悪食少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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押送

「各員……感謝する、後はこちらの仕事だ……お疲れ様、ゆっくり休んでくれ」

 

 そう語る塚内。

 塚内は押送手段と必要な人員、ルートを部下へ伝えるとそのまま仕事に戻る。

 即ち……警視正としてやるべき仕事へと。

 三茶に後を任せて最寄りの警察署に連絡して対応を依頼する塚内。

 数十分後。

 押送準備が完了したのか護送車に乗せられて押送される治崎廻。

 他の幹部達も別の護送車で押送されていく。

 違法薬物の個性消失弾とその血清、及びそれ以外の重要証拠品も押収し、護送車で警視庁特別証拠品保管部へ運んだ後に厳重管理の下で保管する事となった。

 早朝から動いて……ガサ入れ終了が8:15分。

 ヒーローや機動隊員達にも負傷者は出た為にそれに該当している者達は最寄りの大学病院で治療を受ける事となった。

 ファットガム、レッドライオット、あとは機動隊員数名が骨折など。

 被害は軽微であったのが救いと言える。

 (ヴィラン)連合を警戒していたが結局は最後まで遭遇せずに居たのは幸か不幸か……。

 


 

 トラックのリヤドア、その上に乗りつつ……死柄木弔は考える。

 将棋ってのは玉を獲れば勝ちなんだよなぁと。

 そう疑問を呟くも……リヤドア内部から荼毘の否定的な声が響く。

 

「そう簡単にいくもんじゃねぇぞ?」

 

 将棋を少しは嗜むのかそう語る荼毘。

 コンプレスは手に持ったスマホで通話をしており……相手はトガヒミコ。

 トガが仕入れた情報通りに来た。

 治崎廻含めた11名はガサ入れの際に全員重傷を負わされている為に最寄りの(ヴィラン)受け入れ可能な病院へと運ばれる手筈。

 そのルートにはこの高速を必ず走る。

 高速を走る護送車と警護車。

 トガヒミコが仕入れた情報によれば治崎廻の護送車には弾丸の完成品と血清があるとの事。

 治崎の長年の苦労の結晶を奪って少し嫌がらせをしておきたいと考えた。

 そうして……護送車と警護車の排除を試みているわけである。

 しかし、おかしい。

 弔がリヤドアから跳躍してフロントガラスを砕き割っても運転席には誰も居ない。

 ハンドルが自動で動いているのみで人の気配など欠片も感じられない。

 とりあえずパトカーを横転させると護送車に狙いを絞り襲撃するが肝心の護送車を護衛しているヒーローすらも出てこない。

 何となく違和感を感じて……全ての護送車を横転させて中を確認すると全ての車両はロボットの機械制御による自動運転であり……人が居ない。

 護送車で護送されていると思われていた治崎や押収した重要証拠物品の影も形もない。

 戸惑いを隠さずに居ると空から人影と共に鋭い蹴りが襲ってくる。

 着地と共にコンクリートを砕いたミルコ。

 

「やっとみつけたぜぇ‼︎ (ヴィラン)連合‼︎」

 

 そう叫び着地した瞬間、更に鋭い蹴りを死柄木弔へと行おうとするが死柄木弔にはそもそも戦う気はない。

 今は治崎への嫌がらせが出来れば良いと考えて此処に来た為に逃走が目下の第一目標。

 のらりくらりと蹴りを躱してスピナーが運転するトラックのリヤドアに再度戻ると荼毘に火焔放射を見舞う様に告げる。

 コンプレスもついでの様に圧縮を解除した大岩を投擲してきており乱射された焔と岩を避けるミルコ。

 しかし如何に跳躍力に長けた兎の個性持ちとはいえ時速100kmで走り続けるトラックには追いつけないのか途中で見切りをつけて耳に着けている無線機器で治崎廻ら11名と重要証拠物品を押送し終えた塚内への連絡を入れる。

 

『塚内さん? やっぱアンタの予想通り現れた……対象は今、時速100kmで逃走中……どうする? 追うか?』

 

 そう無線機越しに語るミルコ。

 ノイズが流れて数秒して塚内の声が無線機から聞こえてきた。

 

『いや、深追いして被害を拡大されても事だ……とりあえずの目的は達した、退却してこちらに戻ってきて欲しい……相葉愛美によると何やら気になる情報も出てきたとの事だ』

 

 その言葉に対して了解と返しつつミルコは塚内の読みが完璧に当たった事に身慄いする。

 最初は護送車と護衛を付けて高速に乗り最寄りの(ヴィラン)受け入れ病院へと運ばれる予定であった。

 確かにトガヒミコが仕入れた情報通りの動きを行おうとしていた。

 ……しかし、押送する3分前に別手段にて押送する事に急遽変更。

 準備していた空の護衛車と護送車は警視庁情報犯罪対策部部長、相葉愛美による自動運転による制御でそのままブラフとして出発してもらい……その隙にエンデヴァー、ホークス、ギャングオルカ、ヨロイムシャ、マウントレディ、シンリンカムイ、ジェントルに護衛を要請し別の移動ルートにて押送。

 ミルコには遊撃を依頼して(ヴィラン)連合を見つけたら可能であれば捕縛……無理そうならば深追いはせずに退却と指示してあった。

 それに従い退却するミルコ。

 事務所を構える事なく全国各地を練り歩くミルコ。

 ミルコは事件や(ヴィラン)との戦闘が起きれば文字通り跳んでいくが重大な事件はそうそう起きるものではない。

 そも、ミルコ程の武闘派ヒーローが全力を出さなければならない事案ともなればそれは大事件であり、そんなもの起きないに越した事はない。

 (ヴィラン)との戦闘にのみ市民の関心が高まっているもののヒーローとはそも犯罪の抑止力であるべきで戦闘や甚大な被害が出てから動くのでは遅い。

 そう思案しつつ跳躍を繰り返して警視庁前に辿り着くとエントランスから中へと入りエレベーターを使って塚内の執務室へと入る。

 書類と睨めっこしている塚内、そしてノートPCをカタカタと弄っている相葉。

 しばらくすると護送車の護衛に当てられていたジェントルや他のプロヒーロー達が帰投してきたがジェントルはミルコを見た途端にあからさまにビビっており震えている。

 またか……会う度会う度に全く。

 

「テメェも毎度毎度そんな怯えてんじゃねぇよ……獲って食う訳じゃあるまいし……」

 

 なお……ミルコ自身、エンデヴァーやエッジショットら戦闘メインのプロヒーローと手合わせという名の模擬戦を幾度となく繰り返している為ジェントルのその反応に対しては思う所が無いわけではない。

 戦闘狂の気を隠そうともしないミルコだが……ジェントルとは個性の相性が悪すぎる。

 如何にミルコが凄まじい身体能力や天性の戦闘センスを有していてもジェントルには今の所負け越している。

 ジェントルはエンデヴァーですら一目置く程に熟達した個性の扱い方、それを可能にした修練などを積んでいるのに未だ治らないその性格……小心者で臆病なのが……。

 そんな事をボンヤリと考えていると塚内から労いの言葉と共に語られる。

 

「護衛の任務……急に割り振ってしまい申し訳なかった……それで、君達に話しておきたい事がある……詳しくは情報犯罪対策部部長、相葉愛美より話を……」

 

 そう告げて相葉愛美が語り部を引き継いで語り出した。




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