悪食少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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インターンシップ③

 青娥は塚内さんから話を振られると立ち上がって会釈をしてから語り始める。

 主に語るのは死穢八斎會の事について。

 しかし、捜査資料にすら載っていない……地下に広がる迷路の様な逃走経路の事にまで、内情にあまりに詳しすぎるその内容に響めきと共に不信感が青娥に対して突き刺さるが青娥はそんなの知った事ではない。

 

「何故此処まで知ってるのかについては……こういう商売故にと申しておきますわぁ……皆様方も各々が経験あるでしょう? 潜入捜査の一環です……あぁそれと、死穢八斎會は2日前に(ヴィラン)連合との関わりもありましたわぁ」

 

 薬物、人身売買、臓器売買……etc etc.

 警察と同様にプロヒーローも潜入捜査を行う事がある。

 それを聞き……完全ではないがまぁ納得するプロヒーローの面々。

 相澤やジョーク、ファットガムは潜入捜査で数々の犯罪組織を壊滅させてきた為に納得も速い。

 そうして再度塚内警視正に話は戻り保護された少女、壊理の話へと移る。

 

「保護された壊理と呼ばれていた少女は特別保護病院で治療、警察特殊部隊3個分隊による警備とプロヒーロー15名による護衛の厳戒態勢で保護下に置かれている……その個性の都合上……人を近くに置く訳にはいかないので医療ロボットと医療ドローンで対応している」

 

 そして明かされる。

 壊理の個性……『巻き戻し』という個性。

 治療と共に為された個性診断にて判明したソレは……如何に超人溢るる個性社会とは言え凄まじいものであった。

 文字通り『巻き戻し』は壊理が触れた生物を中心に、対象を過去の構造へと修復する個性。

 塚内がその権限を使い壊理の系譜を遡ったが父方、母方のどちらの系統にも属さない。

 いわゆる突然変異によって生まれた存在であり、その本質については未だに明らかになっていない事が多い。

 例えば怪我をした人間に向けて発動すれば怪我をする前の状態に戻す事ができ、なおかつ後遺症を残すことも一切ない為、一見非常に便利な個性と思われるかもしれないが、この個性の真価はそれだけに留まらない。

 彼女が個性を一度発動すれば『怪我の修復』どころか、対象を巻き戻し続ける事で存在そのものを跡形もなく消失させてしまう事さえも可能で、更に使い方によっては単なる時間的な巻き戻しに留まらず、進化の系譜を辿りヒトを猿へと退化させる事も……巻き戻しを更に続ければその存在が産まれる前にまで『巻き戻す』事さえもできる。

 それを踏まえて……この場に居るプロヒーロー全員は、はたと理解した……最近ばら撒かれていた薬物の原材料が一体何だったのかを理解して吐き気と憤怒を催した……。

 Ms.ジョークはいつもの軽々とした笑みを浮かべる事はなく怒りを滲ませた表情でテーブルを拳で殴って、震えた声音で呟く。

 

「……塚内さん……つまりは、あの薬物はそう言う事……なんですね? 笑えねえよ……畜生が……どんな精神してたらこんな……こんな‼︎」

 

 先程の資料を読み解く時も感情を激しく表に出していたジョークだが、今度は……人目も憚らずに大量の涙を流して頭を掻き毟る。

 彼女だけではない……リューキュウも、相澤先生も、そんな想像は当たって欲しくなかったと言う様な……まるで苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべており5分程は誰も彼も喋ろうとはしない。

 会議室内にどんよりとした暗い空気が漂い始めたが……ロックロックが何とか口を開く。

 

「まぁ……少しはマシだ……経緯や諸々はどうあれ、子供は保護してる……厳重警備で保護してりゃ流石に無事だろうよ……」

 

