分に近い言葉を呟きながらホークスへ笑みを向ける青娥。
表情や言葉の優しさとは裏腹に双眸がホークスを冷たく射抜く。
ホークスは翼をはためかせつつ青娥の眼の前に着陸するといつものおちゃらけた様な雰囲気を醸し出しつつ語る。
「いえいえ、此方も今到着した所なので……では行きましょうか? 店は青娥さんが既に予約してあると聞いてますので……」
そう告げてホークスは青娥をエスコートしつつ予約を入れた店へと互いに歩きながら向かっていく。
道中で他愛のない会話を楽しみつつ。
青娥は歩きながらホークスへと言葉をかける。
「あぁ……そういえば、公安委員会のお偉方が言ってたでしょ? 私から何かを引き出そうとする計画は如何かしら? 成功してるかしら? 失敗したのかしら?」
世間話かの如く唐突に話されたソレに対してホークスは一瞬だけ反応するがすぐさま表情を切り替えるが全てを見透かされているのを察し……軽薄そうな笑みを浮かべ両手を挙げて降参の意図を示す。
「其処まで知っているならば自分から言う事は御座いません……やっぱり無理ですわ……邪仙霍青娥から何かを引き出せなんて無理難題」
霍青娥は考える。
溜息混じりにそう語るホークスだがその鋭く射抜く様な眼光は消えていない、悪意と猛毒を秘める毒蛇の如く相手を謀ろうとする眼差しはまだ死んでいない……まだ余裕があるのか、はたまたソレすらもブラフなのか……ソレを思案しつつ青娥は言葉を紡ぐ。
「ホークス……あの『お嬢ちゃん』に伝えて頂戴ね? 今日は乗ってあげたけど……次から人を呼ぶ時は自分で来なさいってね……あぁそれと、レディ・ナガンの一件、アレは此方としても……とても残念だったとも付け加えておいてくれたまえ」
現ヒーロー公安委員会委員長を『お嬢ちゃん』呼ばわりし……ホークスの先輩に当たる人物の名前を口にして心底残念そうに語る青娥。
その眼差しは何処か遠くを見ていた。
そして、のべつ幕無しに語り出す。
「ホークス、私が持つ幾億数多の情報の内の1つ……その1つの……そのまたごく一部を譲渡しよう……君達が今1番欲しいであろう情報をね、これは君達が話し合いに参加できる様にする為のチップだ、気にせず受け取り給え」
青娥が語ったその言葉……ホークスはソレを聞き恐怖に震えた。
ホールケーキのカッティング後の如く細切れにされた情報だが現状ではヒーロー公安委員会、ひいては公安直属のヒーローの誰も得ていない情報であった。
そして……何よりも、ソレは自分達にとっては値千金の情報でありまさに欲しかった情報の欠片であった。
青娥は邪仙として永きを生きてきたが故に……人心の理解やその時相手が欲するモノの理解には長けており言わなくても人の欲しいモノが分かる。
そうこうしている内に予約していた店に到着したが其処は青娥が懇意にしている超が付く程の高級料亭。
とある事案でこの料亭の女将とは懇意にしている為に青娥は予約無しだろうとフリーパス同然で入る事が可能である。
中へと通される2人……最高級のもてなしをと女将と板長から告げられる。
青娥は慣れた手つきで対応しているがホークスは若干の緊張をしている……こういう所へは数える位しか来たことがない。
「それで? 私は何を聞き出したいのかしら? 此処では何を話しても大丈夫よ? 超高級料亭というからには店員には守秘義務が課せられてる、何を話そうとも世間に露呈する事は絶対にない……だから……とっとと話しなさい? 何を求め何を求めないのか……私は常に面白い方の味方よ?」
ケラケラと軽快に笑う青娥。
それに対して……ホークスは恐怖を感じつつも青娥に問いかける。
「……正義の味方、とは言わないんですね?」
正義の味方……その言葉を聞き青娥はクツクツと喉を鳴らして笑い……それが一頻り続き2〜3分後にその問いかけに対して返答を行う。
「正義? あんなあやふやなモノの味方なんて……ツマラすぎるわ、正義の味方は……正義以外の味方を決してせず。そして正義以外の敵なのよ? そこには偽るべき要素は何もない。つまるところ、正義とは。全員に対する裏切り者なの」
正義の第一条件は正しい事じゃない……強いことだ。だから正義は勝つ。
正しいものに従うのは、正しいことであり、最も強いものに従うのは、必然のことである。
力のない正義は無力であり、正義のない力は圧制的である。
力のない正義は反対される。なぜなら、悪いやつがいつもいるからである。正義のない力は非難される。
したがって、正義と力とを一緒におかなければならない。
その為には、正しいものが強いか、強いものが正しくなければならない。
正義は論議の種になる。力は非常にはっきりしていて、論議無用である。そのために、人は正義に力を与えることができなかった。なぜなら、力が正義に反対して、それは正しくなく、正しいのは自分だと言ったからである。
このようにして人は、正しいものを強くできなかったので、強いものを正しいとしたのである。
青娥が誦じた言葉を聞き……ホークスは届いた料理へと手を伸ばしながら言葉を紡ぐ
「残念ですが俺は誰かがパスカルを引用したら用心すべきだということをかなり前に学んでいます」
それを聞きキョトンとした表情を見せる青娥。
数瞬のちに意図を理解したようで楽しそうに口角を上げ笑みを溢す。
「オルテガね? 私も君がパスカルを引用したら同じ様に返していたわ……それで? 私はまだ貴方の本心を聞いてはいないわ……包み隠さずに語りなさい」
慈愛に満ち足りた言葉……の様に聴き取れるだろう。
しかしながらホークスには真逆の意図として聞こえた。
即ち……とっとと話せと。
暫し無言を貫くホークス、それを見ながら青娥は箸を使って鯛の刺身を口に運んでいく。
料理を楽しむ2人だが空気は重い。
青娥はお茶を飲み喉を潤した後で口を開く。
「堕ちた者は堕ちる事に慣れて自らの心にすら躊躇いなく嘘を吐く……そして近くで見守る者の苦言よりも存在すら怪しい他人の甘言を信じるようになる……お前はどちらかな? ホークス……迷いは人生を豊かにするが戦いに於いては全く役に立たない、私と言葉での戦いを行うつもりならば私の前では迷いを見せない事ね」
深淵の底を見せる事なく……そう語る青娥であった
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