悪食少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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始まり

 そうして。

 シックスと青娥の和やかなお茶会から数週間後。

 11月も下旬になった。

 塚内は普段の書類仕事で忙しく……また、急遽の人事異動で更に詰め込まれた仕事に忙殺されている。

 捜査一課だけでも15人の増員。

 それに伴う仕事は増える、だが……備えなければならない。

 チラリと時計を見ると13時45分。

 珈琲を飲みながら書類を作成しその後はジェントルや相葉との会議がある。

 それまでに仕上げなければならない、そう考えながら自分の仕事を務める塚内であった。

 


 

 繁華街、その裏路地……休日という事もあり賑わっている表通りとは違い一歩裏路地に入れば喧騒とは切り離される。

 其処では金髪のやや太った男と、黒髪の男性……半グレと呼称されるべき輩が酒と煙草を手に小銭稼ぎに何をしようかと語り合っていた。

 其処へ質問を行う黒人が居た。

 

「失礼……其処の御二方、少し質問をさせて頂いてもよろしいですか? 私、どんな音楽が好きそうに見えますかね?」

 

 軽快で、人の良さそうな笑みを浮かべてそう語るのは片手にトランペットらしき楽器ケースを持った浅黒い肌を持った黒人。

 流暢な日本語と、お礼代わりに差し出された缶ビール。

 それを受け取り黒髪の男がスーツを着こなしている見た目や風貌を加味して答える。

 

「そうねぇ……格好から見て……ジャズとか、あ意外にヒップホップとか? もう見るからなリズム感ありそうだし」

 

 缶ビールのプルタブをカシュッという音と共に開栓して味わいつつそう答える。

 それに対して黒人の男は解答を聞き、笑顔を浮かべたまま頷き続けて……次の瞬間……。

 

見かけで人を判断するなぁぁー‼︎ だからお前らはッ‼︎ 我々と比べて生物的に下等なんだ‼︎ 地球に巣食うダニ共がッ‼︎」

 

 そう叫び手に持った楽器ケースで黒髪の男の顔面を殴打する。

 一撃目で黒髪の男の顎は砕けて歯の殆どを殴られた事により喪失する。

 そうして続く2撃3撃、何度も何度も殴打が続いていく。

 突如として行われた暴行に対して金髪の男が叫ぶ。

 

「ちょっ⁉︎ いきなり何すんだテメェ‼︎ イカれてんのか⁉︎」

 

 眼前の友人に対する唐突な暴力を止めようとした金髪の男。

 しかし背後から現れ帽子を目深に被った男が、金髪の男へとまるで10年来の友人かの如く肩に手を置かれ語られる。

 

「あー、すいませんね、ツレが迷惑かけて……まぁそう熱く(・・)ならないで」

 

 そう告げられた刹那、金髪の男は身体から出火して瞬く間に火達磨となり声を上げる間もなく炎に焼かれて死んでいった。

 黒髪の男に対する殴打を繰り返す黒人の男へと対し帽子の男は煙草を味わいながら語る。

 

「そいつは生かしとけよ? DR……殺す前に使うから」

 


 

 

 同日14時。

 予報通りにかなり強い雨が降ってきている。

 だがそんな雨など関係がない様にショッピングモール内に新しくオープンした超高級ブランドの開園イベントが開かれていた。

 特設ステージにはトークゲストとして海外のハリウッドセレブが。

 特大のイベントで賑わう最中……ビルの屋上でそれを見渡しながら先程の黒人はズタボロとなった黒髪の男の首を引っ掴んでいる帽子の男へと語り出す。

 

「葛西……私は何よりもジャズが嫌いだ、なのにそのダニは見た目だけで私の事をジャズ好きとぬかした」

 

 聞くものが聞けばあまりにも理不尽な暴論。

 暴論故に理不尽なのか、理不尽故の暴論なのかはDRと呼ばれた男にしか分からないが……。

 帽子を着用している葛西と呼ばれた男は若干引いた声でDRへと語る。

 

「いやいやいや、トランペット持ってる黒人見ればジャズ奏者だと思うだろ……」

 

 そう語るとDRは冷ややかな声音で葛西へと語る。

 

「見た目で判断するな……見た目ではダニが這い回っているこの街も……この街の本当の姿ではない、私には世界の最も自然な姿が見えている……外見に隠された真実が見える、それが私の『新しい血族』として授かった能力……聖戦を始めよう、全てをあるべき姿に取り戻す聖戦を……」

 

 そう語ると葛西に後を任せてDRは準備を行なっていった。

 それを聞きながら葛西はため息混じりに語る。

 

「ったく……血族の面子ってのはどいつもこいつも我が強い、さてと……俺もやる事やっちまうか」

 


 

 暫しして……。

 黒髪の男は特製のロープやテープでぐるぐる巻きにされて、四輪駆動車の運転席に座らされていた。

 口にはテープが貼られて、両手はハンドルから手が離せない様にガッチリと縛られている。

 そして、車内にはこれでもかと積み込まれた非常に可燃性の高い液体が詰められた正方形の箱。

 葛西は準備を終えて語る。

 

「予定通りテレビ中継もちゃんと入ってるな……火火火(ヒヒヒ)良かったな、お前、生中継でお茶の間のスターだぜ」

 

 その言葉でこの後何が起きるかを理解して……一縷の望みを持って涙を流して葛西を見つめる黒髪の男。

 その男の涙で潤んだ眼をみて葛西は笑みを浮かべて語る。

 

「……? あぁ俺の事なら心配してくれるな、遠くからリモコン操作するだけだから俺は安全だし……ロープもテープも火に曝すと飴の様に溶ける素材だ、火が消える頃には跡形もない……とりあえずは、1人のイカレポンチの悪戯で済むわけさ、それが犯行予告と気づくのは……もうちょい先だ……じゃあな、くだらない人生、最期に熱く燃え尽きようぜ」

 

 そう語り、煙草を導火線に押し付けて着火させる。

 煙が充満していき……車内に熱が蔓延し始めたのを確認して、葛西はその手に持ったリモコンで車を走らせる。

 イベント会場へと。

 そうして……燃え盛る車が突撃し爆散……重軽傷者多数の惨事となった。

 だが、ニュースを見ていた者達は……全員見る事となった。

 爆散した車から炎が連なる様にビルへと昇っていき……『6』の数字が浮かび上がる。

 それを見ながら葛西はゆっくりと語る。

 

「燃え盛る暗闇の中で……『シックス』は、かくのように仰せになった……人間の脳に刻み込め、自分達を蝕む病気(シック)の恐怖を、私の名前を見ただけで……人間全員が吐く様にさせなさい……‥10までしか数えられぬ子供にでも分かるように、私の名前を刻み込めと」

 


 

 塚内は……会議中にそれを知った。

 指示を求めてくる三茶へ対して静かに語る。

 

「……三茶、この事件に必要以上に人員を割くな、増員した分を余裕を持って待機させておけ」

 

 塚内は青娥から聞いていた情報を脳内で纏めて……思案する。

 聞いていた話、アレだけの事をできる奴がこの程度のイタズラで満足する筈が無いと。

 


 

 青娥も自身のヒーロー事務所にてそれを見ていた。

 ……齎された情報とテレビでそれを見ており……思案する。

 シックスは自らの種が栄える為に人間の数を減らす事を目的にしている。

 これがその合図ならば……それ(・・)は何処から始まるのか⁉︎ 推理せよ……其処に友人が居なくとも。

 ……でないと私は、もっと先の未来に於ける多くの友人やその子孫を失う事になる。




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