悪食少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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オリジナル編に突入します


新しい血族
熟成された悪意


 晴天が輝く美しい青空。

 この日、青娥はゆっくりと市街地をふわふわと浮遊しながら散策していた。

 この前、自分へちょっかいをかけていた相手を『行方不明』にした事で気分も良い、組織の幹部を対象に少し拷問して優しく問い掛ければペラペラと語ってくれた。

 行方不明にした組織自体は武器の密輸入や人体実験の素体集め……違法薬物や新たな薬物の製造、etc etc.などと言った組織であり……ドクターが吸い取っていた芳香の情報はAFOともう1つ、此処に齎されていた。

 まぁ碌でもない事だけは確かである、尤も邪仙はそれよりも、もっと人に言えない事、憚られる事をし尽くしてきたのだが、一旦それは置いておこう。

 特に目的もなくふわふわと浮遊して気分の赴くままに裏路地へと入りそこを出た矢先、

 青娥の眼前にゲボゲボと……自らが吐き出す大量の血、それを地面へ描く塗料やインクの代わりにしてとある数字を書いている男が居た。

 男はその数字を書き終えると……同時に力尽きて倒れ伏す、そしてそのまま2度と動く事は無かった。

 眼の前で人が死んだ事はさて置いて……地面に描かれた『6』という数字。

 それを見ながら青娥は呟く。

 

「……シックスとやら、まともに食事させる気はないみたいねぇ」

 

 地面に赤い血で刻まれた『6』という数字と、その奥に佇むリムジン。

 まるで招待状の様に書かれたその数字を見て……青娥はリムジンへと乗り込むのであった。

 揺られる事2時間。

 見るだけで高級と分かるテーブルクロスと同じく、一目見て高級と分かるティーカップが置かれたテーブル……そして、250m程離れた場所には洋館が建築されていた。

 席には既に相手が座っており青娥を見て座る様に促して来る。

 黒髪をうなじまで伸ばした身長180cm程の男性はティーカップを優雅に持ちながら青娥の着席を待っており、着席すると語り出す。

 

「やぁ青娥……すまないね、突然の招待に応じてくれて感謝するよ、我が一族が作った特製ローズヒップはいかがかな? 常人が飲むと胃が爛れる酸性値だが慣れるとクセになる……どうかな? 一杯、この後にはいい茶菓子も用意してある」

 

 そう語られた青娥。

 青娥はニコニコとした笑みを崩す事なく茶器を優雅に持つと中身を一気に飲み干して語る。

 

「美味しいわね……お代わりを頂けるかしら? 良いから本題を話しなさいな……私も其処まで暇じゃないわぁ」

 

 人間が大好きで堪らない、人間の友を自称する青娥。

 だが……邪仙であるが故に色々とやってきている、好奇心や自己の欲求を抑える事はせずに思うがままを成す、それが霍青娥という存在。

 そんな青娥に対して涼やかな笑みを浮かべて対面するはシックスと呼ばれている存在。

 シックスは特製のローズヒップを飲みながら語り出す。

 

「お前の前で……私の招待状を描いた男がいただろう? 自分の血で……あれ(・・)をやらせる為に家族を人質に取ったんだ、アレをやれば妻と子供は生かしてやると……一方で、その家族はさっき『君達の父は家族を見捨てて逃げ去った』……そう囁いて絶望と憎しみの中で命を絶たせた、好きなんだ、生まれついて……そういうのが」

 

 それに対して無言で茶を飲みながら続きを聞く青娥。

 シックスと呼ばれている男は饒舌に語る。

 

「少し小難しい話をしようか……『定向進化』という言葉がある……例えば馬は『速く走りたい』それだけを願って何千何万年も生きてきた……そうして、現代においては人間によってより正確に、より速い馬同士が更に交配され性能が飛躍的に伸びた……似た様な事例は君達の方でもやってるだろう? エンデヴァーに氷叢一族……彼やあの一族も言わば1つのベクトルへと突き進んだ……、馬で出来る事は人間でも出来ると思わないか? 私の一族は凡そ7千年前まで確認できる、武器作りを営んでいた我が祖先は……職業上、人を殺傷する事だけを考え続けてその為に必要なセンスである『悪意』が最も強い息子に家を継がせた……『悪意』の継承は7千年の間繰り返されて代を経るごとに『悪意』はパワーアップを重ねていった」

 

 其処まで聞いて青娥は話を理解する。

 嗚呼つまり、眼前の男が言いたいのはこう言う事か。

 

「成る程ねぇ? つまり『悪意』の定向進化と」

 

 個性などではない。

 今の時代、シックスという男は無個性と呼ばれる存在ではあるが……悪意が個性などという物を凌駕している。

 その高い知性とそれを支える悪意が個性と判別されているのだろう。

 実際、高IQや知性に関する個性も数多く報告されている。

 だが、青娥の眼は見抜いていた、シックスと呼ばれているこの男、個性など持ち得てはいない。

 悪意がそれら全てを凌駕している。

 

「その通り、筋肉や骨格ではなく脳の中で定向進化は進んだ、そして7千年の世代の結晶……現在の一族の当主がこの私だ……自分のDNAを調べて驚いたよ、脳のDNAがもはや人間とは別種と呼べるレベルだった……弱い人間のままではこの悪意に耐える事が出来ないからだ、角の代わりに巨大な悪意と強い脳を持つ新しい種……それが我々『新しい血族』だ……所で、青娥……君は悪事を行う事で自分の力を強める事が出来る邪仙だそうだね? そんなお前に素晴らしい茶菓子を用意したよ、見なさいあの館を……彼等も全員、招待状の男と同じ様に脅迫して動かしている」