 そう。

 子供の保護は出来たのだ、それが唯一……今回の地獄の様な会議にてプロヒーロー達が救われている事実であった。

 一部情報に触れる権利を剥奪されているインターン組も……流石に察しの良い者達……3年生組や蛙吹や麗日は薬と子供の関連に大体察しがついたのか顔を青褪めている。

 そうして……会議も終盤となり死穢八斎會を壊滅させる為の根本的な案を提示しようとする塚内。

 そこに相澤先生が口を挟む。

 

「どう言う性能かは存じ上げませんが……相手の出方を知り得ないならばナイトアイの個性で未来を予知すればいいのでは? 自分達の行く末を観れるのは何よりの情報アドバンテージになり得る……それをしないのは少々……いや、かなり合理性に欠ける」

 

 相澤の尤もな指摘に対してナイトアイは無言で首を横に振って言葉を紡ぐ。

 

「それは……できない、私の予知性能ですが対象は1日に1人1時間のみ、そして1時間経過したらその後24時間は再発動が不可能になる……見える範囲も8ミリビデオの様にコマ送り再生で見えるのはあくまでも対象人物及びその人物の居るほんの僅かな周辺状況だけだ、軽々に使えるものじゃないしあまりに得られる情報が限定すぎる」

 

 それを聞いて……改めて相澤が語る。

 

「それでも真っ暗闇を進むよりは明るく見えるでしょう……知らない未来と知っている未来……0と1には言葉では語り尽くせない程に大きな違いがある、仮に対象の人物に死が訪れても先にそれを知れれば対策の立てようもある……それでも出来ないとはどういう事なんですか?」

 

 相澤の言う通り……0と1には言葉で語り尽くせない程に違いがある。

 そも、未来が垣間見えるのならば……それに応じた対抗策も取りやすくなる。

 故にナイトアイの個性が一際役に立つと思い相澤は発案した訳だが……肝心のナイトアイからは煮え切らない反応。

 逡巡ののちに……ナイトアイがその重い口を開く。

 

「ダメだ……どうしても見れない……済まない」

 

 その言葉を聞き静観していた青娥が挙手して口を開く。

 

「とりあえず……予知や未来がどうこう言うよりは死穢八斎會に話を戻しましょう……それとナイトアイ……後でお話がありますわぁ」

 

 死穢八斎會に関して……令状が取れ次第すぐさま強制捜査に入るとの事であった。

 その際には此処にいるヒーロー及びインターン生にも強制捜査に当たり現場に出てもらうとの事で会議は終了となった。

 


 

 会議後。

 1-Aの生徒達は相澤先生の所へと集められて告げられる。

 口々に先生と叫ばれる相澤は教え子に対して語る。

 

「学外ではイレイザーヘッドで通せ……さて、随分と暗い雰囲気だな、まぁ察しの良い者は理解してしまっただろう……そう言う事だ……それと、今日は君達にインターン中止を告げようかと思っていたんだ……連合が関わっていると言うのを聞き、話が変わった……が……納得しなさそうだなお前達は……ロックロックも言っていたが保護はできてる、だから後は元凶を叩き潰すだけだ……」

 

 そう語るイレイザーであった。

 


 

 会議後……会議室内に残った青娥とナイトアイ。

 ナイトアイは訝しげな表情を崩す事なく椅子に座ったままの青娥へと語る。

 

「それで……一体何の用事だ?」

 

 ぶっきらぼうに語るナイトアイに対して頬杖をついたままの青娥は笑みを崩す事なく語り始める。

 

「あなた……私の出した論文読んでないでしょ? 可能性世界の収束不確定性原理」

 

 にっこりとした笑顔そう語る青娥。

 可能性世界の収束不確定性原理……此処に書くにはあまりにも膨大な文字数と難解な法則に関する数多の式が必要な為に……それらを省いて超簡単に言えば要するに……この一言に尽きる。

 “未来”なんて全知全能の神すら知り得ないよバ〜カ、である。

 青娥が語るは……そも未来視や未来予知なんてものは不可能だよと……そういう論文の内容であった。




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