悪食少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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必殺技

 世界の為に死ななければならないとしたら……果たして自分はどうするだろうか? 

 遥か彼方の遠い昔……気が遠くなる程の遥か悠久の時を経て更に昔の話。

 そんな選択を迫られた1人の少女が居た。

 滅びる世界を救うには少女が死ななければならない。

 神にそう告げられた少女は苦悩し、葛藤し、涙を流し……そして選んだ。

 世界を、この大切な人々が住まう地を……愛しい人を救いたい、と。

 悲壮な覚悟を胸に、唇を震わせ、おぼつかない足取りで、神の前に歩み出て。

 彼女は自分が死ぬことを選んだ、だが。

『彼女の代わりに、僕が死のう』一人の男が少女を制して、神の前に歩み出た。

 それは彼女が命と引き替えにしてでも救うことを選んだ、大切な人々の中の一人。

 少女が愛し、またその少女を愛した最愛の彼に、神は問うた。

『死ぬのが怖くないのかい?』と。

 だが彼は、最愛の少女を死なせるくらいならば、と笑顔で答えた。

『死ぬより、怖いことがある』と。

 かくて万雷の喝采を浴びて、男は死んだ。そうして、かの世界は救われた。

 残された少女は涙を一つ、救われた世界で男の分まで生きてゆこう、と。

 そんな使い古された台詞を吐いて、さもいい話であるかのように『それ』は終わった。

 だが……そんな終わりに白けた眼差しを向ける者が1人。

 男は言った……『死ぬより、怖いことがある』……なるほど。

 だが何故、そう言って少女の代わりに死んだ男にどうして誰も……こう言ってやらなかったのだろう。

 何故……『死ぬより怖いことを、最愛の少女に強いるのか』と。

 成程……『自己犠牲』というやつである。

 なんとも響きの宜しい、美しい言葉で……安いお涙頂戴のテンプレだ。

 幾億の犠牲が、たった一つの犠牲で済み、可愛い少女も死ななかった。

 実に素晴らしい。圧倒的コストパフォーマンス。何とも大層な偉業だッ‼︎

 さて……では。

 遺された少女は、それをどう想ったのだ

 死ぬより怖いことだ、と男が自ら断じた事……即ち。

 最愛の人を犠牲にしてまで生きる恐怖を少女に押しつけて。

 ……死に逃げかましやがった、あの男。

 そんな男を命を賭して救いたいと願っていた少女は、どんな想いを得たのだろう? 

 そう考えた邪仙は死んだ男を見やって、とある感想に至った。

 この“卑怯者”め、と。

 なるほど、『自己犠牲』とは、物も言いようである。

 ”ただのエゴ”も、そう言い換えれば誰からも文句は上がるまい。

 何しろ文句を言おうにも……文句を言うべき相手は、もう何処にもいないのだから。

 選ぶべきは『どちらが死ぬか』ではなかったはずだ、そう思った。

『共に死ぬ』か。

『共に生きる』か。

 この二択だったはずだ。

 所詮は”ただのエゴ”だ。徹するなら徹底して貫き通すべきだろう。

 そして『共に生きる』ことを選べば、世界が滅ぶというのなら……そんな世界、滅ぶに任せればいいのだ。

 無責任だと思うだろうか? 

 だが、あえて反論しよう。

 それはいったい誰の、何の責任なのか、本来滅びていた世界が、二人の愛と勇気と諸々で延命した──結構である。

 だが他人の厚意を当然と考えるなぞ、人として如何なものか? 

 そもそも責任というなら──そんな世界にした者の責任ではないか⁉︎

 ……では、こう考えてはどうだろう。

 元より滅びるはずだった世界だ、別に滅びても予定通りでは? 

 元より世界なぞいつか滅ぶのだ、今滅びて不都合もあるまい? 

 ならば最後の一瞬まで、二人で笑って、地の果てまで逃げ続けたって良いのでは? 

 それを"エゴ”だという文句は……却下するので悪しからず。

 文句を言おうにも……言うものが世界ごとなくなるのだからして‼︎

 


 

 上記は青娥が仙人になる時に出された問い掛けであり……答えは言うまでもなく決まっていた。

 

「そんな世界滅ぶべくして滅ぶ……そう告げたら邪仙にって……まっ、懐かしい思い出だ」

 

 うとうとしていた青娥には更に古い師との問答が思い起こされた。

 

 世界の為に、死ななければならないとしたら。果たして自分はどうするだろうか? 