 

 そう告げられて館の一室を見る青娥。

 常人からすれば眼を凝らさなければ見えないが青娥もシックスも生物としては常軌を逸している。

 部屋のレイアウトすらしっかりと見えるその眼が最上階角部屋の男性2人を見る。

 1人が椅子に座り……そしてもう1人が背後から、その手に持った斧で椅子に座った男の頭をカチ割る。

 それと同時に24部屋ある全てで衝撃や銃声、肉を切り裂く音が響き渡る。

 突如として齎された殺戮に眉を顰める青娥。

 人間の友を自称している青娥は害を為して来る相手以外には博愛主義であり、人間を心の底から愛している。

 そんな青娥が見てる前で突如として起こる殺戮。

 そして巻き起こる青娥へのラブコール。

 

「悪事を為した相手のエネルギーの様なナニカを喰らってもその力を強める事が出来るのは既に知っているよ、喰べなさい、大量の食糧を用意してあげたよ……世界中に広がった我が血族の中で人間を超えたと言える者はせいぜい100人、私は……その100人以外の全人類は滅んでいいと思っている、青娥……人間ならざる者同士、手を組まないか? ……気に入らない様だな、その顔を見る限りでは……気に入ると思ったんだがな、このプレゼント……青娥、何が気に入らない? お前にとって人間とは自分の能力を高める為の食糧(エサ)だろう? 悪事を為した結果、君の力も強まる……こうして悪事をやらせるのが一番早くて手っ取り早いじゃないか」

 

 それを聞きつつ……青娥は思案して……ひとまず館から発せられる囀りを黙らせる。

 

「……静かになさい?」

 

 その一言で。

 笑みを浮かべた、ただその一言で……気圧される館の人間達。

 ローズヒップを飲みながら青娥はシックスへと語る。

 

「私は長い人生で痛感してるの……悪事を為した結果、私は更に強くなる……だけどね? それは天然物じゃあないとダメなのよ? 私が関わるのは極めて最小限……復讐に少し口添えしたり、殺したいと言う気持ちを更に増長させたり、命よりも大事な存在を壊す様に唆したり、本人のやる気をお膳立てする位なら天然物だけど……それ以外は全部養殖、本人が望んだ悪意の中で泥の様に纏わりつく醸成された素晴らしく強い思いが生まれるのよ? 脅迫されて作り出された悪意なんて問題外」

 

 そう語る。

 邪仙にも好みがある。

 青娥ともなればその好みは非常に拘りが強い。

 そうしてシックスのプレゼントを無碍にする、刹那……シックスは洋館に設置された爆薬の起爆スイッチを押しながら無表情で語る。

 

「つまらん……つまらんほど考えが合わん……お前はどうやら私と違い人間との距離が離れすぎている様だな、チンパンジーは何故人間に守られながら生き残っているか……理由は簡単だ、頭が悪いからだ……もっと優れた類人猿は幾らでもいた、だがそれらは全て人間が滅した……理由は簡単、頭が良かったからだ、近いからこそ恐い……小学生の知能と言葉を操る猿が居たら一緒に生活できる訳がない、いつ寝首をかかれるか疑心暗鬼さ、人間よりもほんの少しだけ進化した我々にとっては人間こそがそのサルなんだ、進化の隣人は滅ぼしてこそ我々は種として確立できる……」

 

 そう語りシックスは青娥の顔を見るが共感も何も出来ないと理解するや否やシックスは語る。

 

「ふん、遠い者には理解できないか……では仲間にする交渉も打ち切りだな、さて……私はこれで失礼するが何かまだ言いたい事はあるかな?」

 

 コートを羽織り席を立つシックス。

 青娥は笑みを浮かべたままシックスに対して語る。

 

「人間とは別種と言ったわね? 新しい血族は……私は人間が大好きなの、人間以外は私の視界に入らない様に駆除してあげるわ、100人ぽっちしか居ない絶滅危惧種ちゃん」

 

 ニコニコとした笑顔を浮かべてシックスへ、血族の根絶宣言を行う青娥。

 シックスは根絶宣言に対して更に語り出す。

 

「私の当面の目的は人類の数を減らす事だ……お前が黙ってそれを見ているならば良し、もしも邪魔をしようと言うならば……世界に散らばる私の一族……『病気』とすら恐れられた悪意の新種『新しい血族』が相手をしよう……並の犯罪者やヒーローが相手にしているコミック本の(ヴィラン)などと言った存在とはちょっと違うぞ、人間とは桁の違う悪意を持った……超一流犯罪者(メジャーリーガー)達だ……悪意を駆使した犯罪はより一層、なお一層強力になるよ? もちろん君の能力の強化など期待しない方がいい、私に逆らっても君には何一つとして徳はないよ? 邪仙、霍青娥」

 

 そう語るシックスであった。

 


 

「と、まぁお互い爽やかな笑顔でそのお茶会はお開きとなったわぁ」

 

 そう語る青娥。

 青娥の前にいるのは塚内。

 青娥は唖然とした表情の塚内に対して笑顔のままそう語ってきた。

 すぐさま対応をしなければならない。

 

 そう考えながら、塚内は緊急招集の会議を開くのであった。




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