この試験で芳香がやるべき事は2つ。
八百万百の個性と同等の創造を行い救助に必要な資材の準備。
そしてもう1つは要救助者が生き埋めになってるビルなどの倒壊物、人が入れない幅や倒壊した建物どうしが奇跡的に重なり合っている様な箇所の摂食を行い救助。
そうして……最終試験がスタートした。
「とりあえず必要物資とヘリの離発着場、それに安全に歩ける道を作る、行きなさい自律型人形達‼︎」
周囲の瓦礫などを摂食して餌にしつつ掌より生み出すは機械生命体。
救護所と設定した場所は八百万百と宮古芳香によりあらゆる機材が揃えられていた。
AED、心電図モニター、バイタル測定器具、バックバルブマスク、医療品に医薬品、使い捨てのゴム手袋、トリアージタグ、ストレッチャー、大型バッテリー。
そして極め付けは芳香の生み出した自律型機動人形による完璧なサポート。
外傷チェックやトリアージで忙殺される受験者達。
その足りないマンパワーを補う目的で150体が造られた。
サーマルアイやバイタルチェック機能を搭載したそれらは大火災になっているエリアでも入り込める。
八百万百と共に芳香は移動を開始して要救助者の所へと辿り着くと……其処には奇跡的な重なりで何とかバランスを保っている瓦礫、どれか1つでも触れるとその刹那……バランスが損なわれてしまい、たちまち要救助者の圧死に繋がる事は想像に難くない。
「芳香さん、あそこと、あそこと、あの瓦礫を捕食してください」
芳香へとそう指示を飛ばす八百万百。
芳香は指示された通りに刹那の内に瓦礫を喰らい尽くす。
バランスが損なわれて潰されるならば瞬きの、刹那の一瞬で瓦礫を排除すれば良い。
幸いなことに、A組にはその点においては『暴食』の名に恥じない動きをしてくれる、とても信頼できる仲間がいる。
そして、喰らった瓦礫などを資材として新たに投入されるロボット達。
ロボット達は受験者がまだ見つけていない要救助者、本来は見つけられない位置に存在している要救助者達を探り当てて受験者へと報告している。
そうして、予想よりも大分速く要救助者全員の位置が判明した刹那……耳を劈く爆音と共に暫定救護所としていた所より30〜50mしか離れていない場所。
そこの試験会場の壁が爆散し出てくるのは
そして……八百万百と宮古芳香の前にも
「やぁお2人さん……気分はどうかな?」
「今回はちょっとおちゃらけられないかなぁ……こっちも仕事なんでねぇ」
ヘラヘラとした笑みを浮かべつつその背中に宿す翼から放たれる、まるで機関銃の如き速度の幾重にも連なる羽根。
そしてナガンが宮古芳香へと銃口を向けつつコミカルなイントネーションの言葉でそう告げてくるが八百万百も宮古芳香も今の気分を答えるならば最悪と叫んだであろう。
そうしないのは眼前の2人の対応で手一杯ゆえに。
救護所の方にもギャングオルカ達が迫っており判断を迫られる八百万百。
「八百万さん、行ってください……此処は私1人で足止めします……万能性を有する個性の八百万さんを此処に留めておく事自体が罠、向こうのフォローを……」
そう告げると意図を汲んでくれたのか八百万百は芳香を置いて救護所の方へと駆け出す。
当然、相手もそれを許す事は出来ないのか八百万百を行動不能にするべく、躊躇う事なく膝関節を撃ち抜こうとナガンは銃を、ホークスは50〜60枚程の羽根を動かすが全て宮古芳香に喰い止められる。
文字通り……喰らって止められる。
羽根も、銃弾も……その他軌道上の空間にある物全てを喰らい尽くしてゴクンッと嚥下しつつ芳香はナガンとホークスを睨みつけ告げる。
「絶対通しませんよ? 私の役割は貴方達2人を止める事……貴方の羽根じゃ私は貫けない、貴方の弾丸じゃ私を殺せない……」
そう喋りつつ上空に留まるホークスを……空間捕食の副次的な効果で地上に引き摺り下ろす。
ナガンはそれを見た。
先程まで上空に浮遊していたホークスが……瞬きの直後……宮古芳香に右背中から生えている翼を掴まれて、その羽根を根こそぎ喰らい尽くされるのを。
両翼揃って初めてホークスは空を自由自在に翔ける事が可能。
片翼ではホークスの飛行能力や戦闘能力は激減どころではない。
残った片翼も、よく見れば羽根は殆ど揃っておらず飛行能力と同時に戦闘能力の大半を奪い取った。
そして……ナガンはそれを見た。
宮古芳香の背中、衣服を突き破る様に、不自然に肉が盛り上がるかの様に衣服を破損して、それが露わになる。
天使を思わせる様な、この世の一切の穢れを抜き取ったかの様に美しい純白の翼。
そして、その翼を構成する、翼と同じ、透き通る様な美しさを放つ純白の羽根。
あまりの神々しさ、あまりの神聖さに……試験の
しかし……公安直属のヒーローとして鍛え上げられた能力故か……機関銃の如き速度で飛来するホークスの羽根と同等のソレを撃ち落とし、身を捩り回避して更に撃ち落とす。