 

『それで世界が救われるなら死ぬしかない』

 

 そう答えた師匠に、青娥は苦笑を一つ、返した。

 

『なら、世界は救われないから無駄死にだ』

 

 そうして、青娥は言葉を続けた。

 

『犠牲の数が一か、二か、千か億かなんて、些細な違いだ』と。

 

 多数の犠牲を避けるために、少数の犠牲を良しとするならば。

 いつか必ず、犠牲にした数が救った数を超えると。

 自己犠牲や最小犠牲では、世界の何も救われやしない。

 ただ"延命”するだけ……そして世界は変わることなく続いていく。

 次の犠牲を、一人また一人と探して。

 終には滅びるその日まで、何一つ変わらずに。

 もし世界を救う、などと偉そうにほざくのなら……たった1つの犠牲すらも許さないと拒んでからにしろ……と啖呵を切った。

 

 遠い記憶に埋もれた問答を思い返しつつ……青娥は堅苦しいスーツを脱ぎ捨てていつもの服装に戻ると……惰眠を貪り始めた。

 


 

 場面は雄英へと戻る。

 

 雄英の教室にて相澤先生が教壇に立ちながら語る。

 

「昨日話した通り、先ずは『仮免』取得が当面の目標だ……ヒーロー免許ってのは人命に直接関わる責任重大な資格だ、当然、資格取得はとても厳しい、仮免といえど合格率は例年3割を切る……そこで君らには1人最低でも2つ、必殺技を作ってもらう」

 

 ドアが開いて入ってくるのは、セメントス、ミッドナイト、エクトプラズム。

 

「必殺‼︎ コレ即チ必勝の型・技のコトナリ‼︎」

 

 そう語るエクトプラズム。

 セメントスが人差し指を立てて告げる。

 

「その身に染み付かせた技・型は他の追随を許さない、戦闘とは如何に自分の得意を押し付ける事が出来るか」

 

 ミッドナイトが髪をクルクルと弄りながら告げる。

 

「技は己を象徴する‼︎ 今日日……必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ‼︎」

 

 とりあえず、そう前置きして相澤先生より告げられる。

 

「あとの詳しい説明は実演を交えて合理的に行う為にコスチュームに着替えて体育館γへと集合だ」

 

 体育館γ-通称トレーニングの台所、セメントス先生考案の施設であり生徒1人1人に合わせた地形や物を用意できる所らしい。

 相澤先生より説明が為される。

 

 ミッドナイトより告げられた、凡ゆる能力と多くの適性を毎年違う試験で試されるがその中でも必ずあるのが戦闘能力。

 セメントスより告げられる、状況に左右されずに安定した行動を取れる様になればそれは高い戦闘能力を有していると。

 エクトプラズムからは必ずしも技が攻撃である必要でないとの事。

 例えば飯田天哉のレシプロバースト、一時的な超速移動そのものが脅威である為に必殺技と呼ぶに値する、例えば芳香の捕食、対象問わず何でも喰われるが故にどの様な状況でも万能な動きが可能な為にこれもまた必殺技と呼ぶに値する。

 相澤先生が口を開く。

 

「中断されてしまったが……合宿での『個性伸ばし』はこの必殺技を作り上げる為のプロセスだった、つまりこれから後期始業までの残り2週間あまりの夏休みは『個性』を伸ばしつつ必殺技を編み出す『圧縮訓練』となる、尚……各自『個性』の伸びや技の性質に合わせてコスチュームの改良やサポートアイテムの考案も並行して考えていく様に、プルスウルトラの精神で乗り越えろ‼︎」

 

 そう告げられて芳香を筆頭にA組の皆は気持ちを引き締める。

 しかし、必殺技と言われても……。

 

「全然思い浮かばない……」

 

 芳香の戦闘スタイルはその圧倒的耐久性と再生能力にモノを言わせた……言わば究極のゴリ押しに近い。

 敵の攻撃など理の外にあるだろうとしか思えない異常な耐久能力で無視して歩いて近づくか瞬間移動で近づくか、はたまた相手を自身の眼前に引き寄せるかのいずれかである。

 そもそも芳香はそこまで考えて戦闘に参加できない。

 

 最大の課題が……今ここに立ち塞がった瞬間であった。




私は赤色が好きです
何がとは言いませんが赤色が大好きです

なので高評価が来ると喜びます

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