20:00。
降りしきる豪雨の中でシボレーインパラを走らせている葛西に対して助手席に座るDRは語る。
「葛西……私は『シックス』のお望みを聞いた時、真っ先に尖兵として名乗り出た……あのお方が青娥とお会いになってからもうすぐ1ヶ月程度、たとえば
そう語る。
傲慢に。
青娥は考える。
どうやって『減らし』にくるのかを。
降りしきる豪雨の中で……豪雨を浴びながら思案する。
そして……1つの方策に辿り着いた。
邪仙と名乗るだけあり青娥も悪意には人一倍敏感であり理解も速い。
空間に穴を開けて空間を跳躍し目的の場所までワープを連続して行いつつ青娥は思案する。
(今年は雨が多かった……1度にではないが平年以上に雨の日が多かった、そこに来てこの豪雨……上流のダムはもちろん水源の森林や地下水脈の保水量も限界だろう……それを最悪の形で利用する者がいるとしたら‼︎ 狙いは川‼︎)
空間に穴を開けて跳躍を繰り返し目的の場所に到着した青娥。
空間の歪みが元に戻り増水で大量の水が流れている川。
それを見ながらスーツ姿の黒人が手元の高性能ノートパソコンで何かを操作しており……青娥に気づいて語って来た。
「もう嗅ぎつけたとは驚きました……私はDRと申します……けれど手遅れです全ての場所で全プログラムは正常に作動中……あと数秒で世界は一変する……霍青娥、私は善良な人に見えますか? 私には物事の真の姿を見る事ができる……取り澄ましたこの街は全て偽りに過ぎない……この
そう語り終えた刹那……確かに響いた地響きと共に遥かに下流の方からコンクリートで造られた堤防に亀裂が入り恐るべき速さの濁流の波が街を呑み込んでいく。
それを感じ取りながらDRと名乗った相手は楽しそうに叫ぶ。
「流れの変化が聞き取れるか? 霍青娥、下流から順番に堤防を切っているんだ……平行する2つの河川の内側を切り……街に充分に浸水した所で更に上流で切ったダムの水が襲いかかる‼︎ 私にはやる前から全ての結果が見えている……『龍』の力がこの街を湖に変える」
堤防決壊から15分後。
塚内や三茶のいる警視庁では慌ただしく報告が為されていた。
「決壊した堤防は何ヶ所だ‼︎」
塚内がそう叫び地図を広げて決壊箇所の確認をしていくが余りにも多すぎる。
三茶から報告が上がるが即座に被害が広がっていく。
「今の所4ヶ所……いえ5ヶ所‼︎ 6ヶ所‼︎ まだまだ増えてます‼︎」
三茶がそう叫んだ刹那……室内に飛び込んできた別の署員からの報告を受ける。
「本町でも決壊確認‼︎ その先下流2キロでも決壊‼︎ それ以外の地域では洪水による停電で連絡すら取れません‼︎」
広がる被害と広がる決壊箇所に……塚内は己の甘さを再認識せざるを得なかった。
だが、今は悔やんでいる場合ではない。
しかし……状況が最悪過ぎる、こういう時に役立つホークスは先の福岡の戦いで羽根を使い過ぎて生え揃う迄は休止、エンデヴァーも怪我が癒えるまでドクターストップが掛かっている。
即座に使える駒を思案し並べていくがどう考えても足りない……ッ‼︎
「非常召集をかける‼︎ 関東近辺に居るプロヒーロー‼︎ 及び該当地域に居るプロヒーロー‼︎ 現在手の空いているプロヒーロー全てに非常召集‼︎ 非番の警察職員も全て駆り出す‼︎ 既に帰宅した職員も全員呼び戻せ‼︎ 今すぐに‼︎」
そう叫び塚内は指揮を取っていく。
しかし……手が足りないのは自明の理であった。
雄英高校。
寮内のテレビでA組の皆がニュースの速報でそれを見たのは最初の決壊から40分後。
恐るべき速さの濁流は人々に何が起きたか知る時間も与えず……まるで砂場に水を流すかのように人類史上最大のテロはあっさりと街を呑み込んでいた。
それを見ながら……何かやれる事は無いのかと口々に語る。
ヒーローを志していながら……実際にテロが起きてソレを何をするでもなくこうやって見ている事しか出来ないのは……歯痒いなんてものではない。
DRは青娥と対峙しながら語り出す。
「あと4分足らずで……仕掛けた爆弾は27箇所全て爆破される……この国の政府が算出した洪水被害予測……いわゆるハザードマップでは、この地域は水深5m程度の浸水の恐れあり……としている、だがそれは『天災』を想定した甘い予測……人為的なテロ、増してや人間を超えた存在によるテロなど一欠片たりとも考えには入っていない……
それを聞きつつも……青娥の意識は別の所へと向いていた。
いま居る友人が……そして未来の友人達が、その子孫達が消えていく。
歯痒い思いを噛み殺しつつどうにかしようとしたがDRはそれを赦さない。
「おやおや?
そう語り青娥の眼に止まらない程速い、瞬間の移動速度で眼前に移動してボディーブローをかまして青娥が仰け反った所を前髪を乱雑に掴んで地面に叩きつけて更に頭部をグリグリと踏み躙りながら語ってくる。
「もうすぐお前の眼の前で最後の堤防が決壊する……お前も一緒に人柱としてやろう……『龍』は古代の人間どもにとって最も強く恐ろしい存在……故に荒れ狂う大河の見た目を『龍』と形容した……見た目では分からないもっと恐ろしい『龍』がそばにいるのも気付かずに……改めて名乗ろう邪仙霍青娥よ……私の名前はDR……新しい血族の『水の龍』なり」
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