悪食少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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露呈

 場面は変わり雄英高校へと映る。

 死穢八斎會のガサ入れから戻ったA組メンバー。

 調書や手続き、その他諸々の事務作業で帰寮の時間が20時過ぎになってしまった。

 麗日、緑谷、蛙吹、切島、そして宮古は寮の扉を開けると中に入るなりクラスメイト達から口々に心配の声をかけられる。

 既にニュースで報道された話題から悟った者も居るらしく心労や肉体的疲労を心配される。

 芳香はと言えばいつもと一切変わらない様子であり……疲労など微塵も感じさせない様子であったが、それを抜きにしても眼に見えない疲れやストレスなどは溜まるだろうと言う砂藤の配慮でガトーショコラを振る舞われるが芳香は受け取ろうとはしない。

 

「今は……お腹減ってないので後で美味しく頂きますね、ご心配痛み入ります……」

 

 和やかな笑みを浮かべ断りの文句を告げると無理矢理食わせようとはしてこない。

 だが、其処で待ったをかける者が1人。

 爆豪勝己であった……。

 

「待てやテメェ……インターンで疲れてんだろ⁉︎ 身体が資本だ俺らは‼︎ これでも食ってほんの少しでも疲労回復しとけや‼︎」

 

 そうぶっきらぼうな言葉と、一見棘がありまくりな乱雑な態度だが、爆豪はその手に持っている小皿に盛られた団子をインターン組へ順々に差し出して食べる様に促す。

 緑谷に至っては『かっちゃんがそんな事してくれるなんて』と感動のあまり号泣してる。

 他のインターン組メンバーも、なんならクラスメイト達も普段の爆豪からは想像も出来ない行動に暫し理解が追いつかずフリーズしている。

 かくいう芳香もフリーズしている、小腹を満たすと言うよりも芳香の個性による回復手段を重視したその団子は見た目も形もとても美味しそうであり、他4人からは絶賛の言葉が紡がれる。

 そうまでされて断れる雰囲気では無い為に爆豪から差し出された団子を食べて……他の皆と同じ様にお礼と感想を語る。

 

「……とても美味しかったですよ、甘くて……素晴らしいお団子作りの才能ですね、今度クラスでパーティーとかやる際にぜひお料理係に、お願いします」

 

 そう語ると……何故か爆豪の顔は酷く曇り……短く吐き捨てられる様に、芳香を見つめて『そうかよっ』と呟かれる。

 不思議そうに聞き返そうとした瞬間、上鳴や峰田が爆豪に対して俺らにも団子を食わせろと訴えており、それに便乗する形で芦戸や砂藤も口々に爆豪のお団子を食べてみたいと話し始める。

 爆豪は後で幾らでも作ってやるわボケぇ‼︎ と叫んでおり緑谷が『いつものかっちゃんだ』と呟いた一言で火に油が注がれて、いつも見るやり取りが行われる。

 それで空気が弛緩しいつものA組メンバーの空気となる。

 22:00、共有スペースにて雑談に花を咲かせていたが……まぁ……暫くしてインターン組が流石の疲労で船を漕ぎ始めたのをキッカケに各自そろそろ眠ると言う事で自室へと戻っていった。

 芳香もお風呂を済ませて……現在時刻は日付を超えて0:45分。

 永い夜を星座や月の動きでも観ながら過ごそうかとベランダに出ようとした時……スマホに1件の通知が入る。

 スマホに目を落とすとトークアプリからの通知であり爆豪勝己の個人チャットであり件名には短くこう書かれていた。

 

『話がある、俺の部屋に来い』と。

 

 やる事も無い為に芳香はそれに従ってエレベーターに乗り爆豪の部屋へと向かう。

 対面になる様に座る様に促されて座布団に座る芳香。

 爆豪が口を開く。

 

「……もう一度聞くぞ? あの団子、味はどうだった?」

 

 さっきと同じ質問、芳香は汲み取りきれない意図を理解しようとしてフリーズするも答えは変わらない。

 

「とても美味しかったですよ? 爆豪さんったら意外と乙女チックですね……感想を聞く為にわざわざ自分の部屋に呼び出すなんて……爆豪さんも隅に置けないというか……」

 

 てへっ、と語尾に星マークでも付きそうな砕けた言葉遣いでそう感想を語る芳香。

 それに対して爆豪は何かを確信したかの様な表情で、何かを掴んでしまったかの様な重い口調で……語る。

 

「……なぁ暴食女」

 

 短く呟かれた言葉に、芳香は『はい?』と返答し爆豪が紡ぐ言葉を聞く。

 

「お前……味覚、機能してないだろ? つーかよ……味覚だけなのか? 機能してないのはよ」

 

 そう問われて……芳香はハイテンションで笑い飛ばしながら返答する。

 

「急にどうしたのだ⁉︎ サスペンスドラマやアニメ、映画の見過ぎか⁉︎ 面白い冗談だけど……あまり乙女にそんな事言うもんじゃないのだ‼︎」

 

 そう語るが続く爆豪の言葉で芳香の言葉が失われる。

 爆豪の表情は……何処か暗く、何処か……沈痛の表情であった。

 

「合宿の時、覚えてるだろ? あの山火事だ……今になって思えばあの時の温度は700℃から850℃……まともな装備も無かったお前が生存してるのがそもそもおかしい……消防の報告書に眼は通したか? あの時のお前が居た場所は普通だったら酸欠や一酸化炭素中毒で死んでてもおかしない……そう記載されてた、で……極め付けはよ……テメェの過去、実験台ってハナシだ……そんでもって神野でのあの事件……それによ、お前の団子が美味かった筈がねぇんだ……あの団子の中でお前のだけは、激辛の細工品だったんだからよ」

 

 根拠と共に、推察と推理……そして芳香の過去を照らし合わせて爆豪は語っていく。

 そして話は先程のお団子に仕掛けられた細工に……推察を裏付ける決定的な理由が語られる。

 

「壊理つったか? あのガキの個性……俺とお前とあのガキの3人しか居なかった時だ、憶えてるだろ? お前が抱えていて、個性訓練中に暴発した時……お前は『巻き戻されなかった』……トカゲやヤモリ、怪我した犬や猫ですら死んでなかったら……生きている生物ならどんなに重傷を負っていようとも巻き戻しが出来るのは実証済みだ……なぁ、もう一度聞くぞ……なんでだ?」

 

 検証により……巻き戻しの具体的な情報が纏まっている。

 巻き戻しは死んだ者、死んだ動物には効果が一切無い。

 死は……巻き戻せない。

 爆豪勝己はなまじ、頭脳明晰で……とんでもなく回転が速いが故に気づいてしまった、要らぬ真実に……。

 その言葉に……何一つとして語る事が出来ない芳香だった。

 沈黙が流れて重苦しい空気が部屋を支配する中……芳香がゆっくりと口を開く。

 

「分からない……分からないよ……私が一体何なのかは私が1番知りたい‼︎ 私は何なのだ⁉︎」




ランキング26位⁉︎ めっちゃ嬉しいです!
これからも拙作をよろしくお願いします

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