ナガンとホークスは今回召集された理由を思い返していた。
試験より遡る事4日前。
ナガンとホークスは久々に顔を合わせていた。
互いに任務で忙殺されており、またその後のスケジュールの調整もあり中々会う事が出来ずにいた。
ホークスはその羽根を活かした潜入や隠密。
ナガンはその狙撃技術を用いた暗殺や殺しを。
ヒーロー公安直属のヒーロー、耳障りや外聞はとても良いが身も蓋も無く言ってしまえば何でもやる便利屋に近い。
違法行為すらも行う便利屋、特に殺人すらも命令されれば行う便利屋に。
ヒーローと
そんな爛れた生活を送る内にナガンのメンタルはいつの間にか変調をきたした。
と言うよりも遅すぎた程だと、ナガン自身自嘲しながら語るがその眼はどんよりと絶望が漂っている。
今回召集を掛けられた事案を教えられる。
ヒーロー公安委員会会長も交えた会議はいつも通りに終わった。
……会議の後、廊下に設置された椅子に腰掛けてホークスとソレを再度確認して溜息を吐くナガン。
「宮古芳香を試験中の事故に見せかけて暗殺……それが出来なければ不合格になる様に立ち回れ? 馬鹿がよぉ……後輩君? 私達は他の、表のヒーローが出来ない仕事を行う返り血で薄汚れた便利屋……人の生き血を啜って生きる蛭みたいなゴミクズさ……人間としてはもうとっくの昔に終わってるし死んでる……だけどさ、まだ15の子供を殺せって、15の子供の人生を踏み潰せって言われて笑顔で頷ける程に人間として終わってないよなぁ?」
従いたくない命令に……頭を抱えつつ一筋の涙を流して後輩であるホークスに青褪めた顔でそう問いかけるナガン。
ホークスもこの指示には従いたくない様で羽根を用いた暗号文でナガンに肯定する意思を語ってきた。
血塗れのこの手で守れる物、触れるモノ、救えるモノなど高が知れている。
だけれども自分たちが穢れる事で救ってきた、救えた未来があると、そう信じてきたが……1人の少女を殺せと言われ……麻痺していた倫理観が息を吹き返す。
歯車が意思を持って動いたら機械はあっという間に故障を繰り返す。
だから……私達は歯車に徹してきた、表も裏も……どっちが欠けても壊れてしまうから……従い続けてきたが、その泥の様な脆さに、脆弱な砂状の楼閣に、土台から今にも崩れ落ちそうなこのハリボテで構成された世界に。
ほとほと嫌気がさした。
ナガンはその
蒼に染められた……名状し難い衣服に身を包んだ女性がナガンに声をかける。
「初めまして……私は霍青娥、ホークスとは既に会っているけれど……貴女とは初めましてよね? Ms.ナガン、お見知り置きを……貴女が何をしようとするか私には分かるわぁ……そんな事しなくても私が現会長を引き摺り下ろしてあげる、後任には……そうねぇ、この人でいいんじゃないかしら?」
1人、のべつ幕無しで語り続ける青娥。
そもそも此処はヒーロー公安委員会の人間の中でも一握りしか入れない。
霍青娥という相手をナガンは知らないが……少なくとも此処に入れる様な身分ではない事は確かだろう。
しかし、青娥はそれを気にも止めずに会長の居る部屋へと入室して僅か数秒。
出てくると笑顔で語る。
「貴女達の悩みの種は取り除いたわぁ……現公安委員会会長は現時点現時刻を以てして会長職を解任……彼には全ての罪を背負って
ふわふわとした物言いでとんでもない発言をかます青娥。
その眼にはホークスとナガンが映っているが、2人は理解する。
青娥から見れば自分たち2人はその眼に映っているか怪しい。
思考を巡らせているとホークスとナガンのスマホに通知が入る。
それは前会長の自殺に伴って会長が変更、青娥の告げた相手が現在を以て公安委員会会長になったと言う通知と宮古芳香についてだった。
試験会場で
スマホから目を離すと霍青娥は煙の様に跡形も無くなっており……何よりも監視カメラや警備には一切の存在が認知されていなかった。
そして、翌日……前会長の自殺が新聞に流れる。
遺書の中身は至って変哲のないモノであった。
それが4日前の出来事。
ライフルを撃ちながらホークスの援護に入るが芳香はナガンの弾丸を喰らった。
ホークスの羽根が模倣出来るなら……当然出来る。
ナガンの撃ち込んだ弾丸が、別の弾丸で弾かれる。
それは、芳香の掌中央部から射出された弾丸であった。
尤も……弾丸の構成要素が髪か肉かの違いはある様だが。
それ以外は全てのスペックが同等だろう、狙撃技術のみはナガンの方に一日の長があるが……。
そして、連続した射撃音が響き渡るが……5分と経たずにアナウンスが鳴り響いた。
『えー、配置された全ての
そのアナウンスに従って……ライフルを納めるナガン、そして芳香であった。
劇場版は入れた方がいいですか?
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そんなもん書く暇あるなら本編進めろボケ