インターンシップ①
「せいがー」
青娥の後ろをトコトコと歩きつつそう無邪気に語る芳香。
芳香は今青娥とのパトロール中である。
仙人ヒーロー事務所は見事に雄英高校の定めるラインを突破しインターンシップの指名権を捥ぎ取った。
そうして、当然の如く宮古芳香を指名し今……市内のパトロールをしている。
尤も、保須市ではない。
別の都市である。
暫し歩いていると……目の前には緑谷と通形ミリオの姿が。
偶然出会ったクラスメイトに芳香は立ち止まり手を振る。
その時……芳香の膝にポスンッと何かがぶつかりそちらへと振り向く。
芳香が其方に眼を向けると、居たのは四肢に夥しい程の包帯を巻かれて……裏路地から走ってきたと思われる少女と保護者と思われる長身痩躯の男性、その少女は……絶望色にその眼を染めており、ペストマスクを装着した男から逃げていたと推察する芳香。
そして、その少女を見た刹那……芳香の脳に思い起こされる濁流の如き記憶の断片。
何故か……芳香はこの幼子と自身が重なった、過去、実験台だった芳香自身と、この幼子が……。
芳香は尻餅をついた女の子を抱え上げると笑顔を浮かべ安心させるが……緑谷と通形ミリオの様子が何処かおかしい。
なんか……こんな偶然出会っちゃいけない人間と会ったかのような、そんな表情をしていた。
そう思案していると青娥が口を開く。
「あらぁ? 死穢八斎會の……ふふふっ元気してたかしら? 子供? ……あぁそういう事? 理解したわ……」
青娥はあんな事があったのにも関わらず……屈託のない笑みを治崎へと向ける青娥だがその眼は欠片も笑っていない。
むしろ……裸足で駆けてきた少女を見て青娥は全てを理解した。
治崎はと言えば極度の苛立ちと、殺気と、不機嫌が顔に出ており今にも此処にいる青娥を含めた全員をどうにかして殺そうとしているが必死に理性で抑え込んでいる様である。
10秒ほど必死に抑え込んで、青娥を見ながら言葉を絞り出す治崎。
「このっ‼︎ ……っ‼︎ ……どうも、私は死穢八斎會の治崎廻と申します、それにしても……3人もお若いヒーローを連れてパトロールですか……確か仙人ヒーロー事務所でしたか、無名だと思ってましたが……いやはや、素晴らしいですね、すみませんね……娘が、遊び盛りで……ほら、帰るぞ? 壊理?」
眼のみが欠片も笑っていない笑顔を浮かべて優しげにそう語る治崎、だが壊理と呼ばれた少女は震えており芳香へと抱きついたまま離れようとはしない。
芳香の胸に顔を埋めたままガタガタと震えており……泣きじゃくるその声音には治崎への恐怖しかこもっていない。
それを見て……緑谷が語る。
「娘さん……酷く怯えてますけど?」
それを聞いて……治崎は腐り果てた生ゴミを見るような侮蔑した眼を一瞬だけ緑谷の方へと向けるが、それもほんの一瞬……緑谷に対して外面の良い父親のような笑顔を浮かべて語る、
「こっぴどく叱りつけた後なので……ほら、この位の年齢の子供にはよくあるでしょう? ちょっとした我儘……今回はそれが行きすぎてしまいましてね? ちょっと強めに叱ったんでいつも以上に怯えてるんですよ」
まるで定型分の様なその答え。
サラサラと、暗記でもしてるかと思う程に綺麗に出てくるその答えだが……緑谷も通形も悪意に塗れた者の真意など未だ読めぬのが実情。
緑谷は引き下がる事なく子供の保護を、通形は深追いそのものが危険と判断して子供を一時的に治崎の元へと帰そうと。
そして壊理に抱きつかれている芳香は……といえば。
「絶対に……絶対に、この子をお前には渡さないのだ、この子は私と同じ……地獄からようやく抜け出てきた所、必死に逃げた地獄に戻して良いわけがないのだ‼︎」
そう断定系の言い回しで言い放った芳香。
……それを聞いて緑谷は壊理と呼ばれた少女を守る様に芳香の前に立つ。
それを見て……治崎が明らかに苛立ちのボルテージが耐えきれないとでもいう様に……もはや苛立った表情も、殺意すらも包み隠さずに、言葉に殺意と苛立ちを乗せながら語る。
「……子供をヒーローに拉致されたと警察に駆け込んでも此方としては一向に構わないが? 推測でしか得られない情報で人権侵害の問題になるのは嫌だろう? えぇ? インターンの学生さんよ……」
そう語りながら……治崎は両手に着けていた白手袋を外して……臨戦態勢に入る。
ミリオもその微細な空気を感じ取ったのか……臨戦態勢を、しかし……その重々しい空気を弛緩させる様に青娥が割って入る。
「面白い事を言うわねぇ……良いわよ? どうせ警察呼ばれて困る状況になるのは其方だわ……あぁそれとも、アナタ……私とやり合うって言っているのかしら? ……別にどっちだろうと私は良いわよ? それにヒーローには与えられた権限があるわぁ……子供の即時保護を目的にした」
ヒーローには虐待児童の保護に関して与えられている権限*1がある。
ソレは即時の保護を可能にする為に与えられた権利でありそもそもヒーローでなくとも虐待や虐待が行われている可能性がある事態に関しては法律*2の規定に基づき誰であろうと通報の義務がある。
インターン中の学生の前に立つ青娥の表情は……立ち位置の都合上……緑谷、通形、芳香のインターン中の3人には決して見えない。
治崎にのみ見せたその表情は……とても、とても……。
その表情を見てしまった事と、状況の悪さを察した治崎は……諦めきれないが状況を正しく理解して裏路地へと戻り……去っていった。
そして……青娥はスマホを取り出して連絡を取る。
「こんにちわ塚内警視正……お願いがあるんだけど、えぇよろしく……さて、と」
青娥は……ミリオの連絡でこっちにきたナイトアイとバブルガールに気さくに手を振るが当のナイトアイはそんな悠長に事を構えてはいられないのか……ため息を吐いて語る。
「とりあえず……説明が聞きたい所ではあるな、詳しく……」
それを聞き青娥が楽しそうにして語る。
「そんな難しい事ではないわぁ……起こった事は至極単純よ……ヒーローとインターン生が泣いている被虐待児童を保護しただけよ? 人道に則って……そんな怖い顔されると泣いちゃうわぁ」
ケタケタとそう笑いながら……ナイトアイに告げる青娥であった。
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そんなもん書く暇あるなら本編進めろボケ